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本編2章
今度こそ目が覚めると……。
俺はどうやら長く眠ったままだったらしい。
目が覚めたことに気づいた使用人が慌てて、父様と母様を呼びに行くし、大騒ぎになった。
なんだか、2人とも少しやつれてる気がする。
それに驚いたのは…俺が寝てる間にカナタが養子として家に来ていたことだった。
俺今10歳は過ぎてるってことか、あれから3年…3年の間俺はどうやら目が覚めなかったらしい。
断片的にしか夢は覚えてないけど、悪夢が多かった気がする。
たまに、俺の知らない5人がなにやら話してる夢も見たけど、あれはなんだったんだろうか?
カナタは身長伸びてたし、多分、成人くらいしてたと思う。
目が覚めてみると、意外にも俺は平気だった、平気だと思い込もうとしてたんだって知るのは少し先に気づくことになる。
カナタは俺を見ても、なんの反応をしなかった。
記憶がないのか?それとも、アッシュと既に婚約してるし、前回カナタは生涯タダ働きになったわけだし、大人しいのかな。
キリヤとの対面は俺が目を覚ましたってことで体調を見て会うことになった。
本来の年齢より遅れて会うのがなにに影響するのかは予想がつかない。
正直キリヤと会うのがいちばん怖い、だって、俺絶対泣くよ、キリヤ前回死刑にされたわけだし。
そんなの泣くに決まってるじゃん。
ベッドの上でぼんやりしながら、泣きながらよかったと父様と母様、それに使用人のみんなを見てると俺って本当に愛されてるんだなって思う。
家族のためにもなんとしても俺はループを止めるための手段を見つけなきゃいけない。
たぶん、シエルがまた次あることを言ってたことを考えると攻略対象のキャラが1人でも死ぬのはダメなのかもしれない。
前回はキリヤが死んで今回はシエルが俺の前で自殺した、だから、これでループ確定とか?
もしそうなら、あとで本を読み返す必要があるな、ユーリとして書いた本の中にも誰かが死んだとか書いてあるかもしれない。
両親に抱きしめられながら、こんなことを冷静に考えてる俺って冷たい人間なんだろうか、シエルが死んだのに目が覚めてみたら涙の一滴も零れないなんて…。
また夢を見た、シエルの夢だ。
何度でも俺の前で死んで、溶けて消えていく。
その光景を何度も何度も繰り返し見せられる、そんな夢、でも、たまに違うんだ。
シエルが俺に向かって微笑んでくれたり、仲良かった頃の夢まで見て……俺は全然吹っ切れてなかった。
シエルの死について冷静に考えるのができたから自分は冷たい人間だ、薄情な奴だと思ったけど、泣けないのは一種の心の防衛本能みたいなものらしい。
俺が目を覚ましてから、父様が呼んでくれた心の病気にかかった人を見る専門の医者にみせられた。
俺は傷ついていて現実として、しっかりそれを受け止めきれてないようだ。
だから、泣くこともできない、泣くのは認めたことになるから。
精神安定剤を貰ってからだ、俺はシエルの夢を頻繁に見るようになった。
夢の中でのシエルは俺を恨んでいることもあれば、俺と仲良く笑いあってる時もある。
苦しい、くるしい、クルシイ……。
俺は塞ぎ込むようになった、目が覚めてもどこかぼんやりしてて、週一でアッシュとのデートがあったのにそれもキャンセルして、部屋から出なくなった。
キリヤとの挨拶は一応したけれど、キリヤは俺の変わりように驚いていた、あの反応からして記憶があるんだろうな。
それでも、キリヤは何も言わなかった、俺の目の前でシエルが死んだことは知ってるから。
俺が寝てる間に、シエルが死んだことは面白おかしく記事にされたらしい、自分の身分を弁えず主人に恋して主人から愛されなかっただけで目の前で自殺した少年として……、俺は被害者扱いだ。
被害者といえば、被害者なのかもしれないが、俺が選択を間違えなければシエルは死ななかったんだから俺は加害者でもあるはずなのに。
それで、精神を病んでしまった俺は目が覚めても悲劇のヒロインのような扱いだ。
ははっ、なんだよ、これ……、本当は誰かに責めてもらいたいのに誰も俺を責めない。
シエルに優しくしてたら、こんな事にならなかったのに、主に恋をした愚か者扱いだ。
責めてもらえないのがつらい、苦しい、まるでこんなの呪いだ…。
僕は16になった、本当ならデスペア学園入学式パーティーに行くんだけど、外に出ることすらできないでいた。
アッシュも今の俺の現状を知ってるから、無理に会おうとはしなかった。
毎日届く手紙は愛が込められてるけど、こんなのまるで呪いだ。
俺はわかってなかったんだ、アッシュのことを、本当は残酷だってことを。
前回アッシュはみんなを罠にはめた、それがなにを意味するのか、理解してるようで理解してなかった。
シエルが目の前で死んだ時にアッシュはたしかに笑った、あの光景が今でも忘れることなんてできないし、アッシュが笑ったのを見てわかったんだ。
アッシュは人の死をなんとも思ってない、たぶん、夢の中で見たアッシュが僕以外はゴミと言ってたけど…あれはユーリの時の記憶なのかもしれない。
一日中部屋にいると落ち着かなくてユーリの日記を探すことにした。
他にもあるかもと探して本棚をくまなく調べたり、ベッドの下とか色々と探してみて見つけた、全部で5冊、その中には記憶がある場合とない場合があった。
全員が全員記憶もちなわけじゃなくて、前回の行動次第で記憶を持ってる場合があるらしい。
それは断片的だったり、全部だったりするし、誰かが死ぬとやっぱりループ確定だと思う。
最初のときは誰とも結ばれてなかったから、多分それもループ確定に繋がるんだと俺は考えた。
ただ、気になる文面もあった、思い出したとか、アッシュ、シエル、カナタ、キリヤ、リバーはこんなんじゃない、偽物だ!って書かれてたりもした。
どういうことだ?作られた記憶に惑わされたらダメだ、あの5人はこんな酷いことを俺にはしないって書いてあって…………、俺?
