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7話
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サツキサイド
メイタの返事がなくてゆっくり顔をあげるとメイタは眠っていた。
涙で頬を濡らしながら…
メイタごめんね。
「結婚してる」なんてくだらない嘘ついて…
でも、これで良かったんだよ。
私がキミのそばにいるとキミは大切な夢を諦めてしまうでしょ?
そんなのダメだもん…
だから…これで良かったの…
たった1週間、一緒にいただけじゃん。
私のことなんてすぐに忘れられるよ。
そう心の中で唱えながらその可愛いらしい頬を撫でて、微かに開くメイタの唇にそっと唇を押し当てた。
朝、目覚めるとメイタが新しいスーツケースを持ってきてくれた。
M「これ使って。俺は他のもあるから。」
S「でも…」
M「いいから…その壊れたのは俺が捨てておくから…」
メイタはそう言って緑色のスーツケースを私に渡して部屋から出て行った。
荷物を詰めながらもう、本当にメイタとお別れなんだなって思ったら涙が溢れてきて、荷物を詰め終えた時には目が真っ赤になっていた。
メイタに泣いた事がばれないようにメガネを付けて下に降りると、滞在中1度も降らなかった雨がザーザーと音を立てて降っていた。
M「雨降ってるのに船動いてるって…やっぱり港まで送る。」
S「いいから…傘もあるし。」
そう言って折りたたみの傘を見せるとメイタはため息をつく。
M「港は風が強いのにそんな傘意味ないよ?」
S「大丈夫だよ。」
M「大丈夫なわけないだろ!!」
メイタの大きな声で私は思わずビクッと身体を震わせる。
M「…はぁ…ごめん…笑って見送ろうと思ったけどやっぱ無理だわ…外寒いし、とりあえず撥水加工のコート持ってくるから待ってて。」
メイタはそう言って自分の部屋に入って行った。
私の心も悲鳴をあげ、身体が震え始める。
辛かった恋を忘れるために来たはずの小豆島なのに…
こんなにも強く惹かれる人と出会うなんて…
なんで私はあの時あんな嘘ついちゃったんだろう…
初めて会った日に些細なプライドからついてしまったくだらない嘘を私は心から悔やんだ。
メイタが部屋から出てきて私は頬を濡らす涙を慌てて拭う。
メイタは無言のまま、私に撥水加工されたコートを着せ、大きい袖先を折り込み前ボタンを閉めていく。
M「これ俺のだから少し大きいだろうけど無いよりマシだから着てて…服も濡れないし。」
S「ありがとう…」
M「電話番号は…俺からは聞かない…でももし、万が一…旦那さんと喧嘩して…もう辛くて寂しくてどうしようもないって時は…連絡して…すぐにサツキさんのとこへ飛んでいくから…」
メイタはそう言ってあの日、海で撮った私のシルエットの写真の裏に自分の電話番号を書き私に渡した。
私はそれを受け取り、メイタにギュッと抱きついた。
S「ありがとう…」
M「ありがとうより…愛してるが聞きたかったな…」
メイタはそう言って私をギュッと抱きしめた。
玄関の扉を開ければ、耳が痛くなるほどの雨音が響く。
メイタは傘もささずに雨でずぶ濡れになりながらぼんやりと見つめて私を見送り…
私は振り返ることなくメイタの元から去った。
震えながら堪えきれず溢れた泣き声はこの雨音が全てかき消してくれた。
そして、私は…
涙と共に小豆島を離れた。
東京に着き曇った空を見上げて思う。
これで良かったんだよな…
メイタがくれたスーツケースに微かにメイタの匂いがするコート。
私は重い足取りでマンションへと帰った。
懐かしく感じるエントランスを通り、自分の部屋の階に着きエレベーターから降りるとそこには見覚えのある姿があった。
S「タイチさん…」
私を捨てて他の女の所へ行ったはずのタイチさんがだらしなく廊下座り込んでいた。
S「何やってんの…」
T「サツキのこと…ずっと待ってた…」
S「今さらなに…私のこと捨てたくせに…」
T「ごめん…あの時の俺はどうかしてた…なぁサツキ…」
S「……」
T「俺達…やり直そ?」
タイチさんはそう言ってあの大きな身体で私のことを包み込んだ。
つづく
メイタの返事がなくてゆっくり顔をあげるとメイタは眠っていた。
涙で頬を濡らしながら…
メイタごめんね。
「結婚してる」なんてくだらない嘘ついて…
でも、これで良かったんだよ。
私がキミのそばにいるとキミは大切な夢を諦めてしまうでしょ?
