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作戦名は make a break ! 1
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日曜日の午後一時。
前日に菫が泊まるなんていうアクシデントがあったものの姉である流音が朝から二人でショッピングモールに出掛けてくれたおかげで、久々に何の予定もなく休日らしい朝を満喫でき、機嫌が最高潮に良い楽斗の携帯に一通のメールが入った。
丁度昼飯であるカップラーメンにお湯を入れ時間を待っていた時に着たので、楽斗は即座にメールを開いた。
【from】iwatodaiki@abcd.mail.ne.jp
【件名】至急返信求む
【本文】今暇か?オレは今からクラスメイト達とカラオケに行くんだが、もしよかったら楽斗も一緒にいかないか?
ふむ、カラオケか。中学の時は、週一は行ってたけど最近は行ってなかったな。どのぐらい点数が取れるのか気になるし行ってみたい。
がしかし、クラスメイト達と、なのか。
昨日クラスメイト達全員の家にメイド服で周り歩いた楽斗としては恥ずかしさやら何やらで会いたくない気持ちの方が強い。
会ったら最後、昨日のことについて根深く聞かれることは目に見えている。
だが、と楽斗は思案を続けた。
明日は月曜。どっちにしろ遅かれ早かれ明日には会うことになるのだから、嫌なことは早めに終わらせた方が良いのではないだろうか。
やがて、楽斗は葛藤の末、メールを返信した。
カップラーメンの麺はすっかり伸びきって不味かった。
◇
「大毅テメー、騙しやがったな」
メール返信から約一時間後、カラオケボックスの個室で楽斗は隣に座る大毅を恨みがましく睨み付けた。しかしその目には生気がない。
「悪いとは思っているさ」
だが、騙した本人である筈の大毅も飄々と言ってのけるが目が死んでいる。焦点が合ってない。
そんな目をしている二人をよそに、クラスメイトは高らかに宣言をする。
「えー!それでは今から合コンを始めたいと思います~!乾杯~!」
「「「乾杯~!」」」
男子四名、女子六名がグラスとグラスを次々にぶつける中、早くも戦線離脱しようとしている二人は、
「あのままグラス割れば良いのに」
「全くだ。割れて中止になってしまえばいい」
「てかもう俺帰っていいかな」
「オレも帰りたい」
などと不穏なことを呟いていた。
「おいおい、二人さん。頼むぜ、今日の主役はお前達なんだからよ。お前達の名が知れ渡ってるおかげで女子達呼べたって言っても過言じゃないわけだし」
そんな彼らにクラスメイトの一人である男子生徒が小声で声をかける。
ちなみに男子全員同クラスのメンバーで、女子全員は他校の生徒だ。
「いや俺は関係ないだろう。見ての通り女顔だし。女子達が用があるのはこのイケメンさんだろ?ほら最近の女子は面食いが多いらしいからな、だから俺は必要ない筈だ。帰っていいかな?」
「いやいや何言ってんだ楽斗よ。最近の女子は可愛いものに弱いんだぞ?ほら、お前可愛いじゃないか、だからお前が残るべきだ。オレはお世辞にも可愛いとは言えない顔してるしな、ってことでオレは帰っていいよな?」
そこまで言って二人で胸ぐらを掴み合う。
「やっぱり大毅、俺とお前は戦わなければならない運命なんだな!」
「あぁ。悲しいがその通りだ。さぁ勝負といこうか!」
そして、殴り合いに発展しようとしたところで。
「やめてぇ!私のために争わないで!」
第三者がそんなヒロインが使うような台詞と共に楽斗と大毅の間に身体を滑り込ませるようにして入り込んできた。
「はぁ?誰がお前━━━」
「何言ってんだお前━━━」
そこまで言って楽斗と大毅は一斉に明後日の方向を向いた。二人ともプルプルと全身を揺らしている。
「な、なぁ大毅、思うんだがやっぱり争いは良くないよな」
「あぁ、止めよう。ってことで君は戻ってくれ。戻れ!」
視線を一切戻そうとはせず明後日の方向を向いたまま互いに休戦協定を結び、第三者を元の席に戻すことに成功した二人は安堵の息を洩らす。
「すごかったな」
「あぁ、やばかった。まさにSBだ」
「SB?あぁ。納得だ」
「いやちょっと俺にも分かるように話してくれよ!SBってなんだよ!?」
二人の会話を聞いていた、男子がそう聞いてきたので楽斗と大毅は顔を見合わせて同時に言い合った。
「「すっげぇブス」」
「はっきり言って最低だお前ら」
「いやお前もアイツの顔見てみろよ。蛙みたいに目は飛び出してるし豚みたいに鼻の穴はデカイし人間の顔じゃねぇな。あれは」
「いやいや楽斗、確かに顔も残酷だが性格も終わってんぞあれは。何だあの顔でヒロイン気取りって、絶対引き立て役だろあれ」
「おいやめとけって!」
ガラッ、一人が席を立った。見ればさっきのブスだ。若干目が赤い気がするがコンタクトでもずれたのだろうか。
男子の抑制の声が大きくなるが楽斗と大毅は止まらない。
「てか、よく見れば可愛い女子一人もいなくね?点数で表すと全員が赤点って言うか」
「全員が引き立て役って話にならんだろうが」
ガタァッ!残りの女子達が一斉に席を立つ。
女子は集団でトイレに行くとか聞くし、その類いだろう。
楽斗も大毅も気にせずハッハッハと笑っていると、男子全員が怒りが灯った目で近づいてきて告げた。
「「「もう帰れ!」」」
前日に菫が泊まるなんていうアクシデントがあったものの姉である流音が朝から二人でショッピングモールに出掛けてくれたおかげで、久々に何の予定もなく休日らしい朝を満喫でき、機嫌が最高潮に良い楽斗の携帯に一通のメールが入った。
丁度昼飯であるカップラーメンにお湯を入れ時間を待っていた時に着たので、楽斗は即座にメールを開いた。
【from】iwatodaiki@abcd.mail.ne.jp
【件名】至急返信求む
【本文】今暇か?オレは今からクラスメイト達とカラオケに行くんだが、もしよかったら楽斗も一緒にいかないか?
