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帰り間際の会話
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「よぉ、柚希がすまないな」
「いや、気にするな。 柚希ちゃんには色々救われたから」
「へぇ…、顔合わせは初めてなのによくやるなぁ」
「もう、兄様ったら…!」
黒塗りの高級車を引っ提げて、柚希ちゃんを迎えに和人とおじさんがやって来た。
和人が申し訳なさそうに謝ったが、気にしないでくれと返した。 実際に彼女のおかげで失恋によるショックから救ってくれたのだから。 リビングで話をしたときも会話が不思議と弾んだしな。
そして、何よりも可愛いしな。
「こんばんわ。 真人君」
「おじさん、こんばんわ。 父がいつもお世話になっております」
「畏まらなくていいよ。 君は和人の友人なのだから。 しかし、息子から聞いたが災難だったね」
「ええ、今までの時間が無駄になったような感じさえしましたから。 ですが、娘の柚希ちゃんに少し救われました」
「ほぉ…、柚希が君の心を救うとは流石だなぁ」
そして、おじさんの方にも挨拶をしてお話をした。
和人と柚希ちゃんの父親であるこの人は、父さんが働いている会社の社長かつ、グループの代表取締役を兼任している。 父が抱える事情も知っており俺にもよくしてくれている。
「静香君も娘といつも仲よくしてくれてありがとう。 これからも仲良くしてくれるかな?」
「は、はいっ!」
「ははは、そんなに緊張しないでほしいな」
今度は静香に話しかけるおじさん。 まぁ、柚希ちゃんと友達だしな。
それでも、おじさんの前だと相変わらず緊張するのな…静香の奴。
「さて、それでは帰ろうか」
一通り話をしたのだろう。 おじさんに促され、車の方に向かう和人たち。
その時、不意に柚希ちゃんがこちらに振り向くと、俺に向けてこう言った。
「また、遊んだりお話しましょうね。 真人お兄ちゃん」
「ああ…。 また遊ぼうな」
「ふむ、初めての顔合わせでここまで仲が深まったか。 良きかな良きかな」
笑顔を向ける柚希ちゃんに応える俺を見て、おじさんは興味深そうに見る。
いや、そんなにマジマジと見ないでくださいよ。
「真人…」
そして、和人が俺に耳打ちをして話し出した。
「柚希には、話したのか? お前の事を…」
「まぁ、今の家族の事と父が一度離婚している事とかは話したがな」
「流石にその理由は話せていないままか。 まぁ、今の柚希には話すのには億劫だろうしな…」
言い忘れていたが、和人とは実は小学生の高学年からの友達なのだ。 故に俺の抱える深い事情も知っているし、おじさんも同様で、俺の事情を知っている。
柚希ちゃんに打ち明けなかった離婚の理由は、俺のトラウマに関わる事だから下手に言うと思い出してしまい柚希ちゃんに当たる可能性もある。 なので話していない。
「まぁ、お前の心が落ち着いたら話してやってくれ。 じゃあ明日学校でな」
「ああ、お疲れさん」
「静香ちゃん、真人お兄ちゃん、またねっ」
そう言って、和人や柚希ちゃんはおじさんについていく形で車に乗った。
黒塗りの高級車が自宅から去っていくのを俺達はそのまま見送った。
こうして、失恋から始まった長い一日が幕を閉じた…。
「いや、気にするな。 柚希ちゃんには色々救われたから」
「へぇ…、顔合わせは初めてなのによくやるなぁ」
「もう、兄様ったら…!」
黒塗りの高級車を引っ提げて、柚希ちゃんを迎えに和人とおじさんがやって来た。
和人が申し訳なさそうに謝ったが、気にしないでくれと返した。 実際に彼女のおかげで失恋によるショックから救ってくれたのだから。 リビングで話をしたときも会話が不思議と弾んだしな。
そして、何よりも可愛いしな。
「こんばんわ。 真人君」
「おじさん、こんばんわ。 父がいつもお世話になっております」
「畏まらなくていいよ。 君は和人の友人なのだから。 しかし、息子から聞いたが災難だったね」
「ええ、今までの時間が無駄になったような感じさえしましたから。 ですが、娘の柚希ちゃんに少し救われました」
「ほぉ…、柚希が君の心を救うとは流石だなぁ」
そして、おじさんの方にも挨拶をしてお話をした。
和人と柚希ちゃんの父親であるこの人は、父さんが働いている会社の社長かつ、グループの代表取締役を兼任している。 父が抱える事情も知っており俺にもよくしてくれている。
「静香君も娘といつも仲よくしてくれてありがとう。 これからも仲良くしてくれるかな?」
「は、はいっ!」
「ははは、そんなに緊張しないでほしいな」
今度は静香に話しかけるおじさん。 まぁ、柚希ちゃんと友達だしな。
それでも、おじさんの前だと相変わらず緊張するのな…静香の奴。
「さて、それでは帰ろうか」
一通り話をしたのだろう。 おじさんに促され、車の方に向かう和人たち。
その時、不意に柚希ちゃんがこちらに振り向くと、俺に向けてこう言った。
「また、遊んだりお話しましょうね。 真人お兄ちゃん」
「ああ…。 また遊ぼうな」
「ふむ、初めての顔合わせでここまで仲が深まったか。 良きかな良きかな」
笑顔を向ける柚希ちゃんに応える俺を見て、おじさんは興味深そうに見る。
いや、そんなにマジマジと見ないでくださいよ。
「真人…」
そして、和人が俺に耳打ちをして話し出した。
「柚希には、話したのか? お前の事を…」
「まぁ、今の家族の事と父が一度離婚している事とかは話したがな」
「流石にその理由は話せていないままか。 まぁ、今の柚希には話すのには億劫だろうしな…」
言い忘れていたが、和人とは実は小学生の高学年からの友達なのだ。 故に俺の抱える深い事情も知っているし、おじさんも同様で、俺の事情を知っている。
柚希ちゃんに打ち明けなかった離婚の理由は、俺のトラウマに関わる事だから下手に言うと思い出してしまい柚希ちゃんに当たる可能性もある。 なので話していない。
「まぁ、お前の心が落ち着いたら話してやってくれ。 じゃあ明日学校でな」
「ああ、お疲れさん」
「静香ちゃん、真人お兄ちゃん、またねっ」
そう言って、和人や柚希ちゃんはおじさんについていく形で車に乗った。
黒塗りの高級車が自宅から去っていくのを俺達はそのまま見送った。
こうして、失恋から始まった長い一日が幕を閉じた…。
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