追憶の刃ーーかつて時空を飛ばされた殺人鬼は、記憶を失くし、200年後の世界で学生として生きるーー

ノリオ

文字の大きさ
54 / 134
【第四章】学園生活

【第九話】フェルビア学園③

しおりを挟む
「い、いや、実はパッと見分からないかもしれないが、ユウカに喜んでもらえるよう色々と手を加えているんだ。素材にはちゃんと呼吸ってものがあって、それに同調するような工夫を凝らさなきゃいけない」

※コショウを振りかけています。

「え?そうなの?なんかいつも適当にやってる風だったけど……」

「それが分からないってことはまだまだってことだ。素材の放つ伊吹に耳を傾け、それに合わせた対応が出来ないと、とてもじゃないが俺のクオリティには追いつかないさ」

※コショウを振りかけているだけです。

「そ、そうなんだ……。料理って難しいんだね」

「あぁ……。まずは素材の声を聞けるようにならないと話にならないな。彼らの出す音が聞こえないことには、当然、彼らに同調した素晴らしいハーモニーを刻むことは出来ない」

※コショウをry)


「まぁでもそこまでのクオリティ別にいらないし。なら適当にやってみるよ」

「いや待ってください」


なんてことだ。

別に得意でもなんでもない(炒めて適当にコショウ振るだけ)なのに今後の無駄な期待感を煽っただけの結果となってしまった。

しかも、

呼吸とか伊吹とか声とか一つも聞いたことないのに、そのうちユウカに料理を教えなくてはならなくなった。

失態だ。


「恭司……いつもそんな苦労して作ってくれてたんだね……。なんか、いつも普通に食べちゃっててごめんね。次からはちゃんと味わって食べるようにするよ」


恭司の戯言に、ユウカの方はまるで疑う素振りも見せない。

というか本当に信じていそうだ。

恭司はなんて単……純粋な子だろうと思いながら、今後の料理に関する厄介事を憂いつつも、とりあえず今は目を背けることにした。

いずれ解決しなくてはいけない問題かもしれないが、今は後回しでもいい。

今はそれよりも、この登校問題こそを急ぎ解決しなくてはならないのだ。

始業時間もどんどん近付いてきている。

恭司は脳味噌をフル回転させて何とかユウカを連れていく策を考えるものの、あいにく恭司の頭の中では既に策は出し切ってしまっている。

他の策はなかなかすぐには思いつかない。

恭司は試行錯誤の上、ハァァァァと息を吐くと、仕方なく用意したカバンを手に取った。

ユウカは「え?」と目を見開く。


「しょうがねぇから一人で行って来る。無理強いは良くないしな。学校もまぁ、その辺歩いてる人に聞きゃ分かるだろ」


恭司はそう言って玄関に向けて歩き出した。

ユウカの協力は必要事項だったが、必須事項じゃない。

困難は伴うが、恭司一人でも何とかなる。

恭司は玄関に続くリビングのドアノブに手をかけると、名残惜しそうに開いた。

ユウカはそれを見て、スッと立ち上がる。


「ち、ちょっと待って!!」

「ん?」


さっきとは違う、少し焦った声を聞いて、恭司は振り向いた。

既に始業時間まで30分を切ってしまっている。

ここから学校がどのくらいの距離か分からないが、人に聞いたり職員室に寄る時間を考えれば、さすがにいつまでもこうしているわけにはいかない。

ユウカは唇を尖らせながら恭司の前に立つと、両手を腰に当てて仁王立ちした。

ちょうど玄関を塞ぐ形で立ち往生されてるわけだが、恭司にはその意味が分からない。

一体何事かと思っていたが、ユウカは膨らみの薄い胸を張って、堂々と口を開いた。


「仕方ないから私も一緒に行ってあげるよ」

「ええええええ!?」


意外だ。

予想外だ。

疑問しか頭に浮かんでこないが、ユウカは何故か泰然自若としている。

恭司に早くしろと言わんばかりだった。

恭司は兎にも角にも理由を聞きたい気持ちで一杯だったが、ユウカはさっさと先に行ってしまった。

恭司は納得できない気持ちを抱えつつも、仕方なくユウカの後ろに続いた。

ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーー
ーーーー
ーー
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

彼女にも愛する人がいた

まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。 「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」 そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。 餓死だと? この王宮で?  彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。 俺の背中を嫌な汗が流れた。 では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…? そんな馬鹿な…。信じられなかった。 だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。 「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。 彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。 俺はその報告に愕然とした。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

さようなら、お別れしましょう

椿蛍
恋愛
「紹介しよう。新しい妻だ」――夫が『新しい妻』を連れてきた。  妻に新しいも古いもありますか?  愛人を通り越して、突然、夫が連れてきたのは『妻』!?  私に興味のない夫は、邪魔な私を遠ざけた。  ――つまり、別居。 夫と父に命を握られた【契約】で縛られた政略結婚。  ――あなたにお礼を言いますわ。 【契約】を無効にする方法を探し出し、夫と父から自由になってみせる! ※他サイトにも掲載しております。 ※表紙はお借りしたものです。

処理中です...