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好き色判断
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好き色判断
特異体質、第六感、なんと言えばいいのか分からないが、俺:海馬一瑠(かいば いちる)にはちょっとした特技がある。
昼休みも終わり頃、4~5人で一緒に弁当を食べていたのにいつの間にか1人、2人と立ち去っていき、なんか不自然だなー、雲行き怪しいなーなんて思っていたところだった。
残されたのは俺と女子の2人きり。同じグループの中にはいるけど、クラス違うし、あんまり2人では話したことのない相手だ。名前は確かミカちゃん・・って、ソウタが呼んでたような気がする。フルネームは・・・ごめん、覚えてない。
そのミカちゃんだけど、2人きりになったあたりから、徐々にうっすらと光り始めていた。あ、別にミカちゃんが実際に発光しているっていう訳じゃない。俺の目にそう見えてるってだけだ。
「あのね、海馬くん。実は・・」
ミカちゃんから見える光が、段々と強くなっていく。光の色が変わって薄いピンクがかった色になった時、『あぁ、来るな』って思った。
「私、海馬くんのこと好きなの。付き合ってくれないかな?」
恥ずかしそうに頬を染めたミカちゃんの、突然の告白だった。
これが俺の特技。これから告白してくれるって相手が、なぜか光って見えるのだ。
初めてこの光が見えたのは小学校の卒業式だった。幼なじみの泣き顔が光って見えて、俺は真っ先に目がおかしくなったのかと思った。でも他のヤツを見ても光ってないから、次は幼なじみが幽霊にでも取り憑かれたのかとか、こいつ実は宇宙人だったんじゃないかとか疑った。そして内心すげービビっていた俺は、幼なじみからの告白を聞き流して大層怒らせるという結果になった。
中学に上がってからも、時々人が光って見えることがあり、その時は決まって告られた。だから、理由はよく分からないなりに、光ってるヤツが居たら今から告られるっていうメカニズムは理解した。
そんな訳で青春の一大イベントのはずの告白に、ちっともドキドキできないという悲しき17歳なのである・・・。
「えーっと・・・ごめん。あんま話したことないし。それに俺、好きとかよく分からないし」
せっかく告ってくれてんのに、こんな答えでホント申し訳ない。けど・・とりあえず付き合う、みたいな器用な質じゃないんだよ。
うまく説明できないなりに謝って、ミカちゃんも納得してくれた。
予鈴も鳴ったのでミカちゃんと別れて教室に戻る。と、その途中の階段でよろめいている後ろ姿を見つけた。
うちのクラスの学級委員長:諸見郁(もろみ いく)だ。次の授業の準備なのだろう大きな荷物を抱えている。
「手伝うよ」
急ぎ足で追い付いて、横から荷物を取り上げるようにして持ってやった。諸見はチビだし細っこいし、下手したら荷物に潰れそうだ。
「ありがとう、海馬くん」
諸見が照れくさそうに笑う。
「こちらこそ。授業に遅れる免罪符になるから丁度良い」
「ダメだよ、遅れないように急がなくっちゃ」
俺が冗談めかして言うと、諸見が真面目くさった返しをする。コイツはいつもこんな感じだ。生真面目で、級長だからって教師にも生徒にもこき使われててもニコニコしてる。
そして・・・
「海馬くんって優しいよね」
こうして2人になった時はいつも光ってる。まだピンク色には変わってないけど。
つまり諸見は、俺のことが好きってことだよな・・・? 男同士だけど。まぁ見た目的には、諸見がソッチの人でも不思議はない・・のか? っていうか俺はノーマルだし、好かれてもどうにもなんないんだけど・・・。
「ホントに助かったよ。ありがとう」
「あぁ、うん」
考えながら歩いてるうちに教室に着いていた。本鈴は鳴った後だけど、まだ先生は来てなかったようだから遅刻にならずセーフだった。
「なぁなぁ、告られたんだろ?」
「えっ?」
席に着くなり横からソウタにペンで突つかれてギョッとした。
「ミカちゃんだよ。俺ら気ぃ利かせて2人きりにしてやったんだから感謝しろよな」
得意顔でウインクなんてして見せるソウタがキモい。
「あぁ、告られたって・・そっちか」
てっきり諸見のことを言われたのかと思って身構えてしまった。
「そっちってなんだよ?」
「いやいや別に何でもないけど」
不思議そうな顔をするソウタに慌てて誤魔化して、ミカちゃんからの告白は低調にお断りしたことを伝える。"勿体ない"とか"贅沢者”とか"モテを俺にも分けろ”とか散々言われた。
騒いでるうちに先生が来て、ソウタが怒られて、皆が笑う。笑ってる中には諸見も居て、目が合った。何となく目配せしてやると諸見が微笑んで、また光が見えた。
諸見もそのうち告白してくるつもりなんだろうか。男が男に告ってくるのってどんな感じなんだろ。カミングアウトも兼ねてんだから、きっと結構な度胸がいるよな。・・・だからアイツ、いつも2人になった時あんなに光ってるのに、告白まではしてこないのかな。
いや、告白されたところで断るしかないんだから、このまま告白されない方がいいんだけど。
けど、そうすると諸見はずっと俺に片思いしたまんまってことで、それってアイツにとって無駄な時間になっちゃうんじゃないのか? だったら早めに振ってやった方が、アイツのためになる・・・のか?
