7 / 14
7話
しおりを挟む
サツキサイド
メイタの返事がなくてゆっくり顔をあげるとメイタは眠っていた。
涙で頬を濡らしながら…
メイタごめんね。
「結婚してる」なんてくだらない嘘ついて…
でも、これで良かったんだよ。
私がキミのそばにいるとキミは大切な夢を諦めてしまうでしょ?
そんなのダメだもん…
だから…これで良かったの…
たった1週間、一緒にいただけじゃん。
私のことなんてすぐに忘れられるよ。
そう心の中で唱えながらその可愛いらしい頬を撫でて、微かに開くメイタの唇にそっと唇を押し当てた。
朝、目覚めるとメイタが新しいスーツケースを持ってきてくれた。
M「これ使って。俺は他のもあるから。」
S「でも…」
M「いいから…その壊れたのは俺が捨てておくから…」
メイタはそう言って緑色のスーツケースを私に渡して部屋から出て行った。
荷物を詰めながらもう、本当にメイタとお別れなんだなって思ったら涙が溢れてきて、荷物を詰め終えた時には目が真っ赤になっていた。
メイタに泣いた事がばれないようにメガネを付けて下に降りると、滞在中1度も降らなかった雨がザーザーと音を立てて降っていた。
M「雨降ってるのに船動いてるって…やっぱり港まで送る。」
S「いいから…傘もあるし。」
そう言って折りたたみの傘を見せるとメイタはため息をつく。
M「港は風が強いのにそんな傘意味ないよ?」
S「大丈夫だよ。」
M「大丈夫なわけないだろ!!」
メイタの大きな声で私は思わずビクッと身体を震わせる。
M「…はぁ…ごめん…笑って見送ろうと思ったけどやっぱ無理だわ…外寒いし、とりあえず撥水加工のコート持ってくるから待ってて。」
メイタはそう言って自分の部屋に入って行った。
私の心も悲鳴をあげ、身体が震え始める。
辛かった恋を忘れるために来たはずの小豆島なのに…
こんなにも強く惹かれる人と出会うなんて…
なんで私はあの時あんな嘘ついちゃったんだろう…
初めて会った日に些細なプライドからついてしまったくだらない嘘を私は心から悔やんだ。
メイタが部屋から出てきて私は頬を濡らす涙を慌てて拭う。
メイタは無言のまま、私に撥水加工されたコートを着せ、大きい袖先を折り込み前ボタンを閉めていく。
M「これ俺のだから少し大きいだろうけど無いよりマシだから着てて…服も濡れないし。」
S「ありがとう…」
M「電話番号は…俺からは聞かない…でももし、万が一…旦那さんと喧嘩して…もう辛くて寂しくてどうしようもないって時は…連絡して…すぐにサツキさんのとこへ飛んでいくから…」
メイタはそう言ってあの日、海で撮った私のシルエットの写真の裏に自分の電話番号を書き私に渡した。
私はそれを受け取り、メイタにギュッと抱きついた。
S「ありがとう…」
M「ありがとうより…愛してるが聞きたかったな…」
メイタはそう言って私をギュッと抱きしめた。
玄関の扉を開ければ、耳が痛くなるほどの雨音が響く。
メイタは傘もささずに雨でずぶ濡れになりながらぼんやりと見つめて私を見送り…
私は振り返ることなくメイタの元から去った。
震えながら堪えきれず溢れた泣き声はこの雨音が全てかき消してくれた。
そして、私は…
涙と共に小豆島を離れた。
東京に着き曇った空を見上げて思う。
これで良かったんだよな…
メイタがくれたスーツケースに微かにメイタの匂いがするコート。
私は重い足取りでマンションへと帰った。
懐かしく感じるエントランスを通り、自分の部屋の階に着きエレベーターから降りるとそこには見覚えのある姿があった。
S「タイチさん…」
私を捨てて他の女の所へ行ったはずのタイチさんがだらしなく廊下座り込んでいた。
S「何やってんの…」
T「サツキのこと…ずっと待ってた…」
S「今さらなに…私のこと捨てたくせに…」
T「ごめん…あの時の俺はどうかしてた…なぁサツキ…」
S「……」
T「俺達…やり直そ?」
タイチさんはそう言ってあの大きな身体で私のことを包み込んだ。
つづく
メイタの返事がなくてゆっくり顔をあげるとメイタは眠っていた。
涙で頬を濡らしながら…
メイタごめんね。
「結婚してる」なんてくだらない嘘ついて…
でも、これで良かったんだよ。
私がキミのそばにいるとキミは大切な夢を諦めてしまうでしょ?
