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2章
答え合わせ
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話を聞き、たどり着いた部屋のドアをノックし、すぐに開けた。
ドアが開いているのは、知っていた。
待っていると、言われたから。
「......どんな気の変わりようをしたんですか」
「勘違いしないでください。協力しに来たわけではないです、アミリアさん」
アミリアさんの部屋。そこでは一人、アミリアさんが儀式の魔法陣――――リザレクションの用意をしていた。
その様子から、俺が来ようと来なかろうと、今晩その魔法を練習に発動するつもりだったんだろう。
その少し疑うような目線をしてくる彼女の目を見て、そう推測した俺は本題に入る。
「今来たのは、答え合わせをしようと、思ったからです」
「答え合わせ?」
そしてすぐに、それが何を指しているのかを察したようで、アミリアさんが一歩後ろに下がる。
だが、俺は止めずにその答え合わせをする。
彼女の望まないことで自分の望むままに行動している今は、正直言ってあまりよろしい状況ではない。
だが、彼女の抱えている問題は、これからの敵を見据える上でとても必要な情報。つまり教会のためだ。
埋め合わせならいくらでもする――――リザレクション以外なら。
と自分自身に言い訳をして、言葉を続ける。
「はい。アミリアさん、内通者の人が誰か、予想がついたからです」
「......」
しかし、口を固く閉ざしている。
答える気は、ないようだ。
ので、俺から一方的に確認をした。
「内通者、あの案内していた女性ですよね」
「......」
口を閉ざしたまま。それは沈黙。しかしそれはこの場において肯定と同義だった。
俺がその推測にたどり着いたのにはいくつか理由があったりする。だが、その条件に当てはまる人物を俺は一人しか知らない、と言うだけで、俺の知らない人が条件に当てはまっている可能性は十分にあった。
だが、俺に言えないというあたりから、ある程度の自信をもって話している。
その受付の女性が近づいてもおかしくないほどに、親しい存在であったこと。
こっちに戻ってきてから、その姿が見えていなかったこと。
俺がその人と言われて認識できるというほどに、ある程度の交流があったこと。
彼女が攫われるまでの俺のこの国での滞在時間は三日。
そのほとんどが試練の時間だった。
そしてそのごく一部の俺の意識のあった時間であったのは思いだす限り、最初に出会った女性、そして意識が戻ってから食堂でおばちゃん、聖女様。そして式も、その最初に出会った女性。そして式で教皇様、大聖女様。そして攫われてから総隊長ぐらい。
そして一件の後、顔を見ていないのは最初の女性と食堂のおばちゃんくらいだ。
そして食堂のおばちゃんに関しては、アミリアさんは俺が関わっているということを知らない。
つまり、俺の知る中では、という前提上では、条件一致はその人しかなかったわけだ。
もちろん、俺が忘れている可能性も最近のドジのせいでないとは言い切れない。
もしかしたら今あげた人たちの中に犯人がいたかもしれない。
つまり半分くらいは博打だった。
「アミリアさん、どうして言わなかったんですか――――」
「やっぱり、わかっちゃうんですね」
アミリアさんは俺の問いに答えることなく、呟くように、思い通りにならないことに少しの苛立ちを覚えているような声色で。
その様子から、本当に隠し通すつもりだったことが伺える。
「あれから姿は、見てないんですか」
「そうですね、教会に帰ってきてからは。どこかで服を着て隠れているんじゃないですか?」
追うことが出来ればもしかしたら、なんて思ったが、いくら親しいとはいえ流石に一個人の動向は知らないだろう。
俺もそこまで情報があると、そしてあっても教えてくれるという期待はしていなかった。
その後も、いくつか質問をする。
そして、いくつか聞きたいことを聞いた後、メインの質問に入る。
「敵はどこだと、思っていますか」
アミリアさん本人に関わってくる問題を問う。
彼女はもう親しかった人が内通者だとばれてしまったからか、先ほどに比べれば推測などを言ってくれるようになっていた。
からこそ、この質問を投げかけた。
俺は一応推測こそしたものの、情報が少なすぎて推測の域を出ることが出来ていない。
だからこそ攫われた経験者に聞いたわけだが......どうも残念なことに、アミリアさんも同じ考えを持っていたようだ。
