奴隷落ちを免れた令嬢は生きるために奮闘する。~いつかまた、アネモネの咲く丘で会いましょう〜

珠音

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蛙の子は蛙

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 野次馬もばらけて周囲が静かになったころ、オッド侯爵夫人が静かに口を開いた。 

「ロンデー。あなた、自分の妻の教育はどうなっているのかしら?」 

「申し訳ございません。伯母様」 

「調査結果次第では、今までの支援金は全て返還していただくわ」 

「それは、もちろん……仰せのままに」 

「いえ、あなたじゃないわ。あの女に払わせなさい。本当に蛙の子は蛙ね。あの女の母親も最低だったわ。それでも、あなたの顔を立てて支援して来たというのに……やっぱり無駄になったわね」 

「………」 

 ロンデーは何も言えず、頭を垂れたままだった。 
 自分の父親を父親と認識して会うのは二度目だ。再会すれば憎しみも湧くかと思ったが、意外にも何も感じるものはなかった。いや、多少はムッとしたが。 
 フィオラはつんつんとニコライの袖を引っ張る。 

「ねぇ、あの婆ちゃんは誰?」 

 それよりも、オッド侯爵夫人が気になっていた。 貴族の位に関してはよく分からないが、あの偉そうなロンデーが頭が上がらないというのが驚きだった。 

「ん?ああ……オッド侯爵夫人だ。少し変わり者と言われている」 

「何で?」 

「……奴隷解放運動を広めようとしているからさ」 

 言い難そうにニコライが言った。 

「ふーん。だから、みんな腫れ物に触る感じなんだ」 

「……そうだったか?だけど、夫人は権力もあるからね。周りも強くは出られないんだよ」 

 確かに先程の野次馬たちは、侯爵夫人に関わりたくないという視線を向けていた。 

「それと……辺境伯の伯母上だ。つまり、君の大伯母にあたるな」 

「えっ!そうなの?!」 

 失礼と知りつつ、フィオラはオッド侯爵夫人を見つめた。それに気付いたのか、オッド侯爵夫人がフィオラに視線を向ける。ついでにロンデーの視線もこちらに向いた。忌々しげな表情でフィオラを睨んでいる。 

「本当に、汚いな……」 

「はあぁっ?!……っ、ぅ、もごっ!!」 

 ニコライが瞬発的に飛び出しそうになったフィオラの腰を掬い口を塞ぐ。 
 ニコライに押さえられてじたばたしているフィオラを、ロンデーは冷ややかに見下ろしていた。 

「ロンデー……あなた」 

 オッド侯爵夫人が諌めるようにじっとりとした視線をロンデーに向けるも、悪びれる様子もなくロンデーは踵を返した。 

「もう二度と関わるな」 

 そっちが関わって来たんだけどなぁっ?! 

 前言撤回。やはり、あいつには腹が立つ。フィオラが醜い化け物であるなら、あいつはいったい何だというのか。 
 しかし口を塞がれているフィオラは、ふがふがと鼻息で応戦するしか出来ない。 
 捨て台詞を吐いて去って行くロンデーの背中を見ながら、オッド侯爵夫人が小さく息を吐く。 
 オッド侯爵夫人はフィオラに何か言いたげな視線を送っていたが、結局何も言わずに彼女も去って行った。






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