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悪人なりのプライドや美学

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「本当にもらってもいいんですか?」
 シュウジがアテナシ収容所から盗んできた食料の一部をメイに渡すとそんな返事をした。
「もちろん。しばらくの間おれとメイは一緒に旅をすることになるんだからな」
「やっぱりシュウジさんもシスターに」
「それは絶対にない」
 冗談だったのかシスターはとくに落ちこんだ様子もなくシュウジからもらった食料を口に運ぶ。なん日かぶりの食事だからかゆっくりと噛みしめるように。
「シュウジさんは食べないんですか?」
「今のところは腹が空いてないからな。それにしてもこういう清潔そうな袋とかをつくれるとは」
 干し肉などが入っていた透明な袋をもちシュウジがひらつかせている。
「わたしも技術的なことは分かりませんが、創造の魔法からヒントを得たとか聞いたことがあります」
「ふーん」
「ところで、わたしと一緒に旅をするとはどういう意味でしょう?」
「そのままの意味だよ。女性が一人だけで旅をするのはなにかと不便だと思ってないのか」
 これまでのことを思い出しているようで、天井のほうにメイが視線を向ける。
「全くないとは言い切れませんね」
「おれも異国の人間だから案内役がいてくれるほうが助かったりする」
「シュウジさんの旅の目的は?」
「復讐」
「そうですか」
 残りの干し肉を口の中に入れて、よく噛んでからメイは飲みこんだ。
「諭したりはしないのか」
「未熟なわたし以外のシスターであれば、シュウジさんが納得をできるかもしれない別の答えを教えられる可能性はありますよ」
「メイ自身はおれのようなごろつきで馬の骨の人生には興味がないという意味か?」
「そうではありません。善悪に関係なく、シュウジさんが考えた答えを出会ったばかりのわたしが意見をするのは荷が重いということです」
「悪かった」
 そう言って……メイと向かい合わせに座っていたシュウジが立ち上がり小屋を出ようとする。
「わたしは気にしてないのでこちらで休んで」
「自称、器量が悪いとはいえそういうセリフは言わないほうがいいと思うぞ。世の中にはゲテモノ好きもいるし」
「シュウジさんにもてあそばれるのも悪くはないとわたしは思っておりますが」
「自分よりも強い女とはできるだけ距離をおくようにしているんだ。肉体的だったらともかく精神的に上回っているやつはなおさらな」
 小屋を出ていくシュウジを見送り、少しの間なにかを考えていたらしいが。
「ふわぁあ」
 眠くなってきたのかあくびをするとメイは正座をした状態のままで目を閉じた。



 メイが眠る小屋を出てシュウジが辺りを散歩していると鋭い視線を感じたからなのか彼が身体をびくつかせた。
 さりげなくシュウジは襲われやすい場所に移動をして鋭い視線を向けていたであろう女性を返り討ちにする。
「恩を仇で返されるとはな」
 女性の顔を見て、シュウジがつぶやく。口にした言葉とは裏腹になんの感情もわいてないようで彼の表情に変化がない。
 返り討ちにあった女性が自分には強力な後ろ盾があるというたぐいのことを言っているが、シュウジには聞こえてなさそうな様子
「その後ろ盾のところに連れていけ」
「はっ、後悔するなよ」



 シュウジに襲いかかり返り討ちにあった女性……クーシーは目の前で起こったことに驚いてか、立ちつくしていた。
 ナイネナン森の近くにある集落には似つかわしくない高価そうな椅子やソファー、寝具のようなものが置かれた部屋の中央でシュウジが首を鳴らす。
 そんなシュウジの周りにはなん人もの人間だったであろう赤く汚れた物体が。
「お前の後ろ盾はこれで全部か?」
 ゆるやかにクーシーが首を縦に振る。シュウジはまだ女神からもらった超能力をつかってないからか奇妙な間があった。
「二人か。食料もあるようだし、良しとするか」
 目の前で腰を抜かしている茶髪の女性をシュウジが見下ろす。彼は笑顔をつくっていたが周りの仲間の状態のせいか彼女は身体を震わせたままでいる。
「身体を洗える場所はあるのか?」
「あ、あっちに」
 茶髪の女性が指さす方向をシュウジが見た。
「食料の保存方法もだが、意外とおれがいた世界にちかいレベル。下手したらそれ以上の文明を」
 ぶつぶつとシュウジが独り言を口にしている間にクーシーが逃げようとしたが……いきなり動けなくなったようで転んでしまう。
「そっちからケンカを売っておいて、それはないと思うんだけどな」
「たすけて」
「ちがうちがう。それは弱者だけが言っていいもののはずだ。おれたち悪人にもそれなりのプライドや美学があるだろう」
 弱者を食いものにしてきたんだ、その最後は残酷であるべきものだ。とシュウジはクーシーの耳もとでそうささやいた。
 へたりこんだまま逃げようとしない茶髪の女性の姿を見て、愉快そうにシュウジが笑う。
「まずはこっちからにしようかね。そちらのへたりこんだお姉さんはそのほうが面白そうだし」
 超能力で動けなくしたクーシーの赤い髪を力強くひっぱり、シュウジは先ほど教えてもらった身体を洗える場所へと移動した。
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