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本編3章
脱出手段が見つからない。
いくら考えても脱出手段は見つからない、つか、魔法陣とか色々と駆使されてて無理だ。
自力脱出は無理、じゃあ、誰かが助けに来るまで…ってのも絶望的なんだよな。
この結界から外に出れないかぎり、俺のことを気にする人は現れない。
俺の存在そのものが認識されなくなってるはずだから、マジで困った。
うーん、これはあれか、リバーが来たらリバーを油断させて脱出するしかないか。
俺をここに連れてきたのは間違いなくリバーだし、リバーがここに来ないわけがない。
それまでは…、とりあえず、寝るか。
起きて待っててもいつ来るかわかんないし、寝てれば起こすだろ。
そうして眠りについて深く意識が沈んだ頃、またおかしな夢を見た。
アッシュ、シエル、カナタ、リバー、キリヤ5人とも揃ってる夢だ、どこか研究室のような場所で5人が真剣な表情で話し合っている。
何を話してるかまでは理解ができない、俺は必死に手を伸ばすのに誰も俺には気づいてないようだった。
これは…なんだ?なんでこんな夢を……。
バッと手を伸ばして目を覚ますとリバーが俺の頬に触れてるところだった。
いまだにざわつく胸はバクバクいってて、冷や汗がたらりと背中を濡らす。
リバーは俺が起きたことに驚いたのか、目を見開いていた。
「はっ、はぁ……リバーせ、んせ?」
「ユーリ起きたのね、おはよう」
気を取り直したのか、微笑みながら俺を見る目は優しさに満ち溢れている。
なんでこんな表情してるのに俺の事をここに閉じ込めたのか、理由がわからない。
穏やかすぎる表情と行動があってないだろ、さすがに。
「ふふっ、ユーリ本当に君って表情になんでも出ちゃうのね?少しは隠すの上手くならないとダメよ」
「あ、いや……その…」
「私がなんでここに連れてきたのか、不思議でしかたないのね?そうね、理由は簡単、貴方を死なせたくないから…かしらね?」
人差し指を頬に添えて考えてる素振りからの言葉に俺の頭の中は混乱していた。
意味がわからない、は?どういうことだ、それ?
死なせたくないって、だって……え?
訝しげな表情を浮かべると困ったようにリバーは笑うだけだ。
なんでそんな表情してるのか、本当に理解が出来なくて頭から湯気でも出そうだ。
俺そんなに頭いいわけじゃねぇんだから、考えること増やすのやめてほしい、切実に。
「貴方が前回自殺したからよ、アッシュに追い詰められて可哀想に、今度は貴方を守ってあげるわ、私がずっと…」
リバーに抱きしめられて、ふわりと鼻腔を擽る甘い香りにじんわりと胸が暖かくなって…ほっと安らいでる自分に驚いた。
なんで、そんな、リバーはだって、今の俺になった時に1回目問答無用でレイプしてきたやつだぞ?
そんな奴になんでこんな落ち着くんだよ。
てか、今前回って…記憶があったってことか…。
知らなかった、全然気づかなかった。
「愛してるわ、ユーリ、今度は私とちゃんと生きてね?」
「………………」
恍惚とした表情を浮かべて、そういうリバーに頭の中はぐちゃぐちゃで混乱していた。
記憶っていつからあるんだ?リバーの記憶って前回だけ?
じぃっとリバーを見てると頭をよしよしと撫でられる、その手が優しくてなんだか泣きたい気持ちになった。
ダメだ、俺ってちょろ過ぎじゃね?
いくら、疲れきってるからってちょっと優しくされたくらいで絆されそうになるなんて、それで後悔したじゃないか、アッシュの時に…。
いい加減学習しろよ、俺。
心の中で自嘲気味に笑ってからリバーの手を振り払うように頭を振った。
「あら、残念、簡単に絆されてくれないのね」
「どういう意味だよ」
「そのままの意味よ、アッシュには簡単に絆されたのにね、私には無理なのかしら」
「記憶どこまであんの?」
「ふふっ、秘密♡教えてあげませーん!」
茶化すようなリバーの態度にイラッとして眉間に皺を寄せ睨みつけると、心底楽しいといった様子でクスクス笑うリバーは人の神経を逆撫でするのが得意らしい。
「あっ!そうだ、もう1ついいこと教えてあげる」
なにかを思い出したように微笑むリバーの口から聞かされる言葉は脳が処理するのを拒んだ。
だって、そうだろ?リバーは…「ふふっ、アッシュを殺したのは私よ♡だって、目障りだったんだもん」と無邪気な子供のように笑う。
「な、なんで…そんなこと……だって、アッシュとリバーは……」
「うふっ、血の繋がりがあるのに?って思ってる?甘いわ、甘すぎる!いい?私はユーリがほしい、あの子もユーリがほしい、なんなら前回失敗してユーリを自殺に追い込んだ、わかる、この意味が?あの男が生きてればユーリを追い込んでしまうってこと、私は貴方を死なせるつもりないの」
「でも!」
「血の繋がりより、貴方のが大事なのよ、私にとったらね、ユーリだけが私にとって救いだから」
目を細めて悲しげに微笑むリバーはどこか懐かしむ表情をしていた。
何を思い出してるのかわからないが、今の俺を見てるわけじゃないってことだ。
俺はリバーを救うような行動をした覚えがない。
結局俺が生きてるかぎり周りの誰かは死ぬ運命なんだろうか、誰かが誰かを殺したり、自殺したり、もううんざりだ!
