舌先三寸覚えあり 〜おヌル様は異界人。美味しいお菓子のプロ技キラめく甘々生活

蜂蜜ひみつ

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光の湖畔編

第94話 貯蔵室探索

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「受け取りも登録制なんだけど、さっきのこともあるからコニー試しにやってみない?
人差し指を置くのはドアと同じ魔素認証のためだよ」

 習ったようにやってみたら、無登録でも私は荷物を受け取れた。
 虹色魔素はやっぱり全てに有効らしい。

 今回クレールに届いたものは、私のために取り寄せてくれた道具だった。
 
「はい、待望のはかり。0・1グラムごとに二キロまでちゃんと測れるやつだよ。
待望ってのはもちろん僕たちにとってって意味なんだけど……レシピも思い出せるようになったし、その……おやつ楽しみにしてもいい?」

「もちろんだよ! でも、お菓子はね。材料に加えて、いろいろ道具とか型とかないと無理なのも多いから、できるものだけになっちゃうど。それでよければ腕を振るうからね」

「そっか……。ん。また今度その辺は話し合おうか……。
あ、あとこれ。乾燥ブラシとハンドミキサー。
一台で切り替えするのは機械の構造上の問題だから、無理としてもね。
低温乾燥ブラシは魔道具回路の付与の上書きで簡単に作成できるし。
ミキサーは低速機種と中速機種を各1台ずつ、作成できるかちょっと試してみようかなと思って。
高速に回転するように設計されている主動力部品に対して、新たなる魔道具回路の指示書き換えで回転速度を落とさせるのだから、負荷が掛かかると仮定して。だから数分の使用だけしかできないけどね。そこをうまく調整するのが僕の腕の見せ所だよ。
ともかくやってみるよ」

「希望した道具を早速作ってくれるの?! 
あの、ちょっと後半、何言ってるのか正直理解がついてけなかったけど。
とにかく凄い! クレールありがとう!」

「ふふ、コニー、お礼は早いよ。 無事成功して、出来上がるまでその言葉はとっておいて」



 その後、二人で降りた地下の貯蔵室は思ったよりも寒く、「わあぁ、案外寒いんだね」と口にしながら、ぶるったら。
 すぐに私を伴って上へと引き返し、クレールは上からカーディガンをとって来てくれた。
 ぶかぶかだけど、温かくて肌触りがよくて、なんかいい匂いする。

 瓶詰めや缶詰や乾物や。
 お酒は種類も量も豊富にあった。
「今は僕だけだから、棚がスカスカだね。料理をする泊まり客が来る予定だと増える時もあるけど」

 なるほど。
 だから調味料とか一人暮らしのわりには充実してたんだ。

「これこれ。お醤油と日本酒。もらったものだけど古くならないうちに。コニーなんかに使ってよ」

「うん、いいよ。早速今日使おっか。
そうだなあ……あ、さっき確か見た……じゃあこの缶詰を……」

 まだ来たばっかりだから、日本の食材が懐かしい感じはないな~。
 天丼も食べたし。

「これ、常温保存でいい日本酒だよね?」

「ああ、そう言ってたよ。開けなきゃ一年ぐらい持つって言ってたかな」

 ふーん、じゃあ火入れ酒だね。
 上に行ったら開封して味見して……
 
「日本酒はそのまま飲んだりしないの?」

「冷蔵庫保存でワインみたいなやつは飲んだことあるけど。常温保存のは料理に使うイメージで飲んだことないなあ」

「そっか。開けたては美味しいよきっと。せっかくだからいろいろ試して飲んでみよっか。
あ、それとね、ワインと違って日本酒は空気に極力触れない方がいいから寝かさず縦に保存するといいよ。
ねえねえ、この柑橘系らしき瓶詰めは甘いの? 塩っぱいの?」

「ああ、小粒青レモンの蜂蜜漬けだよ。加熱処理されて発酵を止めてあるやつ。冷蔵庫にそのままの青レモンが数個あるかも知れないね」

 小粒青レモンって、かぼすやシークワァーサーみたい。

 うん、いいね。
 これでカクテル作ってみようかな。
 とくれば……私の好きなもの、お目当ての品あるかな?

 やった! この世界にも、クレールんに、瓶詰め炭酸水があった~! 

 選んだ食材を入れた籠を抱えてキッチンに戻ったクレールと私。

「これから急いで夕飯作るね! 天丼に合うようなお酒も。おつまみも」
 冷蔵庫の気になっていたものをクレールに聞き、必要なものを出してもらう。
 冷凍庫のは使えそうなのはイカだけで、残りは数点のみだけど、実はもう化石レベルで、見なかったことにしていたらしい……。
 これを機に、「ごめんなさい」と誰にいうでもなく、口に出しながらクレールが処分した。

「僕は機材の調整と、お風呂を用意するね。いつもの僕の好きな柑橘系の入浴剤入れようかな」

「あれいい匂いだよね~! どうもありがとう、助かります。 
ねぇクレール。お風呂先に入る? それともご飯がいい? クレールの好きにしてね」

「え?! 僕の好きに?! あ、ああ、うん。
あの、コニー。それってなんだか、ど、同棲してる恋人同士の会話って感じがして、ドキドキするね」
 
「言われてみれば……んふふ、そうだね~。
一緒に暮らして、シャンプーやリンス、石鹸、そして柑橘系入浴剤のお揃いの香りを纏って生活するって、全くの家族でない限り、ちょっと色っぽい状況だよねぇ」

 赤面しながら、「同棲」「恋人」とか言うクレールがなにやら可愛くて……

「帰ってきたエタンにクレールが、『お帰りなさい、お風呂沸いてるよ。一緒に入ろうか』って誘ってあげたら? 風呂だけに二人の仲は熱々の同棲中恋人~なんちゃって~」

 つい揶揄っちゃった。

「恋人ってエタン?! ううぅ。コニー、僕の純情をももてあそぶなんて……酷い……」

 ひゃーっ! そんな顔で弄ぶなどとパワーワードで私を責めないでえ~。
「ご、ごめんごめん、そんなつもりは……悪ノリした! ほんとごめんなさい。
じゃあじゃあ、私が帰ってきたエタンに『お風呂沸いてるよ~』って声かけるね!」

「……それもなんだか悔しい……だって僕の、僕が……」

「『クレールが掃除してくれた』ってちゃんと付けるから。お風呂準備の手柄を横取りなんてしないよ、ね?」

「……違うけど、はあ……今はいいよ……
うん。僕が普通に言うから大丈夫。さ、早速とりかかろうか?」

 私の手を不意にすくい取り、なぜかきゅって握ってから、お風呂場のほうにクレールは向かって行った。




******クレール視点

「お風呂先に入る? それともご飯がいい? クレールの好きにして」

 一緒に生活し始めて、あんな可愛いセリフ、一番最初にコニーに言ってもらえたのは僕なんだから。
 今はそれを喜ぶべきだ。
 何事も欲張りは良い結果を生まない。

 ああ……
 この世界で、コニーの起こす小さな初めてを、僕はひとつづつ集めて、僕の中をいっぱいに埋め尽くしたい。
 そしていつか、僕だけにしかしない初めてを。
 僕だけがあたり前のようにもらえる、そんな特別な存在になりたい。

 わざとなのか、恋愛ごとにうといのか。
 すっとぼけた君さえ愛おしいと思う……

 こんな気持ち、僕にとって初めてなんだよ。
 僕の中に埋もれた初めてを、見つけ出せるのは君だけなんだ……コニー。

 僕の愛しい、小さな光の湖。
 

******





【次回予告 第95話 日本酒試飲からのぉ~】

 
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