王太子は妃に二度逃げられる

たまこ

文字の大きさ
51 / 51
番外編

2


 マルコがアーネストに追い付いたのは、フランチェスカとミゲルが話している応接室の扉の前だった。扉の前では仁王立ちのサラがアーネストを睨んでいた。だがアーネストも負けじと押し入ろうとしている。

「ちょっと……っ、入らないで下さい!」

「サラ、頼むから通してくれ!」

「いーやーでーすー!」

 今にも暴れ出しそうなサラを見てマルコは慌てて駆け寄った。

「サラ」

「なっ……離して下さい!」

 マルコは後ろから彼女を羽交い絞めにした。アーネストがサラを咎めることは無いだろう。だがアーネストに怪我でもさせたら周りが黙っていない。サラは足をばたばたと動かしもがくがマルコはびくともしない。

 その隙にアーネストは扉を開ける。そして彼の目に入ったのは涙を流す愛する人の姿だ。その瞬間、頭に血が上り声を荒げた。

「ミゲル……っ、お前フランチェスカに何を」

「泣かせたのはお前だ」

 呆れた顔で一瞥したミゲルは颯爽と退室していった。部屋にはアーネストとフランチェスカだけが取り残されていた。そして彼女から積年の想いが語られる。


「アーネスト様から他の女性の話なんて聞きたくなかった……っ、幼い頃も、今も」

「何も言わずに留学に行くなんて……あんまりだわ。とっても大変だったんだから」

「他の女性がいる屋敷に通って欲しくなかった」

「言えなかった……行かないでって、他の人の話なんて聞きたくないって本当は言いたかった。でも、言ったらあなたに嫌われてしまったらと思って言えなかった」

「出会った頃からずっと好きだったから、我儘なんて言えなかった」

 

「あなたにどんなことをされても好きでいることを止められなかった」
 

 アーネストは目を見開き、言葉を失った。

 彼女から好かれているなんて思いもしなかった。フランチェスカは幼い頃からの付き合いで、友としての情や責任感からアーネストと婚姻を結んでくれたのだと思い込んでいた。

 だが、フランチェスカは出会った頃からアーネストを想い彼を大切にしてくれた。様々な気持ちを飲み込み、隣で微笑んでくれた。アーネストの突飛な行動を呆れながら宥めても最後は笑ってくれた。

 そんな彼女にアーネストは何をしてきたか。これまでの自身の過ちが頭を駆け巡り、言葉が詰まり熱いものが瞳から溢れた。


「……フランチェスカ……私は、君になんて酷いことを」

 アーネストが謝罪を重ねる。フランチェスカが自分を抱きしめる彼の腕を拒むことは無かった。
 
「もう二度と他の女性とは話さない」

 アーネストがそう宣言するとフランチェスカは「極端ねぇ」と呆れ交じりに笑った。その顔を見るとまた愛おしさが高まり彼女を閉じ込めている腕に力が籠った。

 穏やかに言葉を交わし合う。その時間は菓子を完成させたレティがやって来るまで続いた。



感想 23

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(23件)

キムラましゅろう
2026.03.28 キムラましゅろう

番外編ありがとうございます🥰✨ウレチィ
序盤から(°_°;)ハラハラ(; °_°)💓

2026.03.29 たまこ

ましゅろう先生✨
番外編もお読みいただきありがとうございます!嬉しいです😆
お楽しみくださいませ☺️💕

解除
内緒の話
2026.03.27 内緒の話

あらすじの誤字報告です。
【初恋に蹴りを付けた】とありますが、正しくは〖けり〗または〖鳧〗です。

2026.03.27 たまこ

内緒の話さま

お読みいただきありがとうございます!
また、誤字報告ありがとうございます。助かります😊

解除
fioretta7
2026.03.05 fioretta7

完結おめでとうございます&ありがとうございます。
更新を楽しみにしていた作品だったので寂しいです。番外編も楽しみにしていますね。

ミゲルが思っていたよりたくさん登場する場面があり嬉しかったです。
でも、恋愛ポンコツ同士で相談しても、うまくいかないぞ。
レティもフランチェスカも情に熱い女性だからこそ、何とかまるく収まったーーって感じですもんね。
薔薇の色のエピソード、良かったです。そうでした、あちらのお方は勿忘草でした。

2026.03.07 たまこ

完結までお読みいただき本当にありがとうございます!寂しいと言ってもらえて嬉しいです😭

ほんとポンコツ同士何やってんだ〜って感じです🤭女性陣が頑張りましたね✨
薔薇のエピソードも褒めて貰って嬉しいです☺️番外編もぜひお楽しみください!

