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本編4章
混ざり合う。※グロ注意
今回のカナタのお話は、流血、グロ表現、カニバ、死ネタ、薬などなどありますので閲覧注意。
ゾッとするほど無邪気な表情に背筋が凍るようだった。
カナタはカニバとか平気でするタイプだし…、本気でやろうとしてる気がする。
警報が頭の中で鳴り響くが、だからといって抵抗の手段はない。
繋がれた両手両足、それに体がダルい、多分なにか盛られてる。
前に痺れ薬飲まされたし、それに似たようななにかかもしれない。
思うように動けそうにない体に苛立ちながらも睨みつけてると、カナタが小瓶を取り出した。
俺の目の前でわざわざご丁寧にちゃぷんと揺らして見せてくれるそれはなんだ?
紫色の液体、色からして飲みたくないなと考えてるとその小瓶の蓋を開けてカナタが飲み干した。
自分に使うための薬?一体何を……。
様子を伺ってるとカナタの身長が伸びていく、目を見開いて驚愕の表情を浮かべるとカナタの姿は変化して、どう見ても俺より年下には見えなくなった。
俺と同じか、年上か、なんで、そんな!?
「ふふっ、驚いてるね、兄様、これね、一時的なものだよ、ちょーっとばかり力がいる作業をする時にはこの姿になってるんだ」
「力がいるって……」
「兄様を傷つけずに切断するためだよ」
さも当たり前のように告げられた言葉にドッと汗が吹き出す。
切断するってどこを?とそれどころじゃないのに、冷静にそんなことを考えてる時点で冷静ではないのかもしれない。
受け入れ難い発言に俺の頭は混乱していた。
頬を引き攣らせ、後退りたくてもこれ以上は無理で、カタカタと体が震える、恐怖からだ。
だって、今自分を切断するって宣言した男から逃げたいと思うのは本能だろう。
「ははっ、兄様逃げるのは無駄よ、兄様にもね、食べてもらいたいんだ」
「食べるって何を……?」
「僕のことに決まってるでしょ?兄様と2人でここで食べ合いながら死ねたら最高に幸せだと思うんだ」
うっとりとした表情でそんなことを言うカナタは狂ってるとしか思えない。
一緒に死ぬ?食べ合いながら……、それって俺にもカナタを食べろってことだろうけど、そんなの無理だ。
人間を食べるなんてそんなの俺には……。
「拒否権はないよ、兄様に」
「俺は絶対食べない!」
「ふふっ、大丈夫、ちゃんと美味しく調理してあげるからね」
俺の話を全く聞いてくれない様子に唇をかみ締めた。
どうしてこんなことに……。
この世界の神様が本当に存在するなら、俺達を弄んで何が楽しいんだ。
そんなの神のすることじゃない!
カナタに監禁されてから3日がたった。
まだ俺とカナタの体は無事だ、食べると言ったもののあのあと用事を思い出したとかでデカいまま出掛けちまったんだよな。
帰ってきた頃には元に戻ってたし、あの薬連続で服用はできないらしい。
ただ、気になるのは帰ってきたカナタがあきらかに血に濡れてたことだ、手には何も持ってなかったけど、時空ポケットみたいなものがあったりするし、それをカナタが使ってたらわからねぇんだよな。
RPGとかでよくあるアレだ、そんな荷物どうやって持ってんの?っていうあきらかにおかしいバッグ。
そんな感じのものがこの世界にはある、ゲームの世界なんだから当然と言えば当然かもしんねぇけど。
で、俺が気になってるのは毎日の食事が肉であること、今まで食べたことがないような。
正直嫌な予感しかしない、人肉を食べさせられてるんじゃ?ってずっと俺の頭の中は警報が鳴ってる状態だ。
だからといって聞く勇気もなければ、食べないことで死ぬのを選ぶのもできない。
つうか、食べないって選択肢は多分ない、食べないとカナタにどうせ無理矢理食わされるし、おそらく俺は壊される。
カナタのヤンデレENDの数々を考えたらカナタならやりそうだ、薬を使って廃人化させるなんて余裕出しな。
カナタが出かけてる間に脱出も何回か試みたが、全部失敗に終わった。
あの天才が簡単に逃がしてくれるわけないのは頭ではわかってたけど、正直俺に出来ることはなにもない。
カナタは俺を弄んでるんだよな、脱出できるかって思わせておいてできないあたりとか。
最初はカナタが出かけて直ぐに手足の枷が簡単に外れた、魔法が封印されてなかったから。
リバーの時は封印されてたのに、なんで?と疑問に思いつつも扉に手をかけたらバチンと弾かれて、外に出ることはかなわなかった。
魔法が封印されてなくてもこの家の結界は俺にはとけなかったんだよな、その次もチャンスが訪れた時にめげずに挑戦したら次はこの家の結界がなぜかとかれてた。
そうして、外に出た瞬間にまた家の中に戻された。
そういう結界に変わってた、外に出さないのじゃなく外には出すが永遠に出られないってやつだ。
ここでカナタが俺で遊んでることがわかった、わざわざ結界の種類を変えて俺が絶望する様子をどこかで見ていたのかもしれない。
それでも俺は諦めず挑んでいたら、次は外にもちゃんと出られた、ただ、この時点で俺は嫌な予感がして破裂しそうなほどうるさくなる心臓に、ぎゅっと手を握りしめながらあたりを見てみると森の中で絶望した。
森は下手に外に出るなんて無理だからだ。
迷子になる、間違いなく。
俺は転送系の魔法は一切使えないから、自分の意思で中に戻って泣いた。
どこかわからない森の中に踏み出す勇気はなかった、広さもわからない、知ってる場所なら行ったのに。
そんな失敗続きの脱出と森の中ってことで俺は逃げ出すのを諦めるしかなく、いつ体を切り刻まれるのか、カナタがなにを考えてるのか、わからない。
だいたい1周目のときはレイプしたくせに今回のカナタは俺に乱暴を働くのもない。
物理的に食べると言ったのに3日たっても食べないし、性的に食べられるってことはなかった。
ただ、同じベッドで寝てるだけで…。
結局カナタの謎の行動から1週間が過ぎた頃、俺の脅えにある意味終止符が打たれた。
カナタがまたあの薬を飲んで大人になって俺の前に現れたからだ。
嗚呼、今度こそ俺の体は刻まれるのかと絶望したさ、だから、正直驚いた、刻まれる……とまではいかなかったことに。
右手親指1本だけを切断された、切断される時はカナタが俺に薬を打ったからか、そこまでの痛みを感じなかった。
麻酔みたいなものを多分されたんだと思う。カナタならそれくらい余裕で作れるだろうし。
その後すぐにカナタが魔法で傷口を癒したから、痛みを感じることもなく、出血もさほどひどくならないですんだ。
ただ、大人の姿をしてるカナタに気が動転してたのか、気づかなかったけどカナタの指もなくなってたんだ。
俺の拒否権はなく、カナタの指が食わされることは確定した。
俺の切断した指を愛おしげに見つめて頬擦りする姿にゾッとした、どこまで狂ってるんだ?
