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バーネット公爵は妻アイリーンを亡くした時、絶望の淵に立たされた。それは愛する人を失った悲しみだけではない。愛娘を守ることが出来る人間が自分一人しか居ないことが恐ろしかったのだ。その恐怖は、愛娘が十八歳となった今でも続いている。
バーネット公爵は、元々は末端貴族の三男であり、王宮で文官として働いていた。彼の有能さを評価した先代公爵が一人娘アイリーンの婿にと望んだ。婿養子として公爵家に入り結婚当初から仕事人間だったため、アイリーンとは愛の無い夫婦だと思われていたようだが、実際には違う。
アイリーンは幼少期から体が弱く、持病もあった。そのためバーネット公爵は大事な妻が最先端の治療を受けられるよう、懸命に働き、また良い医者と出会うための人脈作りに必死だったのだ。だが、先代公爵夫妻が不幸な事故で他界すると、アイリーンは心労から体調を崩しそのまま両親の後を追うように亡くなってしまった。
後に残されたのは、愛する妻が命がけで生んでくれた愛娘のクラウディアだけ。妻の死を嘆き悲しむ時間も無く、バーネット公爵は動き始めた。
「……私の実家はもう没落寸前の貴族だ。先代公爵夫妻が亡くなり、私の後ろ盾は無くなった。」
テオドールは静かにバーネット公爵の話に耳を傾けた。
「クラウディアを幸せにするためには、どうにかして良家との縁談を結ぶしかないと思った。……もしも私に何かあった時、娘は一人になってしまう。それだけは避けたかった。」
「……レジナルド王太子は、昔は今ほど無能では無かった。少なくとも娘をあのように辱めに遭わせるほどの無能ではなかった。」
バーネット公爵は、あの婚約破棄のことを思い出しているのだろう。眉間に深く皺を寄せた。
「娘はアレの婚約者となり、必死に勉強し、必死に働いた。娘は……どんどん表情が無くなり、負担を強いていることは明白だった。私は、私は……。」
手を固く握り締め、怒りで震えるバーネット公爵へテオドールは掛ける言葉が見つからない。
「……っ、ああ、そうだ。私は、アレと同じように無能だ。愛する娘へ言葉を掛けることも、アレとの婚約を解消することも出来なかったのだから。」
愛する娘を想い、絶望する父親を誰が責めることが出来るだろうか。
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申し訳ありませんが、どうかご了承くださいませ。
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