鬼神の刃──かつて世を震撼させた殺人鬼は、スキルが全ての世界で『無能者』へと転生させられるが、前世の記憶を使ってスキル無しで無双する──

ノリオ

文字の大きさ
254 / 267
【第七章】シベリザード連合国

【第五十四話】リズベット ②

しおりを挟む
「こ、こんなのもう…………どうしたら……」


ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!


「…………ッ!!」


その時────。

この場一帯にとても大きな破裂音が鳴り響いた。

ネシャスが倒れたことで、『天の裁き』に供給されていた力も尽きたのだ。

元々3体のブレスに押し負けていたこともあり、こうなることも最初から時間の問題でしかなかったのだろう。

続いて、あの大群勢の方から大きく歓声が上がってくる。


「ヒャーッヒャッヒャァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!"計画通り"じゃあああああああああああああああああああああッ!!進め進め進めえええええええええええええええええッ!!立ち塞がる者は全て蹂躙せよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」


今のはドライダスの声だった。

大敵を打ち破ったことで、魔族側の士気も大いに活気付いてしまったのだ。

あの10万もの大群はそれでさらに勢いを増し、こちらに向けてことさら地響きを轟かせてくる。

あの3つのブレスもまだ健在だ。

流石に『天の裁き』のおかげで威力とスピードは落ちているものの、あの3つの莫大なエネルギー波は未だ消滅することなくこちらへと向かってきている。


「そんな…………」


リズベットももう…………それを見ればただただ絶望するしかなかった。

つい先ほど、ドライダスが言っていたのだ。

『計画通り』だと────。

リズベットは思い返す。


(どこから…………。一体どこから、私は間違えていたんだろう…………)


結局のところ、カザルのやったことは相変わらず単純で、シンプル極まりないものだった。

あのウルスの不可解な行動は当然"撒き餌"であり、『バーストロック』と『グール』の突撃はもちろん"陽動"だ。

餓狼族たちの奇襲はおそらく"保険"────。

本命は、このネシャスの『天の裁き』を打ち破った後のブレスと、この10万の大群による追撃だったのだろう。

元々ブレスで一掃するのが理想であるのは間違いなかっただろうが、それも別に互角以上なら何でも良かったに違いない。

その場にある程度引きつけることが成功した時点で、後はブレスでも群勢でも"同じ結果"になっていたはずだ。


(ということは、彼らは────)


リズベットは少しばかりの"同情"と共に、ウルスと側にいる魔族たちの方へ目を向ける。

群勢の方はどうか分からないにしても、あのブレスの大きさは────『天の裁き』を打ち破るほどのあのサイズのエネルギー波がもたらす結果は、ここら一帯の全ての者に"平等"に違いなかった。

とどのつまりはまぁ…………そういうことだ。

リズベットと同様に否応なく"同じ"運命を突きつけられた彼らは、ここぞとばかりに悲鳴を上げる。
 

「お、おいおいおいおい…………ッ!!き、聞いてねぇぞ、こんなのッ!!」
「コレ、絶対俺たちも無事じゃ済まねぇだろッ!!」
「いや、あの『竜種』の3体同時ブレスだぞ…………ッ!!無事どころか、この辺り一面焼け野原だッ!!」