最初の日記らしきものには僕って書いてるのに、思い出したって書いたあたりから俺ってなってる…。
これって、俺が書いたってことか、それなのに俺は前回からしか記憶がない、最後らへんの日記には記憶がどんどん塗り替えられてるって書いてある。
本当の記憶がわからなくなる前に色々と書いておかないとって、自分が自分じゃなくなる前に…。
そう最後に書かれてて、あとは手がかりなしだ。
おかしい、これだけ書いて、続きがないのが…。
これって他にもう1冊あるってことかもしれない、でも、どこに?
日記を読んだから、自分が誰かわからなくなった。
作られた記憶ってなんだ?
混乱する頭で机に向かって、今までの出来事を書いて落ち着かせようと思った。
でもそれをすると、どうしても、シエルのことが頭に浮かんできて…ぽた、ぽた、と大粒の涙が溢れ出た。
嗚呼、俺はシエルが死んだことを認めてしまったのか、そう思った…。
「ユーリ様」
シエルの声が聞こえた気がして、振り返るとシエルがそこにはいた。
なんで?どうして?
と、疑問は頭に浮かぶけど、シエルも成長してて、自殺した子供の頃の姿ではなかった。
「シエル…」
震える声でシエルの名を呼べば嬉しそうに笑う、その表情に俺の心は救われた気がした。
違う、ダメだ、自分の罪をこんなんで許してもらった気になってちゃ…。
シエルの手が伸びてきた、俺の頭を優しく撫でる手は冷たくて、けど、俺に触れていた。
本物…?幽霊?この世界に幽霊が存在するかは、わからないけれど、目の前にいるシエルは存在してる。
俺の罪悪感から生まれたわけじゃなさそうだ。
それからは楽しかった、1人で部屋にいてもシエルがいる、ただそれだけで救われた。
シエルは俺の話をいくらでも聞いてくれた、シエルが死んで辛かったことや悲しかったことも話したし、夢の中にシエルが頻繁に出ることも話した。
シエルは「ふふっ、私のことそんなに思っててくれたなんて嬉しいです」と笑う。
俺が笑顔を取り戻したからか、主治医からもデスペア学園に今から通っても問題ないでしょうと太鼓判を押された。
ああ、シエルとの平和な日々に終わりを告げて、またあの学園に通うことになるのかと俺は気が重くなる。
だって、俺はすっかり悲劇のヒロインのような扱いだ、きっと学園に行けば好奇心の視線に晒される。
そんなことがわかってるのに、なぜ、行かなければいけないのか。
そりゃあ、婚約者のアッシュはいるけど、俺はそのアッシュにも会いたくないんだ…。
自分の気持ちがわからなくなってしまったから…、どうしても、脳内で繰り返し再生されてしまうシエルの自殺と、そのとき笑ったアッシュの顔だ。
あれはどんなに振り払おうとしても忘れることができない、アッシュは笑ったりしない!って…なぜか、思うんだ……。
そう、なぜか、アッシュは人の死を笑ったりしないって…強く俺の心が訴える。
日記を読んでから俺はおかしくなったのか、違和感を覚えるようになった。
今までの俺がもってる記憶の中のみんなに違和感、アッシュは、キリヤは、リバーは、カナタは、シエルは…こんなことしないって…。
あの日記にも書いてあった、みんなはこんな事しないって、俺の知ってるみんなは優しいんだって、俺の大事な記憶を汚すなって怒ってた。
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