指を愛おしそうにするって頭おかしいだろ。
俺の視線に気づいたカナタと目が合って、俺の頬を壊れ物に触れるのかというくらいに優しい手つきで撫でられた。
「ふふっ、兄様そんなに驚くこと?僕は兄様の全てを愛してるんだから切り離された指さえも愛おしいよ、これは兄様の1部だからね」
「ホントいい趣味してるよ、お前……気持ち悪い…」
1週間も経てば俺は遠慮なんてしなくなっていた、そもそも、このまま見つからずにいけば間違いなく俺たちは死ぬ。
それがわかってるからこそ、カナタに媚びを売る必要なんてない。
カナタは感情だけで俺を殺すこともしないことはわかってるし、目的が食べ合うことだからな。
食べあって混ざりあって死ぬ事が目的なら、俺だけを怒りに任せて殺すなんて愚かな真似はしない。
「ふふっ、強気な兄様も可愛い、そんなに僕は気持ち悪いかな?兄様と1つになりたい、そう願ってるだけなのに……例えそれが一時のことだろうと……ね?」
「そうかよ…」
カナタはどこからどこまでの記憶があるのかはわからないが、頭が良い奴だから気づいてるようだ。
またすぐにループしてしまうことに、例えそれでも死ぬ前までは混ざりあえるから食べ合うことを望んでいる。
神様の意思を通すなら、俺達は死ぬまで見つからないんだろうな。
まぁ、そもそも、この結界がどんな結界かはわからないが俺達の場所を上手く隠してるはずだし、なんなら記憶から消えてるかもしれない。
結界が解けるまで、結界が解けるのはカナタが死なないと無理だ。
俺達は食べあって死ぬまでこの森の中、カナタが作った檻の中というわけか。
脱出不可能、逃げ道なし、野良犬の餌か魔物の餌になるか、あとはカナタと食べ合いするか、選択肢が実質一択なんだよな。
魔物や野良犬のが怖いよな、カナタなら麻酔してくれるから痛みとしてはあんまねぇだろうし。
一応戦えるっつっても武器もなしじゃどこまで戦えるか分からない、飢えながら魔物達に殺されるってのを想像すると結局この場にとどまるしかないんだよな。
ここにいても死ぬのを待つしかなくて、正直気が滅入りそうだ。
切られた指の調理法もどうするつもりなのか、上機嫌な様子で厨房にたってるのが不気味すぎる。
鼻歌までしてるし、カナタのあそこまで機嫌がいい姿は久しぶりに見るな。
ゲームの世界…だとして、なんで、現在地を把握できるマップ機能とかないんだよ。
ゲームならあって当然だろ、ゲームやってる時もマップとかなかったもんな。
ただ、行く場所の選択肢があってそこから選んで行くだけだからどんな風に行くかまではわからない。
RPGじゃねぇんだなら、しかたないっちゃしかたないかもだけど、マップ機能さえあれば俺は脱出できたのにと心中愚痴る。
カナタのことだから途中で結界はられてて、迷いの森的なもんになってそうってのが余計俺が出ていけない理由なんだよな。
結界の範囲を変えて俺をからかって遊んでる奴だからな、絶対森から外に出れないようにしてると思うんだよ。
逃がすつもりなんてさらさらない、逃げれるかもって希望だけ与えて絶望する様を楽しんでるふしがある。
逃げようとすれば無駄な体力消耗、精神疲労か、ああ、そうか、魔物や野良犬もいない可能性高いのか。
死んだら終わりだもんな、この家に刃物とか自殺に使えるものが一切ないように。
カナタからしたら俺に自殺されるってのは1番あっちゃならないことだもんな。
自殺されたらまたループされちまうだけだし。
カナタはそれを正しく把握してるっぽかったもんな。
いくら考えてもここから逃げ出す手段も自殺することも考えがつかず、ため息がもれる。
ため息は幸せを逃がすって言うけど、俺はもう幸せなんてたくさん逃がしてるし、いまさらだよな。
カナタが持ってきた料理は指の姿なんてなくて、それはそれでほっとした。
そのままの見た目で持ってこられたら食べれる気がしないし、見た目はハンバーグのようなそれに野菜とか追加してもあきらかに多いよな。
食べやすいようになにかと混ぜ込んでるのか?
カナタのは俺のとは違うし、カナタのはまさかの俺の指丸焼きってすげぇ複雑だからやめてほしい。
それともあれか、カナタ俺から見えてないところでもっと自分の肉を切って混ぜたってことかな。
そういう事を平気でやりそうなのがマジで怖い。
出されたハンバーグらしきものにおそるおそるナイフを入れて、フォークで刺して口に運べば、鳥、豚、牛とはたしかに違うものの癖はないし、不味くはないな。
これが本当に人間の肉とはあんまり考えたくないけど。
考えたら吐きそうだし、しかし、どうやって調理してるのか、骨とかどうしてるんだろうか?
