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「悪い、女将。
急用ができた。
これで皆に酒を…… 」
男は言いながらポケットから数枚のコインをつまみ出す。
「それと、すまぬが馬を貸してもらえるか? 」
「ああ、それなら俺の馬がそこに繋がってる。
使ってくれ」
客の中の一人が声を張り上げた。
「悪いな、じゃ、貸してもらうぞ」
ヴェルナーはそう言うと、目の前に居た少女を抱え上げる。
「へ? ひゃっ! 」
突然宙に浮いた自分の躯に戸惑うような声を上げるリーゼロッテを、そのまま肩に担ぎ上げヴェルナーは歩き出した。
「ちょっと! 何すんの、下ろして! 」
「黙ってろよ、舌を噛む」
「だから、下ろしてよ。
わたしをどうする気? 」
「城に連れて行く」
「ちょっと、待って。
わたし、まだ…… 」
男の肩の上から逃れようと少女は身を捻る。
「マルドゥクの名を出した時点で、お前の城行きは決定だ。
地下牢か、謁見の間のどちらかにな」
男は店のテラスから数段の段を降り馬に歩み寄ると、担いでいた少女をまるで荷物でも積むかのように手荒に馬の背に押し上げる。
「な…… きゃっ! 」
軽い悲鳴とも抗議とも取れる小さな声を発する少女をよそに、馬に乗り上げるとあぶみに足をかけた。
「もっともその容姿じゃ、地下牢のほうだろうがな」
「どうしてそうなるのよ? 」
男の言葉にリーゼロッテは食って掛かる。
「この国じゃ、隣国を挟んだ向こうの国ウルティモ帝国の前皇帝、マルドゥクの名を名乗っただけで重罪だ。
ついでに言うなら、詐欺を働くには勉強不足だ。
いいか、憶えておけ。
ウルティモの人間はその大半が黒髪だけじゃなく目も褐色掛かった黒なんだよ。
肌は決まって象牙色だ。特に身分のある娘はな」
「あなた、今大半がって言ったでしょ?
例外だってあるのよ! 」
馬の首に手を伸ばしそこから逃れようとリーゼロッテは身を捻る。
「ひ、姫様っ! 」
それまで居合わせた人々の中に埋もれるようにしていた女が、馬の前に駆け出してきた。
「お付きの者まで用意したのか? 準備がいいことだ。
心配しなくてもいい。姫君は一足先に俺が城へ送るよ。
お前は後からゆっくり来い」
それだけ言うとヴェルナーは馬を歩かせ出した。
「ちょっと、や、待って…… 」
怯えた声をあげリーゼロッテは馬の首にすがりつく。
「っ…… 馬の首に抱き付くな、振り落とされる」
ヴェルナーは慌てた様子で、片手で少女の腰を引き寄せた。
「だって……
馬なんて、はじめてで…… こんなに高いなんてインチキよっ! 」
腰に遠慮なく添えられた手から逃れようとリーゼロッテは身を捻ると、男の顔を見上げる。
「初めてって、お前…… 」
信じられないといいたそうな男の視線がリーゼロッテに向けられた。
「そうよ、悪い?
乗ったことのあるのって移動遊園地の回転木馬だけだもの」
「移動遊園地? 」
大まじめに言ったリーゼロッテの言葉に男が突然あきれたように吹き出した。
「って、そりゃ子供の乗りもんだろうが」
「そうよ、一度だけね。
子供の頃に一度だけ、お父様が後宮に呼んでくださったことがあるの」
笑いの止らない男をリーゼロッテは不満を込めて見つめる。
「後宮?
