甘くて、苦い

ryon*

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キスの日を、過ぎても

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「ねぇ、優希。
 ...5月23日ってさ、キスの日らしいよ?」

ネイルを塗りながら一瞬だけこちらを向き、彼女は俺の言葉に返事を返した。

「へぇ...、そんなのあるんだ。
 知らなかった。」

顎に指を添え、俺の方をもう一度向かせてキスをしようとしたら、眉を片方だけ上げ、ちょっと意地悪く彼女は笑った。

「...キスの日は、昨日よね?」

そう、今日は5月24日。
でも俺はいつだって彼女に触れたいし、キスをしたい。

「うん、そうだね。
 ...でもいますぐ優希と、キスしたくなっちゃったんだもん。」

プッと噴き出して、彼女はちょっと困り顔で言った。

「今、動けないから。」

それから彼女は瞳を閉じて、俺の方に顔だけ向けた。

軽く触れ合うだけのキスをして、それから彼女の事を強く抱き寄せた。

その瞬間、綺麗に塗ったばかりのピンクベージュのネイルがよれたため、彼女は大声をあげた。

「ちょっ...、信じらんないっ!
 ...塗り直しじゃない、こんなの。」

「...ごめん。」

謝りながらも、これで彼女にキスをしない為の理由がなくなったと密かにほくそ笑み、抱き締めたまま再度口付けた。

「全く、もう。
 ...次やったら、本当に怒るから。」

クスクスと笑いながら、彼女も俺の背中に腕を回した。

わざとでは無かったけれど、確かにこれは、俺も悪かったと思う。

でも一番悪いのは、魅力的過ぎる彼女だ。

こんな事を言おう物なら、間違いなくお説教コースだからそれは、口にはしなかったけれど。


キスの日でも、キスの日を過ぎても。

...俺は毎日君に、キスがしたいんだ。

                                                        【...fin】
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