間違いなくリズベットや和也たちの巻き添えになる位置にいる彼らは、それはもう絶望的なほどに慌てふためいていた。

リズベットは知らないが、ドライダスがカザルに作戦の概要を聞いた時に引いていたのはコレのことだ。

彼らの役割は和也たちに対する保険であると同時に、時間稼ぎと"足止め"────。

ただただ誘き出した獲物を引きつけ、そこに"留まらせる"ためだけに用意された存在になる。

あの大群勢があろうとブレスがあろうと、結局はあの『転送玉』に対する対処だけはどうしたって必要になるのだ。

その対処を行った者は勿論もろとも本命の巻き添えを喰らうことになるが、それはもうどうしようもない。

"だから"────。

ここで"捨ててもよくて"、いざという時に"強制的"にでも動かせる駒が必要だった。

あの明らかに無理な命令はそれから目を逸らすためだ。

『隷属の首輪』がちゃんと"働いている"おかげで、そこにいることが他からも自然────いや、仕方がなかったように見せることが出来る。

チェスでも将棋でも、戦術にはよくあることだ。

大物を仕留めるためには、多少の『捨て駒』はやむを得ない。


「主人様…………」


さっきまで勝利と歓喜の雄叫びを放っていたウルスも、コレを見れば呆然とするしかなかった。

共に死戦を潜り抜けてきた餓狼族たちは既に死に、後ろにいる亜人種の仲間たちももう守りようがなくなってしまっているのだ。

当然、こんなものは何一つとして聞いていない。

自らがただの囮であることも────。

元々亜人種たちを外に移動させるつもりなどないことも────。

"ウルスや餓狼族たちを含め"、最初からブレスと群勢で全てを一掃することが狙いだなんてことは勿論────。

何一つとして、全くをもって聞いてなどいなかった。

当然、そのタイミングを見計らうためにドライダスの眷属が見張っていたということも、ウルスは知らない。

実は、ウルスたちの鼻でもギリギリ気配を感じ取れないほどの距離でこちらの状況を逐一報告する個体がいたのだ。

結局は、ウルスも餓狼族も魔族たちも『グール』も『バーストロック』も亜人種たちですらも────。

全ては和也をここに誘き出し、その後を追ってくるであろうネシャス共々その場に押し留めるためのスケープゴートに過ぎなかったのだろう。

なら…………


「ここは…………やっぱり…………」


リズベットは密やかに決断した。

都合よくウルスも魔族たちもあのブレスに気を取られている真っ最中なのだ。

それに…………

結局のところは、"皆死ぬ"────。

ネシャスの連れてきたあの1万あまりの兵士たちも同様だ。

目撃者たりうる人間たちは、丁度良く皆ここで始末される。

ここまでお誂え向きな状況もそうは無いだろう。

皆意識も別に向いていることだし、ウルスや魔族たちももうそれどころではなくなっているはずなのだ。

本当ならもっと時間をかけてじっくり熟考したい所だったが、ここにきてせっかくやって来たチャンスを棒に振るほどリズベットも愚かではない。


「よし…………」


だが…………

その時だった。

リズベットが覚悟し、いざ実行に移そうとした、その時────。

3体による巨大なブレスが空を覆い、その背後から大群勢が押し寄せるこの最中────。

突如として、どこからか大勢の人間が走ってきているかのような音が聞こえてきた。

予想外にして想定外にして唐突な出来事だ。

聞き覚えも身に覚えも…………リズベットには無い。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

《カクヨム様で15000PV達成‼️》悪魔とやり直す最弱シーカー。十五歳に戻った俺は悪魔の力で人間の頂点を狙う

なべぞう
ファンタジー
ダンジョンが生まれて百年。 スキルを持つ人々がダンジョンに挑む世界で、 ソラは非戦闘系スキル《アイテムボックス》しか持たない三流シーカーだった。 弱さゆえに仲間から切り捨てられ、三十五歳となった今では、 満身創痍で生きるだけで精一杯の日々を送っていた。 そんなソラをただ一匹だけ慕ってくれたのは―― 拾ってきた野良の黒猫“クロ”。 だが命の灯が消えかけた夜、 その黒猫は正体を現す。 クロは世界に十人しか存在しない“祝福”を与える存在―― しかも九つの祝福を生んだ天使と悪魔を封印した“第十の祝福者”だった。 力を失われ、語ることすら封じられたクロは、 復讐を果たすための契約者を探していた。 クロは瀕死のソラと契約し、 彼の魂を二十年前――十五歳の過去へと送り返す。 唯一のスキル《アイテムボックス》。 そして契約により初めて“成長”する力を与えられたソラは、 弱き自分を変えるため、再びダンジョンと向き合う。 だがその裏で、 クロは封印した九人の祝福者たちを狩り尽くすための、 復讐の道を静かに歩み始めていた。 これは―― “最弱”と“最凶”が手を取り合い、 未来をやり直す物語

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...