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本編5章
凶暴化の原因はなんなのか?
今日は朝からキリヤと一緒に森に入ってみることにした。
簡易的ではあるけど、キリヤが俺に認識阻害の魔法を込めたブレスレットをくれたからだ。
結界の中にずっといるのはストレスも溜まるだろうと連れ出してくれた。
ただ、これはあくまで応急処置的な役割しかないし、王宮騎士団の魔法部隊隊長クラスなら俺に近づけば認識できるらしい。
とにかくこれを身につけてれば俺は一応外出は可能になった、ただ、魔物には通用しないからキリヤが一緒にいることが条件にはなるけど。
森の中を歩きながらキリヤが色々と教えてくれた、キリヤは魔物凶暴化は人工的ではないかと考えてるようだった。
理由としては周辺を調べてみたが、濃い魔素が溢れてる場所とか見当たらなかったらしい。
魔素の影響で凶暴化したわけじゃないなら、原因となるのは人間がなんらかしらの方法で魔物を凶暴化させてるしか考えられない。
うーん、カナタの研究とかなら魔物を凶暴化や暴走させたりするのはできそうだよな。
あの子は薬と生物変異を得意としてるし、ゲーム本編でも1つのシナリオの中に魔物を変異させて凶暴化までさせて王都に仕向けたことがある。
大量の魔物が王都に押し寄せて地獄絵図のようだった、あのシナリオは俺を自分だけのモノにしたいカナタが王都滅亡を企んだんだよな。
とんでもないシナリオだって当時の俺は思ったっけ、でも、そうなるとこの魔物の凶暴化って実はカナタが犯人とか?実験のための。
もしそうなるとすると、俺の居場所バレてたりするのか?わかってるからあえてここで実験繰り返してるとか…、いや、まさか……そんなことあるわけないよな?
キリヤの魔法は完全とは言えないけど、一応結界魔法は問題はなかったはずだ。
アクセとかそういった物に魔力を込めるのと魔法を普通に使うのとじゃ全然違うんだよな。
付与したい能力を込めてアクセとか作るには、それなりの技術が必要だし、今の俺じゃとうていできないことだ。
成長した俺でやっと作れる代物だからな、しかも、初歩的なものしか作れないし。
ぼんやりと一緒に歩いてると、キリヤが急に立ち止まってぼふんと背中に体当たりかまして鼻が痛い。
「キリヤ?」
「あ、あぁ、すまない…あれを見てな」
「あれ?」
どれ?とキリヤの前を見てみれば、狼型の魔物の親子らしき死骸があった。
子を庇うように親が死んでる、おかしい、低級魔物はそんな行動をしないはずなのになんで?
キリヤも同じことを思ったらしく顔を顰めた。
「……あれは変だ、低級魔物は子供であれ庇うことはしないはずなのに、なぜあれは子を庇ってるんだ?」
「本当だよね、なんでだろう、ちょっと近づいてもいいかな?」
「ああ、一緒に行くか」
魔物の死骸に近づくと、親も子も息はなかった、問題はこの魔物ネックレスのようなものを親が身につけていたことだ。
なぜ?アクセを?誰かに飼われてた?そんな馬鹿な、魔物は人に懐かない、いや、正しくは1部の人間以外にはか、職業の中に魔物を使役できるものがある。
魔物と唯一心を通わせることができる職業、ビーストテイマー、この職業の者だけが唯一…だが、王都にはビーストテイマーはいなかった。
魔物を使役するなど悪みたいな風潮があるからなんだよな、だから、この国にはビーストテイマーは居ずらくて移住してしまう。
ビーストテイマーがいないわけだからこれはかなり変な状況になる。
ビーストテイマーに飼われてたことがある、はぐれ魔物とか?
その可能性も低いか、王都からビーストテイマーがいなくなったのは、だいぶ昔の話だったはずだし。
となると、なぜ、この魔物はネックレスを身につけてるんだ?