うーん、カナタのことだから、粉末にして混ぜてるとかありそうだよな。
全部残さず食べて欲しいって考えてそうというか…、笑顔を絶やさず終始上機嫌で俺を見てくるカナタに俺は引き攣った笑みを返すしかできない。
絶対食べない、そう思ってた、でもさ、廃人にされるくらいなら食べるしかないって腹を括ったんだ。
薬で自分の意思なんて関係なくされるくらいなら、多分自分の意思で食べる方がまだマシだ。
「なぁ、カナタ」
「うん?どうかしました、兄様」
「いつまでこれを続けるつもりだ?俺達が互いに死ぬまでマジで食べ合うつもりなのか?」
「当然じゃないですか、兄様の血肉が僕の肉体を作る、僕の血肉が兄様の肉体を作る、そう考えるだけで…嗚呼、なんて素晴らしいことなんでしょう、夢のようです」
うっとりとした様子で言葉を紡ぐカナタに妙に冷めてる自分がいた。
俺はカナタをそんなふうに見てない、カナタは俺を好きだからこその温度差がうまれるんだろうな。
カナタのテンションについていけない、カナタを本当は愛せれば少しは違う結末を挑めたのか…。
そのあとは黙々と食べ進めるしかなかった、カナタと俺の間にはこえられない壁がある。
愛情の深さといえば言葉の響きはいいが実際どうなんだろうな。
カナタのアレは愛情の1種なんだろうか、俺にとっての愛情は無償の愛だ。
相手にしてもらうことが当たり前、返してもらえるのが当たり前、そんなふうに俺は思いたくない。
見返りもいらない、俺がしたいからする、これだけで俺は幸せだと思う。
これを言うと綺麗事だって言われたっけか。
………………誰に?
俺にそんなこと言うやつなんていないと思うんだけど……、ズキンと頭が痛んで手で押える。
頭をゆるく振って、ふぅ……と息を吐き出す。
思考をどんなに巡らせても思い出せない、誰に言われたんだろうか。
モヤがかってるみたいだ、うーん、記憶操作がどうのこうのってそういや記憶が戻る前の俺言ってたよな。
そこらへん調べたいのに全然調べるのできなかったな、キリヤが終始べったりだった……し……。
あれ?もしこの世界が誰かの意思によってねじ曲げられたりしてるんだとしたら、俺にそれを調べさせたくない存在がいる?
それが神様なのか、なんなのかはわからないが。
俺が拉致されたら護衛がつくのは当然だもんな、…………いや、さすがに考えすぎか。
そんな都合のいい展開をどうやって作り出すんだよ、無理だろ、監禁生活で頭でもおかしくなったか俺。
俺の様子を心配してか、カナタが俺の方を見ている。
突き刺さるような視線が痛い。
「どうかしたのですか、兄様」
「ああ……、俺の愛は無償の愛って話を誰かにしたような気がしてさ、見返りとかいらない、ただ、純粋に相手に幸せになって欲しいとか言った時に綺麗事だって…誰だったかなって考えてたんだよ」
「……無償の愛ですか、たしかに綺麗事ですね、見返りを求めず、相手の愛も求めず、ただ、尽くすだけを愛とは言えないんじゃないですか?それは親が子供に与えたり、ペットに与える愛情じゃないですか」
「それは……」
「恋人や伴侶に求めるものとは全く違います、そういう愛情しか今まで持ったことがないなら、兄様の愛は親や兄、飼い主目線の愛情しかもったことがないってことですよ」
痛いところをつかれた気がした、そりゃそうだ。
恋人や伴侶に求める時に無償の愛のわけがない、ただ、与えて満足なのは……そういうことなんだろうな。
でも、俺はアッシュやシエルを本気で好きだったのか、それもわからないものだった。
アッシュのことを好きだと思った、愛してるって思ったからこそ殺せなくて心中をした。
でも、アッシュの本当の意味での残酷さを目の当たりにしたら気持ちが揺らいで怖くなった。
それって本当に愛だったと言えるんだろうか、前世では周りからどんなに別れなよって説得しても別れることができない、そんな友達を見たことだってある。
どんなに酷い相手でも自分のことは愛してるからとか言ってたな、それに自分も愛してるからわかれるのができないとか。
でも、あれは1種の依存であり、洗脳でもあると思ってたんだよな。
別れた後にはスッキリした様子だったし、ただ、別れた相手の悪口はあんまりききたくなかったけど。
俺は1度も元恋人の悪口なんて言ったことがない、破局に至る原因なんて双方にあると思ってるし。
片方だけが悪いなんてことは決してない、そういう行動をさせてしまう原因が自分にもあるはずだと俺は思ってた。
ただ、今の状況からすると本当にそうだったのか?と考えてしまうことはある。
俺の行動のせいで相手が変わるんだとしても、毎回毎回どうにもならないくらい追い詰められるってやっぱりおかしい。
「兄様、冷めてしまいますよ、考え事するなとは言いませんが……」
「あー……ごめん……」
手が止まっていたことに気づいて失敗したと反省して、残りを綺麗に食べたら食器を厨房に持っていき水につけておく。
洗い物しようとしたら、カナタに怒られたことがあるからな、俺の肌とかそういうの最高の状態にしておきたいんだとか。
与えられた自室に戻って椅子に座って頭を悩ませる。
カナタとの生活について考えれば考えるほど、監禁というか、これ軟禁みたいなものなような気もする。
気がするってだけで実際はどうなんだろ?行動範囲が広いからって軟禁なんだろうか。
手枷足枷ついてるっていってもなにかに繋がれてるわけじゃないし、俺の予想だとこれは拘束具として使ってるんじゃなくて現在地をわかるためのもの、それか、あとはこの枷に結界がされてて俺が家から一定距離れると元の場所に戻されるとか?
