魔力極振りの迷宮探索

大山 たろう

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五章 星王会議

進化と鬱憤晴らし

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 日曜日。今日は何も予定がないので傲慢の大迷宮へと向かう。

 そこで分体ドッペルゲンガーと合流すると、一度一人に戻る。

 と、戻ったところで声が響いた。

 ・分体ドッペルゲンガーがレベル10になりました

 ・スキルポイント100でスキル進化が可能です

 ・進化しますか?

 スキルレベルが10になるとスキルが進化するとは聞いていたが、こいつは単体でスキルポイント100も食うのか......魅力的なのは間違いないが、この消費量は簡単に決められない。

 とりあえず保留して迷宮の門をくぐった。

 レベルも上がり、深くまで潜っても大丈夫そうだったので、俺はさらに深くへと潜っていった。

 この領域は上級探索者がパーティーを組んで攻略しているレベルで、三次職が、しかもソロで潜る場所ではない。
 とはいっても、俺のステータスではここが効率がいいし、装備だって手に入る。

 一発受けると漏れなくお釈迦なのはもはやどこでも同じなので、気にせず潜る。

 ちらほらとパーティーを見つける。向こうは俺のことを見るなり、戦闘態勢をとるが、俺が攻撃してこないことを見ると、すぐ武器を収めた。おそらく#狂化_バーサーク__#の噂が広がっているのだろう。

 俺も手を挙げると、安心したのかこっちへと歩いてきた。

「お前、ソロか?ここはいくら#狂化_バーサーク__#を持っていても死ぬぞ」

 リーダーと思われる片手剣使いが気を使ってくれたようだ。

「お構いなく。これでもある程度は行けますから」

 そういうと、向こうも余裕がないのだろう。俺たちを無視して別方向へと探索をしていった。

 さて、俺も行くか。

 そう思って、彼らとは別方向へと足を進める。

 一歩、また一歩と警戒しながら進んでいたのだが、警戒が足りなかったらしい。

 足元が光る。これは転移トラップだ!

 よけようにもよけきれず、俺は光に飲み込まれていった。


 転移が終了する。そこは大部屋だった。
 中央に鎮座するのは......ギリシア神話に出てくる怪物。双頭の犬、オルトロスだった。


 オルトロスかどうかは正確には鑑定がないため確認のしようがないが、この特徴を見るにそう呼ぶに値する怪物であることは間違いない。

 俺はすぐさま拳銃を取り出し、膨大な総魔力の一割ほどを込めて右側の頭に魔弾を撃つ。

 これで耐えられるようであればもはや俺には勝機はない。

 しかし不安を拭うようにして、右側の頭は肉片となった。


「もう片方をつぶせば終わりか、案外あっけなかったな。」
 そういってもう片方に拳銃の銃口を向けた、その時。

 左側の頭が、魔力をまとい始める。
 俺はファイアブレスとかの遠距離高火力の攻撃を警戒して一度下がる。

 しかし、その魔力は俺に向けられたものではなく、もう片方の頭に向けられたものだった。

「アォォォォォオオオオオン!」

 その叫びとともに、片方の頭が再生......いや、復活しているといったほうが正しそうだ。

 振り出しに戻った盤面。俺の魔力はすでに四割弱。

 魔力を魔眼で見るも、オルトロスの魔力は減った気配がない。これがスキルならば、俺が一方的に窮地に立たされてしまう。

 何か手は、ないものだろうか......


 ――――――――――いや、あるじゃないか、可能性!


 俺はステータスを呼び出すと、分体ドッペルゲンガーの進化を実行した。

 一気にスキルポイントが減って、スキルの進化が完了したことを告げられる。

 ・分体ドッペルゲンガー双子座ジェミニへと進化しました

 ・条件達成を確認。魔力値共有、思考伝達を獲得。

 ・条件達成を確認。自我を獲得。仮面ロックを解除します。

 その声と同時に現れたのは、仮面を外した分体ドッペルゲンガー......いや、俺が立っていた。

 能力の考察はあとにしよう。
 とりあえず、こいつを倒そう。

 突如敵が増えたオルトロスは混乱しているらしい。

 俺と俺が銃を構える。

 二人が同時に引き金を引く。

 二人で一割ずつ込めた魔弾が、同時にオルトロスの頭を一つずつはじけ飛ばす。

 そこに残ったのは、霧になりかけている頭を失った犬の体と、先に霧となった頭部だけだった。

「かった......か......」

「おう、勝ったぞ」

 そう声をかけてきたのは、俺だった......正確には、スキル双子座ジェミニによって生まれた俺のコピーとでもいうべきなのだろうが、自我を持った俺を俺はスキルと割り切れるのだろうか。

