【完結】就職氷河期シンデレラ!

たまこ

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第二部



 イザードから助言を受け、エラの処遇は決まった。


 まず魔力をコントロールする力を付けること。悪用してはいけないことを学ぶこと。これはどんなに頑張っても2~3年は掛かるだろう。それと同時並行してエラの魔力の量や特性を検査していく。その間はエラが逃げ出すことが無いよう行動制限を設け、他者とは会えないようにする。


 教育や検査を終え、改心したと認められれば普通の生活に戻れる。だが、教育をきちんと受けなかったり、改心していない場合はいつまでも閉じ込められたままとなる。


 この処遇の問題点は、エラを教育する教師がこの国にはいないということだ。そこで、イザードがナスタジアの母の負担を軽くするために男爵領へ派遣した文官たちが交代で教師の役割を務めることになった。


 その教師たちが通いやすいよう、男爵領の端にある森の奥にひっそりと佇む薄暗い塔にエラは入れられた。この気味の悪い場所に独りぼっちで住む……訳では無かった。




◇◇◇◇


「な、何なのよ!このならず者は!!」


 王家の騎士たちにより、森の奥にある塔に連れてこられたエラは大声を上げた。塔には、小汚い顔をした中年の男が一人待っていたからだ。身に着けている服も汚らしく、よく見ないとそれが騎士服だとは分からない。『ならず者』というエラの言葉も否定できないと、王家の騎士たちは苦笑いを浮かべた。


「残念ながら、ならず者ではございません。あなたの見張り役になったジャックだ」


「なっ……何でこんなごろつきみたいな男が……。あ、あなただけではないんでしょう?そ、そう女性の……」


 エラがそう言うと男は可笑しそうに笑い「そんなもんはいませんよ」と告げた。ショックで目を見開くエラに向かって「ここでは二人っきりです。まぁ、楽しくとはいきませんが、それなりに暮らしましょう」と揶揄うように言った。エラの意識はそこで途切れてしまった。




◇◇◇◇


 ぱちりと目を覚ますと、既に外は薄暗かった。辺りを見渡すと石造りの部屋で、机とベッドがあるだけの寂しい部屋だ。


「い、痛い……」


 流石にシーツは清潔なもののようだが、マットレスが薄いせいで体中の筋肉が固まり悲鳴を上げている。


「おう、起きたか」


 開けっ放しのドアの外からジャックが声を掛けた。無造作に水を渡され、エラは気が進まなかったが喉の奥が水分を欲しており仕方なく受け取った。ごくごくと飲むと、惨めさが膨れ上がる。


「な、なんでよ……こんな、こんな場所いや!!」


 エラが熱を出せば、ナスタジアはいつも美味しいフルーツジュースを探してきてくれた。ひんやりと冷やされたそれはとても美味しくて「もっと」と強請れば、ナスタジアは困った顔で「仕方ないわね」と言いながらまた注いでくれた。


 それが今は汚い男から出される水だけだ。エラは漸く自分の置かれている状況に直面した。


「ふん、知らねーよ」


 ジャックはそう言うと部屋を出た。エラの大きな瞳からぽろぽろと涙が零れた。エラを慰めてくれるナスタジアは、もういない。
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