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【第三章】閑話休題

【第八話】お風呂事件簿④

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「あれ?美味しいね、このコーヒー」


ユウカはキョトンとした表情で呟いた。

いつもと違うインスタントであることに気が付いたのだろう。

恭司は畳み掛ける。


「だろ?昨日、アベルトさんが置いていったんだ。こんな美味しいコーヒー、一人で飲んでも味気ないし、ユウカと一緒に飲みたかったんだよ。気に入ってもらえたようで何よりだ」


くどくなり過ぎないよう注意しながら、恭司は「ユウカと一緒に飲みたかった」を強調した。

別に嘘では無いし、そう言われて悪い気はしないはずだ。

このまま「美味しいコーヒー」の話題で突っ走って有耶無耶にしてやる。


「え?そうなんだ……。私と一緒にね。ふふ、それはちょっと嬉しいな」


ユウカは若干俯きながら頬を染める。

作戦通りだ。

ユウカは単純だからこれで話題転換できるに違いない。

恭司はさらに追い討ちをかける。


「まぁ、一緒にいるのなんていつも通りと言えばいつも通りなんだけどな。ただ、せっかくいつもと違う物があったから、いつもより新鮮な時間を、ユウカと一緒に楽しみたかったんだ」


ユウカと一緒にいる時間を大切にしているーー。

ということを強めに押した。

これで「美味しいコーヒー」と「いつも一緒にいる」というほのぼの話題に切り替わるはずだ。

恭司は内心でほくそ笑んだ。

これで風呂の件は忘れたはz


「ところで何でお風呂覗いたの??」


いやダメだった。

何ならあんまり話も聞いてなかった。


「いや、だからユウカと一緒にいる時間をだな……」

「それでお風呂まで一緒にってこと????」


何故だ……。

ここまで前振ったのにお風呂の話題から離れようとしない。

なんて執着心だ。


「いやだからアレは事故であってだな……。俺は本当はコーヒーの時間を共有したいと……」

「別に恭司ならお風呂も一緒に入っても構わないんだけどね。ただ心の準備が……」

「いや待て。それは問題発言だぞ」


とんでもない方向に進んでいきそうな所を、恭司は何とか押しとどめる。

あの時の模擬試合とは比にならないくらいの汗を流しながら、恭司はユウカの暴走をギリギリで食い止めた。

なんて押しの強さだ。

コーヒー程度じゃ一切足止めにならない。

ほのぼのした話題は却下だ。

ここは多少空気を壊してでも、より強力な話題で方向を変える必要がある。


「今日のコーヒータイムでは少し大事なことを聞こうと思ってたんだ。俺たちの今後にも関わる話だ」


恭司は無表情でシリアスな雰囲気を作り出し、強制的に話題転換しにかかった。

ユウカもこう来られては聞かざるを得ないだろう。

特に何も考えて無かったが、今から急ピッチで質問を捻出する。
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