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旧校舎
23話目
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「運転手さん。まじで坊っちゃんのことを大事に」
自分の手に赤い血液がくっついていることに驚いてか左目だけの男が固まる。ユニに乳首を舐められたせいもあってか彼が身体全体を震わせた。
「おい、どうかしたのか?」
「いや……血が。運転手さんが自分の首を切ったみたいで、なんでそんな」
ワンボックスカーが左右に揺れ動く。ほんの一瞬……車内にある全てのものが空中に浮き上がったようになり右目だけの男が転がるように移動させられて、リアドア部分に頭をぶつけている。
「坊っちゃんのために死ねる。これほどの幸福は」
「落ち着け。どうしてあんたが死ぬことが坊っちゃんのために……今どうなって。まだ生きているよな?」
「ドゥルールという魚を知っていますかな。南米のほうで発見をされて人類の透明化技術の進歩に大いなる貢献をしたと話題になったことが」
「ぼけたふりをやめて。さっさとここから、水?」
換気のために開けていたであろう、リアドアガラスの隙間から大量の濁った色の液体が入ってきている。
「女もろとも溺死をさせるつもりだ。運転手をどかせてドアを開け」
とっさにありったけの空気を吸いこんで、車内にいるまだ生きている人間たちは息をとめた。
ハンドシグナルで右目だけの男が、慌てた様子の左目だけの男とコミュニケーションをとろうとしている。
ユニは目を閉じ、少しでも空気を体内から漏らさないためか鼻をつまむ。
事態の急変に慌てていた左目だけの男もようやく落ち着きを取り戻したようで右目だけの男と。
左目だけの男の右手がなくなっていた。獰猛な動物に噛みちぎられたように手首の断面はがたがたで汚い。
「なにが起こって」
とでも言ったのか思わず口を開けて、左目だけの男が空気の玉をいくつか吐き出す。
右手がなくなっただけのことだ、気にするな。ハンドシグナルで右目だけの男が左目だけの男に伝える。
右手首の断面から血が出てくるのを左手で抑えながら左目だけの男が首を縦に振った。鼻をつまみ、動こうとしないユニのほうを彼がちらりと見る。
諦めろ、女はどっちみち助からない。
仕方ないな、命が最優先だし。
運転手をどかして、車の操作をするも壊れてしまったのか全く反応がない。
なにか道具はないか?
ナイフしか。
痛みを感じてか、左目だけの男がまぶたを開閉した。彼の右足首から先が消えている。
「なんでおればっかりがこんな目に」
ぼこぼこと空気を吐き出す左目だけの男がうっとおしかったのか、のどの一部がなくなった。頸動脈も切れてしまった影響でか彼は脱力してしまい……車内の天井にひっかかっている。
血が繋がっていたであろう左目だけの男の遺体を右目だけの男が冷静に調べていく。彼の噛みちぎられたかのような痕跡のある、のどの部分を見ている。
「魚か!」
さっきの運転手の言葉を思い出してか、右目だけの男は開いてしまった口をすぐに手で塞いだ。
左目だけの男の死因は分かったが、ワンボックスカーからの脱出に役立ちそうにないと考えたらしく右目だけの男の表情が。
なにかを思いついたようで右目だけの男が、左目だけの男の握っていたナイフを奪い取り。遺体の彼の左手の五指をそれぞれに切っていく。
わずかに開いているリアドアガラスに右目だけの男がナイフで切れこみを入れた五指をひっかける。
しばらく経ち……右目だけの男の息も続かなくなってきたようで顔色が悪くなっていく。彼の思い通りにドゥルールと呼ばれる透明な魚は、リアドアガラスにひっかけてある死んだ人間の指を食べようとしない。
遺体の肉ではドゥルールは食いつかないと判断をしてか顔を青くした右目だけの男が息をとめたままでじっとしているユニをナイフで。
わたしは知っている。今回の結末も……ここでわたしは死なない。この水中にいるドゥルールと呼ばれる透明な魚は調教をされていて、生きている男性だけを好んで食べるらしい。とくにセックスをした直後の個体はなおさら選ばれやすいとか。
確か、運転手さんから教えてもらったっけ。どの残酷な結末を迎えた時かは忘れてしまったけれど。
そろそろかな、右目しかない男の人も。
ユニがまぶたを開いた。右目だけの男がドゥルールに首を食いちぎられて死んでいることをすでに知っていたかのように彼女はまるで動じてない様子。
あと少しだけ我慢をすれば水が抜けていって、わたしは助けてもらえる。とりあえずは。
工場内にあるクレーンで巨大な水槽の中に沈められていたワンボックスカーが引き上げられ、車内を満たしていたであろう濁った液体が抜けていく。
クレーンで吊るされていたワンボックスカーが着地をする。バールを持った黒服を着ている男たちがリアドアを強引に開けた。
車内に遺体しかないことを黒服の一人がユニのクラスメートである坂田ハヤテにスマートフォン越しに報告をしている。
「八雲さんも死んじゃったのか……溺死?」
「いいえ。車内にあったナイフで首を切ったようです」
「自殺だと分かったということは、八雲さんがナイフを握っていた」
「はい。八雲ユニの右手にはナイフが握られていたので現場の我々も坊っちゃんと同じ推測に……おそらくは性暴力による」
「雇った三人もナイフで死んでいたのか?」
「ナイフで命を失ったのは運転手と八雲ユニだけです。雇った人間たちの一人はこの工場の途中で車から落下をさせられた時に、残りの二人はドゥルールに首の血管を噛みちぎられたのが死因かと思われます」
