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本編3章
目が覚めた時には…
目が覚めるともう昼過ぎで、隣にリバーはいなかった。
デスペア学園に行ったんだろうな、生徒とは違うから休むわけにもいかないし。
僕は完全に遅刻だから今日はもう開き直って休むことにした。
どうしようか、一人で家にいるのは退屈だし、何よりひまだ。
それに目を背けても襲ってくる日々の違和感、リバーと一緒に暮らしてることは幸せだと思う反面、違うって心が叫んでる気がする。
それがなんなのか僕にはわからない、だって、リバーとは恋人同士で婚約してて親公認で同棲してる……はずなのに、なんでこんなにも胸がモヤモヤするのだろうか?
昨日はあんなに幸せだと感じれたのに、どうして……。
ベッドで寝返りをうって天井を眺めて、ため息が漏れた。
なんで、僕はこんなに納得ができないのだろうか、リバーを愛してるはずなのに心にぽっかりと穴が空いたような拭いきれない違和感、僕の隣にいたのは本当にリバーだった?と感じてしまう。
「ああ、モヤモヤする、どうしようかな、こういうときってどうするのが1番なんだろう」
誰かに相談したいと思うのに、相談できる相手がいない。
本当に?と自分自身に言葉をなげかける。
誰か頼りになる人がいたじゃないかって、そう感じるのに思い当たる節はない。
例えば将来騎士団長間違いなしのキリヤ、彼は頼りになりそうだ、でも、僕との接点はほぼない。
そんな彼にいきなりこんななにもわからない掴みどころがない話をしたとしても意味がない。
他には?と考えてもカナタはいくら頭がよくても僕より年下だし相談するだけ無駄だろう。
あと誰か…いた気がするのに、なんで思い出せないんだろう。
青みがかった白い髪、青い瞳……君は誰だ?
頭の中に思い浮かぶ彼はいったい…。
ベッドから起き上がって動こうとすると、腰に痛みが走ってベッドに沈むことになった。
どうやら僕は運動不足のようだ、あれくらいで気を失うわ、体が痛いなんて…。
リバーが帰ってくるまで大人しくしてるしかないかなとふて寝することにした。
リバーのところに来てから時々見る幸せな夢、その中では5人の誰かと一緒にいるんだけど、起きた時には幸せな夢だったと思うだけで内容まではハッキリと覚えてない。
僕は誰のことを忘れてるんだろうか、これも感じる違和感だ。
夢の中では全員のことを知ってるのに起きたら、知らない人がいたなって感覚になるんだ。
でも、内容は覚えてない、なんだろう?これって。
内容は分からないのに知らない人がいたってなんで……。
日に日に積もる違和感に心は疲弊しきっていた。
大好きな人を疑いたくないのにもしかしてリバーは僕になにかを隠してるんじゃないかって。
それにここに来てから感じる視線、リバーがいる時はないのにリバーがいないときにはとくに見られてる、そんな気がしてならない。
心配かけたくないから、リバーに言えないでいた。
今日もそうだ、僕は休みだから一人で留守番、ソファに座って紅茶を飲んでると射抜くような鋭い視線を感じて背中がぞわりと震えた。
ドッドッドッと走ったように鼓動が早くなって、心臓が今にも破裂しそうだ。
息が苦しい、はっ、はっ、と短く荒く呼吸を繰り返して酸素を必死に取り込む。
ひゅー、ひゅーと喉が鳴って、これって過呼吸?苦しい、息が苦しい、落ち着け、落ち着くんだ、酸素を取り込みすぎじゃダメだと頭ではわかってるのに体はいうことをきかない。
苦しくて苦しくて、浅く呼吸を繰り返すことでよけいに苦しくなって目の前が暗く染っていく。
酸素不足で頭がクラクラしてきた、やばい…と思ってもズルズルとソファに体を沈めて僕は意識を手放した。
揺蕩う意識の中、優しく頭に触れて撫でられてるのをうっすらと浮上した意識で感じた。
僕に触れてるのは誰?リバー?と頭では思うのに、体はまだ動かすことができないし、目を開けることもかなわない。
「ユーリ様…、起きてください」
ユーリ様?誰の声だろう、知らない声のはずなのになんだか凄く懐かしい、そんな気がする。
君は誰なんだ?
重い瞼をバチッと開いて目が合った、綺麗な青い瞳、青みがかった白い髪をした1人の美青年、あまりの美しさに息を飲んだ。
そんな青年は僕を見て優しく微笑んだ、愛おしそうに笑う彼になんだか胸が甘く締め付けられるようだ。
なんだろう、知らないはずなのに、でも、僕は君を知ってる……。
「ユーリ様、お目覚めになられてよかった」
謎の美青年越しに見える天井は知らないもので、ちらりとまわりを見渡すと記憶にない場所だった。
リバーの家じゃない、どこだ、ここ!?
