2 / 7
2
しおりを挟む
「……ごめんなさい。わ……別れてください」
静かで落ち着いたカフェに向かい合わせで座る私の決死の覚悟で出したその言葉に、私の前に座る恋人が歪んだ笑みを浮かべた。運良くとでも言うべきなのか下を向いていた私にはその笑みは見えなかったが、ブリザードが吹いていることくらい分かる。
寒いっ! 気温1~2度は下がったよね!?
答えを待つ美雨はブルブル震えるしかない。
「美雨。どうしてか理由を聞いてもいい? 嫌いになった?」
表向きうっとりするような秀麗な顔で何故か甘く囁く恋人に、私は心臓がバクバクしていた。
しかしそれは決してときめきなどではないことは、断言できた。
ここで嫌いになったと言おうものならどうなるか、想像力の乏しい美雨にも分かる。それは言ってはいけない言葉だ。
「嫌いにはなってないよ」
ただちょっと同性からの嫌がらせに疲れただけで。少しゆっくりしたい。
「ほんとに? なら良かった。繋がなくて済むね。」
繋ぐってどういう事だ。なにが良かったのか。この時の美雨には分からない。
本能的に安全そうな言葉を選んでいるだけだ。
あぁ、何で私はこんな人の告白を受け入れたのか。
意識のどこかでそんなふうに考えつつも、にじり寄ってくるとてもイケメンな恋人に冷や汗が背中に流れる。目が笑ってない! 告白された時はこんな男ではなかったはず。お前は誰だ、と言いたくなる。
「忠告しておくよ。美雨。僕の告白を受け入れたからには覚悟しておいてもらわないといけないからね」
にこにこと何も知らない女の子がいれば黄色い悲鳴でもあげそうなくらいに美しい微笑みを向ける恋人様。しかし美雨にはもうそれがケダモノの捕食前の微笑みとしか思えなかった。
「僕の事が、嫌いになった? 周りの同性が怖い? そんな理由で別れてなんてあげないからね。周りがうるさいなら結婚してしまおうか。別に美雨一人を養うくらいのお金ならあるし。」
どうしてそうなる!! 突っ込みたいがそんな場合ではない。結婚!? どこから出てきた!! 私は別れ話をしに来たはず……
「ねぇ……美雨。逃がしてあげないよ」
美しいお顔でそうのたまった恋人様に、逃げ道なんて与えられるはずもなく。追いかけ回されることになる。
それはもうトラウマになった。
ーーーー
背中にびっしょりとかいた汗に不快感を露わに顔を歪めたリィアデルは真っ青だった。
「な……なんて夢を見たのかしら……」
久方ぶりに見るその夢は、6歳の時に前世を思い出した内容とほぼ同じで『美雨』であった時の殺される数ヶ月前である。そもそも、あれが始まりだったように思う。
「なんでこんな夢を見たのか……想像出来るところが恐ろしい」
絶対に、昨夜の夜会での事だ。
アレが原因と言わずしてなんと言おう。
久々に恋人様に似た瞳を見てしまったからこんな夢を見たのだろう。
だが今世では、絶対に近寄らないし恋人にもならない。そもそもあの瞳の持ち主はこの国の第一王子殿下である。私のような平々凡々の女に興味など示すはずもない! 彼には王太子妃候補が何人かいたはずである。そう思い至ったリィアデルは、ホッと胸をなでおろしてべたついた寝間着を着替えることにした。
父から呼び出しを受けたのは、そのすぐ後だった。
静かで落ち着いたカフェに向かい合わせで座る私の決死の覚悟で出したその言葉に、私の前に座る恋人が歪んだ笑みを浮かべた。運良くとでも言うべきなのか下を向いていた私にはその笑みは見えなかったが、ブリザードが吹いていることくらい分かる。
寒いっ! 気温1~2度は下がったよね!?
