【完結】就職氷河期シンデレラ!

たまこ

文字の大きさ
24 / 63
第二部



 盗賊のような見た目に似合わず、ジャックの作った朝食は美味しかった。空腹も手伝い、息を吐く間も無くガツガツと食べる。ペロリと完食したエラの皿を見たジャックは「つくづくお嬢様らしくねーな」と言いつつも満足そうに笑った。



 朝食の後は魔力に関する講義が始まった。講師は複数名おり、日によって違う講師が交代で来る……これは魔法使いに憧れるエラが万が一、講師へ色仕掛けでもしてこの塔から抜け出さないようにするための措置だと初めに説明された。


 疑われても仕方ないことは分かっているのに、思わずムッとしてしまう。しかし、それをエラが表情に出す前に「ゴォーッ!ゴォーッ!」と獣の唸り声のような音が部屋に響いた。




 エラも講師も顔を見合わせた後、立ち上がり、音がする扉の方まで恐る恐る歩いた。扉を慎重に開けると……。



「ジャック殿……」


 呆気に取られた講師の口から小さく声が漏れた。ジャックは扉の前で見張りをしていた筈だが爆睡している。二人が近付いても起きる気配が無い。先程の獣の唸り声はジャックのイビキだと気付き、エラも講師も脱力した。



「まあ、寝ていても良いんですけどね」


「え?」


 講師はこの塔がある森自体に結界魔法を掛けており、エラが逃げだそうとしても森からは出られないし、講師たちが逃げ出したことにすぐ気付くことを説明した。



「あ、あの……」


「なんでしょう?」


「せめて後一人、他の見張りの方を付けていただくことはできませんか?……ずっと二人だと息が詰まって……」



「うーん、それは……」


 講師が言葉を探していると、扉の外から「グオ!」とまたジャックのイビキが聞こえてきた。



「……少なくともジャック殿はリラックスしているようですね」


 苦笑いの講師は「他の者とも相談しますが、あまり期待はしないでくださいね」と宥めるように言い、講義が始まった。





感想 8

あなたにおすすめの小説

「お前は妹の身代わりにすぎなかった」と捨てられた養女——でも領民が選んだのは、血の繋がらない姉の方だった

歩人
ファンタジー
孤児のフィーネは伯爵家に引き取られた。 病弱な令嬢エーデルの「代役」として。社交も、領地管理も、使用人の采配も—— 全て「エーデル様」の名前で、完璧にこなしてきた。 十一年後。健康を取り戻したエーデルが屋敷に帰還した日、伯爵は言った。 「もう用済みだ、出ていけ」 フィーネは静かに屋敷を去った。 それから一月もしないうちに、領民たちが伯爵に詰め寄った。 「前のお嬢様を返してください」

新米侍女は魔塔主殿下のお気に入り ~なぜか初恋の天使様と勘違いされて寵愛されています~

朱音ゆうひ@『桜の嫁入り』発売中です
恋愛
子爵家養女のリエルは、劣悪な家庭と悪評から逃れるため、家を出て王城住み込みの侍女になった。 「新しい環境で自立して幸せになってみせる!」 そう意気込んでいたら、なぜか魔塔の主である第二王子ハルティシオンに「初恋の天使様だ」と誤認されたようで、過剰な庇護と崇拝を受けることになり……⁉︎ 秘密の多い魔塔主殿下×わけあり新米侍女のお仕事から始まる溺愛&救国シンデレラストーリー! ※他のサイトにも投稿しています

家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました

日下奈緒
恋愛
そばかす令嬢クラリスは、家族に支度金目当てで成り上がり伯爵セドリックに嫁がされる。 だが彼に溺愛され家は再興。 見下していた美貌の妹リリアナは婚約破棄される。

宝石精霊に溺愛されていますが、主の命令を聞いてくれません

真風月花
恋愛
嘘でしょう? 王女であるわたくしが婚約を破棄されるだなんて。身分違いの婚約者から、あろうことか慰謝料代わりに宝石を投げつけられたアフタル。だがその宝石には精霊が宿っていて、アフタルに「俺を選べ」と主従関係を命じる。ちゃんと命令を聞いてくれない、強引な精霊にふりまわされるアフタルが、腐敗した王家を立て直す。

《完結》とんでもない侯爵に嫁がされた女流作家の伯爵令嬢

ヴァンドール
恋愛
面食いで愛人のいる侯爵に伯爵令嬢であり女流作家のアンリが身を守るため変装して嫁いだが、その後、王弟殿下と知り合って・・

【完結】傷モノ令嬢は冷徹辺境伯に溺愛される

中山紡希
恋愛
父の再婚後、絶世の美女と名高きアイリーンは意地悪な継母と義妹に虐げられる日々を送っていた。 実は、彼女の目元にはある事件をキッカケに痛々しい傷ができてしまった。 それ以来「傷モノ」として扱われ、屋敷に軟禁されて過ごしてきた。 ある日、ひょんなことから仮面舞踏会に参加することに。 目元の傷を隠して参加するアイリーンだが、義妹のソニアによって仮面が剥がされてしまう。 すると、なぜか冷徹辺境伯と呼ばれているエドガーが跪まずき、アイリーンに「結婚してください」と求婚する。 抜群の容姿の良さで社交界で人気のあるエドガーだが、実はある重要な秘密を抱えていて……? 傷モノになったアイリーンが冷徹辺境伯のエドガーに たっぷり愛され甘やかされるお話。 このお話は書き終えていますので、最後までお楽しみ頂けます。 修正をしながら順次更新していきます。 また、この作品は全年齢ですが、私の他の作品はRシーンありのものがあります。 もし御覧頂けた際にはご注意ください。 ※注意※他サイトにも別名義で投稿しています。

【完結】冷遇され続けた私、悪魔公爵と結婚して社交界の花形になりました~妹と継母の陰謀は全てお見通しです~

深山きらら
恋愛
名門貴族フォンティーヌ家の長女エリアナは、継母と美しい義妹リリアーナに虐げられ、自分の価値を見失っていた。ある日、「悪魔公爵」と恐れられるアレクシス・ヴァルモントとの縁談が持ち込まれる。厄介者を押し付けたい家族の思惑により、エリアナは北の城へ嫁ぐことに。 灰色だった薔薇が、愛によって真紅に咲く物語。

緑の指を持つ娘

Moonshine
恋愛
べスは、田舎で粉ひきをして暮らしている地味な女の子、唯一の趣味は魔法使いの活躍する冒険の本を読むことくらいで、魔力もなければ学もない。ただ、ものすごく、植物を育てるのが得意な特技があった。 ある日幼馴染がべスの畑から勝手に薬草をもっていった事で、べスの静かな生活は大きくかわる・・ 俺様魔術師と、純朴な田舎の娘の異世界恋愛物語。 第1章は完結いたしました!第2章の温泉湯けむり編スタートです。 ちょっと投稿は不定期になりますが、頑張りますね。 疲れた人、癒されたい人、みんなべスの温室に遊びにきてください。温室で癒されたら、今度はベスの温泉に遊びにきてくださいね!作者と一緒に、みんなでいい温泉に入って癒されませんか?