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そのとき、ニコライは2
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初めはどこか自分と重なる境遇のフィオラに親近感を持っただけだった。
しかし蓋を開けてみたらどうだ。
自分は、何不自由なく生活している。
祖父には疎まれていたが、使用人たちには恵まれていたと思う。それに、教育は受けさせてもらっていた。
フィオラに出会わなければ、そんなことにも気付けなかったなんて。
なにが、孤独だ……
なにが、しがらみのない生き方だ……
いじけるだけの自分と違い、強く前向きに生きるフィオラ。
ニコライは、この時ほど自分の入る穴を掘りたいと思ったことはないという。
それはともかくとして、いつしか彼女を助けたいと思うようになっていたのだ。
そりゃ、彼女との結婚が、彼女を助けることに繋がるかは分からないが、支えになることは出来るはずだ。その為の地位は手に入れた。
それなのに……
正体を知っている事を知らないとはいえ、わざわざ赤の魔女を斡旋してくるとは、どういう了見だ。と、ニコライの眉間のしわが深くなる。
俺のこと、忘れている……??
家出少年が家に転がり込んでくるなんて、結構な体験ではないのか?
いや……彼女の境遇を考えれば、些細な出来事なのかも……
ああ、でも。逆に、赤の魔女を斡旋してくるということは、最終的には……って、ことだよな??
では、何故そんなまどろっこしいことを?と、ニコライの報告書を持つ手がぷるぷると震えた。
「わけが分からん」
「ひぇっ、どこか間違ってましたかっ」
報告書を睨み付けていたニコライが視線を上げると、目の前でぷるぷると震える団員が立っていた。
「いや……大丈夫だ」
報告書を見ながら意識を飛ばしていたようだ。心の声が漏れ出てしまっていた。
今日は集中出来ないかもしれない。
ニコライが小さく息を吐き「報告書を提出して来る」と、席を立つと、耳を欹てている団員達の耳がぴくぴくと動いた。
ニコライが部屋を出て、扉が閉まる瞬間。団員達のひそひそ声が聞こえた。
「―――団長が正気に戻ってくれて良かったよ」
「―――相手は、アレだろ?このまま破談になれば、尚良しだな」
「―――でも、どんな娘なんだろうな」
「―――奴隷を見たことあるだろ?どうせ、似たようなもんで酷いだろうさ」
「―――だから、取り敢えず婚約に留めたってことか」
ニコライは扉の前で、暫く団員達の噂話に耳を傾けていたが、そのどれもがフィオラを貶める内容であった。
多少覚悟はしていたものの、その聞くに堪えない内容にニコライは歯噛みした。
「お前達に何が分かるというのだ」
フィオラは、お前達の何倍も頑張っている。と、声を大にして言ってやりたかった。
だが、フィオラもフィオラだ。魔力があるなら冷遇されることもないだろうに、どうして黙っているのか。
「あの人も、今は知られない方が良いと言っているけど……辺境伯も、本当に知らないようだしな……」
あの人がそう言うなら、意味があるのだろう。しかし、と、ニコライは考える。
……もし、自分が素直に求婚までの経緯を伝えていたら、教えてくれていただろうか。
ニコライは少し後悔していた。
会って直ぐにフィオラは「自分が赤の魔女だ」と、打ち明けてくれると、勝手に思っていたのだ。
それが、まるで初対面かのような対応をされ、それが面白くなくて変な意地を張ってしまった。
そりゃ、赤の魔女としてしか会っていないんだから、言えないよな……
お陰でおかしな契約を結ぶ事になってしまったのだ。自業自得であった。
ニコライは、溜め息を繰り返し、とぼとぼと歩いていた。
―――そもそも、フィオラは俺と結婚したいと思っているのか?
