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第三十六章
まだまだ娘をやりたいんです
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午前の練習、というか身体能力測定の指導を終えた俺は再びステフとエオンさんを連れてシソッ湖を渡った。しかし今度は船ではなくグリフォンで――エオンさんがスワッグに、俺とステフがスワッグのガールフレンドに乗る形で――である。
何せ今回の目的地は劇場ではなく王城で、フォーマルな格好もしていない。ディード号での移動を強硬に主張できる条件ではなかった。しかもエオンさんは家に寄って衣装を取ってくるという用事もある。
衣装? そう衣装である。今日の午後はアローズのOGさん達をモデルにしたア・クリスタルスタンド通称アクスタの撮影日であり、エオンさんは代表チームの先輩達が着て映える服装を何着か持ってきてくれるというのだ。
「男の俺が女性の服に口を出すのもどうかと思いますが、抑え目で!」
別れる直前、俺は勇気を振り絞り顔を上げエオンさんへそう叫んだ。エオンさんの副業はアイドルでありアイドルと言えば派手な色のフリフリの衣装である。それを年輩のお姉さん達に着せるのはエルフと言えども少々キツイ。
いやそのキツさが受ける界隈もあるにはあるが。戦車道の家元でありながら様々なコスプレをしている某お母さんとか。だがそんな憂き目にバートさん達を遭わせる訳にはいかない。
「分かってますよっ、プロデューサーさん!」
「俺も男受けの面からアドバイスするぴい!」
頭と身体の軽いコンビはそう返事して脇道? へ逸れて行った。極めて不安が残るが今の俺にはこれ以上そちらを心配する余裕は無かった。
「ステフ、安全に! 安全に降下してくれよ!」
「分かってるって! でもスワッグ以外のグリフォンに乗るのも久しぶりでなあ」
そんなステフの声を聞いて更に不安になりながら、俺たちは王城へ向けて降下して行った……。
「これどうかなショーキチさん?」
「うん、凄く良いと思いますよ」
「ねえ監督さん、このポーズ変えた方が良いかしら?」
「どうですかね? 十分、美人に撮れていると思いますけど」
1時間後。俺は王城内の特設スタジオでアローズOGのお姉さん達に囲まれ、ひたすらにコメントを求められていた。
「そろそろ次の衣装に変更された方が……」
カメラマン担当のエルフ女性がそんな声をかけにきたが一睨みされて、おずおずと下がっていく。カメラマンと言うのはもちろん言葉のあやで、実際は幻術系統の魔法を使う魔法使いさんだ。初代アクスタの頃からお世話になってる実力者だがこの集団相手では分が悪い様だ。
「ユニフォーム姿は今も昔も文句ナシっすね! 誰も甲乙つけがたいです。これは……自由選択衣装の勝負になるとみました!」
そこで俺は多少演技臭くも大げさに言い放った。
「そっか! じゃあ選んでくる!」
「ちょっと! 抜け駆けはナシだよっ!」
そんな俺の言葉を聞いたお姉さん達は素早く身を翻し、着替えを置いた控え室の方へ殺到する。その身のこなしは選手さながらだ。
「いや、みんな現役復帰できるんじゃないかな……」
この数時間で初めて本音を呟くと、カメラマンさんが苦笑いをしながら頭を下げた。お礼のつもりなのだろう、俺も会釈を返す。
「いやはやとんだワガママ娘たちぴい!」
「まあ『娘』って年齢でもないけどな!」
魔法端末に覆い被さって撮影画像のチェックをしていたスワッグとステフが、顔を上げてこちらへ言った。因みに撮影はカメラマンさんが手持ちの魔法手鏡で撮る、データが楽譜置きのついたオルガンの様な装置へ転送される、その装置の上で仮確認ができる、という流れである。
最終的にOKが出て本採用になった数枚は次にアクスタの工場に転送され、クリスタルを刻んだ無地のスタンドに投影され魔法で定着させられ商品となる訳だ。
初号、つまりアローズの現選手のこれを作成した時はモデルである彼女たちもまだアクスタがどういう物か分かっておらず、故に撮影も簡単だった。それが前述の流れで実際に商品となり多くの手に渡ってから、初めてどんな存在か気づいたくらいである。
しかし今日のOGたちは違う。彼女たちは現選手のアクスタが流通しているのを見ており、自分の姿を写したそれがファンの手元へ行くのを知っている。その出来不出来で売り上げが大きく異なるのも知っている。
エルフという存在は長い人生で様々なジャンルを研究するもので、元選手はみな今は別の業種だ。現役時代より身体が丸くなったお姉さんも多い。バートさんの様にアクスタの件を早めに知って身体を作ってきたちゃっかりさんもいるが、他のエルフは非常に不利な状態だ。
ならばポーズや衣装に拘って少しでも挽回しよう、見栄えを良くしようとするのも当然と言えるだろう。
「まあワガママ娘はこれからも娘だし」
スワッグとステフは俺以上にその辺の事情を知っている。釈迦に説法をしてもアレなので、俺はスワッグの好きなアイドルソングの歌詞で返事をした。案の定、グリフォンは嬉しそうに鼻を鳴らした。
「そう言えばよ! エオンの持ってきた衣装ってどんなのがあったんだ? 私も着れそうか?」
ステフがそんな相棒に問いかける。
「それこそアラビアンナイト風、メイド風、スカートの短い衛兵風もあったぴよ」
いやお前が着てどうするんだよ! とツッコム間も無くスワッグは素直に答えた。
「スカートの短い衛兵風? ……あ、地球で言うミニスカポリス的なアレか!」