「まぁ、俺はスキルによってできた生物だっていう自覚がどこかあるんだよ、だからそこまで気にすんな、まぁ死なないように魔力は使わせてもらうがな」

「まぁ、そりゃそうだよな」

 俺からそういわれて俺が落ち着くという謎状況となっている間に、オルトロスは一つの魔石へと変わっていた。



 翌日。今日は月曜日なので、とりあえず学校だ。

 自転車に乗り、学校へと向かおうとするところで、携帯から通知音が鳴る。

 メールが一通届いていた。差出人は......不明だ。メールアドレスも書かれていない。

 仕方がないので内容を見る。

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 藍染 拓海 様

 あなたは栄えある王道十二星への進化を見事成し遂げられました。

 よって次回の星王会議への参加権が与えられます。

 もし参加される場合は、土曜8:00に顔を隠すものなどをご着用の上、下記の場所に止まっている車へとコードネーム 双子座ジェミニ と名乗ってください
 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 とのことだった。何処でその情報をつかんだのかは知らないが、そこに行ったほうが百階層に近づける気がする。
 一応会長に予知でもしてもらおうかな......いや待てよ。

 会長がこの王道十二星とかだとしたら。もし、会長がそこのメンバーだったら。

 俺がスキル進化をしたことだってわかる。来るかどうかもわかる。もし、と文面には書いてはいるが来るのがわかっているかのような説明の速さだ。

 これはほぼ確定だろう。どこかの席に会長は座っている。

 ならば相談するだけ無駄だろう。
 きっと俺も拒否する理由がないとかで参加するまでが運命なのだろう。

 そう思い、遅刻しないよう早めに家を出たのに結局遅刻すれすれになってしまった時計を見て、俺は自転車をフルにこぐ。



「お、拓海、今日はいつもよりも遅いな、何かあったのか?」

「拓海ぃ、おはよぉ」

 勘の鋭い徹と今日はいつもの喋り方に加えてあくびも加わってさらにのんびりしている司。

「まぁ、ちょっとね......」

 そういって、話をはぐらかす。
 ふたりも話す気がないと分かってから、俺に問い詰めるのをやめた。

 っと、そういえば天ノ川はどうなったんだろ、俺たちがばったり会ってしまった日、幻術が解けるまでは確認していたが......

 と思い、彼の席を見る。するとそこには机に向かって何やら怨念のようなものを吐き続けている彼の姿が。

 目元には隈ができ、髪もぼさぼさだ。相当あれているようだが......そんなに飯塚さんに振られたのが酷だったのか?

「おい、天ノ川、大丈夫か?」

 そう俺が勇気を出して聞いてみるも返事がない。さすがにただの屍ってわけではなさそうだが。未だに呪詛を吐き続けているし。

 ってか、呪詛何言ってんだ?

 俺は少し耳を近づけ、感覚強化を使用した。

 小声で言っている声に集中する。

「..............さん」

 お、やっと聞こえてきた。

「三人組飯塚さんをたぶらかして幻術までかけやがって許さん三人組飯塚さんを......」

 な、どうやらこいつのヘイトはすべて三人組へと向いているようだ。しかも幻術をかけたやつには特に怒っている。本当に、人に幻術をかけるとはロクな奴じゃなさそうだ。

「どうだった?」

 そう小声で聞いてきたのは飯塚さん。

「三人組が飯塚さんをたぶらかして、しかも幻術までされて、許さん、って怒ってるみたいな感じだったよ?」

 そう、知らないふりをして答えた。

「幻術って、なんなの? そんなに怖いものなの?」

 そう、無垢な心を装って飯塚さんに聞いてみる。

「幻術ってのは、光属性と闇属性、二つのものがあると言われているわ。光が光学的なものに作用して幻を見せる、いわゆるホログラムみたいな感じなの。それで闇魔法は人の精神に働きかけて、見えていると錯覚させるの。どっちも魔法陣で展開できないから、使い手も少ないのよ。」

「で天ノ川君は極光の勇者、光は自身の独壇場だし、闇も抵抗力が強いの。そのうえ勇者自体が幻術にかかりにくい能力を持っているの。でも、天ノ川君はかかってしまった。なぜでしょう?」

「幻術の使い手のほうが上手だった!」

「おおむねそれで正解。彼の精神が不安定なところに漬け込んだっていうと人聞きが悪いけど、そのすきを狙って、闇魔法を力ずくで通したのよ。それでも少し、錯覚する程度だったはずなんだけど、そこに追い打ちで光属性の幻術も展開されて、混乱していた彼はあえなく幻を見せられたってところね。」

 と、懇切丁寧に、みんなに聞こえるように説明した。みんなは天ノ川を見るなり鼻で笑ったり、失望の視線を送ったりした後に、興味を失ったのか別の話を各所で始めだした。

 と、そこで勇者のトリマキがやってきた。

「ねぇ、あの三人組、誰なのよ! あなたの知り合いなんでしょう?」

 と問い詰めてきた。しかし飯塚さんは取り付く島もなく、

「あなたたちより強いって先に言ってたでしょう?」

 そう言って、席へと戻っていった。

 彼女は、席に座った後、彼に恥をかかせられて鬱憤が晴れたという顔をしていた。俺も鬱憤晴らしに参加できてとても楽しかった。
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