……どうやら本当に詐欺師という訳じゃなさそうだな。
悪い、ちょっと急ぐぞ。
しっかり捕まっていろ」
抱き寄せた少女の腰をしっかり抑えると、ヴェルナーは馬に拍車をかけた。
城の門前に作られた堀の跳ね橋を渡り、見上げるほどに高い城門を潜ると、馬はようやく歩みを止めた。
いくつもの尖塔を有し大きな窓が整然と並ぶ優美な城郭の前庭は、異常な雰囲気に包まれていた。
優雅な宮殿には似つかわしくない軍の装束を来た男達が足早に行き交う。
「ヴェルナー殿下、お帰りなさいませ」
若い従者が玄関から慌てて駆け出してくると馬上の男に声をかける。
「何の騒ぎだ? 」
普段とは違う喧騒にヴェルナーは首を傾げた。
「それが……
今日お着きになるはずだった、ウルティモ帝国の姫君が行方不明になりまして……
馬車だけはお着きになったのですが、姫君が乗っておらず。
御者が何分異国の人間ゆえ会話がままならず、どこかで下ろしたとしか。
それで捜索の準備を…… 」
詳しくは知らないと見え、従者はしどろもどろに説明した。
「それなら…… 」
馬を下り、抱えるようにして連れてきた少女を馬の背から降ろしながらヴルナーは言う。
「捜索は中止だ。
姫君ならここにお連れした」
「は? 」
何のことなのかわからないように従者は首を傾げた。
「そちらが、その…… 姫君ですか? 」
馬から下ろされたままヴェルナーの隣に寄り添うようにして立つ少女の全身を疑い深そうな視線で見渡した。
「ひ、姫様! 」
そこへ息を切らしたリーゼロッテの乳母が駆けこんできた。
「もう、どうなることかと…… 」
肩で息をしながらようやく搾り出す言葉。
「とにかく奥へ連絡を、姫君に落ち着いていただかないと、ついでに侍女殿にも休息が必要なようだ」
馬の手綱を馬丁に渡しながらヴェルナーは言った。
「ミ、ミス・スワン、キツイ…… 」
ベッドの天蓋を支える柱にしがみつき、リーゼロッテは息を切らす。
「もう少しですから、我慢してくださいね、リーゼロッテ様。
ボールガウンを着たいって言い出したのは姫様ですから」
かすかに笑みを浮かべて、家庭教師のスワンは握り締めたコルセットの紐を引き絞った。
「だって……
あれじゃ格好がつかないじゃない」
傍らで乳母が片付けはじめた衣服にリーゼロッテは視線を移した。
腰に締める帯だけは絹の綴れ折で豪華だが、真っ白な綿の筒袖の貫胴衣に頭からすっぽりと被る床まで届く分厚いヴェール。それを留めるように額にはめるサークレット。
国での正装はどう見てもダンスを踊るには不釣合いだ。
おまけに色合いだって引けを取る。
だから、この国の正式なボールガウンを家庭教師のミス・スワンに手配してもらった。
ドレス自体は今までレッスンの時に着たことはあったけど、まさか正式なボールガウンがこんなに窮屈なものだとは思わなかった。
「本当に、こんなの着てダンス踊るの? 」
肩で息をしながらリーゼロッテは訊く。
「そうですよ。
それともおやめになります?
やっぱりお国の正装のほうが…… 」
「それは、嫌! 」
リーゼロッテはきっぱりと言い切った。
「ずっと夢だったのよ。
ミス・スワンに舞踏会のお話を聞いた時から。
わたしもこんなドレス着て、素敵な王子様とダンス踊るの」
「でしたら、少しだけ我慢してくださいね」
家庭教師はやんわりとした笑みを浮かべた。
「ね? ニオベ、おかしくない? 」
程なくしてリーゼロッテは着慣れないドレスを纏った姿を何度となく鏡に写すと乳母に訊いた。
「お綺麗ですよ、姫様。
これなら、この国のお嬢様がたと比べても全く引けは取りませんわ」
年嵩の女は答えながら、少女の結い上げた髪に挿した花飾りを直す。
「ね、ミス・スワン」
同意を求めるように、背後に控えていた家庭教師を振り返った。
「ほん、と? 」
リーゼロッテは不安そうに瞳を揺らした。
「大丈夫ですよ。
後は、わたくしが普段お教えしているように堂々となさってくださいね」
少女の不安を取り除こうとするかのように女は言ってもう一度笑いかけた。
それと時を同じくして、背後のドアがノックされる。
「はい! 」
リーゼロッテに代わり、家庭教師が声を張り上げた。
「皇女様のお仕度はお済でしょうか?
そろそろお時間でございますが」
ドアの向こうから遠慮がちに声が訊いてくる。
「さ、お呼びですよ。
参りましょう、姫様」
促すようにミス・スワンはそっとリーゼロッテの手を取った。
「姫様、少しお待ちを」
背を向けたリーゼロッテの肩口に視線を向けた乳母は慌てて化粧台から先ほど化粧で使っていた白粉を取り上げると、項の側に軽く叩く。
「やっぱり目立つ? 」
リーゼロッテの顔が不安げに歪む。
「大丈夫ですよ、ギリギリ、ドレスの下です。
お忘れですか? きちんと隠れるように作らせましたでしょ?