答えを待つ美雨はブルブル震えるしかない。
「美雨。どうしてか理由を聞いてもいい? 嫌いになった?」
表向きうっとりするような秀麗な顔で何故か甘く囁く恋人に、私は心臓がバクバクしていた。
しかしそれは決してときめきなどではないことは、断言できた。
ここで嫌いになったと言おうものならどうなるか、想像力の乏しい美雨にも分かる。それは言ってはいけない言葉だ。
「嫌いにはなってないよ」
ただちょっと同性からの嫌がらせに疲れただけで。少しゆっくりしたい。
「ほんとに? なら良かった。繋がなくて済むね。」
繋ぐってどういう事だ。なにが良かったのか。この時の美雨には分からない。
本能的に安全そうな言葉を選んでいるだけだ。
あぁ、何で私はこんな人の告白を受け入れたのか。
意識のどこかでそんなふうに考えつつも、にじり寄ってくるとてもイケメンな恋人に冷や汗が背中に流れる。目が笑ってない! 告白された時はこんな男ではなかったはず。お前は誰だ、と言いたくなる。
「忠告しておくよ。美雨。僕の告白を受け入れたからには覚悟しておいてもらわないといけないからね」
にこにこと何も知らない女の子がいれば黄色い悲鳴でもあげそうなくらいに美しい微笑みを向ける恋人様。しかし美雨にはもうそれがケダモノの捕食前の微笑みとしか思えなかった。
「僕の事が、嫌いになった? 周りの同性が怖い? そんな理由で別れてなんてあげないからね。周りがうるさいなら結婚してしまおうか。別に美雨一人を養うくらいのお金ならあるし。」
どうしてそうなる!! 突っ込みたいがそんな場合ではない。結婚!? どこから出てきた!! 私は別れ話をしに来たはず……
「ねぇ……美雨。逃がしてあげないよ」
美しいお顔でそうのたまった恋人様に、逃げ道なんて与えられるはずもなく。追いかけ回されることになる。
それはもうトラウマになった。
ーーーー
背中にびっしょりとかいた汗に不快感を露わに顔を歪めたリィアデルは真っ青だった。
「な……なんて夢を見たのかしら……」
久方ぶりに見るその夢は、6歳の時に前世を思い出した内容とほぼ同じで『美雨』であった時の殺される数ヶ月前である。そもそも、あれが始まりだったように思う。
「なんでこんな夢を見たのか……想像出来るところが恐ろしい」
絶対に、昨夜の夜会での事だ。
アレが原因と言わずしてなんと言おう。
久々に恋人様に似た瞳を見てしまったからこんな夢を見たのだろう。
だが今世では、絶対に近寄らないし恋人にもならない。そもそもあの瞳の持ち主はこの国の第一王子殿下である。私のような平々凡々の女に興味など示すはずもない! 彼には王太子妃候補が何人かいたはずである。そう思い至ったリィアデルは、ホッと胸をなでおろしてべたついた寝間着を着替えることにした。
父から呼び出しを受けたのは、そのすぐ後だった。
0
あなたにおすすめの小説
《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。
ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」
その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。
やり直しの王太子、全力で逃げる
雨野千潤
恋愛
婚約者が男爵令嬢を酷く苛めたという理由で婚約破棄宣言の途中だった。
僕は、気が付けば十歳に戻っていた。
婚約前に全力で逃げるアルフレッドと全力で追いかけるグレン嬢。
果たしてその結末は…
冷たかった夫が別人のように豹変した
京佳
恋愛
常に無表情で表情を崩さない事で有名な公爵子息ジョゼフと政略結婚で結ばれた妻ケイティ。義務的に初夜を終わらせたジョゼフはその後ケイティに触れる事は無くなった。自分に無関心なジョゼフとの結婚生活に寂しさと不満を感じながらも簡単に離縁出来ないしがらみにケイティは全てを諦めていた。そんなある時、公爵家の裏庭に弱った雄猫が迷い込みケイティはその猫を保護して飼うことにした。
ざまぁ。ゆるゆる設定
9時から5時まで悪役令嬢
西野和歌
恋愛
「お前は動くとロクな事をしない、だからお前は悪役令嬢なのだ」
婚約者である第二王子リカルド殿下にそう言われた私は決意した。
ならば私は願い通りに動くのをやめよう。
学園に登校した朝九時から下校の夕方五時まで
昼休憩の一時間を除いて私は椅子から動く事を一切禁止した。
さあ望むとおりにして差し上げました。あとは王子の自由です。
どうぞ自らがヒロインだと名乗る彼女たちと仲良くして下さい。
卒業パーティーもご自身でおっしゃった通りに、彼女たちから選ぶといいですよ?
なのにどうして私を部屋から出そうとするんですか?
嫌です、私は初めて自分のためだけの自由の時間を手に入れたんです。
今まで通り、全てあなたの願い通りなのに何が不満なのか私は知りません。
冷めた伯爵令嬢と逆襲された王子の話。
☆別サイトにも掲載しています。
※感想より続編リクエストがありましたので、突貫工事並みですが、留学編を追加しました。
これにて完結です。沢山の皆さまに感謝致します。
新婚初夜に『白い結婚にしてほしい』と言われたので論理的に詰めたら夫が泣きました
ささい
恋愛
「愛人がいるから、白い結婚にしてほしい」
政略結婚の初夜にそう告げた夫ルーファス。
妻カレンの反応は——
「それ、契約不履行ですよね?」
「あなたの感情論、論理的に破綻してますよ?」
泣き落としは通じない。
そして初夜の翌朝、夫は泣いていた。
逃げ道は全部塞がれ、気づけば毎日論破されていた。
これは、論破され続けた夫がなぜか幸せになる話。
あぁ、憧れのドアマットヒロイン
緑谷めい
恋愛
バルサン伯爵家令嬢ヴィクトリアは、何を隠そう恋愛小説フリークである。
彼女はまだ10歳なのだが、年の離れた従姉の影響を受け、8歳の頃から恋愛小説漬けの日々を送ってきた。そのヴィクトリアが最近もっともハマっているのが【ドアマットからの溺愛】という流れのストーリーだ。ヒロインに感情移入しまくりながら読んでいるうちに、すっかり【憧れ】になってしまった。
※ 全10話完結予定
白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。
婚約破棄から~2年後~からのおめでとう
夏千冬
恋愛
第一王子アルバートに婚約破棄をされてから二年経ったある日、自分には前世があったのだと思い出したマルフィルは、己のわがままボディに絶句する。
それも王命により屋敷に軟禁状態。肉塊のニート令嬢だなんて絶対にいかん!
改心を決めたマルフィルは、手始めにダイエットをして今年行われるアルバートの生誕祝賀パーティーに出席することを目標にする。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる