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閑話
【閑話】兄と妹と その2
しおりを挟む時期は冬期休暇の中ごろ。家族みんな仲良し! という話(たぶん)。
短めです。
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「ん、終わったか」
「はい……」
「なら、休憩にしよう。ボルト――はいないか。シンディー、頼む」
「かしこまりました」
ようやく休憩時間になり、ほっと息をつく。
「すまない、ミュリエル。だが、これもミュリエルを想ってのことなんだ。許せ」
「もちろんです。大変なのは確かですが……感謝してます」
お兄様に促され席を立ち、ソファーへと移動する。
「そうか。じゃあ、ほら。おいで」
両手を広げて満面の笑みで呼ぶお兄様。私はピシリと固まった。
この家のいいところは、私を以前のミュリエルと比べる人がいないことだ。
学院ではよく、「以前のミュリエル様だったら」とか、「あのミュリエル様があんなことなさるなんて」とか、陰口を叩かれていたが、この家ではほとんど、そういったことはない。
そのかわり――当然の態度で、とんでもない要求をされる。
好意的に受け取るのであれば、していいんだよ、甘えていいんだよということを態度で示してくれているのだと言えるだろう。
逆に、悪意を持って――というか、深読みするならば、私の記憶がない隙に、自分好みの行動を刷り込もうとしている、とも受け取れる。
今、目の前にいるお兄様は、私がその腕の中に入ることをさも当然のように待っていた。
まさか、休憩のたびにお兄様の腕の中――そのお膝に座っていたとでもいうのだろうか。そんなことはない、と信じたいのだけど。
「どうした、ミュリエル」
「あの……今日は、ちょっと……と、隣に座りたいです、わ、お兄様」
「兄の膝の上は嫌なのか?」
お兄様の顔がシュンとする。美形はずるい。それだけで罪悪感が湧く。
「え、あ、嫌、なのでは、なく――」
「ならいいだろう」
「ひゃっ」
お兄様に腕を掴まれ、引っ張られる。当然の如くバランスを崩し――その膝の上に、すとんと腰を落とした。
「お兄様!」
抗議の意を込めて名前を呼んだ。けれどお兄様はそれを笑顔で受け流す。
しまいには、私を背後から抱きかかえる形になるように抱え直して、ぎゅっと抱きしめた。
「ひょわっ」
「くくっ、なんて声出すんだ。……ん、どうした? 嫌ではないのだろう?」
「それは、その……ええと、そう。せっかく領地に帰ってきましたのに、ヘレンとの交流ができていませんわ。ヘレンと三人で――お庭でお茶しませんか?」
「ミュリエル。兄と二人きりでは嫌――」
この体勢は、もはやそういう次元の問題じゃないんだってば!
私は心の中で絶叫する。
と、そこに救いの女神が現れた。
「あら、いい考えね! お母様もご一緒させていただこうかしら。シンディー――は準備中かしら。トーマス、今すぐヘレンに声をかけて来てちょうだい」
「かしこまりました」
お母様の背後にいらした男性がさっと踵を返す。
って、今の――お母様が顎で使ったのって、以前、王都のお屋敷でお会いした、逆らっちゃいけない人、じゃない? この屋敷の執事であり、ボルトのお父様……。
恐るべし、お母様。さすがです。
「母上……」
頭上からお兄様の悲しげな声が聞こえた。そんなにも私と二人きりがよかったのだろうか。とても理解できないけれど。
「あら、ヴィンスはお母様と一緒ではお嫌かしら?」
「滅相もございません」
「ならいいわね」
お母様は、それはそれは素敵な笑みを浮かべた。
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母は強し、というお話でした(違う……)。
なお、お父様バージョンはありません。お兄様がお手伝いをぶっちしてるので、お父様はお忙しいのです(笑)
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