そんなのダメだもん…
だから…これで良かったの…
たった1週間、一緒にいただけじゃん。
私のことなんてすぐに忘れられるよ。
そう心の中で唱えながらその可愛いらしい頬を撫でて、微かに開くメイタの唇にそっと唇を押し当てた。
朝、目覚めるとメイタが新しいスーツケースを持ってきてくれた。
M「これ使って。俺は他のもあるから。」
S「でも…」
M「いいから…その壊れたのは俺が捨てておくから…」
メイタはそう言って緑色のスーツケースを私に渡して部屋から出て行った。
荷物を詰めながらもう、本当にメイタとお別れなんだなって思ったら涙が溢れてきて、荷物を詰め終えた時には目が真っ赤になっていた。
メイタに泣いた事がばれないようにメガネを付けて下に降りると、滞在中1度も降らなかった雨がザーザーと音を立てて降っていた。
M「雨降ってるのに船動いてるって…やっぱり港まで送る。」
S「いいから…傘もあるし。」
そう言って折りたたみの傘を見せるとメイタはため息をつく。
M「港は風が強いのにそんな傘意味ないよ?」
S「大丈夫だよ。」
M「大丈夫なわけないだろ!!」
メイタの大きな声で私は思わずビクッと身体を震わせる。
M「…はぁ…ごめん…笑って見送ろうと思ったけどやっぱ無理だわ…外寒いし、とりあえず撥水加工のコート持ってくるから待ってて。」
メイタはそう言って自分の部屋に入って行った。
私の心も悲鳴をあげ、身体が震え始める。
辛かった恋を忘れるために来たはずの小豆島なのに…
こんなにも強く惹かれる人と出会うなんて…
なんで私はあの時あんな嘘ついちゃったんだろう…
初めて会った日に些細なプライドからついてしまったくだらない嘘を私は心から悔やんだ。
メイタが部屋から出てきて私は頬を濡らす涙を慌てて拭う。
メイタは無言のまま、私に撥水加工されたコートを着せ、大きい袖先を折り込み前ボタンを閉めていく。
M「これ俺のだから少し大きいだろうけど無いよりマシだから着てて…服も濡れないし。」
S「ありがとう…」
M「電話番号は…俺からは聞かない…でももし、万が一…旦那さんと喧嘩して…もう辛くて寂しくてどうしようもないって時は…連絡して…すぐにサツキさんのとこへ飛んでいくから…」
メイタはそう言ってあの日、海で撮った私のシルエットの写真の裏に自分の電話番号を書き私に渡した。
私はそれを受け取り、メイタにギュッと抱きついた。
S「ありがとう…」
M「ありがとうより…愛してるが聞きたかったな…」
メイタはそう言って私をギュッと抱きしめた。
玄関の扉を開ければ、耳が痛くなるほどの雨音が響く。
メイタは傘もささずに雨でずぶ濡れになりながらぼんやりと見つめて私を見送り…
私は振り返ることなくメイタの元から去った。
震えながら堪えきれず溢れた泣き声はこの雨音が全てかき消してくれた。
そして、私は…
涙と共に小豆島を離れた。
東京に着き曇った空を見上げて思う。
これで良かったんだよな…
メイタがくれたスーツケースに微かにメイタの匂いがするコート。
私は重い足取りでマンションへと帰った。
懐かしく感じるエントランスを通り、自分の部屋の階に着きエレベーターから降りるとそこには見覚えのある姿があった。
S「タイチさん…」
私を捨てて他の女の所へ行ったはずのタイチさんがだらしなく廊下座り込んでいた。
S「何やってんの…」
T「サツキのこと…ずっと待ってた…」
S「今さらなに…私のこと捨てたくせに…」
T「ごめん…あの時の俺はどうかしてた…なぁサツキ…」
S「……」
T「俺達…やり直そ?」
タイチさんはそう言ってあの大きな身体で私のことを包み込んだ。
つづく
0
あなたにおすすめの小説
壊れていく音を聞きながら
夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。
妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪
何気ない日常のひと幕が、
思いもよらない“ひび”を生んでいく。
母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。
誰も気づきがないまま、
家族のかたちが静かに崩れていく――。
壊れていく音を聞きながら、
それでも誰かを思うことはできるのか。
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
すべてはあなたの為だった~狂愛~
矢野りと
恋愛
膨大な魔力を有する魔術師アレクサンダーは政略結婚で娶った妻をいつしか愛するようになっていた。だが三年経っても子に恵まれない夫妻に周りは離縁するようにと圧力を掛けてくる。
愛しているのは君だけ…。
大切なのも君だけ…。
『何があってもどんなことをしても君だけは離さない』
※設定はゆるいです。
※お話が合わないときは、そっと閉じてくださいませ。
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
偽りの愛の終焉〜サレ妻アイナの冷徹な断罪〜
紅葉山参
恋愛
貧しいけれど、愛と笑顔に満ちた生活。それが、私(アイナ)が夫と築き上げた全てだと思っていた。築40年のボロアパートの一室。安いスーパーの食材。それでも、あの人の「愛してる」の言葉一つで、アイナは満たされていた。
しかし、些細な変化が、穏やかな日々にヒビを入れる。
私の配偶者の帰宅時間が遅くなった。仕事のメールだと誤魔化す、頻繁に確認されるスマートフォン。その違和感の正体が、アイナのすぐそばにいた。
近所に住むシンママのユリエ。彼女の愛らしい笑顔の裏に、私の全てを奪う魔女の顔が隠されていた。夫とユリエの、不貞の証拠を握ったアイナの心は、凍てつく怒りに支配される。
泣き崩れるだけの弱々しい妻は、もういない。
私は、彼と彼女が築いた「偽りの愛」を、社会的な地獄へと突き落とす、冷徹な復讐を誓う。一歩ずつ、緻密に、二人からすべてを奪い尽くす、断罪の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる