高卒できなかったわたしは今日も時間が巻き戻る

赤衣 桃

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カホ 1

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 女の子というのはユニのような存在を言うのだろう。
 ほわほわとしていて良い匂いがして男子から性の対象として見られていると分かっても怒るのではなく、恥ずかしがるタイプ。正確にはわたしが理想とする女の子像か。
 かといってユニになりたいとは思わない。彼女は生きものとして弱すぎる。
 もちろん弱いことが悪いのではなく、ユニはその持ち味を活かそうとしない……そもそも彼女の性格的に使いこなせないのか。
 もしもなにかのきっかけでユニが自分の能力を最大限に使いこなせてしまったら。



「能力を最大限に活かすのは重要ですが……ひけらかしすぎるのは愚策かと。下北さんの場合、自分は弱い存在なのだと擬態をしてみるとこれまでとは全く違う能力の使いかたが見えてくるはず」
 強者だと思いこんでいた自分も案外、弱いものとして見てもらえると気づけるかもしれません。と言っている坂田ハヤテの顔を下北カホが見上げた。
「なに……したの」
 旧校舎の体育倉庫、その中でカーペットのように敷かれた体操マットの上にカホがうつぶせで倒れている。
「強力な筋弛緩剤、要するに動けなくなる薬を注入しました。眠らせても良かったんですが拷問もエッチも相手が反応してくれるからこそ楽しめると」
「どうやって、食べものもなにも口には」
「説明が悪かったですね。注入とは言いましたが薬品を飲ませたわけではありません、下北さんの脳味噌に筋弛緩剤が身体の中に注ぎこまれたと勘違いをさせただけのこと」

 特注の小型の指向性スピーカーを使えば特定の人物にだけ手足を麻痺させる音波を伝えられる……そう説明を続けながら坂田が着ているスクールシャツの校章に指先で触れた。
「まだ音波を聞かせ続けないとすぐに効果がなくなってしまうという欠点はありますが、相手が複数でなければ充分に使える代物。種類もいくつかあり完全に洗脳する音波もあるんですが、ぼくの好みでは」
「説明はもう良いから、さっさとやってくれない。無理矢理に犯されたとしても死ぬわけでもないんだから」
「やっぱり女の子の尊厳死はレアケースなようで。下北さんみたいなタイプも珍しそうですけど初めてのエッチは好きな人が良いとか考えたりは」
「好きな人なんて頻繁に変わるでしょう」
「ダウト……ようやく下北さんの本音が見えた気がしましたよ」
 しゃがみこんだ坂田の右手がカホの顔に触れる。ていねいに手入れをしているのであろうブロンドヘアのなめらかさに彼が目を丸くした。

「トリートメントなどに気を遣っていますね。男勝りな下北さんにも好きな人がいるようで助かりました」
「恋をするのに性格は関係ないでしょう」
「声が震えてますね。処女なんですか?」
「もう喋りたくないから……さっさとして」
「ぼくは下北さんともっともっとお喋りをしたいんですよ。高嶺の花でしたから、こうやって自分の思い通りにできるなんて」
「そっちこそ嘘はやめたほうが良いんじゃない」
「本当ですよ。どんな女の子も男にとっては高嶺の花となりますし、自分の好みであればなおさら緊張や興奮をしてしまう」
「願い下げ」
「今の本来の下北さんを見たら、八雲さんはどう思うんでしょうね」
 薄ら笑いを浮かべていたカホの表情が曇っていき眉毛がかすかに動く。

「ユニは家に帰ったって」
「下北さんは意外と楽観的なんですね。自分が今みたいな状況になっている時点で、八雲さんも同じような目に遭っているかもしれないと考えても良さそうなものなのに。好きな人とはいえ自分以外の命には興味が湧かないのが人間なのでしょう」
「なにを言っているの」
「下北さんの好きな人は八雲さんなのでは。だから友達のふりをしていたんだと思っていたんですが」
「ユニはただの友達よ。とんちんかんなことを」
「安心しました。では八雲さんが自殺していたとしても下北さんには全く関係ありませんね」
 坂田の言葉が自分に対する嫌がらせなどではないことを察知してかカホが青ざめている。
「自殺……ユニが」
「はい。隣町の公園から自宅に帰るまでに死にたくなるような出来事があったらしく、ナイフで首を」
「ユニになにをしたの」
「ぼくは直接的にはなにもしていませんよ。八雲さんの遺体をほしいという方がいたので、そのお手伝いなどはさせてもらいましたが」

 精神的支柱が折れてしまったらしくカホが涙を流す。いつまでも泣き続ける彼女に坂田が珍しいものを見た時のような視線を向けた。
「そんなに八雲さんが好きだったんですね。嬉しい誤算ではありますが同時に肩透かしを食らったような奇妙な感覚を、今夜のお客さんが到着したようですね」
 泣きじゃくるカホを放置したまま坂田はノックの音が聞こえた方向へ歩く。彼が体育倉庫の扉を横にスライドさせて開ける。
 坂田と同じスクールシャツを着た男子生徒がいた。顔を見て、名前を聞くと体育倉庫の中に招き入れる。
 チェックが終わると坂田は体育倉庫の扉を閉め、鍵をかける。ちゃんと開かないことも確認していた。
「本当に良いんだよな」
「もちろん。今日はクリスマスではありませんし、下北さんもサンタクロースのコスプレをしていませんが様々なサービスをしてくれるそうですよ、料金は相応なものとなりますがね」
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