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【第七章】シベリザード連合国
【第五十四話】リズベット ②
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「こ、こんなのもう…………どうしたら……」
ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!
「…………ッ!!」
その時────。
この場一帯にとても大きな破裂音が鳴り響いた。
ネシャスが倒れたことで、『天の裁き』に供給されていた力も尽きたのだ。
元々3体のブレスに押し負けていたこともあり、こうなることも最初から時間の問題でしかなかったのだろう。
続いて、あの大群勢の方から大きく歓声が上がってくる。
「ヒャーッヒャッヒャァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!"計画通り"じゃあああああああああああああああああああああッ!!進め進め進めえええええええええええええええええッ!!立ち塞がる者は全て蹂躙せよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」
今のはドライダスの声だった。
大敵を打ち破ったことで、魔族側の士気も大いに活気付いてしまったのだ。
あの10万もの大群はそれでさらに勢いを増し、こちらに向けてことさら地響きを轟かせてくる。
あの3つのブレスもまだ健在だ。
流石に『天の裁き』のおかげで威力とスピードは落ちているものの、あの3つの莫大なエネルギー波は未だ消滅することなくこちらへと向かってきている。
「そんな…………」
リズベットももう…………それを見ればただただ絶望するしかなかった。
つい先ほど、ドライダスが言っていたのだ。
『計画通り』だと────。
リズベットは思い返す。
(どこから…………。一体どこから、私は間違えていたんだろう…………)
結局のところ、カザルのやったことは相変わらず単純で、シンプル極まりないものだった。
あのウルスの不可解な行動は当然"撒き餌"であり、『バーストロック』と『グール』の突撃はもちろん"陽動"だ。
餓狼族たちの奇襲はおそらく"保険"────。
本命は、このネシャスの『天の裁き』を打ち破った後のブレスと、この10万の大群による追撃だったのだろう。
元々ブレスで一掃するのが理想であるのは間違いなかっただろうが、それも別に互角以上なら何でも良かったに違いない。
その場にある程度引きつけることが成功した時点で、後はブレスでも群勢でも"同じ結果"になっていたはずだ。
(ということは、彼らは────)
リズベットは少しばかりの"同情"と共に、ウルスと側にいる魔族たちの方へ目を向ける。
群勢の方はどうか分からないにしても、あのブレスの大きさは────『天の裁き』を打ち破るほどのあのサイズのエネルギー波がもたらす結果は、ここら一帯の全ての者に"平等"に違いなかった。
とどのつまりはまぁ…………そういうことだ。
リズベットと同様に否応なく"同じ"運命を突きつけられた彼らは、ここぞとばかりに悲鳴を上げる。
「お、おいおいおいおい…………ッ!!き、聞いてねぇぞ、こんなのッ!!」
「コレ、絶対俺たちも無事じゃ済まねぇだろッ!!」
「いや、あの『竜種』の3体同時ブレスだぞ…………ッ!!無事どころか、この辺り一面焼け野原だッ!!」
間違いなくリズベットや和也たちの巻き添えになる位置にいる彼らは、それはもう絶望的なほどに慌てふためいていた。
リズベットは知らないが、ドライダスがカザルに作戦の概要を聞いた時に引いていたのはコレのことだ。
彼らの役割は和也たちに対する保険であると同時に、時間稼ぎと"足止め"────。
ただただ誘き出した獲物を引きつけ、そこに"留まらせる"ためだけに用意された存在になる。
あの大群勢があろうとブレスがあろうと、結局はあの『転送玉』に対する対処だけはどうしたって必要になるのだ。
その対処を行った者は勿論もろとも本命の巻き添えを喰らうことになるが、それはもうどうしようもない。
"だから"────。
ここで"捨ててもよくて"、いざという時に"強制的"にでも動かせる駒が必要だった。
あの明らかに無理な命令はそれから目を逸らすためだ。
『隷属の首輪』がちゃんと"働いている"おかげで、そこにいることが他からも自然────いや、仕方がなかったように見せることが出来る。