「うーん、最後のビーストテイマーが王都から去って何十年と経ってるのに、なんでだろ」
「そうだな、魔物がネックレスを身につけてるのは異常な事だ、本来ならありえない、ありえないことが目の前で起きてる訳だが…ユーリはどう思う?」
「俺?」
「ああ、例えばの話だが、この魔物が元人間だったら…そう考えれないか?」
「…………その可能性は否定できない、生物変異はただの動物を魔物にだって変えることができる、人間を魔物には可能だと思う」
「そうか…やはりそう思うか、俺も同じ意見だ、この魔物はどうやら艶もいい、これだけ毛並みがいいのも変だ、誰かに飼われてたか、あるいは元は人間だったと考えるの普通だろう」
「………でも、人間を魔物に変えるなんてできるのって……カナタなら可能だとは思うけど」
「なるほど、カナタ様か、ユーリはカナタ様の仕業と考えてるのか?」
「そう考える方が辻褄が合うことはあるんだ、カナタは魔物を凶暴化させることもできるし、この森でなんらかしらの実験をしていてもおかしくない」
「……そうなると、やはり、引っ越すのが無難だな、ブレスレットは完成させるのができたし、外出も可能になった、よし!そうと決まれば家に早速帰って引越しをすすめよう!」
キリヤにいきなり横抱きにされて森の中を全力で走り抜けて家までたどり着くと、そこで俺たちは…………。
黒いフードを被った怪しい集団が俺たちの家のそばまで来ていた。
結界に気づいてるらしく、黒フードの集団は結界の周りをウロウロしている。
気づかれないように、そっとキリヤが後ろに下がるがドンと誰かにぶつかった。
嘘だろ?気配なんてしなかったぞ?
俺は抱えられたまま、キリヤの後ろに視線を向ければ冷酷なほど冷たい眼差しをした男と目が合った。
あれ?誰だ、この人…どこかで見た記憶があるような…?
「ようやく見つけたぞ、ユーリ」
男は低い声音で俺を見ながら不敵な笑みを浮かべた。
なんだろ、胸騒ぎがやばい、警報音がずっと頭の中で鳴り響いてるようだ。
この男は危険だと、どうしよう、どうするのがいいんだ?
キリヤも身動きひとつできないようだ、きっとこの男との格の差を感じてるんだろう。
騎士団長にまで成長したカナタなら互角で渡り合えるかもしれないが、今のカナタには無理だ。
「ふっ、なにもしゃべれないか、さて、お前らユーリを見つけたぞ」
男がそういえば、結界の周りを見ていた黒フードの集団が一斉にこちらを見た。
嗚呼、絶望的な状況だ、なんなんだ、こいつらは。
「ふっ、くくっ、あはははっ、ユーリ、お前本当に俺が誰だかわからないのか?」
「……誰だ!」
「あ~ぁ、死ぬ前に教えてやるよ、俺の名は……キリリクだ、名前を聞けばわかるだろう?俺が悪役だってことを…」
はっ?1周目から今まで1回も姿を見せなかった、キリリクがなんで…?
俺が呆然としてると男は黒いフードをおろして、漆黒の髪、血のような深紅色の瞳にゾッとした。
たしかにキリリクだ、本当に王様の子なのかと不貞を疑われたんだよな、どちらにも似てないし、それにキリリクの母は野心が強くて自分以外が妊娠したと分かれば秘密裏に始末したりしてた。
証拠がないからアッシュは女装して女の子として育てられることになったんだし。
でも、おかしい、アッシュよりは当然ながら年上だけど、なんで目の前のキリリクは成人男性のような見た目してるんだ?
カナタが成長薬とか作ってたけど、まさか…。
「くくっ、不思議で仕方ないって顔をしてるな?そうだ、そのまさかだよ、お前の弟カナタに薬を作らせた、俺成長するためのな…」
「何が目的だ!」
「目的だァ?俺の目的はお前を不幸にすることだ、お前の幸せは許さない」
ギョロっと目を見開いて口角ゆがめて笑うキリリクは不気味だった、なんでそんなに俺が憎悪をむけられなきゃいけないんだ?
俺が何したってんだよ、なんもしてないだろ。
「そのなにもわかってないところがムカつくんだよ……」
なにかまだぶつぶつと呟いてるようだったが聞き取れなかった。
何を言ったんだ?わかったことは、俺が無意識にキリリクを傷つけたかもしれないってことか。
「まあいい、お前ら2人には仲良く死んでもらおうか?くくっ、はははっ、今回もまた死ぬんだよ、お前は…一生このループからは逃げれない」
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