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みんなにも平等なナイトメアを

第30話

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 青い怪物がぼうぜんとしているサキの右腕を握りしめて体育館のほうに歩きだした。
 腕を引っぱられるサキも昇降口にふきとばされたヌイを見るのをやめて、青い怪物に視線を向ける。
 今までの怪物と比べものにならないぐらいオーラが力強くて大きいし。ハリヤマさんが、あれだけでやられたんだからわたしが殴ったり蹴ったりしてもムダだろうな。
「どこに連れていくつもりなんですか?」
「きずなのところ。さきにきょうみがあるんだってさ、こわくないからあんしんだよ」
 校舎から体育館へつながる渡り廊下の途中で青い怪物が立ち止まった。 
「しつこいやつ」
 気配を感じたのか青い怪物がサキの背後に身体の正面を向けている。
「え?」
 サキも校舎のほうを見ると頭から血を流しているヌイが立っていた。脳みそも揺れているようで彼が身体をふらつかせる。
「ハリヤマさん」
「サキちゃん、ちょっとだけ目を閉じていて。すぐに終わらせるからさ」
 戸惑いつつもヌイに言われたとおりサキは目を。
 青い怪物がサキをすばやく横切りヌイに接近していく。ダッキングをするようにふところに入りこみ彼の顎めがけて拳を振りあげた。
 ヌイは振りあげてきた拳を避け、青い怪物の顔面に自分の右の拳を打ちおろそうと。
 青い怪物の振り上げている拳の衝撃波が校舎から体育館へつながる渡り廊下の屋根を破壊し、破片が降りそそいでくる。
 舌打ちをしながら拳を打ちおろすのをやめてヌイは青い怪物から距離をとった。
 破片が当たらないようにするためか、青い怪物はサキの前に移動をする。
 目を閉じたのと、ほとんど同時に大きな音がしたせいかサキが身体をびくつかせた。
「は……ハリヤマさん?」
「大丈夫だよ。老朽化が激しいだけだからそのまま目を閉じていてオッケー」
「はい」
 ヌイが青い怪物をにらみ、親指で中庭を指差す。どうやら場所を変更しようと相手に提案をしているようだ。
 青い怪物は目を閉じているサキをいちべつし……小さくうなずく。
 中庭へ走りだしたヌイを青い怪物が追いかける。
 校舎から体育館へつながる渡り廊下を走りぬけ、中庭の中央で急ブレーキをかけたヌイは追いかけてきている青い怪物の顔面を殴ろうと……左足を踏みだした。
 顔面へと近づいているヌイの右の拳を避け。がら空きのみぞおちに青い怪物が蹴りを入れようと。
 青い怪物の右の蹴りがみぞおちに当たるのと同時に、ヌイは右足で地面を思いきり蹴って、すばやく後方へとびあがりその威力を完全に殺した。
 着地するとヌイは昇降口へ逃げだした。彼の狙いに気づいたのか青い怪物は追いかけようとしない。
 サキのところに戻ろうとしているのか青い怪物が体育館のほうに振り向こうと。
 青い怪物の左の側頭部に消火器が当たった。その部分をなでながら二階を見上げている。
「当たっちゃいましたか。ごめんなさいね」
 にやつくヌイが青い怪物を二階の窓から顔をだし見下ろしていた。
 青い怪物が地面を強く蹴りつけ二階の窓ガラスをくだき、ヌイのいるところに突撃をする。
「そうこな」
「しつこいのは、きらい」
 窓ガラスの破片がまだ散らばっている最中、青い怪物がヌイに向かって中指をなん回もはじく。
 その衝撃波で加速をした、いくつもの窓ガラスの破片がヌイの身体につき刺さろうと。
 ヌイはとっさに避けようとしたのか足を滑らせてしまった。向かってきている窓ガラスの破片が両腕に刺さっていく。
 しりもちをつく直前、青い怪物はヌイのみぞおちのあたりを踏みつけ彼があお向けになるように床に叩きつけた。骨が折れたのか鈍い音がする。
「いっ、が」
「まだいきている」
 ヌイを踏みつけたまま青い怪物はその顎を力強く蹴りあげた。歯が折れたのか白くて、四角いものが彼の口からとびだす。
 気を失ったのかヌイが後頭部を床に打ちつけた。
 まだ生きているか確認しているようで青い怪物がヌイの口もとに耳を近づけている。
「ほんとうにしつこい」
「よく言われるよ」
 青い怪物の顔面にヌイが自分の折れた歯を吹き矢のようにとばした。
 ヌイの折れた歯が青い怪物の目に刺さったのか、よろめいて後ずさりをしていく。
 青白い左足がみぞおちをはなれた瞬間……ヌイは起き上がり、よろめく青い怪物の顔を蹴りつけた。
 こめかみに蹴りを入れられて、青い怪物は割れた窓ガラスの向かいにある図書室の扉にぶつかる。
 青い怪物は床を蹴って、図書室の扉とともに倒れこみ……中へと転がりこんでいった。
 図書室に入るか、青い怪物から距離をとるべきか迷っているようでヌイが動こうとしない。
 図書室の中に転がりこんだ青い怪物も策をねっている最中か、なにもしてこなかった。
「サキちゃんが待ってくれているからな、あんまり長引かせるわけにもいかないか」
 骨が折れているところを確認しつつヌイがほんの一瞬、体育館のほうに視線を向け。
 図書室の窓ガラスをつきやぶり、木製の丸い椅子がヌイの目にとびこんできた。
 ヌイは図書室からなん脚も投げこまれている椅子を避けるために距離をとっていく。
「思っていたよりもダメージがあったのかね」
 しまいには木製のテーブルさえも廊下に放りこみバリケードのように図書室への道がふさがれる。
「バリケードか? ほとんど無意味だけどな」
 無造作にバリケードを殴りつけ、蹴りとばし……ヌイが破壊をしていった。
 ヌイがバリケードを抜けると、青い怪物が図書室を出て中庭にとびおりようとしていた。
「行かせるかよ」
 左腕に刺さっていた窓ガラスの破片を引き抜き、ヌイが青い怪物に投げつける。
 反応できなかったのか青い怪物の右肩のあたりに窓ガラスの破片が刺さった。
 先ほどまでとまるでちがう青い怪物の反応の悪さを疑っているのかヌイはいぶかしんでいるようだ。
 青い怪物は窓ガラスの破片が刺さり、バランスをくずしてしまったようで中庭へと落ちていく。
 熟した柿を叩きつけた時のような音が聞こえ……青い怪物がとびおりた窓ガラスに近寄りヌイが中庭をのぞきこむ。
 中庭の地面には頭を打ちつけ辛うじて生きているだろう白い怪物がめりこんでいた。
「しまっ」
「うんがわるかったな」
 すばやく振り向きヌイが反撃をしようとしたが、一瞬はやく青い怪物の拳が彼の顔面に命中する。
「しつこい、からな」
 青い怪物は膝を折りまげ前のめりに倒れこもうとするヌイの顎を蹴りあげた。
 ムリヤリに起き上がらせたヌイの後頭部をつかみ青い怪物は床へ数えきれないほど叩きつけている。
「まだまだ、まーだまだ。ままままだだだだ」
 青い怪物はヌイをもちあげてキックオフでもするように中庭へ蹴りこむ。
 中庭のはるか上空へと蹴りとばされたヌイを追いかけるように青い怪物もジャンプし。青白い右足を振り上げ、彼の顔面にかかとを振りおろし勢いよく地面へと衝突させた。
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