D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが

米俵猫太朗

文字の大きさ
526 / 700
第二十九章

走れグズども?

しおりを挟む
 音と同時にステフの懐から飛び出したのは小さなロケットだった。火花を散らして飛ぶ方ではなく、首飾りの一種で蓋があって何かがしまえる方の。
「わーっ、待てまて!」
 ダスクエルフは慌ててその装飾品を掴もうとする。何だ? 見られたら困る絵とか魔法の映像でも隠していたのか? と少し興味を持った俺の前でその蓋が開き、中から半透明の男が飛び出して2mくらいの大きさになって仁王立ちする。
『ぐおぉぉ!』
「あ、いて!」
 その男は伸ばされたステフの手を振り払い勇ましく吠えた。が、それだけにおさまらず、その太い腕を振り回して更にテーブルの小皿や椅子を弾き飛ばす!
「危ない、みんな下がって!」
 俺はなんとか冷静さを保ちつつ叫ぶ。既に同じテーブルにいたスワッグやノゾノゾさんは席を立ち避難している。むしろ何事かと近寄ってきた選手達――夕飯時なのでもちろんたくさんいる――が怪我をしないか心配しての事だ。
「ショーキチ殿も下がって!」
「何だいこれは!」
 ナリンさんとニャイアーコーチも側に駆け寄ってくる。そう、選手だけでなくコーチ陣もいるのだ。
「分かりません! ステフ、説明を……うわっ!」
 先ほどやりとりで尻餅をついた彼女へ近づこうとした俺は、しかし謎の男のパンチが飛んできたのでメイウェザーの様に肩で受け流しつつ一度、退いた。
「むむ!? 見たか? ニャリン?」
「ええ、ショーキチ殿、格好良いです!」
 前半はニャイアーコーチへ、後半は俺に向けてナリンさんが言う。そりゃどうも! タッキさんとの格闘技の練習が生きたな!
「そうじゃニャくて……」
「ショーキチもみんなも落ち着け! 近寄ったり何か飛ばしたりさえしなければこいつは無害だから!」
 そこでようやくステフが立ち上がり、皆へ向けて叫んだ。
「そうか! それでも念の為に皆は動かないで……ってあれ? もしかしてこれって?」
 俺は全員へ注意喚起をしつつも、ある事を思い出して問う。
「俺が発注した……」
「そう、『オリバー君』だ! 調整途中だけどな!」

 周辺に近づく敵を自動的に攻撃し主人を守る魔法生物、というものがしばしばファンタジー世界には存在する。なんちゃらガーディアンだったりゴーレムだったり。ステフがロケットに封じていたのはそんな存在で、しかもこれは最悪の場合、所持者が意識を失っていても敵意を感知したら自動的に機動するタイプのモノだった。
 そんな代物を彼女が持っていたのには訳がある。俺に持たせる為? 残念ながらそうではない。そりゃ確かに俺は誘拐と監禁の経験者ではあるが。俺はそれをちょっと改造して、次回のスタジアムイベントで使うつもりだったのだ。