それも、俺と違って確信に近い形で。
「そうですね。裏にいるのは――――十中八九、創造神教でしょう」
ドアが開いているのは、知っていた。
待っていると、言われたから。
「......どんな気の変わりようをしたんですか」
「勘違いしないでください。協力しに来たわけではないです、アミリアさん」
アミリアさんの部屋。そこでは一人、アミリアさんが儀式の魔法陣――――リザレクションの用意をしていた。
その様子から、俺が来ようと来なかろうと、今晩その魔法を練習に発動するつもりだったんだろう。
その少し疑うような目線をしてくる彼女の目を見て、そう推測した俺は本題に入る。
「今来たのは、答え合わせをしようと、思ったからです」
「答え合わせ?」
そしてすぐに、それが何を指しているのかを察したようで、アミリアさんが一歩後ろに下がる。
だが、俺は止めずにその答え合わせをする。
彼女の望まないことで自分の望むままに行動している今は、正直言ってあまりよろしい状況ではない。
だが、彼女の抱えている問題は、これからの敵を見据える上でとても必要な情報。つまり教会のためだ。
埋め合わせならいくらでもする――――リザレクション以外なら。
と自分自身に言い訳をして、言葉を続ける。
「はい。アミリアさん、内通者の人が誰か、予想がついたからです」
「......」
しかし、口を固く閉ざしている。
答える気は、ないようだ。
ので、俺から一方的に確認をした。
「内通者、あの案内していた女性ですよね」
「......」
口を閉ざしたまま。それは沈黙。しかしそれはこの場において肯定と同義だった。
俺がその推測にたどり着いたのにはいくつか理由があったりする。だが、その条件に当てはまる人物を俺は一人しか知らない、と言うだけで、俺の知らない人が条件に当てはまっている可能性は十分にあった。
だが、俺に言えないというあたりから、ある程度の自信をもって話している。
その受付の女性が近づいてもおかしくないほどに、親しい存在であったこと。
こっちに戻ってきてから、その姿が見えていなかったこと。
俺がその人と言われて認識できるというほどに、ある程度の交流があったこと。
彼女が攫われるまでの俺のこの国での滞在時間は三日。
そのほとんどが試練の時間だった。
そしてそのごく一部の俺の意識のあった時間であったのは思いだす限り、最初に出会った女性、そして意識が戻ってから食堂でおばちゃん、聖女様。そして式も、その最初に出会った女性。そして式で教皇様、大聖女様。そして攫われてから総隊長ぐらい。
そして一件の後、顔を見ていないのは最初の女性と食堂のおばちゃんくらいだ。
そして食堂のおばちゃんに関しては、アミリアさんは俺が関わっているということを知らない。
つまり、俺の知る中では、という前提上では、条件一致はその人しかなかったわけだ。
もちろん、俺が忘れている可能性も最近のドジのせいでないとは言い切れない。
もしかしたら今あげた人たちの中に犯人がいたかもしれない。
つまり半分くらいは博打だった。
「アミリアさん、どうして言わなかったんですか――――」
「やっぱり、わかっちゃうんですね」
アミリアさんは俺の問いに答えることなく、呟くように、思い通りにならないことに少しの苛立ちを覚えているような声色で。
その様子から、本当に隠し通すつもりだったことが伺える。
「あれから姿は、見てないんですか」
「そうですね、教会に帰ってきてからは。どこかで服を着て隠れているんじゃないですか?」
追うことが出来ればもしかしたら、なんて思ったが、いくら親しいとはいえ流石に一個人の動向は知らないだろう。
俺もそこまで情報があると、そしてあっても教えてくれるという期待はしていなかった。
その後も、いくつか質問をする。
そして、いくつか聞きたいことを聞いた後、メインの質問に入る。
「敵はどこだと、思っていますか」
アミリアさん本人に関わってくる問題を問う。
彼女はもう親しかった人が内通者だとばれてしまったからか、先ほどに比べれば推測などを言ってくれるようになっていた。
からこそ、この質問を投げかけた。
俺は一応推測こそしたものの、情報が少なすぎて推測の域を出ることが出来ていない。
だからこそ攫われた経験者に聞いたわけだが......どうも残念なことに、アミリアさんも同じ考えを持っていたようだ。
それも、俺と違って確信に近い形で。
「そうですね。裏にいるのは――――十中八九、創造神教でしょう」
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