傘に魔法が宿ったら

ゆず太郎

文字の大きさ
16 / 38
第1章

第15話 関係。

しおりを挟む
第15幕
長い1日から一夜明けても、疲労は抜けずむしろ溜まる一方だった。
ピーンポーン
そんな事を考えている時に限ってその疲労を与えている張本人がくる。
それはこの世の中の定理のようなものなのだろうか? これは僕が一生のうちに解決しておきたい疑問No.1である。
そんなくだらない茶番は置いといて。
「歩夢くんいます?」
母親と会話(といっても質問しているだけだが)している霞がソワソワ(きっと学校に早く行きたいのだろう。)し始めたので、玄関へ向かう。
「おはよう。霞。」
「おはよう。疲れてそうだけど大丈夫?」
心の中では “お前のせいだよ” と叫んでるのだが、流石に言えるわけがないので。
「ちょっとね。」
と定型文を返す。
「ならいいんだけど。それじゃあ行こ♪」
今朝の霞はすごくご機嫌なようで、いつもよりも軽快な足取りで登校している。そんな日に決まって訪れるのは…


背後からピーポーピーポーとサイレンを鳴らし隊列を組んパトカー、ならびに救急車と消防車が近づいてくる。そして400mくらい先で止まった。
薄っすらと煙が立ち上っているのがわかるが微かに見えるくらいだ。
「おいおい。マジかよ。」
動揺を隠しきれず、独り言が溢れる。
それは霞も同じらしく、口を両手で抑えてしゃがみこんでいた。
「か、霞?」
流石にオーバーリアクションだと思ったので、霞の元に駆け寄り霞の目線の先を見る…
その火災現場は霞の祖父の家だった。
そこそこ距離があるので確信ではないが、見覚えのある場所と建物だった。…そういえばこの辺は子供の頃よく遊びに行ったところだ。などと考えていると、霞が走り出していた。
「⁉︎ 霞‼︎ 霞待って!」
霞は黙って全力速力で走っている。
300m近く走ってからようやく止まった。
「お、おじいちゃん…」
霞は泣きながらショックで肩を落としていた。それを慰めるように寄り添う。無意識にやってしまった以上引っ込みがつかず、公衆の面前で霞に後ろから抱きついてしまっている。
それもそれでどうかと思ったので手を離そうとすると。
「もうちょっとだけお願い。」
弱々しくもはっきりとした口調で…
こんなお願い断るとバチが当たりそうなので、少し…いやかなり恥ずかしいがもう一度手を伸ばし、霞に寄り添う。登校時間まであと2分程度しかなかったので一応学校に遅れる。と親に連絡しておいた。俺がL◯NEから『学校に遅れる。』連絡したのは初めてだったので親も慌てたのか、すぐに学校に電話をしてくれた。
事情を言い忘れていたが、余程のことだったと思ったらしく即座に学校に連絡を入れてくれたみたいでこちらとしても少し安心した。
「霞? どうする? 学校。」
「…今日は行きたくない…」
「でも家に誰もいなかったよね?」
「なら歩夢の家は?」
「…まぁいいけど…」
そう言いながら、僕たちは来た道を戻った。


「ただいま~」
共働きなので当然だれかいるわけもなく、家の中はシーンと静まり返り少し寂しい雰囲気を漂わせている。
「お、お邪魔します。」
さっきに比べたらだいぶん落ち着いたんだろうが、まだ声色は暗い。
「とりあえずそこ座って。」
「う、うん。」
そう指示すると霞は大人しくソファの上に座った。その間に紅茶を淹れるため電気ケトルをつける。そしてティーセットを取り出た。リビングに戻ると霞の横に座り、慰めるために再度寄り添う(今は抱き寄せるの方が近しい。)。すると霞は観念したように泣き出した。子供のように、赤子のように。
1時間ほど泣くと流石に落ち着いたようで、(暗い表情は変わらないが)
「付き合ってくれて、ありがとう。なんかごめんね。」
「いや、いいよ。おじいちゃんにはお世話になってたし、親戚なんだから。」
「そう言ってくれると助かる。」
そしてしばらく、10秒ほどだっただろうか。不思議な間が空いて霞が呟いた。決心したように。


「私と…付き合って…くれませんか?」


唐突にすぎる発言に少し驚いてたが、恩人にそんな事を言われたら、というか断る理由もないので。
「う、うん。こちらこそ。」
と定型文だがはっきりとした口調で返した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

短編 お前なんか一生結婚できないって笑ってたくせに、私が王太子妃になったら泣き出すのはどういうこと?

ヨルノソラ
恋愛
「お前なんか、一生結婚できない」 そう笑ってた幼馴染、今どんな気持ち? ――私、王太子殿下の婚約者になりましたけど? 地味で冴えない伯爵令嬢エリナは、幼い頃からずっと幼馴染のカイルに「お前に嫁の貰い手なんていない」とからかわれてきた。 けれどある日、王都で開かれた舞踏会で、偶然王太子殿下と出会い――そして、求婚された。 はじめは噂だと笑っていたカイルも、正式な婚約発表を前に動揺を隠せない。 ついには「お前に王太子妃なんて務まるわけがない」と暴言を吐くが、王太子殿下がきっぱりと言い返す。 「見る目がないのは君のほうだ」 「私の婚約者を侮辱するのなら、貴族であろうと容赦はしない」 格の違いを見せつけられ、崩れ落ちるカイル。 そんな姿を、もう私は振り返らない。 ――これは、ずっと見下されていた令嬢が、運命の人に見初められる物語。

とある令嬢の断罪劇

古堂 素央
ファンタジー
本当に裁かれるべきだったのは誰? 時を超え、役どころを変え、それぞれの因果は巡りゆく。 とある令嬢の断罪にまつわる、嘘と真実の物語。

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

幼馴染の許嫁

山見月あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。 彼は、私の許嫁だ。 ___あの日までは その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった 連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった 連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった 女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース 誰が見ても、愛らしいと思う子だった。 それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡 どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服 どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう 「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」 可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる 「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」 例のってことは、前から私のことを話していたのか。 それだけでも、ショックだった。 その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした 「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」 頭を殴られた感覚だった。 いや、それ以上だったかもしれない。 「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」 受け入れたくない。 けど、これが連の本心なんだ。 受け入れるしかない 一つだけ、わかったことがある 私は、連に 「許嫁、やめますっ」 選ばれなかったんだ… 八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

ちゃんと忠告をしましたよ?

柚木ゆず
ファンタジー
 ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。 「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」  アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。  アゼット様。まだ間に合います。  今なら、引き返せますよ? ※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。

処理中です...