「『キックターゲット』ですか?」
「ええ。地球ではゲームセンターでもできたりするんですが」
 数分後。何とかオリバー君を停止し荒れた食堂を――コック長のラビンさんに優しく叱られながら――直した俺たちは、スタジアム演出部にナリンさんニャイアーコーチを加えて改めてテーブルを囲んでいた。
「ゴールの中に10枚程度のボードを並べて、限られた時間や回数シュートして、打ち抜いた数を競うゲームです」
 俺の説明に併せてスワッグが資料を取り出しナリンさん達へ見せる。こちらはまだ鞄から出してなかったので無事だ。テル&ビッド関係の書類はオリバー君が暴れた際に滅茶苦茶になったけどな!
「ほほう、これは面白そうだね」
 資料を眺めつつニャイアーコーチが呟く。彼女から好印象を引き出せるとは珍しい。
「ええ。ただそのままだと簡単過ぎるので……」
「ゴール前に邪魔者を置く事にしたんだぴい!」
 スワッグがそう言いながら新たな資料を開く。そこにはパネルの置かれたゴールと、その前に仁王立ちになるさっきの半透明の男、オリバー君のイラストが書いてあった。
「元は護衛用のマジックガーディアンとそれを収めたロケットなんだけどな! 攻撃力を減らしてGKっぽい動きを覚えさせて、敵意の代わりに飛来物に反応するように調整している途中だったんだ」
 ステフは懐にしまっていたそれを取り出し、手元でしっかり握りながら言った。もともと彼女は触れるだけでマジックアイテムを停止する能力を持っている。しかしマジックガーディアンとそのロケットは機能上、停止し難い設定になっていたらしい。
「なるほど。それであの時のパンチがそれっぽい動きだったんだね」
 魔法剣士の説明を聞いてGKコーチが頷く。あれ? もしかしてさっきニャイアーコーチが感心したのって俺のディフェンスじゃなくてオリバー君の動きの方?
「キックターゲットにはそれぞれのチームから選手1名が出て、抽選で選ばれたお客様と組んで対決する予定なんです。お子さんが選ばれるかもしれないから、くれぐれもさっきみたいな事が起きないように上手く調整してくれよ?」
「分かってるって!」
 少し残念な気分になった俺は後半、やや八つ当たりっぽくステフに言った。ちなみにオリバー君の名はもちろん、ドイツの伝説的なGKオリバー・カーン選手リスペクトである。
 彼はGKで唯一W杯MVPを取った名選手ではあるが手抜きできない性格であり、小さな子供たちが出場したチャリティイベントでその子供達のシュートを全て止め泣かせてしまったという逸話がある。そっちの悲劇も再現してしまってはいけない。
「それは分かりましたが……。ステフさん、先ほどはなぜ誤作動したんですか? 何も飛んで無かったですよね?」
 ずっと資料を読んでいたナリンさんが顔を上げて演出部部長に問う。
「今回は無事に済みましたが、万が一でもお子さんに危害が加えられる可能性があるなら、使わない方が良いのでは?」
 そう続けられた言葉は彼女にしては厳しい声だった。だがナリンさんの性格的には看過できない事象なんだろう。優しいな。
「あーそれはだな……」
「たぶん、心配ないよ!」
 やや口ごもりながらも説明しようとしたステフに横入りして、ノゾノゾさんが口を開いた。
「え? ノゾノゾさん理由、分かるんですか?」
 ずっと黙っていた彼女が急に口を開くとは驚きだ。実の所、ナリンさんと同じく子供に危険があるならいっそ辞めようと思っていた俺は気になって聞いてみた。
「うん! だってさっきは明確に敵意とか……殺意が来てたもん」
「ええ? そんなのありましたっけ?」
 テーブルの皆は何か察したように天井を見上げたりしているが、俺だけ分からずノゾノゾさんは何かニコニコしている。仲間外れか!
「分かんない? じゃあ教えてあげる!」
 そう言うとノゾノゾさんは伸ばされたスワッグの羽根をすり抜け、俺を抱きしめて言った。
「恋人同士がするみたいな事を、しよっ!」

『『ビーッ! ビーッ!』』

 再び、聞き覚えのある警告音が鳴り響きオリバー君が飛び出してきて、また惨劇が繰り返される事となるのであった……。

第二十九章:完
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

俺の家に異世界ファンタジーガチャが来た結果→現実世界で最強に ~極大に増えていくスキルの数が膨大になったので現実世界で無双します~

仮実谷 望
ファンタジー
ガチャを廻したいからそんな理由で謎の異世界ガチャを買った主人公はガチャを廻して自分を鍛えて、最強に至る。現実世界で最強になった主人公は難事件やトラブルを解決する。敵の襲来から世界を守るたった一人の最強が誕生した。そしてガチャの真の仕組みに気付く主人公はさらに仲間と共に最強へと至る物語。ダンジョンに挑戦して仲間たちと共に最強へと至る道。 ガチャを廻しまくり次第に世界最強の人物になっていた。 ガチャ好きすぎて書いてしまった。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

処理中です...