真面目な顔して授業を受ける諸見の横顔を見ながら悶々と考える。すると、
ーーーボコッ。
「おい海馬、俺の授業聞いてっか~?」
いつの間にか真横に立ってた教師に丸めた教科書で叩かれた。
翌日。
「諸見、一緒に昼ご飯食べないか?」
昼休み、俺はパンを片手に諸見を誘った。そんなことをしたのは初めてなので、諸見はとてもキョトンとしていた。
「なんだか珍しいね。海馬くん、いつも平島くんたちと一緒なのに」
素直に中庭まで付いてきた諸見が戸惑いがちに呟く。ちなみに平島というのはソウタの名字だ。
「なんかたまには諸見と2人でゆっくり話してみたいかなーなんて思ってさ」
我ながら苦しい説明だ。なんの理由にもなってない。けど、諸見はどことなく嬉しそうだし、結構いい感じかもしれない。いつも通り光って見えるし。
考えた結果、俺は諸見が告白しやすいようにお膳立てしてやることにしたのだ。
貴重な高校2年というこの時を、叶わぬ相手(俺)に片思いしているよりも、さっさと見切りをつけて次に行った方が諸見のために決まってる。諸見は真面目で良いヤツで、見た目も結構可愛い方だと思うから、きっと好きになってくれる男だって少なくないんじゃないかと思うんだ。
って訳だから。さぁ、いつでも告白して来い!
「チョコホイップパンって美味しいね」
「チキン南蛮サンドもなかなか美味いよ」
小春日和の中庭で、交わされるのはそんな暢気な会話ばかり。
こっちはこんなに身構えてるのに、諸見はなかなか告ってこない。ずっと光って見えてるのに!
「海馬くんとお昼食べるのすっごく楽しかった。ありがとう」
昼休みの終わり際。やっと光がピンクになって、遂にくるかと思いきや、諸見が口にしたのは単なる礼だった。
あんまり人の来ない中庭で2人っきりって、結構告白してくる場所としてベタだと思ったんだけどな・・・。
肩すかしを食らった俺は、次の作戦を練ることにした。
・・・が、
その後も諸見は、放課後2人で教室に残ろうとも(わざわざ委員会の手伝いをかって出たのに)、朝の皆が登校する前の教室で2人きりになろうとも(わざわざ日直代わってもらったのに)、一緒に帰ろうと誘って帰りにカフェやら図書館やらに寄り道をしようとも、果ては休みの日に誘って2人で遊びに出かけようとも、全く告白してくる気配がなかった。
俺はイライラしていた。
「海馬くん、ごめんね。今日は委員会あって・・・」
俺の目の前では、諸見が小さい体をよりいっそう小さくして頭を下げている。昼休みに委員会があるとかで、弁当も会議室で食べるらしい。
「あぁ、いいよいいよ。大変だな」
俺は落ち着いた振る舞いで諸見に"気にするな”と言ってやる。本当に気にしてないからだ。イライラしているのは昼飯の誘いを断られたことなんかじゃない。
「あの・・明日の昼休みは大丈夫だから・・一緒にお昼食べようね」
去り際にそっと俺の袖を掴んで恥ずかしそうにそんな耳打ちをする諸見は、やっぱり今日も薄いピンクで光ってる。
「ん、りょーかい」
笑顔で諸見を見送る俺。けど実は思いっきり奥歯を噛みしめていた。
諸見は一体いつになったら告ってくるんだ? こっちは今か今かと身構えてるっていうのに。
態度見てても明らかだとはいえ、諸見からはっきりと好きだと言ってこない以上は断ることもできない。
告白しやすい雰囲気を作ってやろうとして、最近はどんどん一緒にいる時間が長くなっていってるし。この状況は、多分・・・いや絶対に良くない。これじゃ気を持たせるようなことをしてしまっているんじゃないかと思う。・・・って、分かってるんだけど、どうすりゃいいんだか。
「お、海馬。今日は一人?」
購買に行っていたらしいソウタが声をかけて来た。一人でいるのが珍しいだとか、最近つきあい悪いだとか言いながら俺の前の席に座る。
「なぁ・・・最近俺らとつるまないのって、やっぱミカちゃん振っちゃったのが気まずいからか?」
ツナマヨのたっぷり載ったパンにかぶりつきながら、ソウタが声を潜めて言った。
確か俺からは何の報告もしてなかったはずだけど、流石に仲間内だと話が回るのが早い。ってか俺、忘れてたかも。ごめんミカちゃん・・・。
「気まずいとかじゃないんだけど、ちょっと諸見と話したいっていうか・・」
断るために告られるの待ちをしてる・・とは言えないから、何となく濁してみる。ソウタは不思議そうな顔をした。
「そういや最近よく二人でいるの見るな。ってかさ、諸見って普段何話すの? ザ・真面目君って感じじゃん? つまんなくね?」
