D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが

米俵猫太朗

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第二十八章

耳に重い、痛い

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『ただいまの得点はハーピィ代表背番号26 トレパー選手』
 低く、ドスの効いた声がスタジアムに響く。ノゾノゾさんのアナウンスだ。言葉は分からないが恐らく、今の得点者の公式発表を行ったのだろう。
「怖っ! 今の声はあのお姉さん?」
 アリスさんはキョロキョロとノゾノゾさんの姿を探しつつ訊ねる。残念ながらあの巨人さんは皆さんの観戦の邪魔にならないよう特設ブースに引っ込んでいて、今は観客席から見つける事はできない。
「はい。アローズの得点の度に聞いているのとは、ちょっと違うでしょ?」
「ええ。別人みたいですね……」
 このジャイアントお姉さんのアナウンス、自チームと相手チームでは得点した時の声色も違う。最初は観客のテンションへの影響を考えて意図的に変えて貰うようにお願いしていたが、今はノゾノゾさんもチームに愛着を持ってくれるようになっていて、自然とアローズゴールの時は楽しそうに、相手ゴールの時は不機嫌にアナウンスするようになっている。
 余談だが彼女のお気に入りの選手はシノメさんだ。こっそり聞いた時、
「アスリートらしくない普通のお嬢さんっぽさ、なのに意外と粘着質な守備をするところ……推せる!」
とそれこそギャップ萌えを含めて語っていた。
 ……分かる。俺にとってもシノメさんは密かな推しだ。普段は非常に優しい事務員さんでお世話になっている上に、キャラの濃い美女が多いアローズにおいて普通のお姉さんっぽさは逆に特徴的だ。そんな彼女としっぽり密着できる存在が羨ましい。
 ただ悲しいかな監督として、女性の集団を率いる統率者として贔屓はできない。ポジション的にも中盤の底で守備をするのがメインだし、どうしても出場停止や負傷選手の穴埋めや守備固めの投入になってしまう。
 故にノゾノゾさんが楽し気にシノメさんの名前を呼ぶ日は遠いだろう。しばらくは密かに推し話を聞いてあげるくらいしかできないか。
「あの、ちょっと難しい事を教えて貰って良いですか……?」
 他にも俺が話しを聞いてあげないといけない存在がいた。アリスさんだ。
「はい! 何でも聞いてください」
「おおう、優しい! あの、何で急に、こんな風になったんですか?」
 俺の返事を褒めた教師は、ピッチの方を指しながら言った。
「こんな風と言うのは具体的に言うと?」
「えと、5-1でまだ勝ってはいますけど、急に流れが悪くなって1点入れられちゃいましたよね?」
「はい」
 俺はその件について説明しようと口を開きかけたが、まだ続きがありそうなので黙った。
「それと、レイちゃんと気の強そうな……」
「リーシャさん?」
「そう、リーシャさん!」
 俺とアリスさんは前半にもあったやりとりを繰り返す。学校の先生って他者の名前を覚えるのが得意ではないのかな? 異世界では違うのかもしれない。
「そのリーシャさんが下がって、交代選手が2名入りましたよね? えっと、ぶりっことボン、キュ、ボン! が」
 ぶりっことボンキュボン? エオンさんとツンカさんか? 交代で入ったのって彼女たちしかいないよな?
「エオンさんとツンカさんですかね?」
 俺は追求は諦めて確認だけ行う。ぶりっことボンキュボンという言葉についてはまた別の機会に教えて貰おう。
「はい! それで確か……交代選手の役割は悪い流れを変える、下がった運動量を取り戻す、相手の反撃の芽を摘む、などと」
 アリスさんはメモを取り出し読み上げる。前半で交代選手の存在意義について軽くレクチャーしたのを書いていたのだ。ふざけている様で勉強熱心なエルフだな。
「ええ、その通りです。良くチェックしてますね!」
「えへへ」
 俺の褒め言葉に普段は褒める側の教師が鼻の下を擦った。いや実際にアリスさんは良い教え子だ。俺の弟子的存在の筆頭としてはナリンさんもいてかなり優秀だが、彼女はコーチなので既にサッカードウについてかなり詳しい存在で、アリスさんはほぼ知識ゼロの生徒。タイプが違うので教えるこちら側にも違った学びがある。
「えへへ、って言ってる場合じゃなかった! あの、今の状況ってどれにも当てはまらない様に見えます!」
 アリスさんは非常にこちらに気を遣いながら、だが勢いをつけて質問してきた。どうしても聞きたかった事を我慢できなかった様だ。
 いや、我慢できなかったというか、耳に痛い事でも時には口にしないといけない『教育者』のサガが出たというべきかもしれない。
「良い着眼点です。ただご自身も自覚されていると思いますが、順序が逆ですよね?」
「……はい」
 俺がそう言うと、アリスさんは唾を飲み込んでから頷いた。何故ならこれを認める事は選手交代をしたから流れが悪くなったと認識したのと同じ事であり、つまりは俺の采配がミスであると指摘するのと同じだからだ。 
 フランクなやりとりをしてきたとは言え初対面に近い相手に、しかもプロの監督に素人がそう告げるには勇気が必要だっただろう。
「選手交代をして相手に勢いを与えてしまった、それで失点してしまった、という面はあります」
 だがアリスさんは勇気を振り絞って言った。それは前述の通り、教師という生物の生き様のせいかもしれない。さっきは名前を覚えていない点で少し疑ったが、彼女はやはりちゃんとした先生だ。俺も俺できちんと答えなければ。
「もちろんこんな結果を期待していた訳ではありません。別の目論見があったんですよ」
 俺はベンチとの連絡用ボードに要点を書き込みならが、説明を始めた。
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