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STEP2:クリスマスのお誘い編
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好きな奴からクリスマスの予定を聞かれたら、誰だって有頂天になるほど期待するだろう。
だけど俺:早川敦士(はやかわ あつし)の場合はそれほど期待は出来ない。なぜなら、単なるバイトのシフト確認だからだ。
俺のバイト先はCandyRainという名前の超ファンシーなケーキ屋さん。
絶賛片思い中の対馬亜好(つしま あずき)のお兄さんが店長で、亜好自身も店を手伝ってるという話を聞いて飛び込んだ。全ては亜好とお近づきになるためだ。
数ヶ月前までは話し掛けることすら満足に出来なかったヘタレな俺だが、日々のバイトの甲斐あって結構仲良くなれたつもりだ。
携帯番号だって交換したし(バイトの連絡のため)、堂々と亜好って呼べるようになったし(名字呼びだとお兄さんと紛らわしいから)、学校でもちょくちょく話すようになったし(主に新作ケーキの感想とか)
前に比べりゃ超進歩だぜ!
「クリスマス、ホントにお店出てくれるの?」
亜好が念を押すように尋ねる。この遠慮がちに見つめられるのがかなりツボなんだよなぁ。あー、亜好可愛い。
「だって、クリスマスって一番忙しいんだろ? 戦場みたいだって篠山さんも言ってたし」
篠山さんってのはパートさんの一人で、先代の店長(亜好のパパさん)の頃から働いているベテランらしい。小柄ですげー若く見えるのに、中学生、小学生、保育園の子供がそれぞれいるというなかなかの猛者だ。
その猛者が“クリスマスは血反吐を吐くほど忙しい。嘗めてかかると貧血起こす”と豪語していたから、ホントにすごいんだろうと思う。
だから人手いると思うんだけどなぁ・・・。俺って繁忙期には要らないような役立たずってこと? いや、自分で言うのもなんだけど結構優秀なバイトだぞ、俺は。じゃあ逆に、忙しすぎるから俺が倒れちゃうかもって心配して言ってくれてるとか? 亜好優しいからなぁ~。えへへ。
「予定あったりしたら無理しなくていいんだよ? クリスマスだから、その・・・彼女とか・・・」
「うへっ? か、彼女!? 」
思ってもいなかったことを言われ、俺はものすごく間抜けな声を出した。
彼女なんかいるわけ無いだろ! 俺は亜好一筋だっつーの! 亜好が好きだ-! 俺は亜好と付き合いたいんだー!!
「俺今彼女いないし、予定もまっしろしろすけだから。全然ヨユーで店出れるから」
心の中で亜好への愛を叫びながら、表面上はヘラヘラとお調子者の笑顔を浮かべて言った。
亜好はようやく安心してくれたらしく、持っていた手帳に俺のシフトを書き込んだ。亜好の手帳は、パートさんの子供に貰ったらしく、極彩色の歪な形のキャラクターが描いてある。正直可愛いのかどうか俺にはよく分からない。けど、それをちゃんと使ってあげてる亜好、マジ天使。優しすぎる。もう超好き。
「あのさ、早川」
萌えてる俺を、亜好が呼び掛ける。
悲しいかな、亜好からは未だ名字呼びなんだよな・・・。俺のことも名前で呼んでほしいんだけど、なんかタイミング逃して、どんどん今更感出ちゃって、言い出せないでいる。ホント俺ってヘタレ・・・。
「クリスマス予定ないなら、お店終わった後うちに来ない?」
亜好が上目遣いで俺を見つめる。可愛い。マジ可愛い。
クリスマスね、うん。店が終わった後にうちに。・・・ん? うちってどこだ? まさか亜好んち!? え、え、え!? お誘い!?