揶揄するように言って、マヨのついた指を舐める。手が滑ってるのか、野菜ジュースのストローをはずすのに苦戦してる。
「ザ・真面目なのは否定しないけど・・つまんなくはない、かな」
購買の袋に入っていたお手拭きをソウタに渡してやりつつ、ここ最近の諸見との時間を思い返した。
諸見は確かに委員長気質だけど、全く面白味のない朴念仁って感じじゃない。カラオケとかゲーセンとかにも普通に行くし、ってか意外にも歌めちゃくちゃ上手いし。あと、すげーよく笑う。・・・それはまぁ、俺のことが好きだからなのかもしれないけど・・・って、それは流石に思い上がりか。
「なのに告ってこねぇんだよなぁ・・・」
ポツリと思わず口から出てしまい、慌てて自分の口を塞ぐ。
「ん? なんか言ったか?」
幸いにもソウタにはパックジュース啜る音で聞こえてなかったらしい。助かった。
放課後。
「昼休みはホントにごめんね」
帰り道、まだ気にしてたらしい諸見が改めてと言う風に謝ってくるから、俺は吹き出してしまった。
「別に良いって。昼休みは明日も明後日もあるし、今もこうして一緒に帰ってんじゃん」
だからもう気にすんなって言って、諸見の頭をぽんぽんと撫でる。
「う、うん・・」
真っ赤になった諸見の顔を見て、俺はようやくハッとした。別に他意はなくて、ただなんか撫でやすい位置に諸見の頭があったから、自然に手が伸びてただけだったんだけど、諸見からしたら「好きな奴からの頭ぽんぽん」って結構な一大事なんじゃ・・・
「あー・・悪い。なんか子供扱いみたいなことした」
大した意味はないのだと笑って誤魔化す。諸見は大丈夫だと言って首を振った。
顔は真っ赤だし、相変わらずピンク色に光ってる。視線だって熱っぽくて、話す声は弾んでて、諸見の全部が「俺を好き」だって言ってるようなもんだ。
なのに・・・
「じゃあ、また明日」
今日もまた、告白されないまま諸見の家の前に着いてしまった。
「なぁ、諸見」
家に入ろうとしてる諸見を呼び止める。当然、諸見は何を言われるのか分かってないようで、ぽかんとした顔で振り返った。
「諸見って、俺のこと好きだろ?」
確信的に問いかける。ドサッと音を立てて、諸見は鞄を落とした。
「なのに、なんで告ってこないのかな~・・なんて。ハハ・・」
妙にシリアスにな感じになってしまったのが照れくさくて、なるべく軽い口調で冗談っぽく続ける。諸見は固まったままだ。
「あのー・・諸見?」
恐る恐る顔を覗き込んでみる。あんまり反応がないから気絶でもしてるのかと思ったけど、実際はそんな訳なくて。諸見は泣きそうな顔をしていた。
「ごめん・・」
涙声で謝って、鞄を拾って逃げるように家に入ってしまった。
「え・・っと・・」
置き去りにされた俺はどうして良いか分からず、しばらくその場で呆然としていた。
次の日。
「諸見・・は欠席か。珍しいな」
皆勤賞が当たり前の諸見の欠席に、担任もクラスメイトも皆が驚いた。
俺は昨日のことが原因だろうか、いやまさか・・って、そればっかりぐるぐる考えてた。
次の日も、また次の日も諸見は学校に来なかった。一応LINEも電話もしてみたけど何の音沙汰もない。けど、他のヤツからの連絡には返事してるみたいだから・・・やっぱり休んでるのは俺の所為なんだろう。
「センセー。俺、諸見くんにプリントとか持って行ってやりたいんですけど」
俺は覚悟を決めてそんな申し出をした。連絡しても無視される以上、直接会いに行って謝るしかないと思ったからだ。
もしかしたら諸見は、今までみたいに笑ってくれないのかもしれない。そう思ったら、今更ながらに強い後悔が押し寄せてきた。もしかしたら、デリカシーのない俺にすっかり愛想を尽かしてて・・・どうせ告られたら断るつもりだったんだからそうなったんならその方が良いに決まってるんだけど・・・でも、次に会う諸見は、もう光って見えないかもしれないと思ったら、なんか・・・
「・・・吐きそう」
ボソリ、と呟く俺。
「え? 海馬君も具合が悪いの?」
「あ、いや、違うんです。すいません」
諸見のお母さんに心配されて慌てて取り繕う。
放課後になって、俺は担任から預かったプリントとクラスで一番字のきれいな女子から借りたノートのコピーを持って諸見の家を訪ねた。諸見のお母さんは俺のトコとは違って若くて美人で、すごく小柄な人だ。諸見はお母さん似なんだなってぼんやり思った。
「郁、海馬君がお見舞いに来てくれたわよ」
二、三回ノックをしてドアを開ける。息子の返事も待たずに開けちゃうトコはうちと同じだ。
「海馬くん・・・」
諸見はベッドから半身を起こし、信じられないと言う顔でこっちを見てる。
