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【第四章】学園生活
【第十話】謎の転校生①
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結局、転校の手続きが終わって廊下に出ても、ユウカの姿は見当たらなかった。
先に行くにしてもおかしなタイミングなだけに、恭司としては首を傾げるしかない。
遅刻を気にするようなタイプでもないが故に、謎は深まるばかりだった。
(まぁ、その辺りは本人に直接聞くのが一番だな)
恭司は一人でウンウンと頷くと、手続きを進めてくれた先生と共に職員室を出る。
転校初日ともあって、その先生が教室まで案内してくれるそうだ。
クラスは予想通りBクラス。
エレベーターのカードキーも渡された。
「ちなみに、君の申請に関して、申込者があのアベルト様だったんだが……。君はあの方とどういうご関係なんだい?」
すると、
教室までの道すがら、先生の方から話しかけてきた。
それも、
彼としては単純に間を持たせるだけの意味合いなのかもしれないが、恭司としてはドキリとする内容だ。
恭司は頭をフル回転させながら、なるべく平静を装って答える。
「親戚なんですよ。といっても、私自身の親は既に他界しておりまして、ほとんど義理のような形でお世話になっているんです」
「そ、そうか。初対面なのに、ズカズカと聞いて申し訳ない……」
「いえ、お気になさらず」
先生側からの反応は概ね恭司の予想通りだった。
両親の顔なんて正直覚えてもいないが、先生が相手の顔色をいちいち窺うタイプで助かった。
このまま他の話題に意識を移させるためにも、次は恭司の方から話題を振る。
「そういえば、先生はどういった科目を扱われているのでしょうか?」
選んだのは当たり障りのない普通の話題だった。
ここで凝った話は必要ない。
この先生は担任でないといっても、学校の高等学校の教員である以上、恭司のこれからの学校生活に何かしらの関わりがある可能性が高いのだ。
当たり障りのない話題で、普通に関係性を築く方が無難に良い結果を生むだろう。
「あぁ、そういえば自己紹介が遅れていたね。私の名は『トラスト・ライドン』。ここでは政治学を担当している」
「政治学……。なるほど、それでアベルトが直接申請されたことが気になられたのですね」
恭司は頷いた。
アベルトはこの国の政府の上位幹部の一人になっている。
政治に携わる者ならば絶対に知っているであろう人物だ。
授業で話すことも多いだろう。
政治学に携わる人間として、無視できない人間のはずだ。
「まぁ、それも勿論あるけど、さすがにそれだけが理由ってわけじゃないよ。別に政治に携わらなくても彼のことは皆知っているし、この学校は政府と直接繋がっているから、正直顔を合わせることもけっこう多いんだ」
「なるほど……」
「それに……彼には……」
「……?」
トラストはそこで言い淀んだ。
恭司にはそれが何故か分からず、首を傾げる。
そして、
変な間が続いた後、トラストは苦々しそうに口を開いた。
「ユウカ・バーレン。犯罪組織クレイアの……リーダーの娘をこの学校に通わせている、という部分もある」
先に行くにしてもおかしなタイミングなだけに、恭司としては首を傾げるしかない。
遅刻を気にするようなタイプでもないが故に、謎は深まるばかりだった。
(まぁ、その辺りは本人に直接聞くのが一番だな)
恭司は一人でウンウンと頷くと、手続きを進めてくれた先生と共に職員室を出る。
転校初日ともあって、その先生が教室まで案内してくれるそうだ。
クラスは予想通りBクラス。
エレベーターのカードキーも渡された。
「ちなみに、君の申請に関して、申込者があのアベルト様だったんだが……。君はあの方とどういうご関係なんだい?」
すると、
教室までの道すがら、先生の方から話しかけてきた。
それも、
彼としては単純に間を持たせるだけの意味合いなのかもしれないが、恭司としてはドキリとする内容だ。
恭司は頭をフル回転させながら、なるべく平静を装って答える。
「親戚なんですよ。といっても、私自身の親は既に他界しておりまして、ほとんど義理のような形でお世話になっているんです」
「そ、そうか。初対面なのに、ズカズカと聞いて申し訳ない……」
「いえ、お気になさらず」
先生側からの反応は概ね恭司の予想通りだった。
両親の顔なんて正直覚えてもいないが、先生が相手の顔色をいちいち窺うタイプで助かった。
このまま他の話題に意識を移させるためにも、次は恭司の方から話題を振る。
「そういえば、先生はどういった科目を扱われているのでしょうか?」
選んだのは当たり障りのない普通の話題だった。
ここで凝った話は必要ない。
この先生は担任でないといっても、学校の高等学校の教員である以上、恭司のこれからの学校生活に何かしらの関わりがある可能性が高いのだ。
当たり障りのない話題で、普通に関係性を築く方が無難に良い結果を生むだろう。
「あぁ、そういえば自己紹介が遅れていたね。私の名は『トラスト・ライドン』。ここでは政治学を担当している」
「政治学……。なるほど、それでアベルトが直接申請されたことが気になられたのですね」
恭司は頷いた。
アベルトはこの国の政府の上位幹部の一人になっている。
政治に携わる者ならば絶対に知っているであろう人物だ。
授業で話すことも多いだろう。
政治学に携わる人間として、無視できない人間のはずだ。
「まぁ、それも勿論あるけど、さすがにそれだけが理由ってわけじゃないよ。別に政治に携わらなくても彼のことは皆知っているし、この学校は政府と直接繋がっているから、正直顔を合わせることもけっこう多いんだ」
「なるほど……」
「それに……彼には……」
「……?」
トラストはそこで言い淀んだ。
恭司にはそれが何故か分からず、首を傾げる。
そして、
変な間が続いた後、トラストは苦々しそうに口を開いた。
「ユウカ・バーレン。犯罪組織クレイアの……リーダーの娘をこの学校に通わせている、という部分もある」
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