5 / 111
5
しおりを挟む
しかしそこで天の邪鬼が顔を覗かせ、ついツンツンした態度を取ってしまった。
今にして思うと、これが良くなかったのかもしれない。
『あぁ‥‥‥別にお礼を言われるほどの事じゃ、ありませんよ。
例えこれがあなたじゃなかったとしても、僕は同じようにしたと思うし』
笑顔で告げると、彼はまた少しびっくりした様子だったけれど、すぐに可笑しそうにクスクスと笑いながら言った。
『そっか。でも、ありがとう。
正直かなりキツかったんだ、助かるよ』
***
なんとか無事に初日を終え、これでこの異世界の住人と会う事はもう二度と無いだろうと、この時の僕は思っていた。
だけど、違っていた。
この翌日から西園寺さんは僕のストーカーと化し、毎日のように昼は弁当を買いに、夜は高級車で勝手に迎えに来るようになったのだ。
もちろんお迎えに関しては、同じ車になんて乗ったらこのストーカーに何をされるか分かったもんじゃないため、丁重にお断りしているが。
僕からしてみたらあれは、あんな事を言いながらもただの善意だった。
だけどあの言葉通り、別に彼が西園寺プレシャスグループの御曹司だからとか、顔が良いからといった理由じゃなく、体調の悪そうな人を放っておく事が出来なかった。
ただそれだけだった。
もしも僕が女の子であったならば、これはいわゆるシンデレラ・ストーリーっていうやつになるのかもしれない。
しかし僕は男だし、それに彼に対して恋心を抱いているワケでもなんでもない。
こんなのいくら考えても、恩を仇で返されたような気分にしかならない。
***
そして迎えた、退店時間。
母はパートで帰りがいつも遅くなるため、僕はほぼ毎日、夕飯の準備担当を任されている。
そのため愛車であるママチャリに跨がり、必要な食材を買うためいざスーパーに出陣と思った絶妙なタイミングで、彼は現れた。
「今日もお疲れ様、陸斗くん!
良ければ車で、送らせて貰えないかな?」
頬を薔薇色に染めるその表情は、完全に恋する乙女と化している。
そんな彼を前に、その恋する相手が僕ではなく、これが完全に他人事であったならばきっともっと暖かな目で見守ることが出来るんだろうなと、心底うんざりしながら思った。
今にして思うと、これが良くなかったのかもしれない。
『あぁ‥‥‥別にお礼を言われるほどの事じゃ、ありませんよ。
例えこれがあなたじゃなかったとしても、僕は同じようにしたと思うし』
笑顔で告げると、彼はまた少しびっくりした様子だったけれど、すぐに可笑しそうにクスクスと笑いながら言った。
『そっか。でも、ありがとう。
正直かなりキツかったんだ、助かるよ』
***
なんとか無事に初日を終え、これでこの異世界の住人と会う事はもう二度と無いだろうと、この時の僕は思っていた。
だけど、違っていた。
この翌日から西園寺さんは僕のストーカーと化し、毎日のように昼は弁当を買いに、夜は高級車で勝手に迎えに来るようになったのだ。
もちろんお迎えに関しては、同じ車になんて乗ったらこのストーカーに何をされるか分かったもんじゃないため、丁重にお断りしているが。
僕からしてみたらあれは、あんな事を言いながらもただの善意だった。
だけどあの言葉通り、別に彼が西園寺プレシャスグループの御曹司だからとか、顔が良いからといった理由じゃなく、体調の悪そうな人を放っておく事が出来なかった。
ただそれだけだった。
もしも僕が女の子であったならば、これはいわゆるシンデレラ・ストーリーっていうやつになるのかもしれない。
しかし僕は男だし、それに彼に対して恋心を抱いているワケでもなんでもない。
こんなのいくら考えても、恩を仇で返されたような気分にしかならない。
***
そして迎えた、退店時間。
母はパートで帰りがいつも遅くなるため、僕はほぼ毎日、夕飯の準備担当を任されている。
そのため愛車であるママチャリに跨がり、必要な食材を買うためいざスーパーに出陣と思った絶妙なタイミングで、彼は現れた。
「今日もお疲れ様、陸斗くん!
良ければ車で、送らせて貰えないかな?」
頬を薔薇色に染めるその表情は、完全に恋する乙女と化している。
そんな彼を前に、その恋する相手が僕ではなく、これが完全に他人事であったならばきっともっと暖かな目で見守ることが出来るんだろうなと、心底うんざりしながら思った。
8
あなたにおすすめの小説
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる
cheeery
BL
告白23連敗中の高校二年生・浅海凪。失恋のショックと友人たちの悪ノリから、クラス一のモテ男で親友、久遠碧斗に勢いで「付き合うか」と言ってしまう。冗談で済むと思いきや、碧斗は「いいよ」とあっさり承諾し本気で付き合うことになってしまった。
「付き合おうって言ったのは凪だよね」
あの流れで本気だとは思わないだろおおお。
凪はなんとか碧斗に愛想を尽かされようと、嫌われよう大作戦を実行するが……?
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
優しい檻に囚われて ―俺のことを好きすぎる彼らから逃げられません―
無玄々
BL
「俺たちから、逃げられると思う?」
卑屈な少年・織理は、三人の男から同時に告白されてしまう。
一人は必死で熱く重い男、一人は常に包んでくれる優しい先輩、一人は「嫌い」と言いながら離れない奇妙な奴。
選べない織理に押し付けられる彼らの恋情――それは優しくも逃げられない檻のようで。
本作は織理と三人の関係性を描いた短編集です。
愛か、束縛か――その境界線の上で揺れる、執着ハーレムBL。
※この作品は『記憶を失うほどに【https://www.alphapolis.co.jp/novel/364672311/155993505】』のハーレムパロディです。本編未読でも雰囲気は伝わりますが、キャラクターの背景は本編を読むとさらに楽しめます。
※本作は織理受けのハーレム形式です。
※一部描写にてそれ以外のカプとも取れるような関係性・心理描写がありますが、明確なカップリング意図はありません。が、ご注意ください
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる