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本編4章
嘘だろ?
頭がズキズキと痛んで目を覚ますと暗くかび臭い室内に俺以外にも誰か囚われてるようだ。
蠢く影は2人、なんでことに?
ゲームでこんなイベントなかったのに、本当にゲームの常識や知識が全く役立たないなと内心苛立つ。
動いてはいるが、とくになにも喋らない2人は暗いせいで姿の確認ができない。
性別や年齢どちらもわからない相手と協力して逃げ出すことができるだろうか。
なんのために拉致られたかはわからないが、このままここにいるのは得策とは思えない。
さて、どうしようか、とりあえず、背格好からして大人ではないのはたしかだし、声をかけてみるか。
「あ、あの……」
「………………」
「えっと、……あなた達もここに連れてこられたの?」
「…そうだよ、まさかこんな所に連れてこられるなんて予想外だけど、身代金目的だったりするのかな」
「……はぁ…、本当にくだらない、身代金目的でこんなことをして上手くいくと思ってるのか」
あれ、なんか2人の声聞き覚えがあるような?
首を傾げてじっと見つめると、暗がりに少し慣れてきたのか、うっすらだが2人の姿が見えた。
その姿は見覚えがありまくるというか、まぁ、間違いなくリバーとアッシュの2人だ。
待て待て、あの2人記憶ないのか?
お互いに普通に話してるし、俺にも気づいた様子がない。
記憶がないなら、それはそれで助かるけど、あったら怖すぎる。
「ねぇ、君名前は?」
「え?」
「私はアッシュ、こっちはリバー、それで君の名前は?」
「……ユーリ…」
「ふーん、ユーリって名前なんだ、いい名前だね」
「……ありがと…」
2人ともなんの反応ないから覚えてないんだとホッと胸をなでおろした。
覚えてるなら全力で脱出しなければいけないところだった、誘拐犯に捕まってるより、アッシュやリバーと一緒に捕まってる方が怖すぎる。
ゾワッと寒気がして自分の体を抱きしめるように腕を回してかすかに震えた。
リバーの手が伸びてきて引っ張られると簡単にリバーの腕の中だ。
え?と混乱して見上げると優しげに微笑むリバーと視線が重なるそれがぞくりとした。
だって、その表情は記憶を作りかえた俺に向けていた笑顔と同じだから、作り物なんじゃないかなって思ってしまうんだ。
「おいおい、寒そうだな、大丈夫か?これで少しは暖をとれるとおもったんだけど、ダメだったか?」
「リバーじゃ体温が低いんじゃないのかい?私のところにおいで、私と年齢はそう変わらないだろうし、お互い子供体温だろうから私のが暖かいと思うよ」
腕を広げるアッシュと自分を抱きしめてるリバーを見比べても、正直どっちも嫌だって気持ちはあるのはあるんだけど、アッシュが切なげに俺を見てくるからおずおずと手を伸ばしてアッシュの方に移動して、大人しく腕の中におさまった。
「はぁ!?俺が先に気づいたのに、かっわいくねぇガキ」
「リバー、君はその喋り方を治しなよ、子供は怖がるよ」
そしてここで気づいた、そうだ、リバー髪型と性格が違う。
俺が2回目の人生で見た子供の頃のリバーは前髪もっさりで、オドオドしてた。
なのに、今目の前にいるリバーは興奮した時に出てくる口が悪いリバーって感じがする。
この状態から、ああなるなんてありえなくないか?
つまりどういうことだ、なんでリバーの性格が変わってるんだ?
