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秘密⑤
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俺の表情を見て、その考えが伝わったのだろう。
正太郎はやれやれとでも言いたげに、当て付けがましく大きなため息を吐いた。
「ったく、仁。お前ってヤツは。
そんなだからいつまで経っても、童貞のままなんだ。
抱かれたい男No.1が、聞いて呆れるよ」
......悪かったな、童貞で。
「うるさいよ、正太郎は。
たまたま機会が、無かっただけだし」
落花生の皮を剥きながら、小声でボソッと答えた。
その時である。
「こんばんは、偶然だね!」
にっこり微笑み、ひらひらと手を振りながら正太郎の隣の席に、咲良さんが当たり前みたいにストンと腰を下ろした。
「うぉ、びっくりした!
......なんだ、五十嵐ちゃんか」
普段は素っぴんにTシャツ、ジーンズなどのラフなスタイルを好む彼女が見せた、艶やかな微笑。
黒いタイトなワンピースも、少し濃い目のメイクも、めちゃくちゃ色っぽい。
「......どこから、聞いてた?」
視線のやり場に困り、ちょっと俺がうつ向くと、珍しく動揺した様子で正太郎が聞いた。
すると彼女はククッと笑い、答えた。
「えっと......前後の会話は分かんないけど、童貞がどうのこうのってとこだけ聞こえた」
......マジかよ。最悪だ!
あまりにも恥ずかしくて、情けなくて、思わずまた視線をそらしたと言うのに。
彼女はまた肩を揺らして笑い、俺の顔を覗き込んだ。
***
最初彼女は誰かと待ち合わせをしているのかと考えたけれど、どうやらそうではないらしい。
正太郎の隣に座り、楽しそうに笑いながら豪快に酒をあおる咲良さん。
落ち込んでいるのかとも思ったけれど、意外と元気そうな彼女の笑顔を見て、少しだけホッとした。
そして小一時間が過ぎた頃、正太郎は壁に掛けられた時計に目をやり言った。
「えーっと......俺ちょっとこの後、彼女と約束があるんだわ。
だからごめん、もう行くな」
そんな話は全くしていなかったから、俺のためにきっと、コイツは嘘を吐いてくれたんだろう。
だけどありがとう、正太郎。
このチャンス、絶対にモノにしてみせる!
「えー、残念。そうなの?
じゃあもう、解散?」
じっと見つめられているのに気付き、ついまた目線をずらしてしまった。
......心臓の音が、ヤバい。
自分から誘わなければと思うのに、緊張で一瞬のうちに喉がカラカラに渇き、声が出ない。
「いや、帰るのは俺だけで良いだろ。
あとは若い、お二人で」
あまりにも不甲斐ない俺の姿を見るに見かねたのか、正太郎はそう言うと、にんまりと笑って席を立った。
正太郎はやれやれとでも言いたげに、当て付けがましく大きなため息を吐いた。
「ったく、仁。お前ってヤツは。
そんなだからいつまで経っても、童貞のままなんだ。
抱かれたい男No.1が、聞いて呆れるよ」
......悪かったな、童貞で。
「うるさいよ、正太郎は。
たまたま機会が、無かっただけだし」
落花生の皮を剥きながら、小声でボソッと答えた。
その時である。
「こんばんは、偶然だね!」
にっこり微笑み、ひらひらと手を振りながら正太郎の隣の席に、咲良さんが当たり前みたいにストンと腰を下ろした。
「うぉ、びっくりした!
......なんだ、五十嵐ちゃんか」
普段は素っぴんにTシャツ、ジーンズなどのラフなスタイルを好む彼女が見せた、艶やかな微笑。
黒いタイトなワンピースも、少し濃い目のメイクも、めちゃくちゃ色っぽい。
「......どこから、聞いてた?」
視線のやり場に困り、ちょっと俺がうつ向くと、珍しく動揺した様子で正太郎が聞いた。
すると彼女はククッと笑い、答えた。
「えっと......前後の会話は分かんないけど、童貞がどうのこうのってとこだけ聞こえた」
......マジかよ。最悪だ!
あまりにも恥ずかしくて、情けなくて、思わずまた視線をそらしたと言うのに。
彼女はまた肩を揺らして笑い、俺の顔を覗き込んだ。
***
最初彼女は誰かと待ち合わせをしているのかと考えたけれど、どうやらそうではないらしい。
正太郎の隣に座り、楽しそうに笑いながら豪快に酒をあおる咲良さん。
落ち込んでいるのかとも思ったけれど、意外と元気そうな彼女の笑顔を見て、少しだけホッとした。
そして小一時間が過ぎた頃、正太郎は壁に掛けられた時計に目をやり言った。
「えーっと......俺ちょっとこの後、彼女と約束があるんだわ。
だからごめん、もう行くな」
そんな話は全くしていなかったから、俺のためにきっと、コイツは嘘を吐いてくれたんだろう。
だけどありがとう、正太郎。
このチャンス、絶対にモノにしてみせる!
「えー、残念。そうなの?
じゃあもう、解散?」
じっと見つめられているのに気付き、ついまた目線をずらしてしまった。
......心臓の音が、ヤバい。
自分から誘わなければと思うのに、緊張で一瞬のうちに喉がカラカラに渇き、声が出ない。
「いや、帰るのは俺だけで良いだろ。
あとは若い、お二人で」
あまりにも不甲斐ない俺の姿を見るに見かねたのか、正太郎はそう言うと、にんまりと笑って席を立った。
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