やさしい異世界転移

みなと

文字の大きさ
144 / 268
第4章 星降る都市

【143話】 見え始める光

しおりを挟む
 俺達はサンスインの住民が避難しているアジトに辿り着いた。
 そこにあったのはまるで学校の体育館の一回りくらい大広間のような空間、よく見ると壁に何個か扉があり他の場所もあるようだった。

 それはそれとしてこの空間には数千人もの人がおり俺達がくるや否や大勢がこちらを見た。

「おぉ!帰ってきたか!!」

 その大勢の中から1人の老人が前に出てきて俺達……というより案内してくれた人に向かって声をかけた。
 その男は俺達をジロジロと不思議そうな顔で見つめてから

「……ヒョオナは、一緒じゃないのか……?」

 といきなり確信的な質問を投げかけてくる。
 その質問に俺達はただ黙って俯く事しか出来ずにその様子を見た男は起こったことを察したような顔をした。

「すまんが……場所を変えないか?」

 そんな時に切り出したのは俺達を案内してくれた男、そして俺達はその男と出迎えた老人と共に大広間の奥、俺達が入ってきたところのちょうど向かいにある扉を使って場所を変える。


 扉に入り少し廊下を歩いたところにまた扉がありそこに入ると真ん中に大きなテーブルの置かれたまるで作戦会議室のような部屋へと着いた。
 そこには俺達はチャーチスとヒナリ、レイナに俺の4人(馬車の運転手は部屋の前で追い返された)
 そしてサンスイン側は俺達を案内してくれた人に出迎えてくれた老人、彼はこの都市でもかなりの権力者だそうだ。その他にここの守護をしているという男女1人ずつ計8人が集まった。

 まず先にチャーチスと俺達を案内してくれた男が今までの経緯について語った。
 俺達がパゼーレから来て合流した事。
 そしてヒョオナを凶震戒?の十戒士であるクラディに連れ攫われた事。
 そして奴の目的とその犠牲についての全てを語った。

「そんな……馬鹿な……」

 話を聞いた権力者の老人はその場に膝をついて倒れる。
 他の人達も俯き暗い表情をする。

 そんな彼らに俺はただ見てる事しかできなかった。
 それでも……このまま奴等の計画を進めさせるわけにはいかない。

「戦力を集めましょう、そうすれば奴等に対抗する策だって出てくるはずです!」

 俺はすかさずにアイディアを出した。
 今戦闘にいける人達を投入すれば勝てる可能性があるかもしれないと思ったからだ。

 しかし……

「ここの戦力は……もうあなた達とここにいるリューンとリシアしかいないのです
その他の皆はみんな凶震戒に……」

 帰ってきたのは残酷な事実だけだった。
 俺達に加えて2人だけ……あまりにも戦力が少なすぎる、これじゃあ大勢いるであろう奴等と戦うだなんて……

「甘い救済物語は終わったか?」

 戦力の少なさに動揺している俺にふざけた挑発をチャーチスがした。

「は?」

 彼のその言葉に対して怒りが湧き、彼を睨んだ。

「ちょ、ちょっとチャーチスさん」

「事実だ、実際にコイツは物事を甘く考えすぎてる。今回もなんとかなる、そんな気持ちでいたんだろ?」

 止めようとするヒナリをよそにチャーチスの言葉にさらに俺はヒートアップする。

「やらなきゃ俺達だけじゃなくてここの住民だって危険な目に遭うのに行動しないのはおかしいだろ!?」

「だからと言ってお前の理想ばっかの作戦をしてもただただ全員無駄死にするって話だろ
作戦を立てるのにお前は状況を全く見てないんだよ」

 そんな言い争いをしてしばらく睨み合いが続いた。

「やめてください!」

 そんな睨み合いを静止させるかのようにレイナが間に入ってきた。

「こんなところで喧嘩してる場合じゃないです!今はどうすればいいかを……」

「じゃあどうすればいいかを聞こうじゃないか、どうすればたった6人で奴等に勝てるんだ?」

 俺達に割って入ってきたレイナに対してチャーチスは厳しい言い方でレイナに状況の打開策を問う。
 その答えにレイナが戸惑っていた時だった。

「仲間を増やせばいいんです」

 ヒナリが割って入りチャーチスに対して答えた。

「なに?」

「すみません、監獄がどこにあるかってわかりますか?」

 聞き返すチャーチスに対してヒナリは卓上の広げてある地図を見て俺達を案内してくれた男性に対して監獄の場所を聞いた。

「クラディは言いました、"住民全ての魔力を貰う"と。
なら殺して貰える魔力を減らすよりも、住民や他都市の奴等を生け取りにして少しでも自分が貰える魔力を増やすんじゃ無いんですか?」

「なら生け取りにした住民、そして加勢に来た他都市の人達を捕まえて置く場所は……」

「この都市南西のリバルン監獄と……ここのサンスイン監獄2つです」

 ヒナリがそう説明する最中、案内をした男性が2つの箇所に指を刺してそこが監獄であると説明した。

「リバルン監獄はここからでも近いですが……サンスイン監獄は城の近くですね……」

「どうしますかチャーチス隊長?このまま全滅を待つか、それとも行動を起こすのか?」

 ヒナリは監獄の位置を確認するとチャーチスに詰め寄る、もしかしたら住民達は殺されているかもしれない。
 しかしもしも生かされているのだとしたら……監獄から捕えられてる住民全員逃しこちらの戦力として迎え入れられれば勝機が見えてくる。

「しかし……監獄にいる奴等を助けれる時間はあるのか?
今この時クラディがあの娘の魔法を使えば俺達は何もせずに全滅するんだぞ」

 チャーチスから反論する。
 確かにヒョオナをクラディが手に入れた今、いつでもあの子の魔法を使って俺達を含むこの都市にいる人間全員から魔力を奪う事が出来る。
 しかしクラディが襲撃しヒョオナを連れ去ってからかなりの時間は経っている、けれどヒョオナの魔法の影響で俺達の魔力が無くなってる様子はない。
 何故クラディはヒョオナの魔法を使わないのだろうか?