そんなのダメだもん…
だから…これで良かったの…
たった1週間、一緒にいただけじゃん。
私のことなんてすぐに忘れられるよ。
そう心の中で唱えながらその可愛いらしい頬を撫でて、微かに開くメイタの唇にそっと唇を押し当てた。
朝、目覚めるとメイタが新しいスーツケースを持ってきてくれた。
M「これ使って。俺は他のもあるから。」
S「でも…」
M「いいから…その壊れたのは俺が捨てておくから…」
メイタはそう言って緑色のスーツケースを私に渡して部屋から出て行った。
荷物を詰めながらもう、本当にメイタとお別れなんだなって思ったら涙が溢れてきて、荷物を詰め終えた時には目が真っ赤になっていた。
メイタに泣いた事がばれないようにメガネを付けて下に降りると、滞在中1度も降らなかった雨がザーザーと音を立てて降っていた。
M「雨降ってるのに船動いてるって…やっぱり港まで送る。」
S「いいから…傘もあるし。」
そう言って折りたたみの傘を見せるとメイタはため息をつく。
M「港は風が強いのにそんな傘意味ないよ?」
S「大丈夫だよ。」
M「大丈夫なわけないだろ!!」
メイタの大きな声で私は思わずビクッと身体を震わせる。
M「…はぁ…ごめん…笑って見送ろうと思ったけどやっぱ無理だわ…外寒いし、とりあえず撥水加工のコート持ってくるから待ってて。」
メイタはそう言って自分の部屋に入って行った。
私の心も悲鳴をあげ、身体が震え始める。
辛かった恋を忘れるために来たはずの小豆島なのに…
こんなにも強く惹かれる人と出会うなんて…
なんで私はあの時あんな嘘ついちゃったんだろう…
初めて会った日に些細なプライドからついてしまったくだらない嘘を私は心から悔やんだ。
メイタが部屋から出てきて私は頬を濡らす涙を慌てて拭う。
メイタは無言のまま、私に撥水加工されたコートを着せ、大きい袖先を折り込み前ボタンを閉めていく。
M「これ俺のだから少し大きいだろうけど無いよりマシだから着てて…服も濡れないし。」
S「ありがとう…」
M「電話番号は…俺からは聞かない…でももし、万が一…旦那さんと喧嘩して…もう辛くて寂しくてどうしようもないって時は…連絡して…すぐにサツキさんのとこへ飛んでいくから…」
メイタはそう言ってあの日、海で撮った私のシルエットの写真の裏に自分の電話番号を書き私に渡した。
私はそれを受け取り、メイタにギュッと抱きついた。
S「ありがとう…」
M「ありがとうより…愛してるが聞きたかったな…」
メイタはそう言って私をギュッと抱きしめた。
玄関の扉を開ければ、耳が痛くなるほどの雨音が響く。
メイタは傘もささずに雨でずぶ濡れになりながらぼんやりと見つめて私を見送り…
私は振り返ることなくメイタの元から去った。
震えながら堪えきれず溢れた泣き声はこの雨音が全てかき消してくれた。
そして、私は…
涙と共に小豆島を離れた。
東京に着き曇った空を見上げて思う。
これで良かったんだよな…
メイタがくれたスーツケースに微かにメイタの匂いがするコート。
私は重い足取りでマンションへと帰った。
懐かしく感じるエントランスを通り、自分の部屋の階に着きエレベーターから降りるとそこには見覚えのある姿があった。
S「タイチさん…」
私を捨てて他の女の所へ行ったはずのタイチさんがだらしなく廊下座り込んでいた。
S「何やってんの…」
T「サツキのこと…ずっと待ってた…」
S「今さらなに…私のこと捨てたくせに…」
T「ごめん…あの時の俺はどうかしてた…なぁサツキ…」
S「……」
T「俺達…やり直そ?」
タイチさんはそう言ってあの大きな身体で私のことを包み込んだ。
つづく
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