解除

あなたにおすすめの小説

三度裏切られた私が、四度目で「離婚」を選ぶまで

狛犬
恋愛
三度、夫に裏切られた。 一度目は信じた。 二度目は耐えた。 三度目は――すべてを失った。 そして私は、屋上から身を投げた。 ……はずだった。 目を覚ますと、そこは過去。 すべてが壊れる前の、まだ何も起きていない時間。 ――四度目の人生。 これまでの三度、私は同じ選択を繰り返し、 同じように裏切られ、すべてを失ってきた。 だから今度は、もう決めている。 「もう、陸翔はいらない」 愛していた。 けれど、もう疲れた。 今度こそ―― 自分を守るために、家族を守るために、 私は、自分から手を放す。 これは、三度裏切られた女が、 四度目の人生で「選び直す」物語。

愛していると気づいたから、私はあなたを手放します

妄夢【ピッコマノベルズ連載中】
恋愛
愛しているのに、触れられない。 幼なじみの夫は、こう言った。 「もう、女性を愛することはできない」と。 それでも「君がいい」と言い続ける彼と、 子どもを望む現実の間で、私は追い詰められていく。 だから決めた。 彼のためにも、私は他の誰かを探す。 ――そう思ったのに。 なぜあなたは、そんな顔で私を追いかけてくるの? これは、間違った優しさで離れた二人が、 もう一度、互いを選び直すまでの物語。 ※表紙はAI生成イラストを使用しています。

片思いの貴方に何度も告白したけど断られ続けてきた

アリス
恋愛
幼馴染で学生の頃から、ずっと好きだった人。 高校生くらいから何十回も告白した。 全て「好きなの」 「ごめん、断る」 その繰り返しだった。 だけど彼は優しいから、時々、ご飯を食べに行ったり、デートはしてくれる。 紛らわしいと思う。 彼に好きな人がいるわけではない。 まだそれなら諦めがつく。 彼はカイル=クレシア23歳 イケメンでモテる。 私はアリア=ナターシャ20歳 普通で人には可愛い方だと言われた。 そんなある日 私が20歳になった時だった。 両親が見合い話を持ってきた。 最後の告白をしようと思った。 ダメなら見合いをすると言った。 その見合い相手に溺愛される。

「仲睦まじい夫婦」であるはずのわたしの夫は、わたしの葬儀で本性をあらわした

ぽんた
恋愛
サヤ・ラドフォード侯爵夫人が死んだ。その葬儀で、マッケイン王国でも「仲睦まじい夫婦」であるはずの彼女の夫が、妻を冒涜した。その聞くに堪えない本音。そんな夫の横には、夫が従妹だというレディが寄り添っている。サヤ・ラドフォードの棺の前で、夫とその従妹はサヤを断罪する。サヤは、ほんとうに彼らがいうような悪女だったのか?  ※ハッピーエンド確約。ざまぁあり。ご都合主義のゆるゆる設定はご容赦願います。

好きでした、婚約破棄を受け入れます

たぬきち25番
恋愛
シャルロッテ子爵令嬢には、幼い頃から愛し合っている婚約者がいた。優しくて自分を大切にしてくれる婚約者のハンス。彼と結婚できる幸せな未来を、心待ちにして努力していた。ところがそんな未来に暗雲が立ち込める。永遠の愛を信じて、傷つき、涙するシャルロッテの運命はいかに……? ※十章を改稿しました。エンディングが変わりました。

月夜に散る白百合は、君を想う

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢であるアメリアは、王太子殿下の護衛騎士を務める若き公爵、レオンハルトとの政略結婚により、幸せな結婚生活を送っていた。 彼は無口で家を空けることも多かったが、共に過ごす時間はアメリアにとってかけがえのないものだった。 しかし、ある日突然、夫に愛人がいるという噂が彼女の耳に入る。偶然街で目にした、夫と親しげに寄り添う女性の姿に、アメリアは絶望する。信じていた愛が偽りだったと思い込み、彼女は家を飛び出すことを決意する。 一方、レオンハルトには、アメリアに言えない秘密があった。彼の不自然な行動には、王国の未来を左右する重大な使命が関わっていたのだ。妻を守るため、愛する者を危険に晒さないため、彼は自らの心を偽り、冷徹な仮面を被り続けていた。 家出したアメリアは、身分を隠してとある街の孤児院で働き始める。そこでの新たな出会いと生活は、彼女の心を少しずつ癒していく。 しかし、運命は二人を再び引き合わせる。アメリアを探し、奔走するレオンハルト。誤解とすれ違いの中で、二人の愛の真実が試される。 偽りの愛人、王宮の陰謀、そして明かされる公爵の秘密。果たして二人は再び心を通わせ、真実の愛を取り戻すことができるのだろうか。

【完結】拗らせ王子と意地悪な婚約者

たまこ
恋愛
 第二王子レイナルドはその見た目から酷く恐れられていた。人を信じられなくなってしまった彼の婚約者になったのは……。 ※恋愛小説大賞エントリー作品です。

すれ違う思い、私と貴方の恋の行方…

アズやっこ
恋愛
私には婚約者がいる。 婚約者には役目がある。 例え、私との時間が取れなくても、 例え、一人で夜会に行く事になっても、 例え、貴方が彼女を愛していても、 私は貴方を愛してる。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ 女性視点、男性視点があります。  ❈ ふんわりとした設定なので温かい目でお願いします。