ふむ、カラオケか。中学の時は、週一は行ってたけど最近は行ってなかったな。どのぐらい点数が取れるのか気になるし行ってみたい。
がしかし、クラスメイト達と、なのか。
昨日クラスメイト達全員の家にメイド服で周り歩いた楽斗としては恥ずかしさやら何やらで会いたくない気持ちの方が強い。
会ったら最後、昨日のことについて根深く聞かれることは目に見えている。
だが、と楽斗は思案を続けた。
明日は月曜。どっちにしろ遅かれ早かれ明日には会うことになるのだから、嫌なことは早めに終わらせた方が良いのではないだろうか。
やがて、楽斗は葛藤の末、メールを返信した。
カップラーメンの麺はすっかり伸びきって不味かった。
◇
「大毅テメー、騙しやがったな」
メール返信から約一時間後、カラオケボックスの個室で楽斗は隣に座る大毅を恨みがましく睨み付けた。しかしその目には生気がない。
「悪いとは思っているさ」
だが、騙した本人である筈の大毅も飄々と言ってのけるが目が死んでいる。焦点が合ってない。
そんな目をしている二人をよそに、クラスメイトは高らかに宣言をする。
「えー!それでは今から合コンを始めたいと思います~!乾杯~!」
「「「乾杯~!」」」
男子四名、女子六名がグラスとグラスを次々にぶつける中、早くも戦線離脱しようとしている二人は、
「あのままグラス割れば良いのに」
「全くだ。割れて中止になってしまえばいい」
「てかもう俺帰っていいかな」
「オレも帰りたい」
などと不穏なことを呟いていた。
「おいおい、二人さん。頼むぜ、今日の主役はお前達なんだからよ。お前達の名が知れ渡ってるおかげで女子達呼べたって言っても過言じゃないわけだし」
そんな彼らにクラスメイトの一人である男子生徒が小声で声をかける。
ちなみに男子全員同クラスのメンバーで、女子全員は他校の生徒だ。
「いや俺は関係ないだろう。見ての通り女顔だし。女子達が用があるのはこのイケメンさんだろ?ほら最近の女子は面食いが多いらしいからな、だから俺は必要ない筈だ。帰っていいかな?」
「いやいや何言ってんだ楽斗よ。最近の女子は可愛いものに弱いんだぞ?ほら、お前可愛いじゃないか、だからお前が残るべきだ。オレはお世辞にも可愛いとは言えない顔してるしな、ってことでオレは帰っていいよな?」
そこまで言って二人で胸ぐらを掴み合う。
「やっぱり大毅、俺とお前は戦わなければならない運命なんだな!」
「あぁ。悲しいがその通りだ。さぁ勝負といこうか!」
そして、殴り合いに発展しようとしたところで。
「やめてぇ!私のために争わないで!」
第三者がそんなヒロインが使うような台詞と共に楽斗と大毅の間に身体を滑り込ませるようにして入り込んできた。
「はぁ?誰がお前━━━」
「何言ってんだお前━━━」
そこまで言って楽斗と大毅は一斉に明後日の方向を向いた。二人ともプルプルと全身を揺らしている。
「な、なぁ大毅、思うんだがやっぱり争いは良くないよな」
「あぁ、止めよう。ってことで君は戻ってくれ。戻れ!」
視線を一切戻そうとはせず明後日の方向を向いたまま互いに休戦協定を結び、第三者を元の席に戻すことに成功した二人は安堵の息を洩らす。
「すごかったな」
「あぁ、やばかった。まさにSBだ」
「SB?あぁ。納得だ」
「いやちょっと俺にも分かるように話してくれよ!SBってなんだよ!?」
二人の会話を聞いていた、男子がそう聞いてきたので楽斗と大毅は顔を見合わせて同時に言い合った。
「「すっげぇブス」」
「はっきり言って最低だお前ら」
「いやお前もアイツの顔見てみろよ。蛙みたいに目は飛び出してるし豚みたいに鼻の穴はデカイし人間の顔じゃねぇな。あれは」
「いやいや楽斗、確かに顔も残酷だが性格も終わってんぞあれは。何だあの顔でヒロイン気取りって、絶対引き立て役だろあれ」
「おいやめとけって!」
ガラッ、一人が席を立った。見ればさっきのブスだ。若干目が赤い気がするがコンタクトでもずれたのだろうか。
男子の抑制の声が大きくなるが楽斗と大毅は止まらない。
「てか、よく見れば可愛い女子一人もいなくね?点数で表すと全員が赤点って言うか」
「全員が引き立て役って話にならんだろうが」
ガタァッ!残りの女子達が一斉に席を立つ。
女子は集団でトイレに行くとか聞くし、その類いだろう。
楽斗も大毅も気にせずハッハッハと笑っていると、男子全員が怒りが灯った目で近づいてきて告げた。
「「「もう帰れ!」」」
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