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ルートA
28話目
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「お言葉に甘えて、さっそく教えてほしいんだけど坂田くんにとって悪人はどんな感じ?」
「最高とは言えませんが。少なくとも善人よりは選択肢が多くなるのは間違いありませんね……個人によってはポリシーなどのせいで逆に自由に生きられてなさそうな方もいますけど」
「山本くんとか」
「ぼくからすれば彼は悪人ではありません。変人と呼ばれる程度ですね。自分の趣味、性癖のために好みの女性の遺体を量産していませんし」
「わたしの拷問を聞いただけで食べたものを吐いて」
「その拷問は本当にあったんですかね」
ユニがぽかんとした。先程まで笑っていたはずの坂田の顔が能面のようになっている。
旧校舎の校門の前でユニと坂田が向かい合う。どこからか不気味な音が聞こえたようで彼女がそちらのほうを見上げた。
今の音色、どこかで聞いたことがあるような。
改めてユニが坂田と目を合わせる。
「わたしの記憶が間違い……もしくは嘘をついていると坂田くんは思っていたりするの」
「どちらも考えていません。八雲さんが嘘をつく理由はなさそうですし、ぼくも拷問をした記憶は残っていますので」
「だとしたら問題ないんじゃない」
「真面目に答えてほしいんですけど、八雲さんはぼくが女性を拷問して喜ぶタイプの変人に見えますか?」
「カホちゃん限定だったら、ありえなくもなさそう」
そうだ……イフェメラルのミッドミッドナイトを開始する時の音と似ているんだ。通りで嫌な感じがして身体全体が震えているのか。
「本来の八雲さんもそう思っていますか?」
「膨大な記憶のない状態のわたしだったらそもそも相手の本質を見抜こうとすらしない。クラスメートならなおさらね」
では、今の八雲さん的にぼくがどうしてもほしい情報のために拷問という手段を選ぶ可能性があると考えますか……と坂田がユニに質問をした。
「金持ちの坂田くんだったら強力な自白剤を使うかと。そのほうが痛めつけるより遥かに効率的だし」
「同じ意見で安心をしました。意外とぼくは八雲さんを破壊したい欲求があるようですね」
「笑えない冗談は良いから、坂田くんの本音は?」
「二重人格。正確には今の八雲さんのように膨大な記憶を保持するための精神や魂のようなものが一時的に」
「全く別の人格が、坂田くんの身体を乗っ取って拷問でわたしから情報を聞き出そうとしたということみたいだけど……今は平気なの」
「おそらくは時間移動による弊害の一つでしょう。今のぼくは八雲さんを拷問したいとは思ってませんし」
イフェメラル、ナイトプールで山本くんに八雲さんが残酷な行為をされたのも同じような現象が原因なのではないかと。
坂田の仮説にまだ納得できない部分があるからかユニがうなり声を上げる。
「その弊害というか、別人格の発現は山本くんだけじゃなくて柏木くんにも起こっていた?」
「そういえば柏木くんもいたんでしたっけ。八雲さんの言う通りでしょうね、彼も山本くんと同じように人間を殺せるタイプでは」
「山本くんの名前は、確かショウトだったよね」
ユニの確認をしたいことが分からないからか、戸惑いながらも坂田は首を縦に動かす。
「柏木くんの名前を……坂田くんは覚えている?」
もしも、わたしの記憶が正しければナイトプールでの残酷な行為を柏木くんは自分の意志ではなく。
だとしたら坂田くんの考えとは大きく違っていて。
「柏木くんの名前ですか、マモルだったかと」
「ナオトじゃなくて」
「はい。柏木マモルですよ、なんなら今から本人に」
「合っているよ、ユニ。柏木マモルでさ」
背後から男の声が聞こえて、驚いたのであろうユニが瞬時に振り向こうとするが見えないロープで身体全体を縛られたかのように動けない様子。