知らない方にはわかりませんから。
ご安心してください」
「そう、ならいいんだけど…… 」
「さ、姫様。
急ぎませんと」
少しだけ怯えたように足を止めてしまったリーゼロッテを、家庭教師はもう一度促した。
急用ができた。
これで皆に酒を…… 」
男は言いながらポケットから数枚のコインをつまみ出す。
「それと、すまぬが馬を貸してもらえるか? 」
「ああ、それなら俺の馬がそこに繋がってる。
使ってくれ」
客の中の一人が声を張り上げた。
「悪いな、じゃ、貸してもらうぞ」
ヴェルナーはそう言うと、目の前に居た少女を抱え上げる。
「へ? ひゃっ! 」
突然宙に浮いた自分の躯に戸惑うような声を上げるリーゼロッテを、そのまま肩に担ぎ上げヴェルナーは歩き出した。
「ちょっと! 何すんの、下ろして! 」
「黙ってろよ、舌を噛む」
「だから、下ろしてよ。
わたしをどうする気? 」
「城に連れて行く」
「ちょっと、待って。
わたし、まだ…… 」
男の肩の上から逃れようと少女は身を捻る。
「マルドゥクの名を出した時点で、お前の城行きは決定だ。
地下牢か、謁見の間のどちらかにな」
男は店のテラスから数段の段を降り馬に歩み寄ると、担いでいた少女をまるで荷物でも積むかのように手荒に馬の背に押し上げる。
「な…… きゃっ! 」
軽い悲鳴とも抗議とも取れる小さな声を発する少女をよそに、馬に乗り上げるとあぶみに足をかけた。
「もっともその容姿じゃ、地下牢のほうだろうがな」
「どうしてそうなるのよ? 」
男の言葉にリーゼロッテは食って掛かる。
「この国じゃ、隣国を挟んだ向こうの国ウルティモ帝国の前皇帝、マルドゥクの名を名乗っただけで重罪だ。
ついでに言うなら、詐欺を働くには勉強不足だ。
いいか、憶えておけ。
ウルティモの人間はその大半が黒髪だけじゃなく目も褐色掛かった黒なんだよ。
肌は決まって象牙色だ。特に身分のある娘はな」
「あなた、今大半がって言ったでしょ?
例外だってあるのよ! 」
馬の首に手を伸ばしそこから逃れようとリーゼロッテは身を捻る。
「ひ、姫様っ! 」
それまで居合わせた人々の中に埋もれるようにしていた女が、馬の前に駆け出してきた。
「お付きの者まで用意したのか? 準備がいいことだ。
心配しなくてもいい。姫君は一足先に俺が城へ送るよ。
お前は後からゆっくり来い」
それだけ言うとヴェルナーは馬を歩かせ出した。
「ちょっと、や、待って…… 」
怯えた声をあげリーゼロッテは馬の首にすがりつく。
「っ…… 馬の首に抱き付くな、振り落とされる」
ヴェルナーは慌てた様子で、片手で少女の腰を引き寄せた。
「だって……
馬なんて、はじめてで…… こんなに高いなんてインチキよっ! 」
腰に遠慮なく添えられた手から逃れようとリーゼロッテは身を捻ると、男の顔を見上げる。
「初めてって、お前…… 」
信じられないといいたそうな男の視線がリーゼロッテに向けられた。
「そうよ、悪い?
乗ったことのあるのって移動遊園地の回転木馬だけだもの」
「移動遊園地? 」
大まじめに言ったリーゼロッテの言葉に男が突然あきれたように吹き出した。
「って、そりゃ子供の乗りもんだろうが」
「そうよ、一度だけね。
子供の頃に一度だけ、お父様が後宮に呼んでくださったことがあるの」
笑いの止らない男をリーゼロッテは不満を込めて見つめる。
「後宮?
