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第二話
次の日
明日から世間は連休ということで、休みに入る前に新しい職場へと挨拶をしに行く事になっている私は少し早めに家を出た。
新生活への大切な第一歩となる今日。
一瞬、昨日の事が頭に過ったが朝からマイナスな事は考えたくないと思い、自身のご機嫌を取るように鼻歌混じりにエレベーターに乗った。
すると…
また、マンションの出入りに出ると昨日の夜にも感じた不気味で嫌な感じが全身にまとわりつく。
なんなのよ…この感覚…
そう思いながら勢いよく後ろを振り返ると微かに人影が見え、私はハッとし慌てて駅へと走り出す。
怖くて後ろを振り返ることは出来ないが、付いてくる足音で誰かが私を追っているんだということは分かった。
早く…人の多い駅に行かなきゃ…
また、あの頃の嫌な思い出が頭の中をよぎり、夢中で走っていると次第に周りには出勤する為の人が増えはじめ、私が恐る恐る後ろを振り返るとそこには怪しい人物はいなかった。
神経質になりすぎている私の勘違いなのだろうか?
いや、勘違いならばそれはそれでいいのだが…
そう思いながら電車に乗り私は会社に向かった。
私の務めることになっている会社は某有名芸能事務所。
私は元々、この事務所でアイドルを目指して所属していた練習生だった。
自分で言うのも恥ずかしいが、まだデビュー前の練習生だというのに私は何故か人気が出てしまい、それをきっかけとしてストーカー被害が絶えず、まだ幼かった私は精神的に疲れてしまい、結局、それが原因でアイドルという夢を諦め地元へと帰った。
それから数年後、たまたま地元で祖父のいちご農家を手伝っていた私の所に当時、私が所属していてお世話になった事務所社長が遊びに来てくれた。
そして、社長はこう言った。
「もし、心の傷が癒えたのならウチの芸能事務所に入社しないか?アイドル育成の講師として練習生達にコトハの持っている才能を勉強させて欲しい。練習生達の刺激になり才能を引き出してやってくれないか?」
と…
正直、東京にトラウマがある私にとってすごく悩んだが、同じ育成講師として練習生時代に親友だったジョウもいるという事で、私は一大決心をし地元から東京にやってきたのだ。
しかし来て早々、怖い目に遭うなんてやっぱり都会は恐ろしいなと思いながら事務所に入ると、後ろから勢いよく肩を抱かれ私は息が止まるほど驚いた。
K「ひっぃ!!」
恐る恐る振り返るとそこにいたのはジョウだった。
J「よ!久しぶり!親友!」
私はジョウの顔を見てホッと胸を撫で下ろす。
K「びっくりしたッ!もう驚かせないで!」
J「どうした?出勤初日から顔色悪いけど?」
ジョウはそう言いながら私のほっぺをぷにぷにとつまみ心配そうに顔を覗き込む。
K「うん…………」
J「なんだよ?」
K「実は朝、マンションから出たときから誰かにつけられたような気がしてさ…」
J「早速!!!?」
ジョウがそう言うのも無理はない。
私は今まで数え切れないほど怖い経験を山ほどしてきたから。
芸能事務所に入る前の地元で生活してる時でさえも、幼稚園生の私は変なおじさんに連れ去られそうになったり、小学校の頃たまたま忘れ物をした私が教室に取りに戻ると、私のお道具箱に入れていたリコーダーを担任が私の机に座って舐めていた。
中校生になり夏休みに東京へ旅行に行った時にスカウトされ、私は憧れでもあったアイドルを目指して上京し、芸能事務所の練習生となった。
しかし、少しでも油断をすれば練習生の仲間や周りにいる悪い大人にセクハラを受け、ファンやストーカー達により日常的に付き纏われ、はっきり言ってそんじゃそこらのスターより人気はあったと思うし、隙を見せれば連れ去られそうになる日々だった。
そして、私は決定的なあの出来事により心を閉ざしてしまい地元に帰ったが、ようやく心に出来た傷が落ち着き瘡蓋も治り始め、また新たな人生を送れると思い東京に来た矢先…またこれだもん。
そりゃ、練習生の時に間近で色々見て私を守ってくれていたジョウが早速!?と叫ぶ気持ちも十分分かる。
何故なら私も今、全く同じ気持ちだから。
J「と…とりあえず今日は事務所の挨拶周りだろ?時間もないし行くか。」
K「うん…そうだね…」
練習生の育成講師だというのにキラキラオーラやポジティブオーラを失ってしまった私は、げっそりとした顔のまま事務所のスタッフ関係者や練習生達への挨拶周りを忙しくこなした。
K「つかれた……」
J「おつかれおつかれ!!」
久しぶりに沢山の人と会い会話をして愛想笑いをした私は顔の筋肉も体の筋肉も脱力してしまいだら~とソファに座るのがやっと。
J「練習生には姿勢良く座れって注意していく立場の人間がこれじゃ先が心配だな……」
K「朝怖い思いしたんだから…今日だけ許して…」
J「はいはい。で?コトハ、今日は初日だからもう終わりだろ?帰り大丈夫か?俺も一緒に…って言いたいとこだけど練習生のレッスン残ってるから。」
K「だ…大丈夫だよ。私だってもう大人だよ!?今朝はちょっとびっくりしただけ!!大丈夫!!」
J「ならいいけど…気をつけなよ。初日からこれだも練習生のボディーガードの前にコトハのボディーガードが必要かもね。」
ジョウはそう言って私を揶揄うように頭をぽんぽんと撫でると、レッスンへと向かい私は帰宅するために恐る恐る事務所を出た。
つづく
明日から世間は連休ということで、休みに入る前に新しい職場へと挨拶をしに行く事になっている私は少し早めに家を出た。
新生活への大切な第一歩となる今日。
一瞬、昨日の事が頭に過ったが朝からマイナスな事は考えたくないと思い、自身のご機嫌を取るように鼻歌混じりにエレベーターに乗った。
すると…
また、マンションの出入りに出ると昨日の夜にも感じた不気味で嫌な感じが全身にまとわりつく。
なんなのよ…この感覚…
そう思いながら勢いよく後ろを振り返ると微かに人影が見え、私はハッとし慌てて駅へと走り出す。
怖くて後ろを振り返ることは出来ないが、付いてくる足音で誰かが私を追っているんだということは分かった。
早く…人の多い駅に行かなきゃ…
また、あの頃の嫌な思い出が頭の中をよぎり、夢中で走っていると次第に周りには出勤する為の人が増えはじめ、私が恐る恐る後ろを振り返るとそこには怪しい人物はいなかった。
神経質になりすぎている私の勘違いなのだろうか?