そういや、その可能性があったな、これには魔力封じと結界がされてるのかも。
毎回ご丁寧に結界の位置を変えてるんじゃなくて距離の設定を変えるだけですむし。
ただそれってそうとう難しいことをやってる事になるけど、天才児のカナタならやれそうって思えるから不思議だ。
カナタに監禁されてから2ヶ月が過ぎた。
あれから俺は両腕と両足の膝から下を失った、2ヶ月でここまで食べられるなんて…、カナタも俺と同じ状態ではあるけど。
こんな状態じゃ料理できないんじゃと思ったら、カナタが義足と義手をつけて現れた時は少し驚いた。
魔導学から作り出されるあれってめちゃめちゃ高額だから、貴族くらいしか使えないんだよな。
庶民には絶対手が届かない代物だ、それをカナタの年齢で買えるって、自分のだけじゃなくて俺の分まで用意できるってカナタの財力恐るべし。
作った薬とかを販売してるのは知ってたけど、ここまで稼いでるなんて予想外だ。
まぁ、義手と義足のおかげで生活に特別不自由なんてなくて快適な暮らしをしている俺がいるわけで、監禁されてるって自覚しろよってちょっとおもうけど。
食べる部位を切り落とされる時もカナタ特製麻酔のおかげで痛みがないし、麻酔が切れる前には切断が終わって魔法で断面を治癒されるからか、麻酔が切れたあともとくに痛みはないんだよな。
しいていうなら幻肢痛にたまに悩まされるくらいか。
なんてことを考えながら現実逃避をしていた、だってさ、俺達そろそろ食べるところが少なくなってきたというか。
まだ足の腿はあるから、そことあとはどこだ?死なずに食べれる部位って。
目玉とか、舌とか?そこ以外はどうなんだ、お腹とかそこらへん削ぎ落としても生きてられるんのかな。
どちらにせよ、そろそろ俺たちは死ぬんだろうなって感じた。
ついにこの日が来た、カナタに監禁されてからだいぶ経った。
俺の肉体は胴と頭を残すところになったし、これ以上はもう食べるには死ぬしかない。
カナタもそう感じてるのだろう、だから、今回はカナタはなぜかスプーンを持って近づいてきた。
「兄様、今日でおそらく僕達は死ぬことになります、ですが、死ぬ前にどうしても兄様としておきたいことがある」
「しておきたいこと?」
「ええ、目玉をお互いのを交換するんですよ、大丈夫です、すぐに治癒魔法で治しますから」
そう言って恍惚とした笑いを浮かべるカナタにゾッとした。
眼球交換ってマジで言ってるのかよ、最期にそんなことされるなんて思ってなくて後退るとカナタが素早く俺と距離を詰めて「逃げないで、兄様」と言葉を紡ぐ。
はぁ……とため息をこぼして、意を決して椅子に座った。
もうどうにでもなれだ、拒絶したところで捕まって無理矢理やらされるなら自分から受け入れた方が楽だ。
「兄様愛してます、やっと1つになれる」
そう言ったカナタが俺の目にスプーンを近づけてきて、そうか、それで抉り出すのかと気づいて納得した。
スプーンが下瞼に触れて、そこからグッと差し込まれるとブチブチと下瞼と眼球を繋ぐ結膜が剥がれて痛みが襲ってきた。
「う゛ぁ゛ッ!お゛ぉ゛ッ……い゛だい゛っ…!」
今日は麻酔してない、それに気づいても痛みで頭が朦朧してると強引に眼球を抉り出されて視神経を最後にブチンと切られた。
痛い、いたい、イタイ!無理だこんなの、気が狂ってしまう。
痛みに目を抉り出されたところを手でおさえて、ひゅー、ひゅーと息を吐き出してるとカナタが自分の眼球を躊躇うことなく抉り出すのを無事な目でちらりと見た。
狂ってる、こんなに痛いのに麻酔も使わずに取り出すなんて、なにしてんだこいつと睨みつけると、カナタが花の咲いたような笑顔を見せた。
「この痛みも覚えておいて欲しいんだ、兄様と僕がひとつになる痛みだから……ね?」
手でおさえてても指の隙間から血がボタボタと流れ落ちる。
麻酔もなしに強引に抉り出したのだから当然といえば当然だろう。
血液を失っていくにつれて血の気が引いて、肌寒さを感じて震えてるとカナタが自分の取りだした目を俺の空洞になったそこにはめた。
そのあと治癒魔法で元に戻されて、痛みは引いていくものの目に違和感はある。
違う人間の眼球をはめられたのだから、違和感があるのはしかたないのか。
ぱちぱちと何度か瞬きして馴染ませるとカナタも俺の目を自分にはめて治していた。
我が弟ながら狂ってるな、眼球交換するなんて、痛みを忘れて欲しくなくて麻酔なしなのもイカれてる証拠だ。
「ふふっ、これで、兄様と僕は1つになれた、兄様も感じるでしょう?僕の魔力を……兄様の体に芽吹いてるのが……ね?」
言われてみれば、自分の魔力とは違う何かを感じた。
これがカナタの魔力?でもどうしてそんなことが……。
不思議そうな顔でカナタをみれば楽しげな様子で言葉を紡ぐ。
「兄様、僕達はただ、お互いの肉を食べてるだけだと思ったの?違うよ、僕達の魔力を少しずつ混じり合わせて馴染ませるためにしてたんだ、目を交換したことで完全に僕達は一つになれた……」
カナタに抱きしめられて、どこまでも狂ってる。
一緒に狂えたら楽だったのにと、一筋の涙を流すとカナタに腹部を刺された。
嗚呼、漸くこれで終れるんだと思うとそれはそれで解放されることへの喜びが勝ったのか、痛みは感じなかった。
薄れゆく意識の中カナタがなにかを最期に言ってる気がしたけれど、なんて言ってるかまではわからなかった。
「兄様、愛してる」
ゾッとするほど無邪気な表情に背筋が凍るようだった。
カナタはカニバとか平気でするタイプだし…、本気でやろうとしてる気がする。
警報が頭の中で鳴り響くが、だからといって抵抗の手段はない。
繋がれた両手両足、それに体がダルい、多分なにか盛られてる。
前に痺れ薬飲まされたし、それに似たようななにかかもしれない。
思うように動けそうにない体に苛立ちながらも睨みつけてると、カナタが小瓶を取り出した。
俺の目の前でわざわざご丁寧にちゃぷんと揺らして見せてくれるそれはなんだ?
