王太子は妃に二度逃げられる

たまこ

文字の大きさ
22 / 51
本編

22


「そんなのに決まってるでしょうがっ!!」

 帰宅したフランチェスカからアーネストとのデートの話を聞いてサラは絶叫した。

「なぁにが「私がここに来たら嫌か……?」ですか?!私がいない隙にお嬢様に甘えやがってあのゴミムシめ……っ」

 鳥肌が立ってきた、とサラは両腕を擦った。いつも以上に荒ぶるサラを見て、フランチェスカはくすりと笑みを零した。


 フランチェスカが領主邸に戻ってから、サラはスライディング土下座をする勢いで主へ謝罪した。

 フランチェスカは彼女を許した後で、サラがあのような振る舞いをするとアーネストが咎めなくとも周りの人間が侍女として不適格だと見なすかもしれないと諭した。フランチェスカの父、サルヴァトーリ公爵は娘には甘いものの基本的には厳格な人だ。父の耳に入ればすぐサラを専属侍女から外すだろう。フランチェスカはそれが嫌だったのだ。

 フランチェスカの言葉に感激したサラは自身の軽率な行いを反省し平謝りした。フランチェスカの前ではこれまで通り変わらずにいて欲しいとも言われ、早速荒ぶっていたという訳だ。


「お嬢様。流石に愛想を尽かしましたよね?」

 サラは懇願するように尋ねた。興奮しすぎて目には涙まで浮かべている。そんな侍女を見てフランチェスカは申し訳無さそうに眉尻を下げた。


「……そうじゃないから困ってるのよねぇ」

 主の言葉にサラは絶望したようにがっくりと肩を落とした。フランチェスカは今日のサラの暴走は、自分が気持ちを話さないことも原因の一端だと知った。そのためいつもより頑張って自分の気持ちを口にしたものの結局彼女を落ち込ませてしまったようだ。

 フランチェスカは馬車での会話の後のことを思い返す。思い出の花畑は当時と変わっておらず、綺麗な花々が咲き誇っていた。アーネストを案内し歩いていく。

 東屋で同行したメイドが紅茶を淹れた。それを飲みながらフランチェスカの思い出話を優しく微笑みながら聞くアーネストを見て、心の中で降参した。どうしようもなく彼が好きなのだ、と。




「……やっぱり男の趣味が悪すぎます」

「なあに?サラ、何か言った?」

 小声でぼそりと呟いたサラをフランチェスカは不思議そうに見つめている。サラは「何でもありません」と首を振った。

「そう?わたくしのことよりサラ……」

 フランチェスカの目が愉快そうに細められた。

「マルコとはどうだったの?」

「な、何にもありません!お嬢様、変な誤解はお止め下さい!」

 フランチェスカの部屋にはもう一度サラの絶叫が響いた。



感想 23

あなたにおすすめの小説

三度裏切られた私が、四度目で「離婚」を選ぶまで

狛犬
恋愛
三度、夫に裏切られた。 一度目は信じた。 二度目は耐えた。 三度目は――すべてを失った。 そして私は、屋上から身を投げた。 ……はずだった。 目を覚ますと、そこは過去。 すべてが壊れる前の、まだ何も起きていない時間。 ――四度目の人生。 これまでの三度、私は同じ選択を繰り返し、 同じように裏切られ、すべてを失ってきた。 だから今度は、もう決めている。 「もう、陸翔はいらない」 愛していた。 けれど、もう疲れた。 今度こそ―― 自分を守るために、家族を守るために、 私は、自分から手を放す。 これは、三度裏切られた女が、 四度目の人生で「選び直す」物語。

真実の愛の裏側

藍田ひびき
恋愛
アレックス・ロートン侯爵令息の第一夫人シェリルが療養のため領地へ居を移した。それは療養とは名ばかりの放逐。 男爵家出身でありながら侯爵令息に見初められ、「真実の愛」と持て囃された彼女の身に何があったのか。その裏に隠された事情とは――? ※ 他サイトにも投稿しています。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

お飾りな妻は何を思う

湖月もか
恋愛
リーリアには二歳歳上の婚約者がいる。 彼は突然父が連れてきた少年で、幼い頃から美しい人だったが歳を重ねるにつれてより美しさが際立つ顔つきに。 次第に婚約者へ惹かれていくリーリア。しかし彼にとっては世間体のための結婚だった。 そんなお飾り妻リーリアとその夫の話。

[完結]「私が婚約者だったはずなのに」愛する人が別の人と婚約するとしたら〜恋する二人を切り裂く政略結婚の行方は〜

h.h
恋愛
王子グレンの婚約者候補であったはずのルーラ。互いに想いあう二人だったが、政略結婚によりグレンは隣国の王女と結婚することになる。そしてルーラもまた別の人と婚約することに……。「将来僕のお嫁さんになって」そんな約束を記憶の奥にしまいこんで、二人は国のために自らの心を犠牲にしようとしていた。ある日、隣国の王女に関する重大な秘密を知ってしまったルーラは、一人真実を解明するために動き出す。「国のためと言いながら、本当はグレン様を取られたくなだけなのかもしれないの」「国のためと言いながら、彼女を俺のものにしたくて抗っているみたいだ」 二人は再び手を取り合うことができるのか……。 全23話で完結(すでに完結済みで投稿しています)

忙しい男

菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。 「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」 「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」 すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。 ※ハッピーエンドです かなりやきもきさせてしまうと思います。 どうか温かい目でみてやってくださいね。 ※本編完結しました(2019/07/15) スピンオフ &番外編 【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19) 改稿 (2020/01/01) 本編のみカクヨムさんでも公開しました。

月夜に散る白百合は、君を想う

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢であるアメリアは、王太子殿下の護衛騎士を務める若き公爵、レオンハルトとの政略結婚により、幸せな結婚生活を送っていた。 彼は無口で家を空けることも多かったが、共に過ごす時間はアメリアにとってかけがえのないものだった。 しかし、ある日突然、夫に愛人がいるという噂が彼女の耳に入る。偶然街で目にした、夫と親しげに寄り添う女性の姿に、アメリアは絶望する。信じていた愛が偽りだったと思い込み、彼女は家を飛び出すことを決意する。 一方、レオンハルトには、アメリアに言えない秘密があった。彼の不自然な行動には、王国の未来を左右する重大な使命が関わっていたのだ。妻を守るため、愛する者を危険に晒さないため、彼は自らの心を偽り、冷徹な仮面を被り続けていた。 家出したアメリアは、身分を隠してとある街の孤児院で働き始める。そこでの新たな出会いと生活は、彼女の心を少しずつ癒していく。 しかし、運命は二人を再び引き合わせる。アメリアを探し、奔走するレオンハルト。誤解とすれ違いの中で、二人の愛の真実が試される。 偽りの愛人、王宮の陰謀、そして明かされる公爵の秘密。果たして二人は再び心を通わせ、真実の愛を取り戻すことができるのだろうか。

あなたが遺した花の名は

きまま
恋愛
——どうか、お幸せに。 ※拙い文章です。読みにくい箇所があるかもしれません。 ※作者都合の解釈や設定などがあります。ご容赦ください。