「ドモ」
俺はばつの悪い心地がしつつ、とりあえず頭を下げた。
「ごめんね・・わざわざ」
二人きりになると、諸見はどこか固い声で謝った。視線を落として、俺の方を見ないようにしてる。
「俺の方こそ、ホントごめん」
俺は深々と頭を下げた。謝りながらも、諸見がまだ淡く光を放って見えることになぜかホッとしていた。
「なんかさ、変なこと言って悪かったな。何調子に乗ってんだよって感じだよな」
あの時言ったことはただの冗談だったのだと言わんばかりに、わざと自分を殴る真似をする。諸見がちっとも笑ってくれないのが痛い。
「ホント、ただ言ってみただけっていうか・・諸見が俺のこと好きだなんてマジで思ってる訳じゃないし・・・いや、冗談にしてもタチ悪過ぎたか。ごめんな」
我ながら情けなくなるくらい必死に言い訳する。・・・いや、言い訳にもなってないんだけど。
さっさと告白してもらって、さっさと次の恋を見つけてもらったほうがきっと諸見のためになる・・なんて、随分独りよがりな考えだったんだって気付いた。諸見が気持ちを隠してたいっていうなら、俺もちゃんと気付かない振りをするべきだったんだ。今まで告白してきてくれた人たちと同じように。
これからはちゃんと気付かない振りする。だから・・・
「俺のこと避けないで・・・学校にも来てくれよ」
絞り出した声は驚くほど情けなかった。
「ち、違くて・・・」
ようやく俺の方を見た諸見が、泣きそうな顔で首を振る。
「俺・・自分が、そんな・・分かり易いなんて思ってなくて・・・。態度とかで、その・・バレバレなんだったら、他の人にも気付かれてるのかもって思って・・・。そしたら、海馬くんにも迷惑になっちゃうから・・だから・・」
何度も何度も「ごめんなさい」と口にする諸見。俺のことが好きってのは否定しない。
ってか、俺が諸見の気持ちに気付いたのは、諸見が分かり易いってより俺の妙な特技の所為なんだけど・・・そんな説明したって信じてもらえないか。
「俺は別に迷惑じゃないよ」
とにかく諸見を宥めないとって思って、口を突いて出た台詞に自分で固まった。
この言い方は流石にまずい。迷惑じゃないなんて、まるで諸見の気持ちが嬉しいって言ってるようなもんで、完全に期待させてしまうわけで・・。
「あーっと・・あの・・」
泣き顔の諸見に見つめられて益々言葉に詰まる俺。諸見は相変わらずピンク色に光ってる。
「俺は、ホントに迷惑とか全然思ってないし、気付いてからは、その・・いつ告白してくるのかなーとかってそればっか気になってて、わざと二人っきりになれるように色々根回ししたりとかしてたくらいだし、だから寧ろ迷惑かけちゃってるのは俺の方で・・・」
待て待て待て。なんか喋れば喋るほどおかしな方向になっていってる気がするぞ。これじゃまるで、俺も諸見のことが好きで、すっげー期待して告白待ちしちゃってるみたいな、そんな風に思われ・・・
「・・・・」
「あ、あの・・海馬くん・・?」
ひとしきり喋ってフリーズした俺を諸見が心配そうに覗き込む。
諸見の顔は真っ赤だ。けど、多分今は俺の方が真っ赤になってると思う・・・。
「ごめん・・俺、ちょっと・・・・仕切り直させて」
頭を抱え、諸見に懇願する。諸見はオロオロしてる。
俺は自分のバカさ加減にほとほと呆れかえっていた。何が「さっさと告ってもらって断る」だ。何が「その方が諸見のため」だ。
単に俺は、諸見からの告白を待ってたんだ。好きだって諸見の口から言って欲しくて。
「あの・・海馬くん? 大丈夫?」
俺を見つめる諸見はやっぱりピンク色に光ってる。
「平気。俺、そろそろ帰るな」
よっこらせと立ち上がり、諸見の髪に触れる。そして言った。
「ちゃんと、明日は学校来いよな」
気持ちを自覚した途端に妙に気恥ずかしくなって、なんだか少しぶっきらぼうな言い方になった。
「うん。ありがとう」
諸見はしっかりと頷く。はにかんだ顔は、はっきりと俺を好きだと言っているような気がした。
特異体質、第六感、なんと言えばいいのか分からないが、俺:海馬一瑠(かいば いちる)にはちょっとした特技がある。
昼休みも終わり頃、4~5人で一緒に弁当を食べていたのにいつの間にか1人、2人と立ち去っていき、なんか不自然だなー、雲行き怪しいなーなんて思っていたところだった。
残されたのは俺と女子の2人きり。同じグループの中にはいるけど、クラス違うし、あんまり2人では話したことのない相手だ。名前は確かミカちゃん・・って、ソウタが呼んでたような気がする。フルネームは・・・ごめん、覚えてない。
