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しおりを挟むコロネ試食会も無事終わり、三人はアンの家へ向かった。
「ギルバート様とアンが婚約ですか…………。」
ギルバートとジェフリーは、経緯を説明した。第一王子との婚約話を聞き、気の小さいアンの父トーマスは顔面蒼白になった。そして、婚約相手が第一王子でなく、侯爵家のエリートに代わった所でトーマスは安心出来なかった。
ギルバートは、極力アンに負担を掛けぬよう社交は最低限にすること、アンは勿論家族のことも守ること、アンがパン屋を続けられるようにすることを約束した。
トーマスは、時折「いや」「しかし」と小声で呟くが、言葉が続かない。そんなトーマスに苦笑いしていた、アンの母スーザンが話し始めた。
「ギルバート様、アンのことを守ろうとして下さりありがとうございます。お話を聞いていると、アンの希望に最大限配慮して下さってるように感じます。」
「お、お前…………!」
「もう!貴方は黙っていてちょうだい。アンの聖女の力を狙って寄ってくる輩より、ずっと良いわ。」
裏切られたかのように悲壮感たっぷりに声を上げるトーマスを、スーザンは呆れながら嗜めた。
「私が確認したいのは一点です。ギルバート様は、アンのことを愛せますか?アン、貴女はどうなの?ギルバート様を愛せる?」
アンも、ギルバートも、思いがけないスーザンの問いに目を見開いた。
「貴族間の婚姻では、自身の意向は関係ないことは分かっています。ですが、平民は恋愛結婚が殆どです。我儘かも知れませんが、私は、娘に愛し愛される家庭を築いてほしいと思っています。」
「お母さん…………。」
スーザンの気持ちはよく分かる。しかし、早く婚約しなければアンもスーザン達も危険に晒されることになる。どう説得しようか、アンもギルバートも考えあぐねていると。
「でしたら、婚約期間を半年間に設定し、その間で愛し愛される家庭を作れるかお互い見定めることにしては如何でしょうか。」
ジェフリーか助け船を出した。
「婚約していたら、危険な場面は格段に減ると思っています。その間に、二人はお互いが伴侶となり得るか判断できた時は籍を入れます。もし、難しいとなれば婚約は破棄とします。」
そして、婚約が破棄になってもアンの身を守る方法を考え、尽力してくれることを約束する、とギルバートは言った。
この案に、スーザンも納得し婚約は成立した。ギルバートが口にした「婚約破棄」の言葉に、アンは息苦しさを覚えるが、それが何故なのかは気付けなかった。
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