見えないなにかに口を塞がれ……声を出せないユニのいるほうへと坂田が近寄ろうとするも。
「やっぱり、最初に気づいてくれるのはユニだと思っていたよ。ヒントがあったかは関係なく、とてもシンプルにおれとはそういう運命だったのさ。坂田ハヤテの最期を一緒に見てあげようね」
「さい、ふぉ」
健康状態の良さそうな奇麗な色合いの人間の赤い血がコンクリートに垂れていく。背中から貫通し、自分の腹の辺りに突き刺さった小太刀を坂田が両手で触れる。
何回か咳きこみ、坂田がにやりと笑う。
「ふふっ、なるほど。これが」
「しゃべるな。さっさと死ね……変態が」
坂田の腹に突き刺さった小太刀を左右に回転させるのと同時に透明で姿は見えないがカホの声が響く。
「この声は下北さんですね、姿が見えてないので透明化ポンチョでも身につけて。目的は復讐でしょうか?」
「死ねよ。死ね死ね死ね、この大好き!」
返り血を浴びたはずなのに、未だに透明なカホの突然の愛情たっぷりの言葉に驚いてか、ユニが目を丸くしている。
「下北さんの洗脳の上書きには成功をしたようですが、おそらく八雲さんを拘束している」
「正解」
ハンマーなどで脳天を叩かれたように坂田の頭がコンクリートにめりこまんばかりに垂直に落下する。
ぱっくりと割れた坂田の頭の穴から血が垂れた。
「うっかりしていた。おい、まだお前には用事があるんだ。生きているよな」
「なんとか……ぼくに用事とは」
大丈夫? 頭がぱっくり状態だけど死なないよね、と心配そうに透明なままのカホが座りこまないように抱きついているのか坂田の表情が緩む。
「どこまで知っているかを聞きたいだけだ。おれの存在についても、さっきのユニの言葉で気づけただろうし」
「そんなことよりもお願いがあるんですが」
「残念だが殺すのは確定だ。お前は油断ならない。もし今回よりも前におれの存在に気づけていれば求めていた永遠の命どころか」
「ぼくが死んだあと、下北さんも一緒に埋めてほしいんです」
「女を生き埋めにするのは趣味じゃないんだが。どっちにしても同じような結果になりそうか」
「最高とは言えませんが。少なくとも善人よりは選択肢が多くなるのは間違いありませんね……個人によってはポリシーなどのせいで逆に自由に生きられてなさそうな方もいますけど」
「山本くんとか」
「ぼくからすれば彼は悪人ではありません。変人と呼ばれる程度ですね。自分の趣味、性癖のために好みの女性の遺体を量産していませんし」
「わたしの拷問を聞いただけで食べたものを吐いて」
「その拷問は本当にあったんですかね」
ユニがぽかんとした。先程まで笑っていたはずの坂田の顔が能面のようになっている。
旧校舎の校門の前でユニと坂田が向かい合う。どこからか不気味な音が聞こえたようで彼女がそちらのほうを見上げた。
今の音色、どこかで聞いたことがあるような。
改めてユニが坂田と目を合わせる。
「わたしの記憶が間違い……もしくは嘘をついていると坂田くんは思っていたりするの」
「どちらも考えていません。八雲さんが嘘をつく理由はなさそうですし、ぼくも拷問をした記憶は残っていますので」
「だとしたら問題ないんじゃない」
「真面目に答えてほしいんですけど、八雲さんはぼくが女性を拷問して喜ぶタイプの変人に見えますか?」
「カホちゃん限定だったら、ありえなくもなさそう」
そうだ……イフェメラルのミッドミッドナイトを開始する時の音と似ているんだ。通りで嫌な感じがして身体全体が震えているのか。
「本来の八雲さんもそう思っていますか?」
「膨大な記憶のない状態のわたしだったらそもそも相手の本質を見抜こうとすらしない。クラスメートならなおさらね」
では、今の八雲さん的にぼくがどうしてもほしい情報のために拷問という手段を選ぶ可能性があると考えますか……と坂田がユニに質問をした。