そのミカちゃんだけど、2人きりになったあたりから、徐々にうっすらと光り始めていた。あ、別にミカちゃんが実際に発光しているっていう訳じゃない。俺の目にそう見えてるってだけだ。
「あのね、海馬くん。実は・・」
ミカちゃんから見える光が、段々と強くなっていく。光の色が変わって薄いピンクがかった色になった時、『あぁ、来るな』って思った。
「私、海馬くんのこと好きなの。付き合ってくれないかな?」
恥ずかしそうに頬を染めたミカちゃんの、突然の告白だった。
これが俺の特技。これから告白してくれるって相手が、なぜか光って見えるのだ。
初めてこの光が見えたのは小学校の卒業式だった。幼なじみの泣き顔が光って見えて、俺は真っ先に目がおかしくなったのかと思った。でも他のヤツを見ても光ってないから、次は幼なじみが幽霊にでも取り憑かれたのかとか、こいつ実は宇宙人だったんじゃないかとか疑った。そして内心すげービビっていた俺は、幼なじみからの告白を聞き流して大層怒らせるという結果になった。
中学に上がってからも、時々人が光って見えることがあり、その時は決まって告られた。だから、理由はよく分からないなりに、光ってるヤツが居たら今から告られるっていうメカニズムは理解した。
そんな訳で青春の一大イベントのはずの告白に、ちっともドキドキできないという悲しき17歳なのである・・・。
「えーっと・・・ごめん。あんま話したことないし。それに俺、好きとかよく分からないし」
せっかく告ってくれてんのに、こんな答えでホント申し訳ない。けど・・とりあえず付き合う、みたいな器用な質じゃないんだよ。
うまく説明できないなりに謝って、ミカちゃんも納得してくれた。
予鈴も鳴ったのでミカちゃんと別れて教室に戻る。と、その途中の階段でよろめいている後ろ姿を見つけた。
うちのクラスの学級委員長:諸見郁(もろみ いく)だ。次の授業の準備なのだろう大きな荷物を抱えている。
「手伝うよ」
急ぎ足で追い付いて、横から荷物を取り上げるようにして持ってやった。諸見はチビだし細っこいし、下手したら荷物に潰れそうだ。
「ありがとう、海馬くん」
諸見が照れくさそうに笑う。
「こちらこそ。授業に遅れる免罪符になるから丁度良い」
「ダメだよ、遅れないように急がなくっちゃ」
俺が冗談めかして言うと、諸見が真面目くさった返しをする。コイツはいつもこんな感じだ。生真面目で、級長だからって教師にも生徒にもこき使われててもニコニコしてる。
そして・・・
「海馬くんって優しいよね」
こうして2人になった時はいつも光ってる。まだピンク色には変わってないけど。
つまり諸見は、俺のことが好きってことだよな・・・? 男同士だけど。まぁ見た目的には、諸見がソッチの人でも不思議はない・・のか? っていうか俺はノーマルだし、好かれてもどうにもなんないんだけど・・・。
「ホントに助かったよ。ありがとう」
「あぁ、うん」
考えながら歩いてるうちに教室に着いていた。本鈴は鳴った後だけど、まだ先生は来てなかったようだから遅刻にならずセーフだった。
「なぁなぁ、告られたんだろ?」
「えっ?」
席に着くなり横からソウタにペンで突つかれてギョッとした。
「ミカちゃんだよ。俺ら気ぃ利かせて2人きりにしてやったんだから感謝しろよな」
得意顔でウインクなんてして見せるソウタがキモい。
「あぁ、告られたって・・そっちか」
てっきり諸見のことを言われたのかと思って身構えてしまった。
「そっちってなんだよ?」
「いやいや別に何でもないけど」
不思議そうな顔をするソウタに慌てて誤魔化して、ミカちゃんからの告白は低調にお断りしたことを伝える。"勿体ない"とか"贅沢者”とか"モテを俺にも分けろ”とか散々言われた。
騒いでるうちに先生が来て、ソウタが怒られて、皆が笑う。笑ってる中には諸見も居て、目が合った。何となく目配せしてやると諸見が微笑んで、また光が見えた。
諸見もそのうち告白してくるつもりなんだろうか。男が男に告ってくるのってどんな感じなんだろ。カミングアウトも兼ねてんだから、きっと結構な度胸がいるよな。・・・だからアイツ、いつも2人になった時あんなに光ってるのに、告白まではしてこないのかな。
いや、告白されたところで断るしかないんだから、このまま告白されない方がいいんだけど。
けど、そうすると諸見はずっと俺に片思いしたまんまってことで、それってアイツにとって無駄な時間になっちゃうんじゃないのか? だったら早めに振ってやった方が、アイツのためになる・・・のか?
