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 ゴロン、と寝返りを打ち、ジュディスは溜め息をつく。

「ね、ねむれない…」


 酔っ払いに絡まれた後の帰り道、ダンフォースはずっと手を握っていてくれた。帰り着くと、ジュディスをお風呂に促し、その間に温かいシチューを作ってくれていた。食後にはジンジャーティーまで淹れてくれ、至れり尽くせりだった。


 ジュディスは嬉しかった。ダンフォースが駆け付けてくれて。守ってくれて。心配してくれて。言葉は無くても、ダンフォースが大事にしてくれていることが伝わり、嬉しかった。それなのに。






 あの酔っ払いに触られた、肩や手が、どうしても頭から離れず、ゾッとして身体が氷のように冷たくなる。


「ひゃあ!」

 カタン、と窓から音がして、ジュディスは飛び上がった。呼吸を整えて、そっとカーテンを捲ると風の音だったと分かる。ジュディスは恐怖から過敏になっていた。



「うう…もう無理…」

 ジュディスは一人で恐怖と闘うのを諦めて、ダンフォースの部屋へ向かった。







コンコン。

「ダンフォース?」


 ドアを開けるとダンフォースはベッドに腰掛けて読書をしていた。


「入っていい?」

 入口で所在無さそうにしているジュディスを見て、ダンフォースは頷いた。



「あのね、ちょっと背中貸して欲しいの…」

 俯いて覇気なく言うジュディスを、ダンフォースは少し心配そうに見つめる。いつもの元気なジュディスなら、入室の許可も、抱きつきの許可も取らず、好きなように部屋に入り、好きなように抱きつく。


 ぐいっと引っ張られ、ジュディスはダンフォースの胸の中に収まった。先程の恐怖の動悸が、別の動悸になったのが分かる。


「ダンフォース?」

「…ジュディスが背中の方が良いなら、好きなだけ貸す。」


 早すぎる動悸が、自分だけではないことにジュディスは気付いた。


「ダンフォースの背中もすきだけど、今はこっちがいい。」

 しばらくの間、大人しく抱き締められていると、徐々に激しい鼓動が落ち着いていくのを感じた。ジュディスは、ダンフォースを見上げて気持ちを吐露した。



「ダンフォース、あのね、その、今日のこと、思い出したくないのに思い出しちゃって…一人でいたら怖くなって、眠れなくなっちゃった。」



「ジュディス?」

 ダンフォースがチラリとベッドに視線を移した。


「一緒に眠る、ってこと?」

 頷くダンフォースを確認して、ジュディスは内心パニックになった。


 こんなにだいすきなんだもの、一緒に眠れるなんて嬉しい!ずっとくっついていたい!だけど、ダンフォースはどういうつもりなの?私のことどう思ってるの?ただ可哀想だから一緒に眠ってくれるの?…それに、私の寝相悪いかも。寝言とか言ってたらどうしよう!


「ジュディス、百面相してる」

 目を細めたダンフォースに頬を撫でられ、ジュディスは一緒にベッドに入るしか選択肢は無かった。

 




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