「それでしたら……今は大丈夫だと思います」

 そんな疑問に権力者の老人が答えた。

「あの子の魔法は月の出ない夜……つまり新月に使った際いつも以上の効果を発揮します。
無論、クラディもその事は知ってるはずですので新月を待つつもりでしょう」

 新月になったらヒョオナの魔法の効果が増大する……新しく聞く事だ。

「新月まであとどれくらいだ?」

「2日後です」

 チャーチスの問いに中年の男性はすぐに答える、あと2日……それが俺達を含むこの都市にいる人達のタイムリミット。

「だが、もしクラディが今すぐに計画を実行する可能性だってあるだろ?
2日まで待ってる可能性は低いだろ?」

 チャーチスはクラディが今すぐヒョオナの魔法を使う事の懸念をしていた。

「クラディが新月まで待つのは間違いないと見てもいいでしょう。今自分達が無事なのが何よりも証拠です」

「……確かにそうだな
では監獄にいる人間の救助に行くにあたってどちらの監獄を狙うか?」

 ヒナリの言葉を聞き、チャーチスは彼の意見を受け入れ始める。
 そしてチャーチスは2つの監獄のうちどちらを攻めるかを聞く。
 ここから近い方か、それとも敵の本拠地の近くか。

「ここは……」

「両方を狙いましょう」

 ヒナリがチャーチスの質問に詰まった時、俺はおそらくヒナリと同じ意見を出した。

「確かに……片方だけに戦力を集めて監獄にいる人達を助けられたとしても、片方だけの戦力じゃ奴等には勝てない……
片方ずつ行ったとしても必ず2つ目に行く監獄の警備が固められて成功する確率は低いの。
だからここは賭けに出て片方ずつ!同時に攻めて全員を助け出すんです!!」

 俺は続けて強くチャーチスに語る。
 それを聞いたチャーチスは……

「……お前達の意見はわかった、確かにこのままの状況では全滅するリスクは高い。
だから少しでも勝てる可能性の方に行くと言うのだな」

「わかった、この作戦で行こう
貴方達もそれでいいですね?」

 チャーチスは俺達の作戦に賛同してくれてその事についてこの部屋にいるサンスインの人達に了承をとる。
 彼は静かに首を縦に振った、彼らもこの作戦に賛成するという意思のあらわれだ。

「よしっ!それなら今すぐにでも……」

「待て」

 すぐにでも監獄へ行こうとする俺をチャーチスが呼び止めた。

「……なんですか?」

「今日は休め、まだクラディとの戦闘で負ったダメージは抜けきれていないだろ?
儀式まではあと2日もある、なら今日はもう休んで作戦を明日にして少しでも作戦成功確率を上げろ」

 チャーチスからの正論を聞き俺は休むために部屋の外を出た。

 真っ暗な状況だったが少し光が見え始めた、きっと助けてみせるからなヒョオナ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

唯一無二のマスタースキルで攻略する異世界譚~17歳に若返った俺が辿るもう一つの人生~

専攻有理
ファンタジー
31歳の事務員、椿井翼はある日信号無視の車に轢かれ、目が覚めると17歳の頃の肉体に戻った状態で異世界にいた。 ただ、導いてくれる女神などは現れず、なぜ自分が異世界にいるのかその理由もわからぬまま椿井はツヴァイという名前で異世界で出会った少女達と共にモンスター退治を始めることになった。

通販で買った妖刀がガチだった ~試し斬りしたら空間が裂けて異世界に飛ばされた挙句、伝説の勇者だと勘違いされて困っています~

日之影ソラ
ファンタジー
ゲームや漫画が好きな大学生、宮本総司は、なんとなくネットサーフィンをしていると、アムゾンの購入サイトで妖刀が1000円で売っているのを見つけた。デザインは格好よく、どことなく惹かれるものを感じたから購入し、家に届いて試し切りをしたら……空間が斬れた!  斬れた空間に吸い込まれ、気がつけばそこは見たことがない異世界。勇者召喚の儀式最中だった王城に現れたことで、伝説の勇者が現れたと勘違いされてしまう。好待遇や周りの人の期待に流され、人違いだとは言えずにいたら、王女様に偽者だとバレてしまった。  偽物だったと世に知られたら死刑と脅され、死刑を免れるためには本当に魔王を倒して、勇者としての責任を果たすしかないと宣言される。 「偽者として死ぬか。本物の英雄になるか――どちらか選びなさい」  選択肢は一つしかない。死にたくない総司は嘘を本当にするため、伝説の勇者の名を騙る。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。

桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。 だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。 そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。 異世界転生 × 最強 × ギャグ × 仲間。 チートすぎる俺が、神様より自由に世界をぶっ壊す!? “真面目な展開ゼロ”の爽快異世界バカ旅、始動!

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

初期スキルが便利すぎて異世界生活が楽しすぎる!

霜月雹花
ファンタジー
 神の悪戯により死んでしまった主人公は、別の神の手により3つの便利なスキルを貰い異世界に転生する事になった。転生し、普通の人生を歩む筈が、又しても神の悪戯によってトラブルが起こり目が覚めると異世界で10歳の〝家無し名無し〟の状態になっていた。転生を勧めてくれた神からの手紙に代償として、希少な力を受け取った。  神によって人生を狂わされた主人公は、異世界で便利なスキルを使って生きて行くそんな物語。 書籍8巻11月24日発売します。 漫画版2巻まで発売中。

処理中です...