チェスでも将棋でも、戦術にはよくあることだ。
大物を仕留めるためには、多少の『捨て駒』はやむを得ない。
「主人様…………」
さっきまで勝利と歓喜の雄叫びを放っていたウルスも、コレを見れば呆然とするしかなかった。
共に死戦を潜り抜けてきた餓狼族たちは既に死に、後ろにいる亜人種の仲間たちももう守りようがなくなってしまっているのだ。
当然、こんなものは何一つとして聞いていない。
自らがただの囮であることも────。
元々亜人種たちを外に移動させるつもりなどないことも────。
"ウルスや餓狼族たちを含め"、最初からブレスと群勢で全てを一掃することが狙いだなんてことは勿論────。
何一つとして、全くをもって聞いてなどいなかった。
当然、そのタイミングを見計らうためにドライダスの眷属が見張っていたということも、ウルスは知らない。
実は、ウルスたちの鼻でもギリギリ気配を感じ取れないほどの距離でこちらの状況を逐一報告する個体がいたのだ。
結局は、ウルスも餓狼族も魔族たちも『グール』も『バーストロック』も亜人種たちですらも────。
全ては和也をここに誘き出し、その後を追ってくるであろうネシャス共々その場に押し留めるためのスケープゴートに過ぎなかったのだろう。
なら…………
「ここは…………やっぱり…………」
リズベットは密やかに決断した。
都合よくウルスも魔族たちもあのブレスに気を取られている真っ最中なのだ。
それに…………
結局のところは、"皆死ぬ"────。
ネシャスの連れてきたあの1万あまりの兵士たちも同様だ。
目撃者たりうる人間たちは、丁度良く皆ここで始末される。
ここまでお誂え向きな状況もそうは無いだろう。
皆意識も別に向いていることだし、ウルスや魔族たちももうそれどころではなくなっているはずなのだ。
本当ならもっと時間をかけてじっくり熟考したい所だったが、ここにきてせっかくやって来たチャンスを棒に振るほどリズベットも愚かではない。
「よし…………」
だが…………
その時だった。
リズベットが覚悟し、いざ実行に移そうとした、その時────。
3体による巨大なブレスが空を覆い、その背後から大群勢が押し寄せるこの最中────。
突如として、どこからか大勢の人間が走ってきているかのような音が聞こえてきた。
予想外にして想定外にして唐突な出来事だ。
聞き覚えも身に覚えも…………リズベットには無い。
ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!
「…………ッ!!」
その時────。
この場一帯にとても大きな破裂音が鳴り響いた。
ネシャスが倒れたことで、『天の裁き』に供給されていた力も尽きたのだ。
元々3体のブレスに押し負けていたこともあり、こうなることも最初から時間の問題でしかなかったのだろう。
続いて、あの大群勢の方から大きく歓声が上がってくる。
「ヒャーッヒャッヒャァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!"計画通り"じゃあああああああああああああああああああああッ!!進め進め進めえええええええええええええええええッ!!立ち塞がる者は全て蹂躙せよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」
今のはドライダスの声だった。
大敵を打ち破ったことで、魔族側の士気も大いに活気付いてしまったのだ。
あの10万もの大群はそれでさらに勢いを増し、こちらに向けてことさら地響きを轟かせてくる。
あの3つのブレスもまだ健在だ。
流石に『天の裁き』のおかげで威力とスピードは落ちているものの、あの3つの莫大なエネルギー波は未だ消滅することなくこちらへと向かってきている。
「そんな…………」
リズベットももう…………それを見ればただただ絶望するしかなかった。
つい先ほど、ドライダスが言っていたのだ。
『計画通り』だと────。
リズベットは思い返す。
(どこから…………。一体どこから、私は間違えていたんだろう…………)
結局のところ、カザルのやったことは相変わらず単純で、シンプル極まりないものだった。
あのウルスの不可解な行動は当然"撒き餌"であり、『バーストロック』と『グール』の突撃はもちろん"陽動"だ。
餓狼族たちの奇襲はおそらく"保険"────。
本命は、このネシャスの『天の裁き』を打ち破った後のブレスと、この10万の大群による追撃だったのだろう。