慌てて上体を起こそうとして青年に肩を押されて止められた。
「意識を失ってんですからまだ大人しくしていてください」
「ここはどこ、君は誰?」
僕がなんとか声にした言葉に彼は酷く傷ついたような一瞬だけそんな表情をした。
それでもすぐに微笑んで「私はシエル、ユーリ様の専属執事ですよ、今も昔も、この身は貴方に捧げたものです」
と言われても、僕に専属執事がいるなんて聞いてない。
今にも消えてしまいそうなほど儚い雰囲気で微笑む彼に胸が苦しい、思い出せと訴えかけてくる。
僕は何を忘れてるんだろうか、どうして……そんな顔で僕を見てくるの?
「ユーリ様?」
「……僕は専属執事がいるなんてきいてない」
「そうですね、今回は身を隠していたので…ふふっ、そのうち思い出しますよきっと…」
目の前で手をかざされて、瞼をゆっくりとおろさせられると意識がふわふわしてストンと眠りに落ちるように意識を手放した。
幾度となく夢を見る。
いつもなら幸せそうにしてる夢だったけど、今日は違った。
夢に出てくる5人の男性はいつもと同じだけれど、僕は彼らが見るベッドの上で寝ている。
ノイズがひどくてなにを言ってるのかわからないけれど、5人とも深刻そうな表情をしてるから夢の中の僕になにかあったのだろうか?
「俺……い…!あ……き、は……て…ば……」
キリヤが何か言ってるけど、わからない、それを雰囲気的には慰めてるんだろうか?リバーがキリヤの肩に触れて頭を振ってる。
なんで、みんなそんな顔してるの?
夢の中ではいつも幸せそうにしてたのに。
それが苦しくてしかたなくて、はっ、と目が覚めた。
知らない部屋に僕はまた拉致られたのかと頭を抱えることになった。
昔からそうだ、よく誘拐されてみんなに心配かけて、そんな自分を変えたくて頑張ってきたつもりだったけど結局またリバーに心配かけちゃうんだろうな。
カチャリとドアが開く音が聞こえてきて、そちらに向けば謎の青年が姿を現した。
誰だろうか、知らないはずなのになんでこんなにも彼を見ると安心できるのか。
知ってるような懐かしい感覚が襲ってくるのか僕には分からない。
「ユーリ様お目覚めになられてよかった」
ふわりと笑う彼は心底安心したような表情をする。
いままで僕を誘拐してきた犯人とはどれも態度が違うようだ。
ますますわからなくて頭の中は混乱するばかりだ。
なぜ、そんな顔をするのか、僕は覚えてないだけでどこかで会ったことがあるのかな?
「ふふっ、私が誰かわからなくて困っている…といった感じでしょうか?」
「そうだね、僕は君のことを思い出せないし、わからない、なのになんで君を見ていると安心できるのか」
「ユーリ様はリバー様に騙されています、あの方はユーリ様の記憶を操作している」
「………………」
信じられない、リバーがそんなことするなんて。
疑惑の眼差しを向ければ困ったように眉尻下げて微笑んだ彼が僕に近づいてきて、僕の前で跪く。
「私はユーリ様をお守りしたかった、アッシュ様が亡くなったときいて、犯人は私以外の3人、そのうちアッシュ様を殺せそうな方はリバー様とキリヤ様でしたから」
「………………」
「それを独自に調べるために身を隠しました、ユーリ様に危害が及ぶ前にと思ったのですが……すいません、一足遅くてユーリ様の記憶を変えられてしまいました、私の力不足が原因です」
「それを僕に信じろと?」
「そうですね、信じてほしいです」
どこまでも真っ直ぐで嘘なんて言ってるように感じなかった。
でも、それを信じろと言われても突拍子もない話に僕は混乱もしていた。
でも、彼の言葉はなぜだか信じたい気持ちもある。
だって、僕はリバーの家にいる時から違和感があったから、その違和感の正体がもし万が一にも記憶を操作されたせいなら納得できないこともない。
だからといって自分の違和感だけで信じられるほど僕も馬鹿ではない。
半信半疑でしかない、本当なのか、嘘なのか、彼を見つめれば切なげに揺れる瞳、それでも真っ直ぐ僕を見てくる力強い眼差しに困った。
嘘をついてる、そう思えるだけの証拠もない。
だからといって信じられるほどの証拠もない。
頭を乱雑に掻き乱してため息を吐き出した。
「はぁ……僕は正直言って君が嘘を言ってるようには見えない、でも、君を信じられるほどの証拠もない」
「はい、それはわかってます」
「……どうするべきなのか、どうしたら正解なのか……」
「だから、その証拠をお見せしたいです」
「え?」
「ユーリ様にはこちらを」
ノートを手渡された、これはなんだ?と首を傾げて彼を見つめると「それは台本です、そこに書いてあるようにいえばリバー様は自分から自白してくれます」
「……それが証拠になるってことか」
「そうです、そろそろリバー様はここを見つけて突入してくるはずですから、私が情報を流しておきました」
「……わかった…」
台本をぱらぱらとまくれば、内容は簡単なものだった。
僕は作り変えられた記憶を取り戻してリバーにそれをぶつける、一人称も俺ってなってる。
これを覚えてリバーと会話すれば、彼の言う通りなったらそれが証拠になる。
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