まさかのヒロイン!? 本当に私でいいんですか?

つつ

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Ⅱ 侯爵令嬢ミュリエルです

22. 口は災いの元

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「叔母上。そのような意地の悪い質問をなさらないでください。ミュリエルは記憶喪失だとあらかじめお伝えしておいたではありませんか」

 セーファス様は私をかばうような形で、私とメイヴルール公爵夫人との間に立った。それで私からはメイヴルール公爵夫人の半分が見えなくなる。
 それでも彼女が甥を前にしてなお、態度を軟化させないことに、私は恐れを抱く。
 そして、その予感は当たった。

「えぇ、そうね。でも、私の知った事ではないわ。それに――この娘は知らないとは一度も言っていないようだけれど?」
「え、あ、それは……」

 しまった。そんな受け取りかたをされるとは思ってなかった……。
 顔を青くする私を見て勢いに乗ったメイヴルール公爵夫人は、さらに追撃を加える。

「まさか、敵国であるタバダン王国に留学していたなんて」
「え!? い、いえ、違い――」
「えぇ、そうね。そうでしょうとも。わかっておりましたわ」

 待っていたかのような肯定に目を白黒させる。けれど、どうやら大丈夫だとほっとし――。

「なにせ――遺伝子学で一番進んでいるのは我が国ですもの。わざわざ敵国に留学して、そのような勉強をなさっているはずございませんものね」

 私は絶句した。二段構えで罠を用意されていたのだ。
 今後の火種にもなりうる、表沙汰にしがたい失言は胸に納める。けれど、失言した私自身は決して逃さない。そんな強い意思が感じられた。


 彼女の言葉によると、遺伝子学が進んでいるのはタバダン王国ではなく、この国、リングドル王国だったようだ。そして、最初に口にしたタバダン王国は留学先としてはありえないはずの敵国であった。
 容易に頷けば、国を侮辱したとか、敵国に通じていたなどとして捕縛されてもおかしくない罠だった。

「メイヴルール…公爵…夫人……」

 ギリギリではあるが、セーファス様のおかげで、敵国に通じていたと言われることはないだろう。
 だが、タバダン王国が遺伝子学が進んでいると言われて否定しなかったのは、やはりまずい。

「我が国のことですもの。知らないはずございませんわね。――あら? でしたら、どうして留学先で遺伝子学を学んでいたなんておっしゃったのかしら、ね……?」
「ですから、叔母上――」

 セーファス様がなおも擁護しようと口を開く。けれど、メイヴルール公爵夫人は聞く耳を持たなかった。
 何も答えられない私をきつく睨みつける。

「記憶喪失だなんて、まったく都合のいいお言葉ね。必死に勉強なさってる他の婚約者候補たちを侮辱しているわ」

 そんなつもりなどない。それこそ本当に、私は知らないだけだ。この国のことも、元々のミュリエルのことも――。

「この際、はっきり言いましょう。貴方はセーファスの婚約者として――いいえ、婚約者候補としても、失格よ」

 
 
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