「ぅえぁあぁ!?」
「えっ、早川!? どしたの!?」
妙な雄叫びを上げてしまい、亜好をビビらせてしまった。
「な、な、何でも無い! 大丈夫!」
慌てて取り繕う俺。
「亜好んち、行って良いの?」
期待と興奮に鼻血出しそうになりつつ、何とか尋ね返す。やばい。俺、今、超鼻息荒い。
「ちょっとした打ち上げって言うか、クリスマスパーティーも兼ねて、うちでご飯食べないかなぁって思って」
亜好と一緒にメシ。しかもクリスマスパーティー。最高すぎる。
俺は即妄想した。
小さなクリスマスツリーの飾られた亜好の部屋。
二人っきりでケーキを食べて、不意に訪れる沈黙。
見つめ合う俺たち。
“亜好、クリーム付いてる”そう言って俺が亜好の唇を舐める。
亜好は恥ずかしそうにしながら潤んだ瞳で俺を見つめて言うんだ。“クリームじゃなくて、もっと別のところ舐めて・・・敦士”
的な!? あー、やばい! たまんねぇ!!
俺の鼻息はますます荒くなる。
けれど、次の瞬間に見事なほどに治まった。
「お兄ちゃんの手料理すっごい美味しいんだよ」
亜好の無垢な笑顔がずがーんと一撃。そうでした。二人っきりな訳がないんでした。
亜好のお兄ちゃん:桂樹(けいき)さん。
目下唯一の俺の恋の障害。亜好と血が繋がってるとは思えないほど似てなくて、“実は昔軍人でした”とか言われても普通に納得出来そうな超強面。
しかも俺の亜好への気持ちに気付いてるらしく、二人になると嫌味言われたり、すげー怖い目で睨まれたりする。いや、桂樹さんの目つきが怖いのは俺に対してだけじゃなくデフォルトだけど。
そっか・・・桂樹さんも一緒か。
意気消沈する俺。
だけど、
「毎年お兄ちゃんと二人だけだから寂しくてさ。早川が来てくれるなんて嬉しいな」
はい、亜好のはにかみ顔頂きました-!!
「俺も超超超楽しみにしてるから!」
たちまちテンション急上昇した俺は、また鼻息を荒くした。
だけど俺:早川敦士(はやかわ あつし)の場合はそれほど期待は出来ない。なぜなら、単なるバイトのシフト確認だからだ。
俺のバイト先はCandyRainという名前の超ファンシーなケーキ屋さん。
絶賛片思い中の対馬亜好(つしま あずき)のお兄さんが店長で、亜好自身も店を手伝ってるという話を聞いて飛び込んだ。全ては亜好とお近づきになるためだ。
数ヶ月前までは話し掛けることすら満足に出来なかったヘタレな俺だが、日々のバイトの甲斐あって結構仲良くなれたつもりだ。
携帯番号だって交換したし(バイトの連絡のため)、堂々と亜好って呼べるようになったし(名字呼びだとお兄さんと紛らわしいから)、学校でもちょくちょく話すようになったし(主に新作ケーキの感想とか)
前に比べりゃ超進歩だぜ!
「クリスマス、ホントにお店出てくれるの?」
亜好が念を押すように尋ねる。この遠慮がちに見つめられるのがかなりツボなんだよなぁ。あー、亜好可愛い。
「だって、クリスマスって一番忙しいんだろ? 戦場みたいだって篠山さんも言ってたし」
篠山さんってのはパートさんの一人で、先代の店長(亜好のパパさん)の頃から働いているベテランらしい。小柄ですげー若く見えるのに、中学生、小学生、保育園の子供がそれぞれいるというなかなかの猛者だ。
その猛者が“クリスマスは血反吐を吐くほど忙しい。嘗めてかかると貧血起こす”と豪語していたから、ホントにすごいんだろうと思う。
だから人手いると思うんだけどなぁ・・・。俺って繁忙期には要らないような役立たずってこと? いや、自分で言うのもなんだけど結構優秀なバイトだぞ、俺は。じゃあ逆に、忙しすぎるから俺が倒れちゃうかもって心配して言ってくれてるとか? 亜好優しいからなぁ~。えへへ。
「予定あったりしたら無理しなくていいんだよ? クリスマスだから、その・・・彼女とか・・・」
「うへっ? か、彼女!? 」
思ってもいなかったことを言われ、俺はものすごく間抜けな声を出した。
彼女なんかいるわけ無いだろ! 俺は亜好一筋だっつーの! 亜好が好きだ-! 俺は亜好と付き合いたいんだー!!