紫色の液体、色からして飲みたくないなと考えてるとその小瓶の蓋を開けてカナタが飲み干した。
自分に使うための薬?一体何を……。
様子を伺ってるとカナタの身長が伸びていく、目を見開いて驚愕の表情を浮かべるとカナタの姿は変化して、どう見ても俺より年下には見えなくなった。
俺と同じか、年上か、なんで、そんな!?
「ふふっ、驚いてるね、兄様、これね、一時的なものだよ、ちょーっとばかり力がいる作業をする時にはこの姿になってるんだ」
「力がいるって……」
「兄様を傷つけずに切断するためだよ」
さも当たり前のように告げられた言葉にドッと汗が吹き出す。
切断するってどこを?とそれどころじゃないのに、冷静にそんなことを考えてる時点で冷静ではないのかもしれない。
受け入れ難い発言に俺の頭は混乱していた。
頬を引き攣らせ、後退りたくてもこれ以上は無理で、カタカタと体が震える、恐怖からだ。
だって、今自分を切断するって宣言した男から逃げたいと思うのは本能だろう。
「ははっ、兄様逃げるのは無駄よ、兄様にもね、食べてもらいたいんだ」
「食べるって何を……?」
「僕のことに決まってるでしょ?兄様と2人でここで食べ合いながら死ねたら最高に幸せだと思うんだ」
うっとりとした表情でそんなことを言うカナタは狂ってるとしか思えない。
一緒に死ぬ?食べ合いながら……、それって俺にもカナタを食べろってことだろうけど、そんなの無理だ。
人間を食べるなんてそんなの俺には……。
「拒否権はないよ、兄様に」
「俺は絶対食べない!」
「ふふっ、大丈夫、ちゃんと美味しく調理してあげるからね」
俺の話を全く聞いてくれない様子に唇をかみ締めた。
どうしてこんなことに……。
この世界の神様が本当に存在するなら、俺達を弄んで何が楽しいんだ。
そんなの神のすることじゃない!
カナタに監禁されてから3日がたった。
まだ俺とカナタの体は無事だ、食べると言ったもののあのあと用事を思い出したとかでデカいまま出掛けちまったんだよな。
帰ってきた頃には元に戻ってたし、あの薬連続で服用はできないらしい。
ただ、気になるのは帰ってきたカナタがあきらかに血に濡れてたことだ、手には何も持ってなかったけど、時空ポケットみたいなものがあったりするし、それをカナタが使ってたらわからねぇんだよな。
RPGとかでよくあるアレだ、そんな荷物どうやって持ってんの?っていうあきらかにおかしいバッグ。
そんな感じのものがこの世界にはある、ゲームの世界なんだから当然と言えば当然かもしんねぇけど。
で、俺が気になってるのは毎日の食事が肉であること、今まで食べたことがないような。
正直嫌な予感しかしない、人肉を食べさせられてるんじゃ?ってずっと俺の頭の中は警報が鳴ってる状態だ。
だからといって聞く勇気もなければ、食べないことで死ぬのを選ぶのもできない。
つうか、食べないって選択肢は多分ない、食べないとカナタにどうせ無理矢理食わされるし、おそらく俺は壊される。
カナタのヤンデレENDの数々を考えたらカナタならやりそうだ、薬を使って廃人化させるなんて余裕出しな。
カナタが出かけてる間に脱出も何回か試みたが、全部失敗に終わった。
あの天才が簡単に逃がしてくれるわけないのは頭ではわかってたけど、正直俺に出来ることはなにもない。
カナタは俺を弄んでるんだよな、脱出できるかって思わせておいてできないあたりとか。
最初はカナタが出かけて直ぐに手足の枷が簡単に外れた、魔法が封印されてなかったから。
リバーの時は封印されてたのに、なんで?と疑問に思いつつも扉に手をかけたらバチンと弾かれて、外に出ることはかなわなかった。
魔法が封印されてなくてもこの家の結界は俺にはとけなかったんだよな、その次もチャンスが訪れた時にめげずに挑戦したら次はこの家の結界がなぜかとかれてた。
そうして、外に出た瞬間にまた家の中に戻された。
そういう結界に変わってた、外に出さないのじゃなく外には出すが永遠に出られないってやつだ。
ここでカナタが俺で遊んでることがわかった、わざわざ結界の種類を変えて俺が絶望する様子をどこかで見ていたのかもしれない。
それでも俺は諦めず挑んでいたら、次は外にもちゃんと出られた、ただ、この時点で俺は嫌な予感がして破裂しそうなほどうるさくなる心臓に、ぎゅっと手を握りしめながらあたりを見てみると森の中で絶望した。
森は下手に外に出るなんて無理だからだ。
迷子になる、間違いなく。
俺は転送系の魔法は一切使えないから、自分の意思で中に戻って泣いた。
どこかわからない森の中に踏み出す勇気はなかった、広さもわからない、知ってる場所なら行ったのに。
そんな失敗続きの脱出と森の中ってことで俺は逃げ出すのを諦めるしかなく、いつ体を切り刻まれるのか、カナタがなにを考えてるのか、わからない。
だいたい1周目のときはレイプしたくせに今回のカナタは俺に乱暴を働くのもない。
物理的に食べると言ったのに3日たっても食べないし、性的に食べられるってことはなかった。
ただ、同じベッドで寝てるだけで…。
結局カナタの謎の行動から1週間が過ぎた頃、俺の脅えにある意味終止符が打たれた。
カナタがまたあの薬を飲んで大人になって俺の前に現れたからだ。
嗚呼、今度こそ俺の体は刻まれるのかと絶望したさ、だから、正直驚いた、刻まれる……とまではいかなかったことに。
右手親指1本だけを切断された、切断される時はカナタが俺に薬を打ったからか、そこまでの痛みを感じなかった。
麻酔みたいなものを多分されたんだと思う。カナタならそれくらい余裕で作れるだろうし。
その後すぐにカナタが魔法で傷口を癒したから、痛みを感じることもなく、出血もさほどひどくならないですんだ。
ただ、大人の姿をしてるカナタに気が動転してたのか、気づかなかったけどカナタの指もなくなってたんだ。
俺の拒否権はなく、カナタの指が食わされることは確定した。
俺の切断した指を愛おしげに見つめて頬擦りする姿にゾッとした、どこまで狂ってるんだ?
