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本編5章
憎悪
自分がなぜここまで憎まれてるのかわからない。
でも、あきらかにキリリクから感じるのは憎しみだった、愛情なんてものは欠片さえ見えないことから、もしかしてキリリクの好きな人に関係してるのだろうか。
ゲーム内でのキリリクの立ち位置は悪役だ、主人公に辛く当たったりするし、嫌がらせだってする。
でも、それはたしか……あれ?誰を好きだからそんなことしてたんだっけ。
誰かを好きだから怒りをぶつけていた気がするんだけど、誰だった??
王道でいくならアッシュを好きだからってのが王道ルートだとおもうけど、腹違いの兄弟だからないのかな。
腹違いだからこそって可能性もあるか、兄弟だから結ばれることは決してない、それなのに俺みたいな男がアッシュの想い人となれば面白くないはず。
向けられた殺意に呆然としてると、キリリクは怪しく微笑んだ。
「くくっ、なにをぼーっとしている?ユーリ」
「……キリリク、お前誰が好きでこんなことを……」
「ははっ、俺が誰かを好き?だからお前を恨んでると?つくづくおめでたい頭だ、その答えは自分で考えることだな、なぜ、俺に憎まれてるのかを、その答えを知ることができれば抜け出せるかもしれんぞ?」
キリリクはどうやら何かを知ってることはたしかだけど、答えるつもりはさらさらないらしい。
認識阻害も効果がない今、俺とキリヤができることってなんだ?ここから逃げ出すのは可能だろうか。
そう思考をめぐらせてると魔力を込めようとしても力が入らないことに気づいた、まさか!?
「気づくのが遅いのだよ、簡単に逃がすわけがなかろう?君たち2人にはここで死んでもらう、そうだな、シナリオはこうだ、修行の旅に出たとされていた未来の王宮騎士団長殿が宰相の一人息子を拉致監禁していた犯人だった、その犯人は私達に見つけられて処罰された、哀れな宰相の息子、ユーリ様は洗脳されていたのか戦闘中にキリヤを庇って死亡……これでどうだ?完璧だと思わないかね?まぁ、この筋書きもあまり意味はなさないが……」
紡がれた言葉にふつふつと怒りが湧いてくる。
俺の事を嫌いなのも憎むのも勝手だが、キリヤまでなぜ巻き込まなければいけないのか。
黒フード達に囲まれて、逃げ道なし、魔力封印されてる状態でどうすればいい?俺がも少し成長してれば剣を使って戦えたのに……。
どんなに怒りを覚えても、今の俺では奴に刃が届く前に斬られて終わりそうだ。
眉間に皺を寄せ拳を握りしめて睨みつけると心底楽しいといった表情で俺を見てきた。
「どうした?そんなに怖い顔をして、シナリオはお気に召さなかったとみえる」
「キリヤを巻き込むな!俺のことが嫌いなら俺だけでいいはずだろ!」
「ああ……、本当に哀れ哀れ、巻き込むに決まってるだろう?ユーリお前が苦しむ姿を見たいんだ、私は……」
ゾッとするほど冷ややかな目で俺を見たかと思うと俺の顎を掴んでキリリクと目が合う。
すると、俺の耳元で囁いてきた。
「私が憎いでしょう?もっと憎んでもいいんですよ、貴方が私を憎めば憎むほどに私の喜びは増すのだから……」
手を離され突き飛ばされるとキリヤにぶつかって受け止められた。
キリヤが心配そうに俺を見ていたから大丈夫だと微笑む。
それを見ていたキリリクが笑いだした。
「あはははっ、この状況で心配ですか、笑わせてくれますね、貴方たちは仲良くここで死ぬんですよ、なにもできずに……ね」
キリリクが手をあげて「殺れ」と一言合図を出すと黒フード達が攻撃を仕掛けてきた。
1人はキリヤに向かって大剣を振り下ろすとキリヤがそれをひらりと躱して、大剣の上に乗って黒フードの男の顎に蹴りを入れて吹っ飛ばした。
フードがパサりととれると予想通り、ガタイのいい男だった。
頬や肩に傷が見えるから戦場に出たことがあるタイプだ、傭兵だろうか。
キリヤのほうに意識を向けていたせいで、自分への攻撃に反応が遅れてギリギリのところでナイフを避けた。
小柄な黒フードが俺を襲ってきたのを見て、女性の可能性が高いな。
傭兵団でも雇ってるのか?と考えをめぐらせる。
傭兵団ならお金でこっちにつかせることはできないだろうか。
「ああ、そうそう、そいつらは金では動きませんよ、私の忠実な下僕なんだね?無駄なあがきはやめてさっさと死んでくださいよ」
そう微笑みながらキリリクが言葉を紡ぐ。
俺の考えてる事はお見通しってわけか、さすが頭がいいだけのことはある。
でも、それって洗脳でもしてるんだろうか、こんな歴戦の猛者って感じのあの大男がお金以外で雇われることがあるのか?
もし、洗脳なら解けるんじゃと一縷の望みを見いだしても遅かった、キリヤが複数の黒フードに囲まれて処理切れずに背中を斬られてしまったのが視界の隅で見えたからだ。
頭が真っ白になる、だって、キリヤが斬られた……、急いでそばまで駆け寄ってキリヤの手を掴む。
「すまない、この歳だとユーリ一人守りきれないなんて情けないな」
「謝らんでよ、なんで……、キリヤ、ごめん、ごめんね?俺のせいで……」
ポロポロと大粒の涙が溢れ出して、ぽたぽたとキリヤの手を濡らすのもかまわず泣きながら謝罪の言葉を紡ぐと、背後から声が聞こえてきた。
「美しい愛ですねぇ、反吐が出そうですよ、2人仲良く死ねるんですからありがたく思いなさい」
キリヤを咄嗟に庇うように体を覆うようにすると、俺の体ごと大剣が突き刺された。
痛みと息苦しさに意識が朦朧する中、キリヤの手が俺の頭を撫でて微笑んだのが見えた。
「はっ、はぁ……はっ、ユーリ、愛してるよ…」
「はぁ……はっ、キリヤ……俺も…」
幸せそうに笑ったキリヤの姿を最期に見て俺は意識が途絶えた。
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