あの、おかしな発案をしたのが、俺を本気で拒んでのことだとしたら―――……
ニコライはここに来て基本的なところに思い当たり愕然としたが、直ぐに「いやいや」と、首を振った。
元々、政略的なものでもないのだ。ましてや、恋愛感情なんてものもない。
フィオラに想い人がいるとも思えないが、本当に嫌だと言われたら、その時は相談役のような立場から、彼女を見守っていけばいいだけのこと―――……
「……っ?!」
そこまで考えて、突然ぞわぞわするような、締め付けられるような胸の痛みに襲われた。
ニコライは根眉を寄せ、思わずしゃがみ込んでいた。何とも言えない痛みに胸を押さえ付ける。
「……何だ、これは?まさか……何かの病気?」
今まで、ニコライは病気とは無縁であった。風邪を引くことはあったが、こんな切なくなるような胸の痛みは初めての経験だった。
しかし蓋を開けてみたらどうだ。
自分は、何不自由なく生活している。
祖父には疎まれていたが、使用人たちには恵まれていたと思う。それに、教育は受けさせてもらっていた。
フィオラに出会わなければ、そんなことにも気付けなかったなんて。
なにが、孤独だ……
なにが、しがらみのない生き方だ……
いじけるだけの自分と違い、強く前向きに生きるフィオラ。
ニコライは、この時ほど自分の入る穴を掘りたいと思ったことはないという。
それはともかくとして、いつしか彼女を助けたいと思うようになっていたのだ。
そりゃ、彼女との結婚が、彼女を助けることに繋がるかは分からないが、支えになることは出来るはずだ。その為の地位は手に入れた。
それなのに……
正体を知っている事を知らないとはいえ、わざわざ赤の魔女を斡旋してくるとは、どういう了見だ。と、ニコライの眉間のしわが深くなる。
俺のこと、忘れている……??
家出少年が家に転がり込んでくるなんて、結構な体験ではないのか?
いや……彼女の境遇を考えれば、些細な出来事なのかも……
ああ、でも。逆に、赤の魔女を斡旋してくるということは、最終的には……って、ことだよな??
では、何故そんなまどろっこしいことを?と、ニコライの報告書を持つ手がぷるぷると震えた。
「わけが分からん」
「ひぇっ、どこか間違ってましたかっ」
報告書を睨み付けていたニコライが視線を上げると、目の前でぷるぷると震える団員が立っていた。
「いや……大丈夫だ」
報告書を見ながら意識を飛ばしていたようだ。心の声が漏れ出てしまっていた。
今日は集中出来ないかもしれない。
ニコライが小さく息を吐き「報告書を提出して来る」と、席を立つと、耳を欹てている団員達の耳がぴくぴくと動いた。
ニコライが部屋を出て、扉が閉まる瞬間。団員達のひそひそ声が聞こえた。
「―――団長が正気に戻ってくれて良かったよ」
「―――相手は、アレだろ?このまま破談になれば、尚良しだな」
「―――でも、どんな娘なんだろうな」
「―――奴隷を見たことあるだろ?どうせ、似たようなもんで酷いだろうさ」
「―――だから、取り敢えず婚約に留めたってことか」
ニコライは扉の前で、暫く団員達の噂話に耳を傾けていたが、そのどれもがフィオラを貶める内容であった。
多少覚悟はしていたものの、その聞くに堪えない内容にニコライは歯噛みした。
「お前達に何が分かるというのだ」
フィオラは、お前達の何倍も頑張っている。と、声を大にして言ってやりたかった。
だが、フィオラもフィオラだ。魔力があるなら冷遇されることもないだろうに、どうして黙っているのか。
「あの人も、今は知られない方が良いと言っているけど……辺境伯も、本当に知らないようだしな……」
あの人がそう言うなら、意味があるのだろう。しかし、と、ニコライは考える。
……もし、自分が素直に求婚までの経緯を伝えていたら、教えてくれていただろうか。
ニコライは少し後悔していた。
会って直ぐにフィオラは「自分が赤の魔女だ」と、打ち明けてくれると、勝手に思っていたのだ。
それが、まるで初対面かのような対応をされ、それが面白くなくて変な意地を張ってしまった。
そりゃ、赤の魔女としてしか会っていないんだから、言えないよな……
お陰でおかしな契約を結ぶ事になってしまったのだ。自業自得であった。
ニコライは、溜め息を繰り返し、とぼとぼと歩いていた。
―――そもそも、フィオラは俺と結婚したいと思っているのか?
あの、おかしな発案をしたのが、俺を本気で拒んでのことだとしたら―――……
ニコライはここに来て基本的なところに思い当たり愕然としたが、直ぐに「いやいや」と、首を振った。
元々、政略的なものでもないのだ。ましてや、恋愛感情なんてものもない。
フィオラに想い人がいるとも思えないが、本当に嫌だと言われたら、その時は相談役のような立場から、彼女を見守っていけばいいだけのこと―――……
「……っ?!」
そこまで考えて、突然ぞわぞわするような、締め付けられるような胸の痛みに襲われた。
ニコライは根眉を寄せ、思わずしゃがみ込んでいた。何とも言えない痛みに胸を押さえ付ける。
「……何だ、これは?まさか……何かの病気?」
今まで、ニコライは病気とは無縁であった。風邪を引くことはあったが、こんな切なくなるような胸の痛みは初めての経験だった。
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