指を愛おしそうにするって頭おかしいだろ。
俺の視線に気づいたカナタと目が合って、俺の頬を壊れ物に触れるのかというくらいに優しい手つきで撫でられた。
「ふふっ、兄様そんなに驚くこと?僕は兄様の全てを愛してるんだから切り離された指さえも愛おしいよ、これは兄様の1部だからね」
「ホントいい趣味してるよ、お前……気持ち悪い…」
1週間も経てば俺は遠慮なんてしなくなっていた、そもそも、このまま見つからずにいけば間違いなく俺たちは死ぬ。
それがわかってるからこそ、カナタに媚びを売る必要なんてない。
カナタは感情だけで俺を殺すこともしないことはわかってるし、目的が食べ合うことだからな。
食べあって混ざりあって死ぬ事が目的なら、俺だけを怒りに任せて殺すなんて愚かな真似はしない。
「ふふっ、強気な兄様も可愛い、そんなに僕は気持ち悪いかな?兄様と1つになりたい、そう願ってるだけなのに……例えそれが一時のことだろうと……ね?」
「そうかよ…」
カナタはどこからどこまでの記憶があるのかはわからないが、頭が良い奴だから気づいてるようだ。
またすぐにループしてしまうことに、例えそれでも死ぬ前までは混ざりあえるから食べ合うことを望んでいる。
神様の意思を通すなら、俺達は死ぬまで見つからないんだろうな。
まぁ、そもそも、この結界がどんな結界かはわからないが俺達の場所を上手く隠してるはずだし、なんなら記憶から消えてるかもしれない。
結界が解けるまで、結界が解けるのはカナタが死なないと無理だ。
俺達は食べあって死ぬまでこの森の中、カナタが作った檻の中というわけか。
脱出不可能、逃げ道なし、野良犬の餌か魔物の餌になるか、あとはカナタと食べ合いするか、選択肢が実質一択なんだよな。
魔物や野良犬のが怖いよな、カナタなら麻酔してくれるから痛みとしてはあんまねぇだろうし。
一応戦えるっつっても武器もなしじゃどこまで戦えるか分からない、飢えながら魔物達に殺されるってのを想像すると結局この場にとどまるしかないんだよな。
ここにいても死ぬのを待つしかなくて、正直気が滅入りそうだ。
切られた指の調理法もどうするつもりなのか、上機嫌な様子で厨房にたってるのが不気味すぎる。
鼻歌までしてるし、カナタのあそこまで機嫌がいい姿は久しぶりに見るな。
ゲームの世界…だとして、なんで、現在地を把握できるマップ機能とかないんだよ。
ゲームならあって当然だろ、ゲームやってる時もマップとかなかったもんな。
ただ、行く場所の選択肢があってそこから選んで行くだけだからどんな風に行くかまではわからない。
RPGじゃねぇんだなら、しかたないっちゃしかたないかもだけど、マップ機能さえあれば俺は脱出できたのにと心中愚痴る。
カナタのことだから途中で結界はられてて、迷いの森的なもんになってそうってのが余計俺が出ていけない理由なんだよな。
結界の範囲を変えて俺をからかって遊んでる奴だからな、絶対森から外に出れないようにしてると思うんだよ。
逃がすつもりなんてさらさらない、逃げれるかもって希望だけ与えて絶望する様を楽しんでるふしがある。
逃げようとすれば無駄な体力消耗、精神疲労か、ああ、そうか、魔物や野良犬もいない可能性高いのか。
死んだら終わりだもんな、この家に刃物とか自殺に使えるものが一切ないように。
カナタからしたら俺に自殺されるってのは1番あっちゃならないことだもんな。
自殺されたらまたループされちまうだけだし。
カナタはそれを正しく把握してるっぽかったもんな。
いくら考えてもここから逃げ出す手段も自殺することも考えがつかず、ため息がもれる。
ため息は幸せを逃がすって言うけど、俺はもう幸せなんてたくさん逃がしてるし、いまさらだよな。
カナタが持ってきた料理は指の姿なんてなくて、それはそれでほっとした。
そのままの見た目で持ってこられたら食べれる気がしないし、見た目はハンバーグのようなそれに野菜とか追加してもあきらかに多いよな。
食べやすいようになにかと混ぜ込んでるのか?
カナタのは俺のとは違うし、カナタのはまさかの俺の指丸焼きってすげぇ複雑だからやめてほしい。
それともあれか、カナタ俺から見えてないところでもっと自分の肉を切って混ぜたってことかな。
そういう事を平気でやりそうなのがマジで怖い。
出されたハンバーグらしきものにおそるおそるナイフを入れて、フォークで刺して口に運べば、鳥、豚、牛とはたしかに違うものの癖はないし、不味くはないな。
これが本当に人間の肉とはあんまり考えたくないけど。
考えたら吐きそうだし、しかし、どうやって調理してるのか、骨とかどうしてるんだろうか?