アッシュの腕の中で二人の会話を聞けば聞くほどにわけがわからなくて混乱してきた。
じっとリバーを見てるとリバーに頭をクシャクシャに撫で回される。
「なぁに?私に惚れちゃった?」
「気持ちが悪い、その話し方はやめないか」
「アッシュこの話し方大嫌いよねー?なんでよー、私似合うでしょ、きゅるるん」
両手を顔の前でゆるく握ってぶりっ子ポーズするリバー、正直言って似合ってる。
この時のリバーはカワイイ系なんだな、成長すると背が高すぎる美人なおねえさんになるけど。
なんて呑気に考えてるとアッシュがなぜか俺の顔を覗き込んできた。
「ねぇ、君…あんなのが好みとかじゃないよね?」
「え!?なんで!?」
「あんなぶりっ子してるリバーを普通に見てたから、あれをやるとだいたいはドン引きするはずなんだ」
「ああ…、俺は別に好みとかそんなんじゃねぇけど、可愛いなとは思ったよ?」
「あらやだ、この子本当に私の事好きなの、きゃっ、嬉しい、照れちゃうわ」
「好きとかそんなんじゃないから」
呆れたようにため息つきながら言葉にすると残念と、しゅんとする姿はやっぱり可愛い、前回自分を殺した人間と前々回追い詰めてきた人間と、なんでこんなほわほわとほんわかしてるのが自分でもわからない。
誘拐された同士だからか、警戒心がないのか、俺が。
記憶がありそうならこんなの絶対無理だったけど。
ダメだ、この世界の謎が深まるばっかだ。
だいたい今回俺はちゃんと予定通りの行動をしてるんだ、なのになんで前回も今回も予定通りアッシュの女装姿と会えないんだ?
それに誘拐されてるアッシュも男の服装だ、女の子の服装してない。
意味がわかんねぇ、俺の行動次第で世界は変化する……まではわかってたけど、俺の今までの行動次第で変化するってことか?
にしても、今回のこの変化はなんだ?
俺とリバー、アッシュの3人が拉致れるってなんの意味があるんだ?
ヤンデレフラグを恋愛フラグを全力で立てようってことか、俺が逃げれないように……。
この世界の神様はどうやら俺になにがなんでも恋愛フラグとヤンデレフラグを立てさせてループさせたいらしい。
大人しく二人のやり取りを見ながらアッシュの腕の中で思考をめぐらせてると、リバーに抱きつかれる。
自分より大きい体に抱きつかれると苦しい。
「ねぇ、ユーリ酷いと思わない?私の事気持ち悪いなんて、そう思うでしょ?ユーリは私の味方よね?」
「ユーリ、リバーに遠慮する必要なんてないんだよ、自分の心に正直になった方がいい、気持ち悪いだろ?」
2人からすごい圧かけられてんだけど、きゅるるんって可愛こぶりっ子して俺に迫る美少女風美少年のリバーと女装はしてないから男なんだけど、やっぱり、美少女にも見えるアッシュ2人の美形の圧ってなんだか怖い。
正直になれと言われたら、俺は別にリバーのぶりっ子を気持ち悪いとは思ってない。
だから、ここはリバーの肩を持つべきか?
それとも、ノーコメントを貫くか。
「…………ノーコメントで…」
「もう!そんなのダメよ、白黒はっきりして!優柔不断な男は嫌われちゃうぞ」
「これにはリバーに賛成かな、はっきりしてほしいな」
「なんではっきりさせたいんだよ、いいじゃん、俺が答えたくないって言ってるんだから」
「どうしても?」
リバーが怪しい表情してる、なんか嫌な予感しかないんだけど。
逃げようにもアッシュの腕の中だから逃げれないしと戸惑ってると軋むような音を立て扉が開いた。
そちらを見ると俺を連れてきたであろう男の姿があった。
うわっ、呑気に話してたら誘拐犯来ちゃったじゃん。
逃げ出すつもりでいたのに。
記憶がない2人を庇いながら戦うなんてできるだろうか、ため息をついて誘拐犯を見ると他にもぞろぞろと男どもが入ってきた。
うわっ、これ無理じゃね?全員で10人はいるな、10人の大人を相手に子供の俺が立ち回れる気がしねぇ。
記憶はあるからある程度戦えるのは戦えるが、問題は俺の体格で使える武器がどこにもないってこと、魔法は使えないわけじゃないが大人相手だと無理がありそうだ。
どうしようと悩んでると、リバーが地面に触れて魔力を流し込むのが見えた。
嘘、この暗闇の中で魔法陣書いてたの?俺が寝てる間に。
魔法陣から無数の植物の蔦が出てきて誘拐犯たちに襲いかかって、四方八方から蔦から攻撃されるとあっさりと誘拐犯たちは蔦に拘束されて身動きが取れなくなった。
「面白いことがあるかもっておもって、わざと捕まったけど可愛い子に会えたからラッキーだったかしら」
「そうだね、わざと捕まってみるものだよ」
この2人わざと捕まったのかよ、嘘だろ。
リバーがトドメとばかりに違う魔法陣に魔力を流し込むと大きい人喰い植物がでてきた。
あれ、あの魔法陣って中級とかじゃなかったっけ、そのわりにすげぇでかいんだけど、どうなってんの!?!?