……どうやら本当に詐欺師という訳じゃなさそうだな。
悪い、ちょっと急ぐぞ。
しっかり捕まっていろ」
抱き寄せた少女の腰をしっかり抑えると、ヴェルナーは馬に拍車をかけた。
城の門前に作られた堀の跳ね橋を渡り、見上げるほどに高い城門を潜ると、馬はようやく歩みを止めた。
いくつもの尖塔を有し大きな窓が整然と並ぶ優美な城郭の前庭は、異常な雰囲気に包まれていた。
優雅な宮殿には似つかわしくない軍の装束を来た男達が足早に行き交う。
「ヴェルナー殿下、お帰りなさいませ」
若い従者が玄関から慌てて駆け出してくると馬上の男に声をかける。
「何の騒ぎだ? 」
普段とは違う喧騒にヴェルナーは首を傾げた。
「それが……
今日お着きになるはずだった、ウルティモ帝国の姫君が行方不明になりまして……
馬車だけはお着きになったのですが、姫君が乗っておらず。
御者が何分異国の人間ゆえ会話がままならず、どこかで下ろしたとしか。
それで捜索の準備を…… 」
詳しくは知らないと見え、従者はしどろもどろに説明した。
「それなら…… 」
馬を下り、抱えるようにして連れてきた少女を馬の背から降ろしながらヴルナーは言う。
「捜索は中止だ。
姫君ならここにお連れした」
「は? 」
何のことなのかわからないように従者は首を傾げた。
「そちらが、その…… 姫君ですか? 」
馬から下ろされたままヴェルナーの隣に寄り添うようにして立つ少女の全身を疑い深そうな視線で見渡した。
「ひ、姫様! 」
そこへ息を切らしたリーゼロッテの乳母が駆けこんできた。
「もう、どうなることかと…… 」
肩で息をしながらようやく搾り出す言葉。
「とにかく奥へ連絡を、姫君に落ち着いていただかないと、ついでに侍女殿にも休息が必要なようだ」
馬の手綱を馬丁に渡しながらヴェルナーは言った。
「ミ、ミス・スワン、キツイ…… 」
ベッドの天蓋を支える柱にしがみつき、リーゼロッテは息を切らす。
「もう少しですから、我慢してくださいね、リーゼロッテ様。
ボールガウンを着たいって言い出したのは姫様ですから」
かすかに笑みを浮かべて、家庭教師のスワンは握り締めたコルセットの紐を引き絞った。
「だって……
あれじゃ格好がつかないじゃない」
傍らで乳母が片付けはじめた衣服にリーゼロッテは視線を移した。
腰に締める帯だけは絹の綴れ折で豪華だが、真っ白な綿の筒袖の貫胴衣に頭からすっぽりと被る床まで届く分厚いヴェール。それを留めるように額にはめるサークレット。
国での正装はどう見てもダンスを踊るには不釣合いだ。
おまけに色合いだって引けを取る。
だから、この国の正式なボールガウンを家庭教師のミス・スワンに手配してもらった。
ドレス自体は今までレッスンの時に着たことはあったけど、まさか正式なボールガウンがこんなに窮屈なものだとは思わなかった。
「本当に、こんなの着てダンス踊るの? 」
肩で息をしながらリーゼロッテは訊く。
「そうですよ。
それともおやめになります?
やっぱりお国の正装のほうが…… 」
「それは、嫌! 」
リーゼロッテはきっぱりと言い切った。
「ずっと夢だったのよ。
ミス・スワンに舞踏会のお話を聞いた時から。
わたしもこんなドレス着て、素敵な王子様とダンス踊るの」
「でしたら、少しだけ我慢してくださいね」
家庭教師はやんわりとした笑みを浮かべた。
「ね? ニオベ、おかしくない? 」
程なくしてリーゼロッテは着慣れないドレスを纏った姿を何度となく鏡に写すと乳母に訊いた。
「お綺麗ですよ、姫様。
これなら、この国のお嬢様がたと比べても全く引けは取りませんわ」
年嵩の女は答えながら、少女の結い上げた髪に挿した花飾りを直す。
「ね、ミス・スワン」
同意を求めるように、背後に控えていた家庭教師を振り返った。
「ほん、と? 」
リーゼロッテは不安そうに瞳を揺らした。
「大丈夫ですよ。
後は、わたくしが普段お教えしているように堂々となさってくださいね」
少女の不安を取り除こうとするかのように女は言ってもう一度笑いかけた。
それと時を同じくして、背後のドアがノックされる。
「はい! 」
リーゼロッテに代わり、家庭教師が声を張り上げた。
「皇女様のお仕度はお済でしょうか?
そろそろお時間でございますが」
ドアの向こうから遠慮がちに声が訊いてくる。
「さ、お呼びですよ。
参りましょう、姫様」
促すようにミス・スワンはそっとリーゼロッテの手を取った。
「姫様、少しお待ちを」
背を向けたリーゼロッテの肩口に視線を向けた乳母は慌てて化粧台から先ほど化粧で使っていた白粉を取り上げると、項の側に軽く叩く。
「やっぱり目立つ? 」
リーゼロッテの顔が不安げに歪む。
「大丈夫ですよ、ギリギリ、ドレスの下です。
お忘れですか? きちんと隠れるように作らせましたでしょ?
知らない方にはわかりませんから。
ご安心してください」
「そう、ならいいんだけど…… 」
「さ、姫様。
急ぎませんと」
少しだけ怯えたように足を止めてしまったリーゼロッテを、家庭教師はもう一度促した。
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