魔力極振りの迷宮探索

大山 たろう

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七章 試練

迷宮へと向かう道もまた試練

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「何処へ行くの、拓海」


 紗耶香は、もう一度俺に問う。

「通達。聞こえたのか?」

「うん。私も聞こえてるってことは、たぶん全探索者が聞こえてると思うよ。それで、さっきの。拓海だよね?」

 きっと彼女は聞かなくてもわかっているのだろう。

「そうだよ。だから、俺は向かわないといけないんだ」

「向かうって、どこへ?」

 そうか。二つ目の力の継承のことはきっと俺にしか聞こえてなかったのだろう。それは好都合と言うべきなのか、それとも紗耶香との衝突を避けられないと落ち込むべきなのか。ともかく、俺の心は二つの選択に迷わされた。

 ここで紗耶香に情報をすべて渡すか、それとも言わずに行くか。

 このまま言いなりで戻るつもりはない。しかし、情報をそもそも話せるかは疑問だ。

 あの時は、会長に話そうとしてペナルティを食らったからな。

 しかし、言わないというのは彼女との関係性に亀裂を入れるのは間違いないだろう。

「うん、まぁ.....ちょっと。」

「ちょっとで装備全部身に着けないよね」

「まぁ、待っててくれ、少し行って来るだけだ」

「そう行ったまま帰ってこなかったって話がいくつあると思ってるの? とりあえず今日は安静にしてて。」

「まぁ、そういわずに」

「何度言ったらわかってくれるのよ!」

 彼女の心が限界を迎え、爆発する。

「もう、嫌なの。好きな人を失いたくないの。ずっと一緒にいたいだけなの。迷宮から離れたら、失うことなんてないの。だから、お願いだからここで待っててよ!」

 そう、叫ぶ。
 しかし、できない。

「俺だってそうさ。彼女を失いたいわけじゃない。もう立派な生きる理由になってる。けどさ。もう、迷宮ができる前の世界にはどうやっても戻らないんだ。だから力がないと彼女すら守れない、目の前で失うのを見るだけだ。だから頼む。行かせてくれ。今日じゃなくてもいい。今日は休むから、迷宮に行かせてくれ」

 俺は装備を脱いで紗耶香にそう言った。紗耶香はその言葉を聞いて、納得はしていない不安感と、今日はもう大丈夫という安心感の綯い交ぜになった表情だった。

「とりあえず今日は休んでて」

「わかったよ」

 俺は装備を置いて、部屋へと戻るのだった。

「負けた......」

 俺は後悔していた。
 元より俺は今日ごり押して迷宮へと潜って、百階層を目指すつもりだった。
 しかし、俺は実を言うと万全の状態とは言えないし、休んでおくのは悪くない......のか?

 とりあえず双子座ジェミニに見つからないよう窓から迷宮へと向かってもらった。

 彼も俺の見た内容を知っているようで、俺を見るなりため息をついて去っていった。

 ガララッ

 紗耶香が俺の部屋に入ってくる。

 もう双子座ジェミニが出ていったあとでよかった。
 これなら紗耶香にも、俺にも得のある一日になりそうだ。

 紗耶香の願いもかない、取り合えず笑顔になると思っていたのだが、まだ曇った顔のままだ。

「ねぇ、私たちのこと、姉に話した?」

「いや、話してないけど.......どうしてそこで会長さんが?」

「い、いや、話してないならいいのよ。は、話したらぶっ飛ばすからね!」

「ぶっ飛ばすって......」

 思わず顔がにやけているのが自分でもわかる。急いで顔を戻そうとするも、なかなか戻らない。どうしてもこらえた顔になって、隠しきれている自信がない。

「今、ぶっ飛ばすって言ったことで笑ってるんでしょ」

「黙秘権を行使します」

 すっと冷たい目を向けられたのですぐににやけも収まった。

 俺は少し怠い体を休めるためにも、ベッドに横になるのだった。


 翌日。というよりは深夜零時のためまだ同じ日という感覚が強いが、体もさっぱりしたし、約束も一日休む、だったのでさっさと窓から飛び降りて迷宮へと向かった。
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