「金持ちの坂田くんだったら強力な自白剤を使うかと。そのほうが痛めつけるより遥かに効率的だし」
「同じ意見で安心をしました。意外とぼくは八雲さんを破壊したい欲求があるようですね」
「笑えない冗談は良いから、坂田くんの本音は?」
「二重人格。正確には今の八雲さんのように膨大な記憶を保持するための精神や魂のようなものが一時的に」
「全く別の人格が、坂田くんの身体を乗っ取って拷問でわたしから情報を聞き出そうとしたということみたいだけど……今は平気なの」
「おそらくは時間移動による弊害の一つでしょう。今のぼくは八雲さんを拷問したいとは思ってませんし」
イフェメラル、ナイトプールで山本くんに八雲さんが残酷な行為をされたのも同じような現象が原因なのではないかと。
坂田の仮説にまだ納得できない部分があるからかユニがうなり声を上げる。
「その弊害というか、別人格の発現は山本くんだけじゃなくて柏木くんにも起こっていた?」
「そういえば柏木くんもいたんでしたっけ。八雲さんの言う通りでしょうね、彼も山本くんと同じように人間を殺せるタイプでは」
「山本くんの名前は、確かショウトだったよね」
ユニの確認をしたいことが分からないからか、戸惑いながらも坂田は首を縦に動かす。
「柏木くんの名前を……坂田くんは覚えている?」
もしも、わたしの記憶が正しければナイトプールでの残酷な行為を柏木くんは自分の意志ではなく。
だとしたら坂田くんの考えとは大きく違っていて。
「柏木くんの名前ですか、マモルだったかと」
「ナオトじゃなくて」
「はい。柏木マモルですよ、なんなら今から本人に」
「合っているよ、ユニ。柏木マモルでさ」
背後から男の声が聞こえて、驚いたのであろうユニが瞬時に振り向こうとするが見えないロープで身体全体を縛られたかのように動けない様子。
見えないなにかに口を塞がれ……声を出せないユニのいるほうへと坂田が近寄ろうとするも。
「やっぱり、最初に気づいてくれるのはユニだと思っていたよ。ヒントがあったかは関係なく、とてもシンプルにおれとはそういう運命だったのさ。坂田ハヤテの最期を一緒に見てあげようね」
「さい、ふぉ」
健康状態の良さそうな奇麗な色合いの人間の赤い血がコンクリートに垂れていく。背中から貫通し、自分の腹の辺りに突き刺さった小太刀を坂田が両手で触れる。
何回か咳きこみ、坂田がにやりと笑う。
「ふふっ、なるほど。これが」
「しゃべるな。さっさと死ね……変態が」
坂田の腹に突き刺さった小太刀を左右に回転させるのと同時に透明で姿は見えないがカホの声が響く。
「この声は下北さんですね、姿が見えてないので透明化ポンチョでも身につけて。目的は復讐でしょうか?」
「死ねよ。死ね死ね死ね、この大好き!」
返り血を浴びたはずなのに、未だに透明なカホの突然の愛情たっぷりの言葉に驚いてか、ユニが目を丸くしている。
「下北さんの洗脳の上書きには成功をしたようですが、おそらく八雲さんを拘束している」
「正解」
ハンマーなどで脳天を叩かれたように坂田の頭がコンクリートにめりこまんばかりに垂直に落下する。
ぱっくりと割れた坂田の頭の穴から血が垂れた。
「うっかりしていた。おい、まだお前には用事があるんだ。生きているよな」
「なんとか……ぼくに用事とは」
大丈夫? 頭がぱっくり状態だけど死なないよね、と心配そうに透明なままのカホが座りこまないように抱きついているのか坂田の表情が緩む。
「どこまで知っているかを聞きたいだけだ。おれの存在についても、さっきのユニの言葉で気づけただろうし」
「そんなことよりもお願いがあるんですが」
「残念だが殺すのは確定だ。お前は油断ならない。もし今回よりも前におれの存在に気づけていれば求めていた永遠の命どころか」
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