真面目な顔して授業を受ける諸見の横顔を見ながら悶々と考える。すると、
ーーーボコッ。
「おい海馬、俺の授業聞いてっか~?」
いつの間にか真横に立ってた教師に丸めた教科書で叩かれた。
翌日。
「諸見、一緒に昼ご飯食べないか?」
昼休み、俺はパンを片手に諸見を誘った。そんなことをしたのは初めてなので、諸見はとてもキョトンとしていた。
「なんだか珍しいね。海馬くん、いつも平島くんたちと一緒なのに」
素直に中庭まで付いてきた諸見が戸惑いがちに呟く。ちなみに平島というのはソウタの名字だ。
「なんかたまには諸見と2人でゆっくり話してみたいかなーなんて思ってさ」
我ながら苦しい説明だ。なんの理由にもなってない。けど、諸見はどことなく嬉しそうだし、結構いい感じかもしれない。いつも通り光って見えるし。
考えた結果、俺は諸見が告白しやすいようにお膳立てしてやることにしたのだ。
貴重な高校2年というこの時を、叶わぬ相手(俺)に片思いしているよりも、さっさと見切りをつけて次に行った方が諸見のために決まってる。諸見は真面目で良いヤツで、見た目も結構可愛い方だと思うから、きっと好きになってくれる男だって少なくないんじゃないかと思うんだ。
って訳だから。さぁ、いつでも告白して来い!
「チョコホイップパンって美味しいね」
「チキン南蛮サンドもなかなか美味いよ」
小春日和の中庭で、交わされるのはそんな暢気な会話ばかり。
こっちはこんなに身構えてるのに、諸見はなかなか告ってこない。ずっと光って見えてるのに!
「海馬くんとお昼食べるのすっごく楽しかった。ありがとう」
昼休みの終わり際。やっと光がピンクになって、遂にくるかと思いきや、諸見が口にしたのは単なる礼だった。
あんまり人の来ない中庭で2人っきりって、結構告白してくる場所としてベタだと思ったんだけどな・・・。
肩すかしを食らった俺は、次の作戦を練ることにした。
・・・が、
その後も諸見は、放課後2人で教室に残ろうとも(わざわざ委員会の手伝いをかって出たのに)、朝の皆が登校する前の教室で2人きりになろうとも(わざわざ日直代わってもらったのに)、一緒に帰ろうと誘って帰りにカフェやら図書館やらに寄り道をしようとも、果ては休みの日に誘って2人で遊びに出かけようとも、全く告白してくる気配がなかった。
俺はイライラしていた。
「海馬くん、ごめんね。今日は委員会あって・・・」
俺の目の前では、諸見が小さい体をよりいっそう小さくして頭を下げている。昼休みに委員会があるとかで、弁当も会議室で食べるらしい。
「あぁ、いいよいいよ。大変だな」
俺は落ち着いた振る舞いで諸見に"気にするな”と言ってやる。本当に気にしてないからだ。イライラしているのは昼飯の誘いを断られたことなんかじゃない。
「あの・・明日の昼休みは大丈夫だから・・一緒にお昼食べようね」
去り際にそっと俺の袖を掴んで恥ずかしそうにそんな耳打ちをする諸見は、やっぱり今日も薄いピンクで光ってる。
「ん、りょーかい」
笑顔で諸見を見送る俺。けど実は思いっきり奥歯を噛みしめていた。
諸見は一体いつになったら告ってくるんだ? こっちは今か今かと身構えてるっていうのに。
態度見てても明らかだとはいえ、諸見からはっきりと好きだと言ってこない以上は断ることもできない。
告白しやすい雰囲気を作ってやろうとして、最近はどんどん一緒にいる時間が長くなっていってるし。この状況は、多分・・・いや絶対に良くない。これじゃ気を持たせるようなことをしてしまっているんじゃないかと思う。・・・って、分かってるんだけど、どうすりゃいいんだか。
「お、海馬。今日は一人?」
購買に行っていたらしいソウタが声をかけて来た。一人でいるのが珍しいだとか、最近つきあい悪いだとか言いながら俺の前の席に座る。
「なぁ・・・最近俺らとつるまないのって、やっぱミカちゃん振っちゃったのが気まずいからか?」
ツナマヨのたっぷり載ったパンにかぶりつきながら、ソウタが声を潜めて言った。
確か俺からは何の報告もしてなかったはずだけど、流石に仲間内だと話が回るのが早い。ってか俺、忘れてたかも。ごめんミカちゃん・・・。
「気まずいとかじゃないんだけど、ちょっと諸見と話したいっていうか・・」
断るために告られるの待ちをしてる・・とは言えないから、何となく濁してみる。ソウタは不思議そうな顔をした。