うーん、カナタのことだから、粉末にして混ぜてるとかありそうだよな。
全部残さず食べて欲しいって考えてそうというか…、笑顔を絶やさず終始上機嫌で俺を見てくるカナタに俺は引き攣った笑みを返すしかできない。
絶対食べない、そう思ってた、でもさ、廃人にされるくらいなら食べるしかないって腹を括ったんだ。
薬で自分の意思なんて関係なくされるくらいなら、多分自分の意思で食べる方がまだマシだ。
「なぁ、カナタ」
「うん?どうかしました、兄様」
「いつまでこれを続けるつもりだ?俺達が互いに死ぬまでマジで食べ合うつもりなのか?」
「当然じゃないですか、兄様の血肉が僕の肉体を作る、僕の血肉が兄様の肉体を作る、そう考えるだけで…嗚呼、なんて素晴らしいことなんでしょう、夢のようです」
うっとりとした様子で言葉を紡ぐカナタに妙に冷めてる自分がいた。
俺はカナタをそんなふうに見てない、カナタは俺を好きだからこその温度差がうまれるんだろうな。
カナタのテンションについていけない、カナタを本当は愛せれば少しは違う結末を挑めたのか…。
そのあとは黙々と食べ進めるしかなかった、カナタと俺の間にはこえられない壁がある。
愛情の深さといえば言葉の響きはいいが実際どうなんだろうな。
カナタのアレは愛情の1種なんだろうか、俺にとっての愛情は無償の愛だ。
相手にしてもらうことが当たり前、返してもらえるのが当たり前、そんなふうに俺は思いたくない。
見返りもいらない、俺がしたいからする、これだけで俺は幸せだと思う。
これを言うと綺麗事だって言われたっけか。
………………誰に?
俺にそんなこと言うやつなんていないと思うんだけど……、ズキンと頭が痛んで手で押える。
頭をゆるく振って、ふぅ……と息を吐き出す。
思考をどんなに巡らせても思い出せない、誰に言われたんだろうか。
モヤがかってるみたいだ、うーん、記憶操作がどうのこうのってそういや記憶が戻る前の俺言ってたよな。
そこらへん調べたいのに全然調べるのできなかったな、キリヤが終始べったりだった……し……。
あれ?もしこの世界が誰かの意思によってねじ曲げられたりしてるんだとしたら、俺にそれを調べさせたくない存在がいる?
それが神様なのか、なんなのかはわからないが。
俺が拉致されたら護衛がつくのは当然だもんな、…………いや、さすがに考えすぎか。
そんな都合のいい展開をどうやって作り出すんだよ、無理だろ、監禁生活で頭でもおかしくなったか俺。
俺の様子を心配してか、カナタが俺の方を見ている。
突き刺さるような視線が痛い。
「どうかしたのですか、兄様」
「ああ……、俺の愛は無償の愛って話を誰かにしたような気がしてさ、見返りとかいらない、ただ、純粋に相手に幸せになって欲しいとか言った時に綺麗事だって…誰だったかなって考えてたんだよ」
「……無償の愛ですか、たしかに綺麗事ですね、見返りを求めず、相手の愛も求めず、ただ、尽くすだけを愛とは言えないんじゃないですか?それは親が子供に与えたり、ペットに与える愛情じゃないですか」
「それは……」
「恋人や伴侶に求めるものとは全く違います、そういう愛情しか今まで持ったことがないなら、兄様の愛は親や兄、飼い主目線の愛情しかもったことがないってことですよ」
痛いところをつかれた気がした、そりゃそうだ。
恋人や伴侶に求める時に無償の愛のわけがない、ただ、与えて満足なのは……そういうことなんだろうな。
でも、俺はアッシュやシエルを本気で好きだったのか、それもわからないものだった。
アッシュのことを好きだと思った、愛してるって思ったからこそ殺せなくて心中をした。
でも、アッシュの本当の意味での残酷さを目の当たりにしたら気持ちが揺らいで怖くなった。
それって本当に愛だったと言えるんだろうか、前世では周りからどんなに別れなよって説得しても別れることができない、そんな友達を見たことだってある。
どんなに酷い相手でも自分のことは愛してるからとか言ってたな、それに自分も愛してるからわかれるのができないとか。
でも、あれは1種の依存であり、洗脳でもあると思ってたんだよな。
別れた後にはスッキリした様子だったし、ただ、別れた相手の悪口はあんまりききたくなかったけど。
俺は1度も元恋人の悪口なんて言ったことがない、破局に至る原因なんて双方にあると思ってるし。
片方だけが悪いなんてことは決してない、そういう行動をさせてしまう原因が自分にもあるはずだと俺は思ってた。
ただ、今の状況からすると本当にそうだったのか?と考えてしまうことはある。
俺の行動のせいで相手が変わるんだとしても、毎回毎回どうにもならないくらい追い詰められるってやっぱりおかしい。
「兄様、冷めてしまいますよ、考え事するなとは言いませんが……」
「あー……ごめん……」
手が止まっていたことに気づいて失敗したと反省して、残りを綺麗に食べたら食器を厨房に持っていき水につけておく。
洗い物しようとしたら、カナタに怒られたことがあるからな、俺の肌とかそういうの最高の状態にしておきたいんだとか。
与えられた自室に戻って椅子に座って頭を悩ませる。
カナタとの生活について考えれば考えるほど、監禁というか、これ軟禁みたいなものなような気もする。
気がするってだけで実際はどうなんだろ?行動範囲が広いからって軟禁なんだろうか。
手枷足枷ついてるっていってもなにかに繋がれてるわけじゃないし、俺の予想だとこれは拘束具として使ってるんじゃなくて現在地をわかるためのもの、それか、あとはこの枷に結界がされてて俺が家から一定距離れると元の場所に戻されるとか?