次またループするようなことがあれば、すぐに俺は死ねばいい?
そしたら、今度こそループから脱出できるのかな……。
「ねぇ、いまなに考えてるか、当ててあげましょうか?」
「え?」
「次またループしたらすぐに死ねばいいとか考えてない?ふふっ、別にそれも試したければ試せばいいけど……」
─────そんなことしても、ループから逃げ出すことなんてできないのよ。
残酷なまでに綺麗に微笑んだリバーにゾッとした。
本気で言っている、間違いなく。
まるで全て知ってるかのように…、でも、本当に?
正直分からない、この世界は本当は誰かの意志によって作られてるのか、だって、おかしなことが沢山起きてるから、キリヤに会えなかったのも、会ったら会ったことを忘れていたことも、俺の行動次第で変化するのも、全てが変なんだ。
まるで誰かに操られてるような、誰かの意志によってねじ曲げられてるような、そんな気さえしてくる。
でも、それならこの世界は誰にとって都合がいいんだ?
リバーにとって都合がいいように変わってるなら、リバーと毎回結ばれないと変だし、わからない、ワカラナイ、この世界は誰にとって都合がいい世界なんだ?
「ふふっ、せいぜい悩みなさい、ユーリ」
俺を嘲笑うリバー、全てを見透かすようなその瞳から俺は逃れるのができない。
リバーが俺の目を覆うように触れてきて、そうして囁く「ユーリどうしたの?いつもみたいにほら、私を愛して」と。
その瞬間、記憶が塗り替えられていく。
違う、やめろ!リバーと愛し合ってる存在しない記憶が俺の頭の中に流れ込んできて……今までの記憶が消えていく、嫌だ!やめてくれ!
俺が消えてしまう、俺が……誰か助け…。
「ユーリ大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ、リバー」
リバーが心配そうに僕の顔をのぞき込む。
心配しないでと頭を振って笑顔を浮かべれば「さぁ、私達のお家に帰りましょうか?」と言葉を紡ぐから、それに頷いて手を取る。
リバーが助けてくれなかったら、僕はどうなっていたんだろうか。
目が覚めた時にはこの部屋にいた、怖くて震えているのをリバーが助けに来てくれた。
リバーが触れると足枷も手枷も取れて、そのあとそのままリバーに連れられ家に戻った。
なんだか懐かしさすら感じる、ずっとここに来れてなかったようなそんな錯覚だ。
たった数時間拉致られただけで懐かしくなるほど僕の心は疲れ切っていたらしい。
リバーの後ろをついて歩くとソファに座るよう促されて、それに従うように座れば「待っててね」と笑顔を浮かべたリバーがどこかに行ってしまった。
ぼんやりと天井を眺めて考えていた。
僕いつどこで拉致られたんだっけ?
モヤがかかったように記憶が曖昧で思い出せない、犯人が誰だったのかも。
「犯人どうなったんだろ?」
ぽつりと言葉が溢れた。
犯人の姿は覚えてない、これって犯人がちゃんと捕まるのかわからないんじゃ…また、拉致られたらどうしようと恐怖が湧き上がってきて体が震える。
すると、リバーがトレイの上にマグカップを乗せて戻ってきた。
震える僕の隣に座って優しく抱きしめられると、その温もりにほっと胸を撫で下ろす。
リバーの温もりが落ち着く、そっか、僕まだ怖いんだ。
見えない犯人がまたいつ現れるかわからないから。
「ユーリ、大丈夫かしら?落ち着くようにホットミルク持ってきたのよ、はちみつ入りだから飲みなさい」
「うん、ありがとう、リバー」
マグカップを受け取るとほんのり温かいカップにじんわりと胸が暖かくなる。
リバーはいつも優しい、こんな風に僕が弱ってるといつもそばにいてくれて…それから………それから?なんだっけ?
まぁいいか、気にすることなく口をつけてみれば程よい甘さで温かさのミルクにポカポカしてくる。
疲れきった心と体には染み渡って、気づいたら涙が溢れ出ていた。
それに何も言わず隣でただ座って肩を抱きしめてくれるリバーの優しさが嬉しくて仕方ない。
この人を愛してよかった、そう心の底から思える。
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