元々ブレスで一掃するのが理想であるのは間違いなかっただろうが、それも別に互角以上なら何でも良かったに違いない。
その場にある程度引きつけることが成功した時点で、後はブレスでも群勢でも"同じ結果"になっていたはずだ。
(ということは、彼らは────)
リズベットは少しばかりの"同情"と共に、ウルスと側にいる魔族たちの方へ目を向ける。
群勢の方はどうか分からないにしても、あのブレスの大きさは────『天の裁き』を打ち破るほどのあのサイズのエネルギー波がもたらす結果は、ここら一帯の全ての者に"平等"に違いなかった。
とどのつまりはまぁ…………そういうことだ。
リズベットと同様に否応なく"同じ"運命を突きつけられた彼らは、ここぞとばかりに悲鳴を上げる。
「お、おいおいおいおい…………ッ!!き、聞いてねぇぞ、こんなのッ!!」
「コレ、絶対俺たちも無事じゃ済まねぇだろッ!!」
「いや、あの『竜種』の3体同時ブレスだぞ…………ッ!!無事どころか、この辺り一面焼け野原だッ!!」
間違いなくリズベットや和也たちの巻き添えになる位置にいる彼らは、それはもう絶望的なほどに慌てふためいていた。
リズベットは知らないが、ドライダスがカザルに作戦の概要を聞いた時に引いていたのはコレのことだ。
彼らの役割は和也たちに対する保険であると同時に、時間稼ぎと"足止め"────。
ただただ誘き出した獲物を引きつけ、そこに"留まらせる"ためだけに用意された存在になる。
あの大群勢があろうとブレスがあろうと、結局はあの『転送玉』に対する対処だけはどうしたって必要になるのだ。
その対処を行った者は勿論もろとも本命の巻き添えを喰らうことになるが、それはもうどうしようもない。
"だから"────。
ここで"捨ててもよくて"、いざという時に"強制的"にでも動かせる駒が必要だった。
あの明らかに無理な命令はそれから目を逸らすためだ。
『隷属の首輪』がちゃんと"働いている"おかげで、そこにいることが他からも自然────いや、仕方がなかったように見せることが出来る。
チェスでも将棋でも、戦術にはよくあることだ。
大物を仕留めるためには、多少の『捨て駒』はやむを得ない。
「主人様…………」
さっきまで勝利と歓喜の雄叫びを放っていたウルスも、コレを見れば呆然とするしかなかった。
共に死戦を潜り抜けてきた餓狼族たちは既に死に、後ろにいる亜人種の仲間たちももう守りようがなくなってしまっているのだ。
当然、こんなものは何一つとして聞いていない。
自らがただの囮であることも────。
元々亜人種たちを外に移動させるつもりなどないことも────。
"ウルスや餓狼族たちを含め"、最初からブレスと群勢で全てを一掃することが狙いだなんてことは勿論────。
何一つとして、全くをもって聞いてなどいなかった。
当然、そのタイミングを見計らうためにドライダスの眷属が見張っていたということも、ウルスは知らない。
実は、ウルスたちの鼻でもギリギリ気配を感じ取れないほどの距離でこちらの状況を逐一報告する個体がいたのだ。
結局は、ウルスも餓狼族も魔族たちも『グール』も『バーストロック』も亜人種たちですらも────。
全ては和也をここに誘き出し、その後を追ってくるであろうネシャス共々その場に押し留めるためのスケープゴートに過ぎなかったのだろう。
なら…………
「ここは…………やっぱり…………」
リズベットは密やかに決断した。
都合よくウルスも魔族たちもあのブレスに気を取られている真っ最中なのだ。
それに…………
結局のところは、"皆死ぬ"────。
ネシャスの連れてきたあの1万あまりの兵士たちも同様だ。
目撃者たりうる人間たちは、丁度良く皆ここで始末される。
ここまでお誂え向きな状況もそうは無いだろう。
皆意識も別に向いていることだし、ウルスや魔族たちももうそれどころではなくなっているはずなのだ。
本当ならもっと時間をかけてじっくり熟考したい所だったが、ここにきてせっかくやって来たチャンスを棒に振るほどリズベットも愚かではない。
「よし…………」
だが…………
その時だった。
リズベットが覚悟し、いざ実行に移そうとした、その時────。
3体による巨大なブレスが空を覆い、その背後から大群勢が押し寄せるこの最中────。
突如として、どこからか大勢の人間が走ってきているかのような音が聞こえてきた。
予想外にして想定外にして唐突な出来事だ。
聞き覚えも身に覚えも…………リズベットには無い。
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