そういや、その可能性があったな、これには魔力封じと結界がされてるのかも。
毎回ご丁寧に結界の位置を変えてるんじゃなくて距離の設定を変えるだけですむし。
ただそれってそうとう難しいことをやってる事になるけど、天才児のカナタならやれそうって思えるから不思議だ。
カナタに監禁されてから2ヶ月が過ぎた。
あれから俺は両腕と両足の膝から下を失った、2ヶ月でここまで食べられるなんて…、カナタも俺と同じ状態ではあるけど。
こんな状態じゃ料理できないんじゃと思ったら、カナタが義足と義手をつけて現れた時は少し驚いた。
魔導学から作り出されるあれってめちゃめちゃ高額だから、貴族くらいしか使えないんだよな。
庶民には絶対手が届かない代物だ、それをカナタの年齢で買えるって、自分のだけじゃなくて俺の分まで用意できるってカナタの財力恐るべし。
作った薬とかを販売してるのは知ってたけど、ここまで稼いでるなんて予想外だ。
まぁ、義手と義足のおかげで生活に特別不自由なんてなくて快適な暮らしをしている俺がいるわけで、監禁されてるって自覚しろよってちょっとおもうけど。
食べる部位を切り落とされる時もカナタ特製麻酔のおかげで痛みがないし、麻酔が切れる前には切断が終わって魔法で断面を治癒されるからか、麻酔が切れたあともとくに痛みはないんだよな。
しいていうなら幻肢痛にたまに悩まされるくらいか。
なんてことを考えながら現実逃避をしていた、だってさ、俺達そろそろ食べるところが少なくなってきたというか。
まだ足の腿はあるから、そことあとはどこだ?死なずに食べれる部位って。
目玉とか、舌とか?そこ以外はどうなんだ、お腹とかそこらへん削ぎ落としても生きてられるんのかな。
どちらにせよ、そろそろ俺たちは死ぬんだろうなって感じた。
ついにこの日が来た、カナタに監禁されてからだいぶ経った。
俺の肉体は胴と頭を残すところになったし、これ以上はもう食べるには死ぬしかない。
カナタもそう感じてるのだろう、だから、今回はカナタはなぜかスプーンを持って近づいてきた。
「兄様、今日でおそらく僕達は死ぬことになります、ですが、死ぬ前にどうしても兄様としておきたいことがある」
「しておきたいこと?」
「ええ、目玉をお互いのを交換するんですよ、大丈夫です、すぐに治癒魔法で治しますから」
そう言って恍惚とした笑いを浮かべるカナタにゾッとした。
眼球交換ってマジで言ってるのかよ、最期にそんなことされるなんて思ってなくて後退るとカナタが素早く俺と距離を詰めて「逃げないで、兄様」と言葉を紡ぐ。
はぁ……とため息をこぼして、意を決して椅子に座った。
もうどうにでもなれだ、拒絶したところで捕まって無理矢理やらされるなら自分から受け入れた方が楽だ。
「兄様愛してます、やっと1つになれる」
そう言ったカナタが俺の目にスプーンを近づけてきて、そうか、それで抉り出すのかと気づいて納得した。
スプーンが下瞼に触れて、そこからグッと差し込まれるとブチブチと下瞼と眼球を繋ぐ結膜が剥がれて痛みが襲ってきた。
「う゛ぁ゛ッ!お゛ぉ゛ッ……い゛だい゛っ…!」
今日は麻酔してない、それに気づいても痛みで頭が朦朧してると強引に眼球を抉り出されて視神経を最後にブチンと切られた。
痛い、いたい、イタイ!無理だこんなの、気が狂ってしまう。
痛みに目を抉り出されたところを手でおさえて、ひゅー、ひゅーと息を吐き出してるとカナタが自分の眼球を躊躇うことなく抉り出すのを無事な目でちらりと見た。
狂ってる、こんなに痛いのに麻酔も使わずに取り出すなんて、なにしてんだこいつと睨みつけると、カナタが花の咲いたような笑顔を見せた。
「この痛みも覚えておいて欲しいんだ、兄様と僕がひとつになる痛みだから……ね?」
手でおさえてても指の隙間から血がボタボタと流れ落ちる。
麻酔もなしに強引に抉り出したのだから当然といえば当然だろう。
血液を失っていくにつれて血の気が引いて、肌寒さを感じて震えてるとカナタが自分の取りだした目を俺の空洞になったそこにはめた。
そのあと治癒魔法で元に戻されて、痛みは引いていくものの目に違和感はある。
違う人間の眼球をはめられたのだから、違和感があるのはしかたないのか。
ぱちぱちと何度か瞬きして馴染ませるとカナタも俺の目を自分にはめて治していた。
我が弟ながら狂ってるな、眼球交換するなんて、痛みを忘れて欲しくなくて麻酔なしなのもイカれてる証拠だ。
「ふふっ、これで、兄様と僕は1つになれた、兄様も感じるでしょう?僕の魔力を……兄様の体に芽吹いてるのが……ね?」
言われてみれば、自分の魔力とは違う何かを感じた。
これがカナタの魔力?でもどうしてそんなことが……。
不思議そうな顔でカナタをみれば楽しげな様子で言葉を紡ぐ。
「兄様、僕達はただ、お互いの肉を食べてるだけだと思ったの?違うよ、僕達の魔力を少しずつ混じり合わせて馴染ませるためにしてたんだ、目を交換したことで完全に僕達は一つになれた……」
カナタに抱きしめられて、どこまでも狂ってる。
一緒に狂えたら楽だったのにと、一筋の涙を流すとカナタに腹部を刺された。
嗚呼、漸くこれで終れるんだと思うとそれはそれで解放されることへの喜びが勝ったのか、痛みは感じなかった。
薄れゆく意識の中カナタがなにかを最期に言ってる気がしたけれど、なんて言ってるかまではわからなかった。
「兄様、愛してる」
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