いや、勘違いならばそれはそれでいいのだが…
そう思いながら電車に乗り私は会社に向かった。
私の務めることになっている会社は某有名芸能事務所。
私は元々、この事務所でアイドルを目指して所属していた練習生だった。
自分で言うのも恥ずかしいが、まだデビュー前の練習生だというのに私は何故か人気が出てしまい、それをきっかけとしてストーカー被害が絶えず、まだ幼かった私は精神的に疲れてしまい、結局、それが原因でアイドルという夢を諦め地元へと帰った。
それから数年後、たまたま地元で祖父のいちご農家を手伝っていた私の所に当時、私が所属していてお世話になった事務所社長が遊びに来てくれた。
そして、社長はこう言った。
「もし、心の傷が癒えたのならウチの芸能事務所に入社しないか?アイドル育成の講師として練習生達にコトハの持っている才能を勉強させて欲しい。練習生達の刺激になり才能を引き出してやってくれないか?」
と…
正直、東京にトラウマがある私にとってすごく悩んだが、同じ育成講師として練習生時代に親友だったジョウもいるという事で、私は一大決心をし地元から東京にやってきたのだ。
しかし来て早々、怖い目に遭うなんてやっぱり都会は恐ろしいなと思いながら事務所に入ると、後ろから勢いよく肩を抱かれ私は息が止まるほど驚いた。
K「ひっぃ!!」
恐る恐る振り返るとそこにいたのはジョウだった。
J「よ!久しぶり!親友!」
私はジョウの顔を見てホッと胸を撫で下ろす。
K「びっくりしたッ!もう驚かせないで!」
J「どうした?出勤初日から顔色悪いけど?」
ジョウはそう言いながら私のほっぺをぷにぷにとつまみ心配そうに顔を覗き込む。
K「うん…………」
J「なんだよ?」
K「実は朝、マンションから出たときから誰かにつけられたような気がしてさ…」
J「早速!!!?」
ジョウがそう言うのも無理はない。
私は今まで数え切れないほど怖い経験を山ほどしてきたから。
芸能事務所に入る前の地元で生活してる時でさえも、幼稚園生の私は変なおじさんに連れ去られそうになったり、小学校の頃たまたま忘れ物をした私が教室に取りに戻ると、私のお道具箱に入れていたリコーダーを担任が私の机に座って舐めていた。
中校生になり夏休みに東京へ旅行に行った時にスカウトされ、私は憧れでもあったアイドルを目指して上京し、芸能事務所の練習生となった。
しかし、少しでも油断をすれば練習生の仲間や周りにいる悪い大人にセクハラを受け、ファンやストーカー達により日常的に付き纏われ、はっきり言ってそんじゃそこらのスターより人気はあったと思うし、隙を見せれば連れ去られそうになる日々だった。
そして、私は決定的なあの出来事により心を閉ざしてしまい地元に帰ったが、ようやく心に出来た傷が落ち着き瘡蓋も治り始め、また新たな人生を送れると思い東京に来た矢先…またこれだもん。
そりゃ、練習生の時に間近で色々見て私を守ってくれていたジョウが早速!?と叫ぶ気持ちも十分分かる。
何故なら私も今、全く同じ気持ちだから。
J「と…とりあえず今日は事務所の挨拶周りだろ?時間もないし行くか。」
K「うん…そうだね…」
練習生の育成講師だというのにキラキラオーラやポジティブオーラを失ってしまった私は、げっそりとした顔のまま事務所のスタッフ関係者や練習生達への挨拶周りを忙しくこなした。
K「つかれた……」
J「おつかれおつかれ!!」
久しぶりに沢山の人と会い会話をして愛想笑いをした私は顔の筋肉も体の筋肉も脱力してしまいだら~とソファに座るのがやっと。
J「練習生には姿勢良く座れって注意していく立場の人間がこれじゃ先が心配だな……」
K「朝怖い思いしたんだから…今日だけ許して…」
J「はいはい。で?コトハ、今日は初日だからもう終わりだろ?帰り大丈夫か?俺も一緒に…って言いたいとこだけど練習生のレッスン残ってるから。」
K「だ…大丈夫だよ。私だってもう大人だよ!?今朝はちょっとびっくりしただけ!!大丈夫!!」
J「ならいいけど…気をつけなよ。初日からこれだも練習生のボディーガードの前にコトハのボディーガードが必要かもね。」
ジョウはそう言って私を揶揄うように頭をぽんぽんと撫でると、レッスンへと向かい私は帰宅するために恐る恐る事務所を出た。
つづく
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