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第二部
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「……石、ですか?」
教師に差し出された鉱石の山を見て、エラは少し怪訝そうに尋ねた。教師は「魔法石、と言うものなんですよ」と説明し、一つを取り出した。
「私たちの国では多くの道具が魔力を使うことで動くようになっています。魔力のある者なら良いですが、魔力の無い者や魔力が弱い者は道具を使えなくなってしまいます」
「……義姉さまたちはどうされているのですか?」
エラの問いに教師は「心配ないですよ。そのためにこの魔法石があるんです」と微笑んだ。魔力が無い者たちは魔力が込められた魔法石を使って道具を使えるという。
「今日からエラさんにはこの魔法石に魔力を込めるお仕事をしてもらいます」
「お仕事……ですか?」
教師によると、魔力を込めることでエラの体内にある魔力を一時的に減らし魔力の暴走を防ぐことができるという。減った魔力は休息を取ればまた復活するのだが、魔法石へ魔力を込めることで魔力のコントロールを身に付けることが目的だと言う。
「エラさんが魔力を込めた魔法石は、実際に私たちの国で使いますのでお給金が発生します」
隣国では魔力が多い人間は、この作業をすることを生業にしている者も多い。
「お給金の半分は国への賠償金に充てることになりましたが、半分はエラさんの名義で貯金することになりました。こちらでの生活が終わった後の生活費に充ててほしいと思っていますが、少額であればこちらにいる間にも使ってよいとのことです。毎回相談は必要ですが……」
エラは教師に渡された資料を見て目を丸くした。一か月に貰える額は……。
「ふん、これなら一か月で俺を一年雇えるじゃねーか」
「ジャック!」
いつの間にか隣に立っていたジャックが資料を覗き込んでいる。
「私たちの国では、この仕事があまり人気が無いのですよ。魔法石に魔力を込めてしまうと自分の魔力が減ってしまって不便なので……一応エラさんは魔法使いの見習いのような立場なので、これでも安いくらいなのです。本来ならもっと高い金額を得られます。もしこの仕事が嫌でなければここを出た後の職の候補にして貰えたら有難いです。仕事はいくらでも紹介できますよ」
よっぽど困っているのだろう。いつも優しい教師の圧が強い。だがエラはこれはチャンスだと思った。
「先生……私、頑張ります。無駄遣いもしません。ちゃんと貯金します」
「エラさん……」
エラの成長に教師は目に涙を浮かべた。ジャックは「お前、何企んでるんだ」と眉間に皺を寄せている。ジャックの言う通り、エラはあることを企んでいる……いつかこの塔を出る時、隣にいる大男ともう少しだけ一緒にいられる権利を買うことだ。
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