「その報告が全て正しいのなら少し変ですね」
自分の手に赤い血液がくっついていることに驚いてか左目だけの男が固まる。ユニに乳首を舐められたせいもあってか彼が身体全体を震わせた。
「おい、どうかしたのか?」
「いや……血が。運転手さんが自分の首を切ったみたいで、なんでそんな」
ワンボックスカーが左右に揺れ動く。ほんの一瞬……車内にある全てのものが空中に浮き上がったようになり右目だけの男が転がるように移動させられて、リアドア部分に頭をぶつけている。
「坊っちゃんのために死ねる。これほどの幸福は」
「落ち着け。どうしてあんたが死ぬことが坊っちゃんのために……今どうなって。まだ生きているよな?」
「ドゥルールという魚を知っていますかな。南米のほうで発見をされて人類の透明化技術の進歩に大いなる貢献をしたと話題になったことが」
「ぼけたふりをやめて。さっさとここから、水?」
換気のために開けていたであろう、リアドアガラスの隙間から大量の濁った色の液体が入ってきている。
「女もろとも溺死をさせるつもりだ。運転手をどかせてドアを開け」
とっさにありったけの空気を吸いこんで、車内にいるまだ生きている人間たちは息をとめた。
ハンドシグナルで右目だけの男が、慌てた様子の左目だけの男とコミュニケーションをとろうとしている。
ユニは目を閉じ、少しでも空気を体内から漏らさないためか鼻をつまむ。
事態の急変に慌てていた左目だけの男もようやく落ち着きを取り戻したようで右目だけの男と。
左目だけの男の右手がなくなっていた。獰猛な動物に噛みちぎられたように手首の断面はがたがたで汚い。
「なにが起こって」
とでも言ったのか思わず口を開けて、左目だけの男が空気の玉をいくつか吐き出す。
右手がなくなっただけのことだ、気にするな。ハンドシグナルで右目だけの男が左目だけの男に伝える。
右手首の断面から血が出てくるのを左手で抑えながら左目だけの男が首を縦に振った。鼻をつまみ、動こうとしないユニのほうを彼がちらりと見る。
諦めろ、女はどっちみち助からない。
仕方ないな、命が最優先だし。
運転手をどかして、車の操作をするも壊れてしまったのか全く反応がない。
なにか道具はないか?
ナイフしか。
痛みを感じてか、左目だけの男がまぶたを開閉した。彼の右足首から先が消えている。
「なんでおればっかりがこんな目に」
ぼこぼこと空気を吐き出す左目だけの男がうっとおしかったのか、のどの一部がなくなった。頸動脈も切れてしまった影響でか彼は脱力してしまい……車内の天井にひっかかっている。
血が繋がっていたであろう左目だけの男の遺体を右目だけの男が冷静に調べていく。彼の噛みちぎられたかのような痕跡のある、のどの部分を見ている。
「魚か!」
さっきの運転手の言葉を思い出してか、右目だけの男は開いてしまった口をすぐに手で塞いだ。
左目だけの男の死因は分かったが、ワンボックスカーからの脱出に役立ちそうにないと考えたらしく右目だけの男の表情が。
なにかを思いついたようで右目だけの男が、左目だけの男の握っていたナイフを奪い取り。遺体の彼の左手の五指をそれぞれに切っていく。
わずかに開いているリアドアガラスに右目だけの男がナイフで切れこみを入れた五指をひっかける。
しばらく経ち……右目だけの男の息も続かなくなってきたようで顔色が悪くなっていく。彼の思い通りにドゥルールと呼ばれる透明な魚は、リアドアガラスにひっかけてある死んだ人間の指を食べようとしない。
遺体の肉ではドゥルールは食いつかないと判断をしてか顔を青くした右目だけの男が息をとめたままでじっとしているユニをナイフで。
わたしは知っている。今回の結末も……ここでわたしは死なない。この水中にいるドゥルールと呼ばれる透明な魚は調教をされていて、生きている男性だけを好んで食べるらしい。とくにセックスをした直後の個体はなおさら選ばれやすいとか。
確か、運転手さんから教えてもらったっけ。どの残酷な結末を迎えた時かは忘れてしまったけれど。
そろそろかな、右目しかない男の人も。
ユニがまぶたを開いた。右目だけの男がドゥルールに首を食いちぎられて死んでいることをすでに知っていたかのように彼女はまるで動じてない様子。
あと少しだけ我慢をすれば水が抜けていって、わたしは助けてもらえる。とりあえずは。
工場内にあるクレーンで巨大な水槽の中に沈められていたワンボックスカーが引き上げられ、車内を満たしていたであろう濁った液体が抜けていく。
クレーンで吊るされていたワンボックスカーが着地をする。バールを持った黒服を着ている男たちがリアドアを強引に開けた。
車内に遺体しかないことを黒服の一人がユニのクラスメートである坂田ハヤテにスマートフォン越しに報告をしている。
「八雲さんも死んじゃったのか……溺死?」
「いいえ。車内にあったナイフで首を切ったようです」
「自殺だと分かったということは、八雲さんがナイフを握っていた」
「はい。八雲ユニの右手にはナイフが握られていたので現場の我々も坊っちゃんと同じ推測に……おそらくは性暴力による」
「雇った三人もナイフで死んでいたのか?」
「ナイフで命を失ったのは運転手と八雲ユニだけです。雇った人間たちの一人はこの工場の途中で車から落下をさせられた時に、残りの二人はドゥルールに首の血管を噛みちぎられたのが死因かと思われます」
「その報告が全て正しいのなら少し変ですね」
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