鬼神の刃──かつて世を震撼させた殺人鬼は、スキルが全ての世界で『無能者』へと転生させられるが、前世の記憶を使ってスキル無しで無双する──

ノリオ

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【第六章】新生・魔王軍

【第四十三話】ニーニャ ③

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「具合はどうだ…………?俺も人のことは言えないが、ずっと篭りっぱなしみたいじゃないか」

「え…………と…………」


ニーニャは上手く言葉が出てこなかった。

恭司から投げかけられた言葉が、あまりにも"普通"だったからだ。

とてもじゃないが、ニーニャをここまで追い詰めた"元凶"の態度じゃない。


「"身体的"には…………特に問題はない…………ニャ、です」

「ハハッ!!別に敬語もいらないさ。俺が魔王になる前からの付き合いだろう…………?頼むから楽にしてくれ」


恭司はそう言って笑った。

どこまでも"普通"だ。

反省して殊勝な態度をとるわけでもなく────。

逆に高圧的な態度で押し込もうとするでもなく────。

ただただ"普通"の会話をするかのような態度を取っている。

ニーニャはそんな恭司を見て、訝しげに首を傾げるしかなかった。

恭司が直接ここに来たこともそうだが、この態度と言い謎の気遣いと言い…………とりあえず不気味なほどよく分からない展開なのだ。

"あの時"とは大違い────。

ニーニャは惑わされないようにブンブンと首を横に振って意識を切り替えながら、思ったことをそのまま尋ねてみることにする。


「何故…………私にディーグレア様を殺させたニャ?」


ニーニャはすぐに確信をついた。

変な問答をされる前に、先にペースを掴むためだ。

それに…………

心が塞ぎ込んでしまった"心情的"な理由など、恭司も既に分かっていることだろう。

そんな"分かりきった"ことを、今さら長々と話す必要もない。


「"何故"…………か…………。フハハ…………ッ!!それはとても…………すごくシンプルで、"当たり前"の話だよ、ニーニャ」

「あ、当たり前…………?」


ニーニャは首を傾げた。

不穏な空気だ。

恭司から禍々しいオーラが溢れ出し、部屋を覆うが如く充満していく。


「俺はこれから魔王として、お前たち魔族を導く立場にある…………。その矢先に、前魔王に軍の"和"を乱されたりしたら面倒なんだ。それに…………お互い自分より弱い相手に屈服なんて出来ない性分でもあったからな。そりゃあ戦うさ」

「じ、じゃあ…………ッ!!何でわざわざディーグレア様を復活させたりなんてしたニャッ!?しかも、それを私に殺させるなんて…………ッ!!そんな酷い話が…………ッ!!」

「"でも"…………"従った"ろう?ニーニャ」

「…………ッ!!」


恭司の放つ禍々しさが、さらにその純度を増した。

濃密ながらも暗くて黒くて…………怖気のする暗黒の瘴気だ。

人の放つオーラじゃない。


「本当に嫌なら断れただろう…………?お前の味方をしていたドライダスやナターシャたちと一緒に、俺と戦えば良かったじゃないか…………。"選ばなかった"のは…………お前だよ、ニーニャ」

「で、でも…………ッ!!あ、あの時は他の皆にも犠牲が……ッ!!」

「それの何が悪いッ!!!!」

「…………ッ!!!!」


恭司の恫喝で、場がシン────と静まった。

ピリピリと痛いくらいに空気が硬くなり、背中がゾクゾクと寒気を発する。

まるで殺意と瘴気のオンパレードだ。

恭司は眉間にシワを寄せつつ、続けて言葉を紡ぐ。


「お前たち魔族の掟は何だ…………?『弱肉強食』だろう…………?ディーグレアだって、その掟そのものを否定などしていなかったじゃないか…………。それはお前たち魔族にとって、この世の"摂理"そのものだったはずだ。そんな掟がある中、ただ居合わせた"弱い者"が犠牲になる"程度"のことが…………一体お前にとって、何だったという…………?」

「そ、それは……」

「そもそも…………仮にあの『決闘』が何の"不正"もなく行われたのであれば、俺だってお前に"あんなこと"はさせなかったさ。あの"不正"によって、俺たちの『決闘』は無茶苦茶になった。そういう意味では、俺の方が被害者なのかもなァ」

「ふ、"不正"って……」

「"不正"だろう…………?間違いなく"不正"そのものだったじゃないか。あの時お前は…………うっかり"間違えそう"になっていたんだよ、ニーニャ。『決闘』の"タブー"を犯したディーグレアを庇い、あまつさえそれをドライダスたちにまで"強制"させようとした…………。とてもじゃないが、許せない話だ。俺は、その間違いを"そそぐ"ための機会を提供しただけだよ。純粋なる"善意"さ。もちろん…………一緒にいたドライダスたちにだって分かってもらえる話さ。なァ、そうだろう?ドライダス…………ッ!!」

「う…………ッ!!」


突然恭司に話を振られて、ドライダスは言葉に詰まった。

一応ニーニャの説得の場面に立ち会おうと、この場に同席していたのだ。

今では盛大に後悔している。


「た、確かに…………ディーグレアはあの時、"禁忌"を犯した…………。我らに"強制"…………というのは流石に言い過ぎだと思うが…………ニーニャがあそこでディーグレアを庇ったのは、まぁ…………掟に反していた…………の、かもしれん……」

「ドライダス……」


ニーニャは愕然とした。

ドライダスは味方だと思っていたのだ。

恭司はそこで、さらに畳み掛ける。
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