誘拐犯の命乞いと悲鳴を聞きながら笑顔を絶やさない2人が正直怖いっつか、この2人記憶が本当にないのか?子供がこの状況に驚くこともなければ誘拐犯を殺そうとしてんだけど。
「さすがに殺しは…」
「あら、甘いわよ?こいつらここで逃がしたりしたら、また同じことをするだろうし、それに誘拐した子供達に返り討ちにあったって前例を作った方がいいのよ」
「どうして?」
「ただの身代金誘拐じゃないから、貴族の子供って高く売れるの、プライドが高くて穢れもないから、そんな子をズタボロになるまで心身共に傷つけて調教をするのが楽しいってクソみたいな連中はいるのよ」
「うそ……」
「残念ながら嘘じゃないんだ、市民の子供を誘拐しても貴族の子供よりは安いからね」
「知らなかった……」
今回の世界はそういうのがある設定なのか。
なるほどな、それで俺達は誘拐されたと。
「でも、そういう事情があってもさ、やっぱりリバーが殺す必要ないよ、騎士団に任せよう?」
「仕方ないわね、よかったわね、あんた達この子のおかげで今は命拾いしたんだから」
無数の蔦で捕まってるから逃げるのは無理だとは思うけど、人喰い植物を見張り役としておいて部屋から出れば外は眩しい。
まだ昼頃か、ここどこなんだろう?と見渡しても見覚えがない場所だ、困ったな、こっからどうやって帰るんだ?
「アッシュ、ユーリ私につかまって」
「う、うん?」
「わかった」
俺とアッシュがリバーに掴まった瞬間景色が瞬時に変わった。
リバーこの歳でテレポート覚えてるのか、しかも、二人連れて戻ってこれるほど魔力も高いのかよ。
王宮の前に突然俺たちが現れたからか、慌てた騎士団達に囲まれてしまった。
事情を話してリバーが騎士団の人たちを連れてテレポートして、俺は全てを話してから帰宅となった。
帰りは騎士団長自ら家に送り届けられてしまった。
誘拐事件から俺は護衛がつくようになった。
今まではわりと自由にさせてもらっていたのに、1人で外出するの禁止になるし、まぁ、これがあるべき姿といえばあるべき姿なのかもしんないけど。
普通宰相の息子が1人で出歩くのも問題な気もする。
正直護衛がついた生活ってすげぇ不便だ、なにするにしても外に行くには常に誰かが俺と一緒に行動する。
カナタ、シエル、キリヤとの出会いはいたって普通の俺の記憶が戻ってから1周目のときと同じような感じだった。
やっぱり、おかしなことが起きたのはリバーとアッシュとの出会いだけか。
ただ、その出会いがあったからか、キリヤは俺の護衛役の一人でもある。
将来騎士団長になるはずの人が俺の護衛役になってしまったことと、そもそも、攻略キャラの1人である彼が護衛役として常にそばにいるんじゃ今回はキリヤルートで終わりそうな気もしてきた。
とにかく過保護だった、俺が誘拐されたと教えられていたようでキリヤは四六時中ってくらいに俺にピッタリだ。
なんなら家に住み込みで護衛してくれてる状態だし、一緒の部屋に寝てるし、キリヤは床で寝てるからそれが申し訳なくて同じベッドでと言ったら全力で断られた。
なんでだよ!ひどくないか、それって内心不満タラタラだったけど、真面目なキリヤなら仕方ないことかと諦め……るわけない俺はいざというときに役に立たないんじゃ困るから体を休ませて欲しいと懇願するとキリヤが折れてくれた。
自分から恋愛フラグ踏んでる気がするけど、仕方ないじゃん、俺の推しが床で寝てるとか耐えれなかったんだから。
誰に言い訳するわけでもないのに心の中でこっそりと俺は泣いた。
フラグをへし折りたいのに積極的に自分で立てた気がするし、でも、そうしないとキリヤは俺の護衛をしてる間はずっと床で寝ることになる。
そんなことを推しにさせるのが俺には耐えれなかった、毎日毎日、罪悪感で悪夢さえ見てたくらいだし。
キリヤと寝るようになってからは夢見はよくてぐっすり朝まで寝れるようになったから結果オーライなんだろうか。
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