「そういや最近よく二人でいるの見るな。ってかさ、諸見って普段何話すの? ザ・真面目君って感じじゃん? つまんなくね?」
揶揄するように言って、マヨのついた指を舐める。手が滑ってるのか、野菜ジュースのストローをはずすのに苦戦してる。
「ザ・真面目なのは否定しないけど・・つまんなくはない、かな」
購買の袋に入っていたお手拭きをソウタに渡してやりつつ、ここ最近の諸見との時間を思い返した。
諸見は確かに委員長気質だけど、全く面白味のない朴念仁って感じじゃない。カラオケとかゲーセンとかにも普通に行くし、ってか意外にも歌めちゃくちゃ上手いし。あと、すげーよく笑う。・・・それはまぁ、俺のことが好きだからなのかもしれないけど・・・って、それは流石に思い上がりか。
「なのに告ってこねぇんだよなぁ・・・」
ポツリと思わず口から出てしまい、慌てて自分の口を塞ぐ。
「ん? なんか言ったか?」
幸いにもソウタにはパックジュース啜る音で聞こえてなかったらしい。助かった。
放課後。
「昼休みはホントにごめんね」
帰り道、まだ気にしてたらしい諸見が改めてと言う風に謝ってくるから、俺は吹き出してしまった。
「別に良いって。昼休みは明日も明後日もあるし、今もこうして一緒に帰ってんじゃん」
だからもう気にすんなって言って、諸見の頭をぽんぽんと撫でる。
「う、うん・・」
真っ赤になった諸見の顔を見て、俺はようやくハッとした。別に他意はなくて、ただなんか撫でやすい位置に諸見の頭があったから、自然に手が伸びてただけだったんだけど、諸見からしたら「好きな奴からの頭ぽんぽん」って結構な一大事なんじゃ・・・
「あー・・悪い。なんか子供扱いみたいなことした」
大した意味はないのだと笑って誤魔化す。諸見は大丈夫だと言って首を振った。
顔は真っ赤だし、相変わらずピンク色に光ってる。視線だって熱っぽくて、話す声は弾んでて、諸見の全部が「俺を好き」だって言ってるようなもんだ。
なのに・・・
「じゃあ、また明日」
今日もまた、告白されないまま諸見の家の前に着いてしまった。
「なぁ、諸見」
家に入ろうとしてる諸見を呼び止める。当然、諸見は何を言われるのか分かってないようで、ぽかんとした顔で振り返った。
「諸見って、俺のこと好きだろ?」
確信的に問いかける。ドサッと音を立てて、諸見は鞄を落とした。
「なのに、なんで告ってこないのかな~・・なんて。ハハ・・」
妙にシリアスにな感じになってしまったのが照れくさくて、なるべく軽い口調で冗談っぽく続ける。諸見は固まったままだ。
「あのー・・諸見?」
恐る恐る顔を覗き込んでみる。あんまり反応がないから気絶でもしてるのかと思ったけど、実際はそんな訳なくて。諸見は泣きそうな顔をしていた。
「ごめん・・」
涙声で謝って、鞄を拾って逃げるように家に入ってしまった。
「え・・っと・・」
置き去りにされた俺はどうして良いか分からず、しばらくその場で呆然としていた。
次の日。
「諸見・・は欠席か。珍しいな」
皆勤賞が当たり前の諸見の欠席に、担任もクラスメイトも皆が驚いた。
俺は昨日のことが原因だろうか、いやまさか・・って、そればっかりぐるぐる考えてた。
次の日も、また次の日も諸見は学校に来なかった。一応LINEも電話もしてみたけど何の音沙汰もない。けど、他のヤツからの連絡には返事してるみたいだから・・・やっぱり休んでるのは俺の所為なんだろう。
「センセー。俺、諸見くんにプリントとか持って行ってやりたいんですけど」
俺は覚悟を決めてそんな申し出をした。連絡しても無視される以上、直接会いに行って謝るしかないと思ったからだ。
もしかしたら諸見は、今までみたいに笑ってくれないのかもしれない。そう思ったら、今更ながらに強い後悔が押し寄せてきた。もしかしたら、デリカシーのない俺にすっかり愛想を尽かしてて・・・どうせ告られたら断るつもりだったんだからそうなったんならその方が良いに決まってるんだけど・・・でも、次に会う諸見は、もう光って見えないかもしれないと思ったら、なんか・・・
「・・・吐きそう」
ボソリ、と呟く俺。
「え? 海馬君も具合が悪いの?」
「あ、いや、違うんです。すいません」
諸見のお母さんに心配されて慌てて取り繕う。
放課後になって、俺は担任から預かったプリントとクラスで一番字のきれいな女子から借りたノートのコピーを持って諸見の家を訪ねた。諸見のお母さんは俺のトコとは違って若くて美人で、すごく小柄な人だ。諸見はお母さん似なんだなってぼんやり思った。