俺は少し考えて、すぐに納得した。これはたぶんスワッグのチョイスだろう。女性ダンスグループがよくMVで着たりするし。そもそも男とはお堅い職業がエッチだったりするのが好きだし。
「ワシも衛兵風は好きじゃな。できれば帽子はしっかりと被って欲しい」
そんな不埒な事を考えていた俺に、意外な人物? が声をかけてきた。
何せ今回の目的地は劇場ではなく王城で、フォーマルな格好もしていない。ディード号での移動を強硬に主張できる条件ではなかった。しかもエオンさんは家に寄って衣装を取ってくるという用事もある。
衣装? そう衣装である。今日の午後はアローズのOGさん達をモデルにしたア・クリスタルスタンド通称アクスタの撮影日であり、エオンさんは代表チームの先輩達が着て映える服装を何着か持ってきてくれるというのだ。
「男の俺が女性の服に口を出すのもどうかと思いますが、抑え目で!」
別れる直前、俺は勇気を振り絞り顔を上げエオンさんへそう叫んだ。エオンさんの副業はアイドルでありアイドルと言えば派手な色のフリフリの衣装である。それを年輩のお姉さん達に着せるのはエルフと言えども少々キツイ。
いやそのキツさが受ける界隈もあるにはあるが。戦車道の家元でありながら様々なコスプレをしている某お母さんとか。だがそんな憂き目にバートさん達を遭わせる訳にはいかない。
「分かってますよっ、プロデューサーさん!」
「俺も男受けの面からアドバイスするぴい!」
頭と身体の軽いコンビはそう返事して脇道? へ逸れて行った。極めて不安が残るが今の俺にはこれ以上そちらを心配する余裕は無かった。
「ステフ、安全に! 安全に降下してくれよ!」
「分かってるって! でもスワッグ以外のグリフォンに乗るのも久しぶりでなあ」
そんなステフの声を聞いて更に不安になりながら、俺たちは王城へ向けて降下して行った……。
「これどうかなショーキチさん?」
「うん、凄く良いと思いますよ」
「ねえ監督さん、このポーズ変えた方が良いかしら?」
「どうですかね? 十分、美人に撮れていると思いますけど」
1時間後。俺は王城内の特設スタジオでアローズOGのお姉さん達に囲まれ、ひたすらにコメントを求められていた。
「そろそろ次の衣装に変更された方が……」
カメラマン担当のエルフ女性がそんな声をかけにきたが一睨みされて、おずおずと下がっていく。カメラマンと言うのはもちろん言葉のあやで、実際は幻術系統の魔法を使う魔法使いさんだ。初代アクスタの頃からお世話になってる実力者だがこの集団相手では分が悪い様だ。
「ユニフォーム姿は今も昔も文句ナシっすね! 誰も甲乙つけがたいです。これは……自由選択衣装の勝負になるとみました!」
そこで俺は多少演技臭くも大げさに言い放った。
「そっか! じゃあ選んでくる!」
「ちょっと! 抜け駆けはナシだよっ!」
そんな俺の言葉を聞いたお姉さん達は素早く身を翻し、着替えを置いた控え室の方へ殺到する。その身のこなしは選手さながらだ。
「いや、みんな現役復帰できるんじゃないかな……」
この数時間で初めて本音を呟くと、カメラマンさんが苦笑いをしながら頭を下げた。お礼のつもりなのだろう、俺も会釈を返す。
「いやはやとんだワガママ娘たちぴい!」
「まあ『娘』って年齢でもないけどな!」
魔法端末に覆い被さって撮影画像のチェックをしていたスワッグとステフが、顔を上げてこちらへ言った。因みに撮影はカメラマンさんが手持ちの魔法手鏡で撮る、データが楽譜置きのついたオルガンの様な装置へ転送される、その装置の上で仮確認ができる、という流れである。
最終的にOKが出て本採用になった数枚は次にアクスタの工場に転送され、クリスタルを刻んだ無地のスタンドに投影され魔法で定着させられ商品となる訳だ。
初号、つまりアローズの現選手のこれを作成した時はモデルである彼女たちもまだアクスタがどういう物か分かっておらず、故に撮影も簡単だった。それが前述の流れで実際に商品となり多くの手に渡ってから、初めてどんな存在か気づいたくらいである。
しかし今日のOGたちは違う。彼女たちは現選手のアクスタが流通しているのを見ており、自分の姿を写したそれがファンの手元へ行くのを知っている。その出来不出来で売り上げが大きく異なるのも知っている。
エルフという存在は長い人生で様々なジャンルを研究するもので、元選手はみな今は別の業種だ。現役時代より身体が丸くなったお姉さんも多い。バートさんの様にアクスタの件を早めに知って身体を作ってきたちゃっかりさんもいるが、他のエルフは非常に不利な状態だ。
ならばポーズや衣装に拘って少しでも挽回しよう、見栄えを良くしようとするのも当然と言えるだろう。
「まあワガママ娘はこれからも娘だし」
スワッグとステフは俺以上にその辺の事情を知っている。釈迦に説法をしてもアレなので、俺はスワッグの好きなアイドルソングの歌詞で返事をした。案の定、グリフォンは嬉しそうに鼻を鳴らした。
「そう言えばよ! エオンの持ってきた衣装ってどんなのがあったんだ? 私も着れそうか?」
ステフがそんな相棒に問いかける。
「それこそアラビアンナイト風、メイド風、スカートの短い衛兵風もあったぴよ」
いやお前が着てどうするんだよ! とツッコム間も無くスワッグは素直に答えた。
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俺は少し考えて、すぐに納得した。これはたぶんスワッグのチョイスだろう。女性ダンスグループがよくMVで着たりするし。そもそも男とはお堅い職業がエッチだったりするのが好きだし。
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