聖女は記憶の残滓に恋焦がれる ~男体化してしまった聖女の妹が私を汚そうとするんですが誰か助けてください~

なのの

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45.愛する人

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 国境を超え、教国に入った───

 多くの屍を築き上げ───

 国家間の争いの種をまき散らし───

 教国に連れ去られた公国にとっての疫病神───

 こんな私に生きる価値はあるのでしょうか───

 教国側の国境の町に入っても頭痛が続いていた。
 頭が割れそうな程の頭痛に追い打ちをかけて誰かを思い出そうとした。

 誰かが居た。
 誰かを失った。
 誰かは私のかけがえのない人だった───

 最早、頭痛に頭が割れそうになり耐えれないと思った時、体を白い光が包み込んだ。
 その光に後退りも逃げる事もできやしない。
 ここは狭い馬車の中、あふれ出した光は馬車の天井を突き破り、遥上空に伸びると同時にその半径を広げていった。

「大聖女の暴走か!」

「小癪な!」

 かすかに教国兵が動揺する声が聞こええる。
 馬が怯えて逃げ行く音が聞こえる。
 そして、駆け付けてくる馬の音も。
 ぽっかり空いた馬車の天井に上り、私を見下ろす者がした。

「エリアナ!」

「ウォルター!来て・・・くれたのですか」

「エリアナ様、私もいますぜ」

「レッドも・・・、どうしてここに」

「話しはアイツらを片付けてからなっ」

 レッドはそういうと身の丈程もありそうな大きな剣を振り回し、教国兵を次々と潰してゆく。
 ウォルターは馬車の中に入り込み、再び私の唇を奪い、抱きしめられた。
 この光の中に居ると、痛みを感じ続けてしまうと言っていたというのに、私と一緒に居てくれるという。
 それが嬉しいのか、或いは助かって嬉しいのか。
 大粒の涙が零れだす。
 そして、徐々に光は収まっていった。

「ウォルター・・・、私なんかの為に・・・」

「エリアナの為なら、どこへでも行くよ」

「相棒だから、ですか?」

「それだけじゃないよ、エリアナ」

「大聖女だから・・・ですよね」

「そんな事はどうでもいいよ、エリアナ」

「じゃあ」

「ずっと言いたかったんだ。エリアナ、お前を愛している。俺と結婚して、ずっと傍にいろ」

「───はい」

 ウォルターの瞳の中の私はどんな表情をしているのか。
 ちゃんと笑顔が作れているかな。
 涙で不細工になってないかな。
 そんな不安を拭い去るように更に唇を重ねる私達は周りの物騒な音など気にせずに、ずっとこのまま時間が止まればいいと思っていた。

 ウォルターと唇が離れ、ウォルターの笑みが私の瞳に映り、ウォルターとの絆が確かなものになった。

 その瞬間───

「我々の大聖女に何をする!」

 大きな声に大きな破壊音と共に、ウォルターが姿を消した。
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