「俺今彼女いないし、予定もまっしろしろすけだから。全然ヨユーで店出れるから」
心の中で亜好への愛を叫びながら、表面上はヘラヘラとお調子者の笑顔を浮かべて言った。
亜好はようやく安心してくれたらしく、持っていた手帳に俺のシフトを書き込んだ。亜好の手帳は、パートさんの子供に貰ったらしく、極彩色の歪な形のキャラクターが描いてある。正直可愛いのかどうか俺にはよく分からない。けど、それをちゃんと使ってあげてる亜好、マジ天使。優しすぎる。もう超好き。
「あのさ、早川」
萌えてる俺を、亜好が呼び掛ける。
悲しいかな、亜好からは未だ名字呼びなんだよな・・・。俺のことも名前で呼んでほしいんだけど、なんかタイミング逃して、どんどん今更感出ちゃって、言い出せないでいる。ホント俺ってヘタレ・・・。
「クリスマス予定ないなら、お店終わった後うちに来ない?」
亜好が上目遣いで俺を見つめる。可愛い。マジ可愛い。
クリスマスね、うん。店が終わった後にうちに。・・・ん? うちってどこだ? まさか亜好んち!? え、え、え!? お誘い!?
「ぅえぁあぁ!?」
「えっ、早川!? どしたの!?」
妙な雄叫びを上げてしまい、亜好をビビらせてしまった。
「な、な、何でも無い! 大丈夫!」
慌てて取り繕う俺。
「亜好んち、行って良いの?」
期待と興奮に鼻血出しそうになりつつ、何とか尋ね返す。やばい。俺、今、超鼻息荒い。
「ちょっとした打ち上げって言うか、クリスマスパーティーも兼ねて、うちでご飯食べないかなぁって思って」
亜好と一緒にメシ。しかもクリスマスパーティー。最高すぎる。
俺は即妄想した。
小さなクリスマスツリーの飾られた亜好の部屋。
二人っきりでケーキを食べて、不意に訪れる沈黙。
見つめ合う俺たち。
“亜好、クリーム付いてる”そう言って俺が亜好の唇を舐める。
亜好は恥ずかしそうにしながら潤んだ瞳で俺を見つめて言うんだ。“クリームじゃなくて、もっと別のところ舐めて・・・敦士”
的な!? あー、やばい! たまんねぇ!!
俺の鼻息はますます荒くなる。
けれど、次の瞬間に見事なほどに治まった。
「お兄ちゃんの手料理すっごい美味しいんだよ」
亜好の無垢な笑顔がずがーんと一撃。そうでした。二人っきりな訳がないんでした。
亜好のお兄ちゃん:桂樹(けいき)さん。
目下唯一の俺の恋の障害。亜好と血が繋がってるとは思えないほど似てなくて、“実は昔軍人でした”とか言われても普通に納得出来そうな超強面。
しかも俺の亜好への気持ちに気付いてるらしく、二人になると嫌味言われたり、すげー怖い目で睨まれたりする。いや、桂樹さんの目つきが怖いのは俺に対してだけじゃなくデフォルトだけど。
そっか・・・桂樹さんも一緒か。
意気消沈する俺。
だけど、
「毎年お兄ちゃんと二人だけだから寂しくてさ。早川が来てくれるなんて嬉しいな」
はい、亜好のはにかみ顔頂きました-!!
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たちまちテンション急上昇した俺は、また鼻息を荒くした。
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