「郁、海馬君がお見舞いに来てくれたわよ」
二、三回ノックをしてドアを開ける。息子の返事も待たずに開けちゃうトコはうちと同じだ。
「海馬くん・・・」
諸見はベッドから半身を起こし、信じられないと言う顔でこっちを見てる。
「ドモ」
俺はばつの悪い心地がしつつ、とりあえず頭を下げた。
「ごめんね・・わざわざ」
二人きりになると、諸見はどこか固い声で謝った。視線を落として、俺の方を見ないようにしてる。
「俺の方こそ、ホントごめん」
俺は深々と頭を下げた。謝りながらも、諸見がまだ淡く光を放って見えることになぜかホッとしていた。
「なんかさ、変なこと言って悪かったな。何調子に乗ってんだよって感じだよな」
あの時言ったことはただの冗談だったのだと言わんばかりに、わざと自分を殴る真似をする。諸見がちっとも笑ってくれないのが痛い。
「ホント、ただ言ってみただけっていうか・・諸見が俺のこと好きだなんてマジで思ってる訳じゃないし・・・いや、冗談にしてもタチ悪過ぎたか。ごめんな」
我ながら情けなくなるくらい必死に言い訳する。・・・いや、言い訳にもなってないんだけど。
さっさと告白してもらって、さっさと次の恋を見つけてもらったほうがきっと諸見のためになる・・なんて、随分独りよがりな考えだったんだって気付いた。諸見が気持ちを隠してたいっていうなら、俺もちゃんと気付かない振りをするべきだったんだ。今まで告白してきてくれた人たちと同じように。
これからはちゃんと気付かない振りする。だから・・・
「俺のこと避けないで・・・学校にも来てくれよ」
絞り出した声は驚くほど情けなかった。
「ち、違くて・・・」
ようやく俺の方を見た諸見が、泣きそうな顔で首を振る。
「俺・・自分が、そんな・・分かり易いなんて思ってなくて・・・。態度とかで、その・・バレバレなんだったら、他の人にも気付かれてるのかもって思って・・・。そしたら、海馬くんにも迷惑になっちゃうから・・だから・・」
何度も何度も「ごめんなさい」と口にする諸見。俺のことが好きってのは否定しない。
ってか、俺が諸見の気持ちに気付いたのは、諸見が分かり易いってより俺の妙な特技の所為なんだけど・・・そんな説明したって信じてもらえないか。
「俺は別に迷惑じゃないよ」
とにかく諸見を宥めないとって思って、口を突いて出た台詞に自分で固まった。
この言い方は流石にまずい。迷惑じゃないなんて、まるで諸見の気持ちが嬉しいって言ってるようなもんで、完全に期待させてしまうわけで・・。
「あーっと・・あの・・」
泣き顔の諸見に見つめられて益々言葉に詰まる俺。諸見は相変わらずピンク色に光ってる。
「俺は、ホントに迷惑とか全然思ってないし、気付いてからは、その・・いつ告白してくるのかなーとかってそればっか気になってて、わざと二人っきりになれるように色々根回ししたりとかしてたくらいだし、だから寧ろ迷惑かけちゃってるのは俺の方で・・・」
待て待て待て。なんか喋れば喋るほどおかしな方向になっていってる気がするぞ。これじゃまるで、俺も諸見のことが好きで、すっげー期待して告白待ちしちゃってるみたいな、そんな風に思われ・・・
「・・・・」
「あ、あの・・海馬くん・・?」
ひとしきり喋ってフリーズした俺を諸見が心配そうに覗き込む。
諸見の顔は真っ赤だ。けど、多分今は俺の方が真っ赤になってると思う・・・。
「ごめん・・俺、ちょっと・・・・仕切り直させて」
頭を抱え、諸見に懇願する。諸見はオロオロしてる。
俺は自分のバカさ加減にほとほと呆れかえっていた。何が「さっさと告ってもらって断る」だ。何が「その方が諸見のため」だ。
単に俺は、諸見からの告白を待ってたんだ。好きだって諸見の口から言って欲しくて。
「あの・・海馬くん? 大丈夫?」
俺を見つめる諸見はやっぱりピンク色に光ってる。
「平気。俺、そろそろ帰るな」
よっこらせと立ち上がり、諸見の髪に触れる。そして言った。
「ちゃんと、明日は学校来いよな」
気持ちを自覚した途端に妙に気恥ずかしくなって、なんだか少しぶっきらぼうな言い方になった。
「うん。ありがとう」
諸見はしっかりと頷く。はにかんだ顔は、はっきりと俺を好きだと言っているような気がした。
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